異世界冒険譚

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冒険の始まり!

15話 赤フード再び

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「おめでとうございます。あなた方は全員合格でしたよ」

    ギルドの受付で、マテューさんはそう言った。

「やったね」

    三戸さんが声をかけてきたので僕は頷く。

「まあ、大丈夫だと思っていたさ」

    崇一郎はそう言っているが、嬉しそうだ。

    志摩さんは何も言わずに窓の外を見ている。

    ともかく、僕らは全員めでたく冒険者になったのだ。

    ペトロの姿はない。それもそのはず、僕らは朝起きるやいなや、ご飯も食べずに1階へ降りて来たのだ。まだギルドに訪れるような時間ではない。

    まあ彼女のことだ。きっと合格しているだろう。

「皆、おめでとう~!ここでの暮らしもそろそろ終わりかなぁ?」

    ニネットさんが朝ご飯を持ってきながらそう言ってきた。

    僕らはなるべく早く元の世界に帰る必要がある。準備が出来次第、この街を離れるつもりだ。

    一先ずキャロルさんの所で武器を調達かな。

    そんなことを考えながら食卓についた。



    その後手続き等があり、武器屋に行くのはお昼時になってしまった。

    身分証は冒険者のマークが入ったものに交換された。今までは黄緑色のカードだったが、これは淡い黄色だ。

    材質は不明だが、紙のように薄いくせに固くて丈夫だ。右上に紐を通す穴がある。

    ベルトに括り付けた上でズボンのポケットにしまっておこう。



    ギルドを出ると、目の前には真っ直ぐ大通りが伸びている。

    雑貨店や宿屋、初日にお世話になった診療所を通り抜けると、すぐそこにブローベル武具店が見えてきた。…のだが。

    そのさらに向こうの道で何かが暴れている。

「おい、夕樹。あれってフードの野郎じゃないか?」

    野郎かは知らないが、あの薄汚れた赤マントは間違いない。商店通りにいた人だ。

    またしても警備兵に追いかけられながらナイフを振るっている。

    そして前回同様、炎を放ってきた!

    唐突な出来事に驚く僕ら。

    通りにいた人々は近くの建物に慌てて避難する。

「に、逃げよう!」

「逃げるって…どこに!?」

    志摩さんがみんなを連れて逃げようとしたが、三戸さんはすでに逃げ場がないことに気付いてしまった。

    赤フードが放った炎が丁度僕らの周りに広がったのだ。



「三戸さん、この前みたいに雨降らせることは出来るか?」

    一応聞いてみたが三戸さんは首を横に振る。

    あの魔法の雨は、彼女が持つ全ての魔力を使って起こしたものだ。

    まだあれをもう1回使えるほど魔力が回復しておらず、試験でさらに消耗したのでこの作戦は期待できそうにない。

    他に水系統の魔法が使えれば良かったが、それが出来る人が僕らのなかにはいない。

    燃やすのは簡単なんだが、どうにも水を生み出すというイメージがつかない。



「どうする…。正直結構熱いんだが」

    珍しく崇一郎が焦っている。この世界に来てから崇一郎の印象が変わった気がする。ずっと冷静沈着って感じだったからな。

    そうこうしているうちに、炎の勢いはさらに強まる。大通りが広いとはいえ、このままでは建物にまで引火しそうだ。

「…テレポートなら、どうかな」

    三戸さん、そんなの覚えているのか!?

    皆の目が一斉にそちらへ向くが、彼女は慌てて一言付け加えた。

「まだ練習中だよ!?便利そうだって思っただけで…難しいやつだし…まだ成功してないし…」

「でもそれしかないよ!もう限界!」

    志摩さんが叫ぶ。確かにもう他の方法を考えている時間はなさそうだ。一か八かやるしかない。

「うぅ…わ、分かったわよ!皆私に近づいて!いくよ!【テレポート】!」

    あ、ちょっとまって!僕まだそんなに近づいてない…。

    次の瞬間、辺りがピンク色に光ったかと思えば、3人の姿が消えていた。

「oh……」

    一瞬思考が停止する。

「え!?!?ウソダドンドコドーン!」

    パニックになって叫ぶが、もうどうしようもない。

    万事休すか、そう思ったそのとき。

    炎の壁が一ヶ所だけ溶けるように消え、通れるようになったのだ。

    迷わず僕はそこを突っ走る。その先にあったのはブローベル武具店だった。



    店から1人の少女が飛び出してきた。その姿には見覚えがある。ペトロだ。

「受け取れ!」

    彼女は僕に短剣を投げてよこした。

    助けてくれたのかと聞くと軽く頷き、赤フードに向かって駆け出していった。僕も短剣を抜刀し、後に続く。

「あれってどうやって消したんだ?」

「私は炎の魔法が得意だからね。炎を操れるということは、炎を自在に消せもするということさ。」

    言われてみれば確かに。応用って大事だな。

「あいつには因縁があるんだ。今日こそ倒してみせるよ…!」

    そう言うとペトロは石畳を蹴り赤フードに肉迫する。

「【ビーム】!」

    僕も後ろから魔法を使い、援護する。バルサミコ酢ビームはいい加減にやばいと思ったので改名した。

    短剣を杖代わりにして刃先から白い光線を飛ばす。

    僕の魔法とペトロの剣があいつに当たる…と思った瞬間、赤フードの姿が消えた。



「テレポートか!またしてもやられた…」

    ペトロが悔しがる。後ろを見ると炎は既に消えていた。さらに後ろには水魔法を得意とする消防団の方々がいた。

    僕ら4人以外で炎に巻き込まれた人はいないようだ。さっきまで一番燃えていた通りの真ん中には、びしょ濡れになった三戸さんの服があるだけ。



    びしょ濡れになった三戸さんの服だと!?

    じゃあ本人はどこにいったんだ…??
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