異世界冒険譚

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冒険の始まり!

11話 商店通りにて②

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    赤いフードの人は通りを縦横無尽に飛び回りながら、魔法の炎を辺り一面に放った。

    でたらめに撃っているように見えて屋台など燃えそうなものには当たらず、石畳だけを焦がしていく。

    こちらに被害はないが、建物の隙間からどうにも動けない。あいつは何者だ?何のためにこんなことを?志摩さんと崇一郎は無事か?

「三戸さん、大丈夫?」

    ふと隣を見ると、三戸さんが体育座りでうずくまっていた。

「なにこれ…怖い…嫌だよ。やっぱり冒険者になんてなりたくない。元の世界に帰りたいよ…!」

    炎のぱちぱちといった音や熱風がすぐそこまで迫ってきている。魔法が近くに落ちたようだ。

「奥へ逃げよう」

    そう声をかけたが、三戸さんは話を聞いてくれない。

「もう嫌!なんで皆そんなに冒険者になりたがるの…?死ぬかもしれないのに!明後日の試験は受けない…!」

    炎はすぐそこまで迫ってきている。よく考えれば奥に逃げたところで行き止まりだ。



    こんなときに三戸さんには何て言えば良いのだろう。志摩さんのときもそうだし、元の世界でもそうだった。僕はいつも見ているだけで何も出来ていない。

    元々冒険者になることを嫌がっていたのだ。目の前で命の危機を感じたらこうなるのも仕方がないのかもしれないが。

    …確かに僕はなぜこんなにも冒険者になりたいのだろう。金を稼ぐため?生きるため?違う。崇一郎は元の世界に帰るためと言っていたが、それだけか?何か違う気がする。志摩さんはなぜ冒険者になろうとしたんだっけ。

    …志摩さん…か。

「志摩さんは…皆を早く元の世界に戻すことが出来るようになるために…、冒険者になるそうだ」

    三戸さんが初めて顔を上げた。

「この世界に来ることになった一因として責任を感じているらしい。だからあんなに頑張ってるんだ」

    これを話しても良かったのだろうか?

「でも僕は志摩さんを恨んでもいないし、責任を感じる必要もないと思ってる」

    分からない。何が正しいのか分からないが、とにかく今の気持ちを伝えようと思った。

「冒険者になるのにそんな責任はいらない。なるなら文字通り冒険がしたい!こんな機会滅多にないんだから!いつものメンバー、僕ら4人でこの不思議な世界を…」

    それ以降は何を言っているのか自分でも理解不能だった。冒険者になりたくない人に言う言葉ではないと思った。でもどこでだって4人でいたい。この世界を楽しみたい。そういうわがままな本音は言うだけ言った。

    僕が冒険者になる理由。それは純粋にこの世界を冒険してみたかったからなんだ。

    今までは勉強漬けで思いっきり遊べなかったし。

    元の世界に帰らないといけないとか、そんな大義名分は一旦置いといてさ。

    皆でいろんな所へ行ってみたい。



    通りの炎は依然として燃え盛っている。



「【どしゃ降りの雨】」

    そう唱えたのは三戸さんだった。

    すぐさまこの辺の上空にだけ紫色の雲にも似たもやが現れ、雨が商店通りに降り注ぐ。

「三戸さん!?」

「…怖いのは嫌!でも私も皆と一緒にいたいよ!!」

    彼女が言葉を発する度に雨が強くなっていく。…いや強すぎないか?バケツをひっくり返したような豪雨は僕らをずぶ濡れにし、炎をたちまちのうちに消してしまった。

「…うん、分かった!それなら三戸さんが危険な目に遭ったら俺が守ってやるよ!」

    やば。無意識のうちにギザ過ぎる台詞を叫んでしまった。

    言っといて勝手に恥ずかしくなっていると、三戸さんは一瞬きょとんとしてから

「え…あ、本当?…うん、信じてついていくわよ…?」

    そうぼそぼそ呟いた後、気を失ってしまった。

    雨は少しづつ止んでいった。



    次に三戸さんが目を覚ましたのは翌日の朝、ギルドの借りている部屋のベッドの上である。

    志摩さんと崇一郎は反対側の路地裏に避難していたようで、すんなり会えた。

    フードの人は行方をくらました。マテューさんもニネットさんもそのような人物は聞いたことがないと答えた。

    そして三戸さんが気絶したのは、普通はあり得ないような量の魔力を一気に使ったからだそうだ。火事場のなんとやらである。実際燃えていたし。



    現在、僕は三戸さんの部屋に2人きりでいる。後の2人は何か食べられるものを探しに下の階へ降りていった。確かに三戸さんは半日以上何も口にしていないからね。

「結局何も買えなかったわね」

    三戸さんがそう言う。

「え?ああ…そうだな。服、見てたもんね。また今度行こうよ」

    彼女はこくりと頷く。


    しばらくの沈黙。


「明日、ギルドの試験だけど…」

    ベッドのそばにあった椅子に座りそう尋ねてみると、三戸さんは少し考えてから小さな声で、しかしはっきりと皆で受けようと言った。



「私を…守ってくれるんだよね?」
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