異世界冒険譚

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冒険の始まり!

5話 再会

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    治療所は日本でいう地元の診療所みたいなものらしい。しかし中身は全くの別物だった。

    白衣を着た壮年の男の人が志摩さんの傷を見るやいなや、何やら呪文のようなものを唱え始めた。すると音もなく傷が癒えていくのである。

    傷口が塞がろうとも、開いた口は塞がらない。志摩さんも口をあんぐり開けてきれいに治った両腕を眺めている。

    それを見たキャロルさんが笑いながら説明してくれた。

「やっぱり異世界人は魔法を見たことがないのね。治癒魔法は体の構造を詳しく知っていないとうまく治せないの。ここまできれいに治せる人はあまりいないのよ」

    なるほど…ただ呪文を唱えれば良いというわけでもないのか…。それなら魔法がある世界でも医者は職業としてやっていけるな。

    1人で納得していると、いつのまにか眼鏡のことに話題が移っていた。

    しかし、眼鏡は大量生産をする技術がまだないらしく、それなりに高価なもののようだ。キャロルさんも手持ちでは払えないらしい。異世界人であってもそこは商売として譲りがたいとのこと。

    仕方がないので礼を言って治療所を出た。せっかく異世界に来たというのにはっきりとものが見えないのは悔しい。もやもやした気分のまま、次に向かうはギルドだ。



    この国のギルドはトルベックという首都に本部があるらしい。フィオリのギルドはさしずめ支部といったところか。

    入口は常に扉が解放されていた。中に入ると広いスペースがあって、得物を引っ提げた冒険者らしき人々が談笑している。奥にはカウンターがあり、そこにいる受付のお兄さんにキャロルさんが話し掛けた。やはり日本語ではなかったが、おそらく僕たちのことだろうと推測は出来た。

    一言、二言話すとキャロルさんはこちらを向いて何やら話し始めたが、何を言っているのかさっぱり理解出来ない。彼女は一瞬あっという顔をして鞄から何かを取り出した。

「これ、しばらく貸してあげる!翻訳の魔石っていって、これの魔力が届く範囲にいれば外国語が母国語に聞こえるのよ」

    それは緑色で小石くらいのサイズの球体だった。

    キャロルさんの鞄にはデリケートな仕事道具が入っているらしく、保護のために魔力をシャットアウトできる生地で出来ているそうだ。それにしても翻訳の魔石なんて便利なものがあるのか。本当になんでもありだな。

「さて、これからあなたたちは一旦ギルドで保護される形になるわ。私はお店に戻るわね。自由に行動出来るようになったら是非いらっしゃい。見せたいものもあるから!」

    そう言うと彼女は外に歩いていってしまった。振り返ると職員のお兄さんがこちらへどうぞと言っている。元の世界に帰るには時間がかかるのだろうか。



    カウンター脇の階段を登り、廊下を進んだ先の部屋に僕たちは案内された。

    中に入ると木で出来た床と天井に石の壁、窓が1つのこぢんまりとした部屋に、テーブル1つとソファが2つある。片方には崇一郎と三戸さんが座っていて、こちらに気が付くと驚いた顔をした。

    三戸さんは志摩さんに泣いて抱きついてきた。僕も崇一郎に抱きつこうとしたらぶん殴られた。彼らも保護されていたと分かり、一先ず安心だ。

    皆が落ち着いた頃、お知り合いですか?と聞かれたのでそうだと答えると、お兄さんは僕らをもう片方のソファに座らせてお茶を注いでくれた。ほうじ茶みたいな味がする。

わたくし、ギルド受付係兼異世界人対応係のマテュー・セガラです」

    そう言って話し始めたマテューさんも翻訳の魔石を持っていて、ブローチのように襟元に着けている。異世界においてこれは必需品だな。

「早速ですが、これからしばらくの生活について説明させていただきますね」

「あの、元の世界にはいつ帰れるんです?」

    被せるようで悪いと思ったが、まずそこをはっきりさせておきたかった。

「…端的に申し上げますと、あなた方が元の世界に帰る方法は…現状見つかっておりません。ですが…同じ世界から多くの方が来られているので、道を繋ぐことは不可能ではないと言われております」

    帰る方法は見つかっていない。言葉を選ぶようにそう言われて、少しドキッとした。

    今まで気付かないふりをして非日常を楽しんでいたが、実際にそう言われてしまうと急に不安になってきた。親は今頃探しているだろうか。学校は?出席日数だってあるし…。どうしようか…?

    他の皆も、帰る方法は少なからずあるだろうと期待はしていたようで困惑している。

    そんな僕らをよそにお兄さんは事務的に説明を続けていく。
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