異世界冒険譚

文字の大きさ
14 / 23
冒険の始まり!

14話 謎の力

しおりを挟む
    僕は今、崇一郎、志摩さん、三戸さんの実技試験を観客席から応援している。

    前もって立てていた作戦通り、志摩さんが先陣を切り、崇一郎がそれに合わせる。三戸さんは離れたところから隙を見て魔法を飛ばしている。

「へえ、見事な連携じゃないか。数週間で仕上げたとは思えないな」

    隣に座っているペトロが称賛する。

    僕は頷き、これなら合格間違いないと思いながら、のほほんとバトルフィールドを見つめていた。

    するとやはりライマルさんは途中でスイッチを入れ、攻撃の手が激しくなる。

    崇一郎の槍を躱し、三戸さんの魔法をぶった斬り、身を翻すと志摩さんに向かって大きく袈裟斬りを放った。



「あれでも手は抜いてるよね」

    そうペトロに尋ねてみた。

「そうだね。攻撃が大振りで、受け止めるなり避けるなり対処はしやすい」

    冒険者はお遊びじゃないと伝えるために、殺気だけばりばり飛ばしてるんだと思う。彼女はそう付け加えた。



    志摩さんは一瞬怯むが、すぐに真剣な顔に戻る。

    もちろん彼女も特訓をしてきたのだ。あのような分かりやすい斬撃など、きっと盾でいなすのだろう。

    そう思っていたのだが。

    志摩さんの体が黒く光った気がした。

    次の瞬間、彼女の剣はライマルさんの袈裟斬りとは逆方向に、斜め下からものすごい力で斬り上げていたのだ。

    少し間が空いた後、爆風。

    ごうんという空気を揺する音に僕とペトロは思わず客席から立ち上がる。

    ライマルさんは小銀級。冒険者の中でも腕が立つ部類の人だ。

    力では敵うはずがないのに、志摩さんは打ち合いであっさりと競り勝ってしまったのだ。



「そ…そこまで!」

    ここで試験終了である。

    しかし誰もがしばらく動くことが出来なかった。結末が予想外過ぎたのだ。

    当の本人までもが何が起こったか理解できていない様子だ。後日問い詰めても、分からないの一点張りであった。

    あの力はいったい何だったのだろうか…。

    とにもかくにも試験はこれで全て終わりである。結果は翌日にギルド受付にて教えてもらえる。



    夜、僕は崇一郎と自分たちの部屋で今日のことを話し合っていた。

「試験、受かったかな?」

    ベッドに寝転がりながら崇一郎に聞いてみる。

「感触は良かったな。まあ明日になれば分かることだ」

    彼は椅子に座り、本を読みながらそう言った。明日になれば分かると言いつつも、自信ありげな様子だ。

「それよりも」

    崇一郎は急に立ち上がり、僕の隣のベッドまでやってきた。ボスッという音を立ててベッドに体を投げ出すと、顔だけこっちを向けて

「志摩さんのあれ、心当たりあるか?」

そう聞いてきた。

「あるわけないだろう。なんで僕に聞くんだよ?」

「彼女、最近様子がおかしいじゃないか。自分から好きこのんで戦うような柄じゃなかっただろう?夕樹、何か知ってそうだったからさ」

    それは…。僕は返答に詰まる。

「ほら。何か知っているんだろう。話せよ。あれは何なんだ?害はないのか?」

    崇一郎にしては珍しく感情的になっている。それだけ心配しているのだろうが、あの黒い光については本当に何も分からない。

「志摩さんの最近の様子は…、ごめん。僕から話していいのか分からないんだ。でも、今日のことについては本当に知らないんだ!信じてくれ」

    すると彼はしばらく黙った。

    その後に、分かった、と呟いた。

「よく考えれば志摩さん本人が分からないのに夕樹が分かるわけないよな。…すまないな」

    急に謝られても困る。志摩さんの事情は三戸さんには話しちゃったしなぁ。気まずくなった僕は、ベッドに横になって取り敢えず何か話そうとした。

「…明日冒険者になったらやることがいっぱいだよね」

「…そうだな。まあ金が稼げるようになったら生活も安定するし、異世界人探しの旅も出来るようになるだろうさ」

「先ずは隣街だな。名前何ていったっけ。さっき地図で見たばっかりなんだけど」

    …返事がない。もう寝てしまったようだ。

    よくそんなに早く寝付けるなぁと変に感心しながらロウソクを消して布団に潜り込む。

    ドタドタと転げ落ちる音がした。相変わらず寝相が絶望的に悪い男だ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

「婚約破棄された転生令嬢ですが、王城のメイド五百人に慕われるメイド長になりました。なお元婚約者は私のメイドに土下座中です」

まさき
恋愛
社畜OLとして過労死した私は、異世界の令嬢・アリア・ヴェルナーに転生した。 目が覚めたら、婚約破棄されていた。 理由は「地味で面白みがない」から。 泣く暇もなかった。翌朝、王城のメイド採用面接に向かった。 最初は鼻で笑われた。雑用係からのスタートだった。 でも——前世で叩き込まれた仕事術と、一人ひとりの話を聞く姿勢で、少しずつメイドたちが集まってきた。 厨房が変わった。リネンが変わった。王城全体が変わっていった。 そして就任スピーチで宣言した。 「500人全員の名前を、覚えます」 冷酷と噂される王太子は、静かに見ていた。 悪役令嬢は妨害を仕掛けてきた。 元婚約者は——後悔し始めていた。 婚約破棄された令嬢が、500人に慕われるメイド長になるまでの物語。 なお元婚約者は、私のメイドたちの前で土下座中です。

「お前を愛する事はない」を信じたので

あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」 お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である

megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

【完結】子爵令嬢の秘密

りまり
恋愛
私は記憶があるまま転生しました。 転生先は子爵令嬢です。 魔力もそこそこありますので記憶をもとに頑張りたいです。

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

処理中です...