名前を決めてーコノキモチニー

鏡恭二

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寂しさのらせんの果てに・・・

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まどかは、学校に向かって歩いていた。

いつもの建物、いつもの風景、いつもの電車いろいろなものがもう見慣れていた。

あちらでは何か誰かが世間話をしている、こちらでは自販機でジュースを買っている人

子供連れでどこかに行く家族、仕事前で電話をしながら急いで電車に乗ろうとする人、

スーツで何やら部下に偉そうに話している人・・・

まどかはそんな中感じた。



・・・わたしここにいて、いいのかな・・・・・



その時いきなり頭の中にスイッチが入ったように記憶がよみがえった。

小さい頃のまどかがベッドから起きる。ウキウキしているだって今日は特別な日だから。

小さい頃のまどか「お父さん、お父さん」

父「なんだいまどか」

ちいさいころのまどか「あのね。あのね。・・・今日・・・・」

父のスマホが鳴った。

父「はい。なにっ。発注個数をミスしたっ!!1万個を10万個・・・担当先がっ怒っている・・

なにしてるんだ!!」

まどかは大きな声にびくっとした!!自分が起こられているわけではないのに・・・

ちいさいころのまどか「お父さん・・あのね・・・今日・・・」

まどかは意を決して言葉に出そうとした。しかし父親の耳には入っていない。

父「悪いまどか・・・仕事が入った。すぐに会社に行かなければならない・・・」

父親はまどかの前から突然いなくなり、別室に行き、スーツに着替え、家を出た。

その間中まどかは声をかけ続けた。

まどか「おとうさん・・・おとうさん・・・・おとうさん・・・おとうさん・・・」

その声を振り切り目の前から逃げるように立ち去る父、父も逃げてるわけではないのだが・・・

まどかのほほに両眼から涙がこぼれた。悲しすぎて声も上げられなく泣いている。

まだこどもなのに・・・そして静かにいった・・・

まどか「おとうさん・・・・今日・・・・私・・・誕生日だよ・・・・」



はっ!!まどかは現実に帰った。なんだ今のは、どうして・・・そしてなぜか・・



・・・自然と泣いてしまっている自分がいた・・・・



生活は満たされている、住むところ、着るもの、食べるもの何一つ不自由がない、でもなんだろう

この胸の中に空いた空っぽな何かは・・・なんなんだろう・・・

恭二

「一番身近な奴が子供を傷つけるなんて」

「許しちゃいけねぇんだ・・・・親なのに・・・・」

あの時の言葉がまどかの頭から急によみがえった。なぜだろう。まどかも良くわからなかった。



・・・・あの人なら、この気持ち埋めてくれるのかな・・・・

そう思いながら今日も涙を拭いて登校した。



恭二は保育園に向かっていた。今日は幼稚園の個人面談の日、これも専業主夫の大事な仕事。

幼稚園の門に近づきインターフォンを押す。かぎが開けられた。

保育士「こちらにどうぞー」

2階段を上り、2階に案内される、そこは絵本もある丸いテーブルだ。面談というから椅子と机があるような部屋でやるのかと思ったが違うのか、他の職員が保育園の子供たちのための制作をしているようだ。

会釈しながら立上り、その場を去った。

恭二「(保育士さんも大変だな・・・・)」

恭二はその行動を見て思った。子供たちが喜んでもらうための制作、子供たち一人一人の喧嘩の仲裁、クラス担当、そして金髪宇宙人の対応・・・保育士はすごい仕事だと恭二は感じた。

保育士「今日面談を担当させていただきます。原田優里です。よろしくお願いします。」

さすが保育士、たくさんの子供たちと接しているからか、芯が通って凛としている。

この金髪頭にも動じていないようだ。

少し緊張しながら恭二が答えた。

恭二「どうも。蓮の父の黒沢恭二です。」

面談が始まった。保育園での蓮の様子、自宅での蓮の様子などの情報交換が行われる。

原田「おこさんは家ではどのように過ごされていますか?」

恭二「そうですね。基本的に私は何もやらないっすねー。集英社のバトル漫画みたいな感じで育ててます。危険な荒野に今は連を放って成長するのを見守っている段階ですねー。

あの漫画でキョッコロがまゴハンを野に放ったのをキョッコロが上から見ていたでしょ。

あの感じですね。今は・・・」

原田先生は戸惑った・・・家の連君の様子を聞いているのだ・・・しかもバトル漫画・・・キョッコロ、マゴハン・・・日本語じゃない言葉まで混ざっている。訳が分からない。

原田先生「(この方は、どんな家庭で、何を育てているのだろう......子供......でいいんだよね。)

