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奴隷
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この世界で奴隷は当たり前に存在している。金持ちと言われるような人間は奴隷を所有していて当たり前。
だが、俺にそこまでお金の余裕はない。やっと二人目のお客さんを見つけたぐらいなのに、他の生物を養っていけるほどの経済力はない。
なので、奴隷と接点を持つこともないと思っていた。
―――――――――
サナのデートプランを頭で考えながら街を歩いていた。
こういう風に街を歩くと視線には慣れたし、適度に外の空気を入れるのは大事だ。ずっと部屋の中で考え事をしていても、良いアイデアはあんまり思い浮かばないものだ。
「少しでも良い噂を流してもらうには、最高の体験をしてもらうのが大事だ」
自分が金持ちになる未来には大事なこと。ここでサナに最高の体験をしてもらい、広告塔の役割も担ってもらい、お客を運んできてもらわなくてはならない。
そんなことを考えながら歩いていると、なぜかふと路地裏の方に視線が向いた。普段だったら気にすることもなかったかもしれないが、今日はなぜか足が向いてたので、路地裏に行くことにした。
路地裏に行くとそこには泥だらけかつ、服もほとんど着ていないエルフが倒れていた。そしてエルフには首輪らしきものが付いている。
奴隷というのは所有者が分かるように首輪に名前が書かれているものだ。となるとこのエルフは誰かの奴隷である可能性が極めて高い。誰かの奴隷に手を付ける気も盗む気もない。なぜなら、後々面倒くさいことになりかねない。
エルフの横を通過して歩こうとしたところで、誰かに足首を掴まれた。足を見なくても誰が掴んできたのかは分かる。
「なに?」
その問いに対してエルフは今にも消え入りそうな声で呟き始めた。
「…た、たすぅ…けぇて…」
「なぜ助けなければいけない。お前を助けて、俺にメリットが何かしらあるのか?」
「…た…す……け」
「俺はメリットを提示しろと言っているんだが」
ここでこいつを助けたとしても意味はない。逆に変に助ければ争いの火種になってしまう可能性が極めて高い。その影響で俺の事業が出来なくなるなんてことになったら、俺は助ける選択肢を取ったことを一生後悔するだろう。
であればここで俺が取るべき手段は決まっている。
「急いでいるんだ。掴むのを止めてくれ」
「た……け……てぇ」
「いい加減、掴むのを止めて欲しいんだがな」
そろそろ振り払ってもいいような状況だ。
人としてそんなことをして良いのかと思うかもしれないが、この世界の常識として奴隷はあくまで家畜と同類なのだ。俺も昔の世界の価値観は多少なり残っているものの、俺は別に正義を掲げて生きているわけではない。
「俺の気はそこまで長くないとだけ言っておく」
「…た…けて…」
「はぁ…いつまで経っても離す気はないということか」
引き剥がすために力を入れようとしたタイミングでフラッシュバックした。
死んだことの記憶が主で、あっちの世界で生活していた記憶は薄かった。その薄かった記憶が少しだけ晴れてきた。
こんな感覚は生まれて初めてのことでさすがに戸惑っていると、その間も奴隷は「たすけて」とか細い声で呟いている。
「助けて欲しいのか?」
「…た…た…す……て」
「はぁ…波風を立てるような真似はしたくないんだがな」
俺は腰を落として、なるべく奴隷の奴と目線を近づけることにした。
「こんな面倒事を引き受けることになるのであれば、昔の記憶なんて思い出さなければよかったな」
奴隷のエルフの頭をなるべく優しく撫でる。
「…た…すけ…て」
「……ああ、今回だけだ」
冷静に考えれば見捨てればいい。俺はこいつの親でもなければ、友人でもない。ただ通りかかった男だ。
正義を愛しているわけでも、悪役を愛しているわけでもない。助けようとも襲おうとも思わない。今までの俺であれば絶対に見捨てて、関わらないようにしたのに…変な記憶を思い出した所為で。
それから俺はなるべく一目に付かないようなルートを使って、奴隷を運ぶことにした。運ぶ方法としておんぶを取ることにしたのは、奴隷が歩いていける程の体力がなさそうなのと、あんまりこいつと一緒にいるところを見られるわけにいかないというのもあった。
