異世界冒険譚

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冒険の始まり!

8話 志摩さんの思い

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    お店の奥の部屋は鍛冶をするための部屋のようだ。炉や金床、ハンマーなど色々ある。キャロルさんのお父さんは今はいないようだ。さらに奥の扉を開けると裏庭だった。



「じゃ、始めよっか」

    そう言ってキャロルさんは木剣を構える。裏庭の真ん中にキャロルさん、向かい合うように僕と志摩さん。その他は建物の壁際で見守っている。

    僕が選んだのは短剣だ。昔、体育で剣道をやったとき竹刀が重くて全然振れなかったのを思い出し、一番軽そうなのにした。志摩さんは槍だ。どちらも木で出来ている。

「ギルドの試験では実戦のように自由に戦って頂き、審判役の試験官が内容を評価します」

    マテューさんが説明を入れる。今回は彼が審判をやるようだ。

「やめ、と言われるまでやるんだよ。先手は譲ってあげるから2人でかかってきなさい!」

    そう言ってキャロルさんは木剣を上段に構え直す。攻撃的な構えだ。志摩さんは槍を固く握りしめており、僕はというとだらりと両手を下げ、自然体だ。構えとか分からないしね。

    マテューさんが右手を高くあげ、

「それでは…始め!」

試合開始を宣言した。



    その合図と同時に、僕は棒立ちのまま右手の短剣をおもいっきりアンダースローで投げつけた。

「!?」

    間一髪で木剣を使いはたき落としたキャロルさん。よろけた隙に一気に距離を詰め、下段、中段と2発左で蹴りを放つ。

    下段はステップで避け、中段は剣でガードしつつ後ろへ下がるキャロルさん。そういえば足が速くなっている理由も聞かなきゃな。そう思いながら落ちている短剣を回収した。

    志摩さんも素早くキャロルさんの隣に回り込み、僕に反撃しようとした彼女に向かって槍を突き出す。がむしゃらに出しただけの攻撃は全部躱されるが、リーチの差でカウンターは食らわない。



「優莉ちゃんも郷くんもなんであんなに速く動けるの…!?」

    驚愕する三戸さんに再びマテューさんが説明をする。

「人の体に眠る魔力は魔法を使うためだけのものではありません。魔力はそのまま持ち主の体力にも直結します。そして、鍛えることでその保有量を増やすことが出来るのです」

    戦いながら聞いていたが、そういうことか。心なしかパワーも上がっている気がする。…でも魔力を使うのは始めてだぞ?例えて言うならレベル1でこの速さということか?

    考えている間に一発食らってしまった。だが全く痛くない。衝撃を感じるだけだ。

    一旦距離を取り、お互い最初の立ち位置に戻る。そのとき、同じことを考えていた崇一郎が何かに気が付いたらしい。

「もしかしたら…地球にも魔力はあるのかもしれない。ここと条件が違うから発動しないだけで」

    お前、天才か?そういえば天才だったわ。じゃあ小さい頃から使い道のない魔力を体育とかで鍛えていたわけか。バスで行けるのに敢えて歩いて下校していた帰宅部の僕はスタミナも上がっているかもしれない。



「2人ともやるじゃん!それならこれはどう?」

    笑いながらそう言い放ち、キャロルさんは真っ直ぐ突っ込んできた。僕は右に、志摩さんは左に躱した、筈だったが。

    何故かどちらも攻撃を食らっていた。状況が読み込めないでいると、僕の方へ上段切りが来たので短剣を振り上げて合わせると胴が切られている。速すぎて見えないのだ。そう気付いたときにはさらに3回ほど切られていた。

    とどめと言わんばかりに剣を振りかぶるキャロルさんの前に志摩さんが立ちはだかった。その隙に逃げるが、志摩さんを跳ね除けこちらに向かってきた。

    また切られる、と思ったそのとき、再び志摩さんが槍をぶつけてそれを防ぐ。

「何やってるんだ?わざわざ危ないとこに突っ込んでこなくても!」

    そう叫ぶと、槍で剣を押さえ込みながら志摩さんが小さい声で呟いた。

「…私のせいで帰れなくなっちゃったんだ…。私が…皆を守れるようにならないと」

    剣をくるっと回して槍を躱し、僕らの2人の間に割って入るキャロルさん。そのまま剣を横に振りかぶって…

「やめ!」

僕らに当たる直前で止まった。

    僕は志摩さんにどう声をかければ良いか分からなかった。
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