異世界冒険譚

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冒険の始まり!

13話 ペトロネラ・フォン・リッベントロップ。名前めっちゃ長いな

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    実技試験の相手はライマルという金髪でマッチョな冒険者の人だった。

    この試験官という役職は、どうやらギルドのクエストとして一般冒険者から募っているらしい。

    もちろんこのクエストを受けられるのはある程度手練れの人に限られる。

    冒険者の中にもランク分けがあり、ライマルさんは小銀級だ。

    小銀級の上は大銀級、さらに上は小金級。名前自体は貨幣のそれと同じだ。僕らが冒険者になったら、始めは小銅級からということになる。



    試験は僕と茶髪の子からやることになった。

「ペトロネラ・フォン・リッベントロップだよ。ペトロって呼んでね」

    茶髪の子はペトロというらしい。本名長いな。覚えるのに苦労しそうだ。

「郷 夕樹だ。郷が名字で夕樹が名前。よろしくね」

    挨拶も早々に、僕らはフィールドの中央に立つ。

    ライマルさんは木剣を両手でしっかりと持ち、見た目とは裏腹に丁寧な構えをする。

    ペトロさんも木剣だ。ライマルさんのものより一回り小さく、片手でも扱えるが盾は持っていない。

    僕は結局短剣にした。色々やってみたが、本番は一番使い込んだものにすることにした。

    個人的に杖とかハンマーとか好きだったけどね。



    ライマルさんを前に武器を構える僕ら。残りの皆は観客席で成り行きを見守る。

    試験官ことニネットさんが間に立ち、全ての準備が整った。

    …ときに2対1のこの構図にはすごく見覚えがある。

    僕の右手には短剣。あれ、やっちゃう?相手の意表を突くあれ。



「始め!」

    試験開始の合図がかかっても3人ともに動かない。お互いに相手の出方を見ている。

    この状況でナイフ投げをする度胸は僕にはなかった。軽くステップを踏みながら、攻撃のチャンスをうかがう。



    すると突然、ライマルさんの穏やかだった雰囲気が一変した。

    一言で表現するなら"殺気"である。

    表情は変わっていないのに、一切隙を見せないその姿に自然と足がすくんでしまう。

「いつ魔物に殺されて死ぬかも分からない世界に足を突っ込んでる、っていうのを嫌でも実感させられるわね」

    澄ました顔でペトロさんがそう言う。

「ペトロさんはよく落ち着いていられるな」

「私は冒険者にならなくちゃいけない理由があるの。だからこのくらいで怯えたりしないわ。あ、あと呼び捨てでいいわよ。堅苦しいの嫌いだし」

    冒険者にならなくてはいけない、というところだけやけに力がこもっていた気がする。どんな理由があるのだろうか…。

    そうこうしているうちにライマルさんがこちらへ走り出してきた。

「ここは連携して挑もう。ペトロは俺の後に続いてくれ」

「お?りょーかい、任せるよ」

    やはり今戦っていないかのように軽く答えるペトロ。少し不気味にも思えたが、俺はとにかく全力でやるだけだ。



    ライマルさんが剣を思いっきり振り下ろす。試験だからか避けやすい軌道で振っているのは分かったが、当たればただでは済まない威力だ。

    自分たちは斜め前方に駆け出すことで回避と同時に背後を取った。

「くらえ!」

    振り向きざまに空いている左手を前に突きだし、即座に【バルサミコ酢ビーム(仮)】をぶちかます。

「無詠唱だと!?」

    ライマルさんには屈むことで避けられてしまったが、かなり驚いているようだ。

    詠唱なしで撃てるほどにイメージがしっかりしているのは、筆記試験で崇一郎たちに弄られたことをまだ引きずっているだけなのだが…。

「今だ!」

    とにかくあのライマルさんが隙を見せた。すかさず立ち位置を交代し、ペトロが前に出て剣を振りかざす。

    ライマルさんはそれを軽くいなした後、ペトロと打ち合いになった。

    何度か刃を交えた後、彼女は後方へ下がり、替わりに俺が短剣を携えて飛び出す。しかし…

「甘いな」

    思いっきり横から凪払いをくらってしまった。

    軽く吹っ飛ばされて地面を転がるが、さほど痛みは感じない。キャロルさんのときと同様、剣が当たっても怪我をしないようになっているのだ。

「そこまで!」

    ニネットさんの合図で試験が終わってしまった。結局1回もまともに攻撃を当てることが出来なかった。



    息を整えている僕らの前に、穏やかな雰囲気に戻ったライマルさんがやってきた。

「ふむ…。ペトロネラさんは筋がいいですね。長年鍛練を積んできたことが見て分かります」

    やはり冒険者として上を目指すとなると、小さい頃から剣を振るのだろうか。

「ユーキさんは武器の扱いには慣れていないようですね…。どちらかというと素手での格闘の方が出来そうな印象がありますが」

    実はそうである。僕は中学生の頃に空手を習っていたのだ。運動音痴なので白帯のまま、高校受験を機に止めてしまったが。

    今までの練習でも蹴りを使う等徒手格闘寄りの戦いをしていたが、それをこの一戦で見極めるとは流石の一言である。

「ですが無詠唱での意表を突く魔法、交互に攻撃する作戦など冒険者としてはこれから鍛えれば十分やっていけると思いますよ」

「ありがとう…ございます」

    思い描いた戦いが出来なかったのは悔しいが、試験自体はなんとかなりそうだ。



    次はいよいよ崇一郎たちの出番である。
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