「この選択を後で後悔するのかもしれないな」
だが、俺にそこまでお金の余裕はない。やっと二人目のお客さんを見つけたぐらいなのに、他の生物を養っていけるほどの経済力はない。
なので、奴隷と接点を持つこともないと思っていた。
―――――――――
サナのデートプランを頭で考えながら街を歩いていた。
こういう風に街を歩くと視線には慣れたし、適度に外の空気を入れるのは大事だ。ずっと部屋の中で考え事をしていても、良いアイデアはあんまり思い浮かばないものだ。
「少しでも良い噂を流してもらうには、最高の体験をしてもらうのが大事だ」
自分が金持ちになる未来には大事なこと。ここでサナに最高の体験をしてもらい、広告塔の役割も担ってもらい、お客を運んできてもらわなくてはならない。
そんなことを考えながら歩いていると、なぜかふと路地裏の方に視線が向いた。普段だったら気にすることもなかったかもしれないが、今日はなぜか足が向いてたので、路地裏に行くことにした。
路地裏に行くとそこには泥だらけかつ、服もほとんど着ていないエルフが倒れていた。そしてエルフには首輪らしきものが付いている。
奴隷というのは所有者が分かるように首輪に名前が書かれているものだ。となるとこのエルフは誰かの奴隷である可能性が極めて高い。誰かの奴隷に手を付ける気も盗む気もない。なぜなら、後々面倒くさいことになりかねない。
エルフの横を通過して歩こうとしたところで、誰かに足首を掴まれた。足を見なくても誰が掴んできたのかは分かる。
「なに?」
その問いに対してエルフは今にも消え入りそうな声で呟き始めた。
「…た、たすぅ…けぇて…」
「なぜ助けなければいけない。お前を助けて、俺にメリットが何かしらあるのか?」
「…た…す……け」
「俺はメリットを提示しろと言っているんだが」
ここでこいつを助けたとしても意味はない。逆に変に助ければ争いの火種になってしまう可能性が極めて高い。その影響で俺の事業が出来なくなるなんてことになったら、俺は助ける選択肢を取ったことを一生後悔するだろう。
であればここで俺が取るべき手段は決まっている。
「急いでいるんだ。掴むのを止めてくれ」
「た……け……てぇ」
「いい加減、掴むのを止めて欲しいんだがな」
そろそろ振り払ってもいいような状況だ。
人としてそんなことをして良いのかと思うかもしれないが、この世界の常識として奴隷はあくまで家畜と同類なのだ。俺も昔の世界の価値観は多少なり残っているものの、俺は別に正義を掲げて生きているわけではない。
「俺の気はそこまで長くないとだけ言っておく」
「…た…けて…」
「はぁ…いつまで経っても離す気はないということか」
引き剥がすために力を入れようとしたタイミングでフラッシュバックした。
死んだことの記憶が主で、あっちの世界で生活していた記憶は薄かった。その薄かった記憶が少しだけ晴れてきた。
こんな感覚は生まれて初めてのことでさすがに戸惑っていると、その間も奴隷は「たすけて」とか細い声で呟いている。
「助けて欲しいのか?」
「…た…た…す……て」
「はぁ…波風を立てるような真似はしたくないんだがな」
俺は腰を落として、なるべく奴隷の奴と目線を近づけることにした。
「こんな面倒事を引き受けることになるのであれば、昔の記憶なんて思い出さなければよかったな」
奴隷のエルフの頭をなるべく優しく撫でる。
「…た…すけ…て」
「……ああ、今回だけだ」
冷静に考えれば見捨てればいい。俺はこいつの親でもなければ、友人でもない。ただ通りかかった男だ。
正義を愛しているわけでも、悪役を愛しているわけでもない。助けようとも襲おうとも思わない。今までの俺であれば絶対に見捨てて、関わらないようにしたのに…変な記憶を思い出した所為で。
それから俺はなるべく一目に付かないようなルートを使って、奴隷を運ぶことにした。運ぶ方法としておんぶを取ることにしたのは、奴隷が歩いていける程の体力がなさそうなのと、あんまりこいつと一緒にいるところを見られるわけにいかないというのもあった。
「この選択を後で後悔するのかもしれないな」
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