原田「はぁ・・・」

その後も恭二は話を続けている。

恭二「あの漫画のあのシーンは師匠と弟子という感じを出しつつ最初は厳しいが、子供を育てるというのは子育て理論においてはとても参考になる・・・」

漫画の子育てを学問的に子育ての専門用語と結び付けて発言している・・・意味が分からなかった。

だけど原田先生は、こう答えるしかないので、答えた。

原田「わかりました。今日はお忙しい中、ありがとうございました。」

恭二「どうも。ありがとうございましたー。」

恭二は普通のテンションでその椅子から立ち上がり、1階へ降りた。

蓮「パパー。」

蓮が笑顔で近寄ってくる。父親としてはこの瞬間が一番うれしいものだ。

恭二「おう。じゃあ帰るぞー。」

恭二は金髪なので目立つ、ハイタッチしてくる子供もいる。笑顔でハイタッチを返す恭二。

恭二と蓮は、保育園を出て行った。

原田先生は他の先生と話す。

原田先生「キョッコロとマゴハンって何ですか?私知らないんですけど・・・」

最近は漫画も多くて移り変わりが激しい、しかも若い。知らなくて当然だ。

その後の原田先生の話を聞いてほかの保育士が困惑しているとは気づかず、連と恭二は家路を急いだ。





まどかは朝の出来事に戸惑いながらも、『受験生』、『優等生』として学校を過ごした。

そして終業のチャイムが鳴り、昇降口から学校を出る。

周りにまばらに学生がいる、笑顔で話す男子学生の集団、カップルで手をつないでいる学生、校庭、

校舎・・・・あれっ突然・・・・目の前が・・・暗く・・・・耳から声が聞こえた・・・



・・・・君は学校では「優等生」、家では「いい娘」、それぞれの場所で距離感を考えて何かを演じなければならないんだね。お父さん誕生日・・・祝ってくれた?・・・・今お母さんから・・・愛情感じてる?・・・・君は誰・・・・一体本当の君は・・・



           ・・・・・どこに・・・・いるんだい・・・?

           ・・・・・本当に・・・・君が必要なのは・・・・



はっ!!視界が戻る。見慣れた住宅街、交差点の信号がチカチカ瞬いていた。いつもの帰り道だ。いつの風景だ。いつもの帰り道だ。ちゃんと歩いている。

右手を見た。握ってみたり開いてみたりした、ちゃんと動けている。なんだ今の?まどかは気が付いた。

これは、



       ・・・・・私の心が・・・悲鳴を上げているんだ・・・・

いきなりその場に胸を押さえて倒れこんだ・・・目からは涙が・・そして頭に浮かんだのはなぜか・・

          ・・・あの・・・・金髪頭・・・・・

まどか「ねえ。助けて恭二・・・私・・・壊れちゃいそうだよ・・・・」

そのまま立った。右手の袖で涙を拭いた。涙をぬぐったその瞬間、なぜか体が動いていた。

それは、二人が・・・初めて心を交わしたと感じる場所・・・



まどか「私、白石まどかといいます。結菜さんにあなたに勉強を教えてもらえると聞いてきました。

あなたが恭二さんですか?」

恭二「そうだよ。ここは俺の家だからな。俺以外に誰がいんの?」



そんな言葉が頭に浮かんだ。浮かんだ・・・走っている・・・体が勝手に・・・・

あの白い家に向かって・・・・向かって・・・そしてまた景色が変わる・・・

なにこれ・・・小さい頃の私が見える・・・何?

    小さい頃のまどか「ねえ。私・・・こころ・・・・」

          



