恋をするまで死ねない君とあと百年は一緒にいたい

皐月めい

文字の大きさ
3 / 8

投獄のち脱獄

しおりを挟む



それから一年足らず。栄華を極めた私の身に、災難が降りかかる。
 私を巡って、王と王弟とが血みどろの決闘を行い、互いに生死を彷徨う重傷を負った。寝耳に水の決闘だった。

 元々彼らは、とても仲が悪かった。王弟は私を平民の毒婦と罵っていたくせに。兄のものが欲しかったのか。

 そして私は、衆人の前で王弟の妻に胸を刺された。
 最悪なことに魔術によって私の肌は傷一つつく事なく、代わりに私の胸を貫く筈だった短剣が折れてしまった。

 私の肉体の時が止まっていることは、王にしか伝えていなかった。しかも事後承諾だ。

 万人が欲する不老不死の願いを望むことは、神に近づく行為とされ禁忌となっていたし、不老不死になっちゃった、と報告しで『いくら稀代の魔術師マーリンでもそんなことは無理だろう』と王は半信半疑だった。食事を摂らない私を見て、ようやく理解してくれたけど。

 混乱を防ぐため、神の祝福を授かったとか適当なことを、教会に証言してもらおうかなあと話し合っていた矢先の事だった。


 王族の二人が、一人の女を巡って重傷を負った。
 衝撃的なこのニュースと、短剣が折れた事実に人々は私を魔女だと思ったらしい。

 王はその時意識不明で、私の無実を証言してもらえなかった。意識が戻ったところで、洗脳されたとか言われて信じてもらえなかっただろうけど。

 それに私も、もうこの貴族の間で生きていくのがほとほと嫌になっていた。何を聞かれても黙っていた。


「魔女は魔性を持つという」
「人を誑かし我が国を破滅に追いやろうとしているのでは」
「平民風情が、高貴な方を次々たらしこむのはおかしいと思ったんだ」


 投獄された。


 元々貴人ではない私は、尊い方が入るような幽閉の塔には入れない。投獄先は石畳の地下牢だった。不衛生で、寒くて、何もない。毛布一枚、クッション一つすらないのだ。


「……しくじったわ」


 私はここで、悠久の時を過ごす事になる。
 安易に不老不死を望んだ事を後悔した。


「ジゼル様」


 聞き覚えのある声がした、と思ったら、あの魔術師がいつの間にか牢の内側に立っていた。余裕の微笑がなんだか腹立たしい。


「……こんなところに来たら、あなたも魔女の仲間と思われるわよ」
「私を心配してくれるなど、ジゼル様は相変わらず優しいですね」


 煽られている。私がいつお前に優しくしたというのだ。
 イラついていると、彼は「さあ、ここから出ましょう」と私に手を差し伸べた。


「私にはここ以外に行くところなんかないわよ」
「これからは好きなところに住めますよ。海でも山でも、南国でも北国でも。あなたの故郷にだって」


 この人何考えてるんだろ。
 黒い瞳を訝しげに見つめると、何の感情も読み取れない瞳の奥で何かが微かに蠢いた気がした。


「大丈夫。あなたの願いは、私が必ず叶えて差し上げます」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

あなたが後悔しても、私の愛はもう戻りません

藤原遊
恋愛
婚約者のアルベルトは、優しい人だった。 ただ――いつも、私より優先する存在がいただけで。 「君は分かってくれると思っていた」 その一言で、リーシェは気づいてしまう。 私は、最初から選ばれていなかったのだと。 これは、奪われた恋を取り戻す物語ではない。 後悔する彼と、もう戻らないと決めた私、 そして“私を選ぶ人”に出会うまでの、静かな恋の終わりと始まりの物語。

ため息ひとつ――王宮に散る花びらのように

柴田はつみ
恋愛
「離縁を、お願いしたいのです」 笑顔で、震えずに、エレナはそう言った。 夫は言葉を失った。泣いてくれれば、怒ってくれれば、まだ受け止め方があった。しかしあの静けさは、エレナがもう十分に泣き終わった後の顔だと、ヴィクトルにはわかった。 幼なじみと結ばれた三年間。すれ違いは静かに始まり、深紅のドレスの令嬢によって加速した。ため息を飲み込み、完璧な微笑みを保ち続けた公爵夫人が、最後に選んだのは――。 王宮に散る花びらのような、夫婦の崩壊と再生の物語。

