異世界冒険譚

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冒険の始まり!

10話 商店通りにて①

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「頑張ってますねぇ。皆さんなら試験なんて余裕ですよ」

    今日も今日とて闘技場で特訓している僕らに話しかけているのは、ギルド職員のニネット・ブリオンさんだ。

    彼女は受付嬢と試験官を掛け持ちしており、僕らに武器の使い方を教えてくれた。

「試験は今週末ですからね。もっと強くならないとなぁ…」

    そう言う志摩さんだが、練習の打ち込みようが僕らの比ではない。おそらく現状で一番強い。

    一度やると決めたことはとことん極めるタイプなのは前からだが、そこまで頑張る理由を唯一知っている僕はなんとも複雑な気分だ。



    ギルドの冒険者認定試験は毎月14日と28日に行われる。小さい街なので受験者はそう多くなく、実施されないことが殆どだ。

    今日は6月12日。14日の試験に落ちた場合は24日にも受けることは可能だが、ギルドで保護される期限を鑑みるとラストチャンスになる。出来ることなら14日で合格したい。



「とはいえ無理は禁物ですよ。試験が明後日ですから、今日はもう切り上げて魔力を回復させるべきです」

    そう言いながら金髪ボブの毛先を指でくるくるするニネットさん。

    そう、この魔力なのだが使うとそれなりに疲れる。鍛えれば量が増えると前に説明したが、筋トレと同じで休息も必要なのだ。

「あ、そうだ!つい先ほど皆さんの身分証が正式に発行されたんです。それに伴い給付金も支給されます。ギルドに戻ったらお渡ししますね」

    そう言って一足先にギルドへ戻っていくニネットさん。

    仮の身分証はもう持っているが、ちゃんとしたカードに印字されるには少し時間がかかるのだ。

    また、異世界人にはギルドの保護がなくても1ヶ月暮らせる程度のお金が与えられる。

    至れり尽くせりだと思ってしまうが、逆に言うとそれしかしてもらえないということだ。あとは自分で何とかするしかない。



    ギルドに戻った後、身分証やらお金やらを貰った僕たちは晴れて異世界の住人になった。

    ニネットさんのお墨付きで合格はほぼ確実と言われた僕らは、今日明日は体を休めることにした。

    それでも魔導書を読み漁ろうとする志摩さんを半ば強引に外へ連れ出し、現在4人は商店通りにいる。特に彼女には息抜きをしてもらわなければならないのだ。



    通りはそれなりに賑わっていた。

「へえ…見たこともない食べ物があるな」

    崇一郎が見ているのは真っ青で桃みたいな形の木の実だ。

「あ、あの服かわいい!」

    三戸さんは服屋を覗いている。ギルドで借りているこの世界の服があるが、ここで新たに買ってもいいだろう。僕?学ランを着てますけど何か?

「貰ったお金もう使っちゃうの…?」

    志摩さんが今後のことを気にする。

「使う金額は決めてるから大丈夫だよ。明後日の試験に受かればすぐ稼げるようになるし」

    そう答えたが、絶対に受かるかと言われたらそれは分からない。でもそうとでも言わなきゃ志摩さんはついて来なかっただろうからなあ。

    ちなみにこの国は金本位制だ。主に金貨、銀貨、銅貨の3種類が存在し、大金貨、小金貨といった感じでそれぞれ区別がある。小銅貨10枚で大銅貨1枚分、大銅貨10枚で小銀貨1枚分…というように10倍ずつ価値が上がっていく仕組みだ。金貨の上に白金貨なんてものもあるらしいが、滅多にお目にかかれない。

    僕らがそれぞれ貰った給付金は大金貨2枚分である。



    …おや?



    突然、待てー!という叫び声がしたのでそちらを向くと、薄汚れた赤っぽいフードを深く被った人がこちらに走ってきた。

    その後ろから追いかけてくるのはいかにも兵隊といった感じの鎧を身に付けた男だった。あの人は見たことがある。街の警備員だったはずだ。

    よく見ればフードの人は右手にナイフを持っているではないか!

    辺り一帯はパニックに陥り、皆思い思いの方向に逃げていく。

「なっ…!」

    僕も人波に流されながらフードから逃れ、あわてて店と店の間の路地に駆け込んだ。

    隣には肩で息をしている三戸さん。どうやら無事だったみたいだ。

    ところが残りの2人が見当たらない。まさかはぐれたか…!

    外ではフードの人と警備の人が争っている。しばらくはここから出られそうにない。
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