              からっぽだよ







はっ!!なんだこれ!!まただ。私の心が求めている。恭二・・・恭二・・・恭二・・・・。

どんどん走って行っていた。走り出した心臓の鼓動がする

          「どくん」「どくん」「どくん」

だんだん早くなる。早くなるごとに空白の心が埋まっていく気がした。

まどかは必死で恭二のもとに走っていた。自分の中の心の空白を必死で埋めているようだった。





恭二は、幼稚園の宇宙個人面談を終え、連と手をつないで歩いていた。

しかし蓮はあまり手をつなごうとしないのだ。手を振りほどいては、恭二から去っていく。

恭二「あぶねーぞ。車に気をつけろよ。」

そういうと交差点の前で立ち止まり蓮はに買って笑う。

親として心配する気持ちはありながらも子供の笑顔は温かい。このやり取りが恭二は好きなのだ。

蓮は交差点の前で止まっていた。恭二は追いかけるようにして歩いてそちらに向かう。

すると・・・急に・・・女の子が・・・女子高生が・・・息を切らしてあらわれた。

まどか「はあっ・・・はあっ・・・はあっ・・・・」

すごい息を切らしている、しかもなぜか涙が頬から流れた跡が見える・・俯いている・・・

なんだか寂しげに見えた。でも宇宙人恭二はそんなのは気が付かない。普通に尋ねた。

恭二「おおっ。白石まどかじゃねえか。どうしたんだ。ずいぶん息切らして・・・大丈夫か?」

蓮「まどかおねえちゃんだ。」

まどかはとりあえず呼吸を整える事に集中する・・・そしてそれと同時に自分の心の中の寂しさにも向き合う。そして恭二と蓮の声が耳の中に入り脳をこだまする・・・

ああ。この暖かい声・・・私の求めていたのは・・・・・

・・・・・・・・これなんだ。お父さん。お母さん・・・・・・・・・・・

まどかは求めていた。暖かい家族の絆を、向き合ってくれる心をそれが目の前にある。

まどかは膝をついたそれと同時に上半身から崩れ落ちそうなので手をついた。

土下座をしているようだった。

恭二は戸惑う。目の前の女子高生が制服で土下座をしているような形になっている。

訳が分からない。

恭二「どうした!!大丈夫か!!」

恭二も膝をつき、同じ目線になりまどかに話しかける。蓮も心配そうに見ている。

まどか「お父さん・・・誕生日いつもしてくれないの・・・」

何やら話している。恭二は黙って聞いていた。

まどか「おかあさんはいつもほかの娘のことばっか話してテストの点数の話しかしないの・・・、

学校でも笑顔でいなきゃいけないの・・・先生のいうことも聞かないといけないの・・・

SNSでもいいねの数を競い合って・・・可愛い娘演じて・・・なんだか・・・」

そのあとまどかのほほからまた涙が流れた。

まどか「私・・・すごい・・・空っぽなの・・・」

恭二は戸惑った。土下座のような形で泣いている女子高生がしかもそこから寂しさがあふれ出している。

だが恭二はやはり宇宙人だ。そのまま。あっけらかんと答えた。

恭二「泣きたいときは、いっぱい泣けばいいさ。笑いたいとき笑いたいだけわらって、泣きたいときに泣きたいだけ泣いて、怒りたいときは散々起こって喧嘩したり、楽しい時は精一杯楽しむ。そしてそれがおわったらまた動き出せばいいさ。」

一呼吸おいて恭二はいった。それを頭を上げながらまどかは見ながら聞いた。

恭二「それが家族ってもんで・・・人間ってもんじゃねえのか。」

まどかはそのまま恭二の膝にしがみついた。

しがみつきながら嗚咽を漏らして泣いた。・・・泣いた・・・・泣いた・・・・。

時間がたったらまどかは泣き止んだ。恭二は手を差し伸べた。

恭二「大丈夫か?おら立てよ。」

ぶっきらぼうだ。でもなんだか暖かい手のぬくもり・・・これが私欲しかったの・・・

そのまままどかは恭二の胸に飛び込んだ・・・・

まどか「少し・・・少し・・・こうさせて・・・・・」

恭二は戸惑った。少しだけ抱きしめた。

まどか「(ああ。私の求めていたぬくもりだ・・・暖かい・・・)」

何秒間だろう・・・何分間だろうこの時間は・・・

数字では表せない時間が流れた・・・とても暖かい・・・。

恭二「大丈夫か。おい。」

恭二はそっと両肩を置いてまどかを離した。少し倒れそうだ。

恭二「しっかり立てるか?」

まどかは静かにうなずく。

恭二「ほらよ」何かまどかは渡される、ハンカチだ。

恭二「それで涙でも吹けよ。」

まどかは涙を拭いた。よく見るとカレーのしみがついている。恭二らしい。

まどか「何よこれ。きたないじゃない。」まどかは少し笑顔になった。

恭二「帰るぞ」蓮の手を引いて恭二は歩きだしたそして・・・・

恭二「お前もだ・・・まどか・・・今日はうちに帰ろう・・・家事手伝ってくれるか・・・」

まどかはすっきりした顔で笑顔でうなずいて恭二についていった。

その笑顔はまどかが学校でも家でも見せない本物の笑顔だった。


あとがき

【まどかと恭二のドキドキ急展開】

恭二「おいっ!!」

まどか「ねえっ」

鏡恭二「はい?」

まどか「話急展開すぎません??なんで私がこんな40代金髪男の胸に抱かれているんですか?」

恭二「それはこっちのセリフだーーー。」

鏡恭二「・・・・・・なんでだろ・・・・」

まどか・恭二「なんだそれはー!!」

まどか「しかも私の頭の中から声が聞こえてきてるし!!なにこれ?」

キョッコロ「それは私だ。私が超能力で、君の頭の中に思念を送っておいた・・・

君はこれからパワーアップする。」



まどか「えっ・・・・なに・・・この力は・・・もしかして------

うおおおおっこらなら倒せるぞー!!」

恭二「方向性変わってきてねえか?誰を倒すんだよ。」

蓮「キョッコロさん・・僕に格闘術を教えてください!!」

恭二「は?」

キョッコロ「よしいいだろう。まずはここの荒野で生き延びるんだ。」

恭二「話が変わるしこの物語が終わるからやめろー!!作者も止めやがれ!!」

鏡恭二「すいません・・・」

まどか「ってなわけで今回は急展開でしたね。なんと・・・私が・・恭二さんの胸に・・・

そして次回は恭二さんの家に・・・フフフ・・・これからどうなっちゃうのかしら・・・

だけどなんだか・・・あったかい・・・

なんだろこの気持ち・・・みんな教えてくれる?

次回も『名前を決めて-この気持ちに-』よろしくね。」

    
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