真実の愛は水晶の中に

立木
恋愛
学園の卒業を祝うパーティーの最中、レイシア・マレーニ侯爵令嬢は第三王子とピンク髪の女、その取り巻きたちによって断罪されようとしていた。 しかし断罪劇は思わぬ方向へ進んでいく。 ※AIイラスト使用 ※「なろう」にも重複投稿しています。

なくなって気付く愛

戒月冷音
恋愛
生まれて死ぬまで…意味があるのかしら?

毒姫の婚約騒動

SHIN
恋愛
卒業式を迎え、立食パーティーの懇談会が良い意味でも悪い意味でもどことなくざわめいていた。 「卒業パーティーには一人で行ってくれ。」 「分かりました。」 そう婚約者から言われて一人で来ましたが、あら、その婚約者は何処に? あらあら、えっと私に用ですか? 所で、お名前は? 毒姫と呼ばれる普通?の少女と常に手袋を着けている潔癖症?の男のお話し。

殿下の御心のままに。

cyaru
恋愛
王太子アルフレッドは呟くようにアンカソン公爵家の令嬢ツェツィーリアに告げた。 アルフレッドの側近カレドウス(宰相子息)が婚姻の礼を目前に令嬢側から婚約破棄されてしまった。 「運命の出会い」をしたという平民女性に傾倒した挙句、子を成したという。 激怒した宰相はカレドウスを廃嫡。だがカレドウスは「幸せだ」と言った。 身分を棄てることも厭わないと思えるほどの激情はアルフレッドは経験した事がなかった。 その日からアルフレッドは思う事があったのだと告げた。 「恋をしてみたい。運命の出会いと言うのは生涯に一度あるかないかと聞く。だから――」 ツェツィーリアは一瞬、貴族の仮面が取れた。しかし直ぐに微笑んだ。 ※後半は騎士がデレますがイラっとする展開もあります。 ※シリアスな話っぽいですが気のせいです。 ※エグくてゲロいざまぁはないと思いますが作者判断ですのでご留意ください  (基本血は出ないと思いますが鼻血は出るかも知れません) ※作者の勝手な設定の為こうではないか、あぁではないかと言う一般的な物とは似て非なると考えて下さい ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。  史実などに基づいたものではない事をご理解ください。 ※作者都合のご都合主義、創作の話です。至って真面目に書いています。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

不機嫌な侯爵様に、その献身は届かない

翠月 瑠々奈
恋愛
サルコベリア侯爵夫人は、夫の言動に違和感を覚え始める。 始めは夜会での振る舞いからだった。 それがさらに明らかになっていく。 機嫌が悪ければ、それを周りに隠さず察して動いてもらおうとし、愚痴を言ったら同調してもらおうとするのは、まるで子どものよう。 おまけに自分より格下だと思えば強気に出る。 そんな夫から、とある仕事を押し付けられたところ──?

【完結】少年の懺悔、少女の願い

干野ワニ
恋愛
伯爵家の嫡男に生まれたフェルナンには、ロズリーヌという幼い頃からの『親友』がいた。「気取ったご令嬢なんかと結婚するくらいならロズがいい」というフェルナンの希望で、二人は一年後に婚約することになったのだが……伯爵夫人となるべく王都での行儀見習いを終えた『親友』は、すっかり別人の『ご令嬢』となっていた。 そんな彼女に置いて行かれたと感じたフェルナンは、思わず「奔放な義妹の方が良い」などと言ってしまい―― なぜあの時、本当の気持ちを伝えておかなかったのか。 後悔しても、もう遅いのだ。 ※本編が全7話で悲恋、後日談が全2話でハッピーエンド予定です。 ※長編のスピンオフですが、単体で読めます。

処理中です...