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Ceci n'est pas une rêve.(これは夢ではない)
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ガチャッ!
手を痛めそうなノックのあと。
返答を待たずにドアを開けて入ってきたのは。
白い祭服に白いマフラー。
ムスッとした顔に緩やかにパーマのかかった。
プラチナにちかい淡いストロベリーブロンド。
さっきの城で黒マント君を診ていた。
神父らしき人物だ。
仏頂面をひっさげてデカいトランクを抱えている。
ドアを蹴り開けなかっただけましだ。
とでもいうような態度だ。
「お待ちください!オキツネサマは体調を崩されておいでです!」
廊下から傍若無人な神父に抗議しているのは初めて見る顔だ。
ワインレッドの髪をオールバックに整えた。
レモン色の瞳の軍人さん。
やはりドーソンさんや群青君同じく。
白い制服を身につけている。
彼は…ワイン君としようか。
おそらくワイン君が紙を持ってきてくれたんだろう。
後でお礼言わなきゃな。
ワイン君と目があったので。
入ってくださいと手招きする。
するとワイン君は俺に一礼して入室した。
なるほど。
白服さんたちは皆。
僕をこの部屋の客人として扱ってくれてるようだ。
後ろから群青君が呆れ顔で入ってきた。
ドアをいたわるようにゆっくり閉めてくれる。
ありがとう群青君。
その間にも。
ズカズカと部屋を歩く神父。
おー。
さすが天牡の同族なだけある。
なんてのんきに感心してたら。
こっち来た。
は?
俺なんかした?
「で?」
ドカッとベッドサイドにトランクを投げ捨て。
俺を上から睨みつけてくる。
「このオキツネサマがなんだって?」
「ケーレブ猊下。あまり手荒になさらぬよう」
「アイザック・ドーソン。俺は教皇でも枢機卿でもないんだがな」
ケーレブ?
喉のぐあい診に来てくれるって言っていた?
あのケーレブさんが?
このチンピラ神父!?
いや司祭か。
えー!!!
嘘だろ!
医師ってもっと優しそうで。
フレンドリーな感じでしょ。
俺の主治医ちょっといい加減な感じだけど。
ひとりごとも多いけど。
めっちゃ優しい先生だよ。
俺が呆気にとられてケーレブさんを見る。
するとケーレブさんは面倒そうにこちらを見返した。
「いえ。ケーレブ猊下。いずれ貴方が手にされる称号です」
「どなたかに似てる顔使ってか?」
ケーレブさんは誰かに似ているらしい。
たぶん身分が上のほうの誰か。
それが嫌なのか。
こちらを向いたまま苦虫をかみつぶしたような顔をしている。
「猊下ってのをやめろ。これのせいでヤツらにありもしない噂を流されてんだ」
地を這うような声で。
ケーレブさんは反論した。
激情を抑えて。
ドーソンさんにぶつけないようにしているかのようだ。
「俺はケーレブ・テンプルトン司祭であって、それ以外の何者でもない。で?お前はどうしたんだ?」
この話は終わった。
と言わんばかりにこちらを睨みつけてくる。
ヒーッ。
こっちに飛び火しないでくれないかな。
【あの。始めまして】
「挨拶はいい。早くしろ。お前らのおかげで、この国の魔術の第一人者が、予断を許さない状態なんだから」
スゲー。
めちゃくちゃトゲがある言い方。
えっと。
どうしたらいいの?
とドーソンさんとワイン君に助けを求める。
「トヨミ様は喉の調子が優れません。先ほども体調を「紙があんだから自分で書け」
ケーレブさんがしかめっ面で指示してくる。
うー怖。
でも正論だ。
びくびくしながら声が出ないことを紙に書く。
その間にもケーレブさんは毒を吐く。
「ったく。お前らは常識ってもんがない。人をなんだと思ってるんだ」
【声が出ない以外は
常識がないってどういうことですか?】
ムスッとしながら“常識がない”の辺りを万年筆のうしろでトントンする。
天牡にはなくても俺にはあるわっ!
結果。
ケーレブさんに鼻で笑われた。
「今にも死にそうな人間にツッコむヤツのどこに常識があるってんだ?え?お前だってベッドでくつろぎながら俺を呼び付けて、いいご身分なこって」
ベッドに寝かされたままなのは悪いとは思うけど。
返事も待たずに入ってきたのそっちだよね?
ん?
今にも死にそうな人間にツッコむ?
なんでやねん。
と手を横に動かす。
これ?
天牡こんなことやったの?
今にも死にそうな人に?
なんで?
それこそなんでやねんだろ。
花月でツッコミ習ってこいと言いたい。
そうじゃなく。
人命救助習ってこいって言うべきか。
「なにやってんだ?」
【ツッコミです】
ケーレブさんに怪訝そうな顔をされた。
いや。
あんたが言ったんですよ。
天牡が今にも死にそうな人間にツッコミしてたって。
それから。
ちょっと考えてたかと思えば哀れむような顔でこちらを見てきた。
なんでやねん!
「なあドーソン。このオキツネサマとっくに成人してるよな?」
「ええ。そうだと思いますが」
「なんで通じないんだ?機能不全か?」
「…そこまでは存じ上げませんので」
「それも調べるか?」
「声の不調の原因でしたらお願いします。そうでないのでしたら、ご意向にそってください。私は感度さえ良ければいいですから」
「は?」
「はい?」
ケーレブさんが真顔で問うた。
ドーソンさんは笑顔で答えた。
「ゴホン。わかった。で?お前は声が出ないんだったな?」
なんか。
おかしな方向に話がブレたぞ。
俺が機能不全だって?
…まあ。
そういえば。
そういう方面は全くだな。
元から相手を作るつもりはなかったし。
勝手に押し出される分で汚れたものを。
朝キレイにしてただけだし。
だからってそんなのは診ないでいいから!
喉だけでいいから!
【はい。声が出ません】
「いつからだ?」
んーと。
あれはいつからと言えばいいんだろう?
夕方?
【夕方からです】
「夕方?生れつきではないんだな?」
コクンと1つ。
うなずく。
「ここに来た時に出なくなったのか?」
もう1つコクン。
「お前。ここに来る前なにしてた?」
【自販機で買った紅茶を飲んでました】
「それに毒物が入ってたのかもしれん。吐き気は?」
は?
毒物?
ありえない!
自販機買った時ちゃんと。
1つしかペットボトルなかったし。
俺に毒入れるメリットなんてないだろ。
ブンブン首を振って否定する。
「腹痛は?」
まだ毒のはなししてる。
ムスッとしながら反論する。
【僕に毒をあたえるメリットがないでしょう】
ふたたび。
万年筆のうしろでトントンする。
でも。
ケーレブさんはあきれ顔で言った。
「はあ。ずいぶんマヌケなオキツネサマだな。まあいい」
そう言ってケーレブさんはトランクを開けた。
手を痛めそうなノックのあと。
返答を待たずにドアを開けて入ってきたのは。
白い祭服に白いマフラー。
ムスッとした顔に緩やかにパーマのかかった。
プラチナにちかい淡いストロベリーブロンド。
さっきの城で黒マント君を診ていた。
神父らしき人物だ。
仏頂面をひっさげてデカいトランクを抱えている。
ドアを蹴り開けなかっただけましだ。
とでもいうような態度だ。
「お待ちください!オキツネサマは体調を崩されておいでです!」
廊下から傍若無人な神父に抗議しているのは初めて見る顔だ。
ワインレッドの髪をオールバックに整えた。
レモン色の瞳の軍人さん。
やはりドーソンさんや群青君同じく。
白い制服を身につけている。
彼は…ワイン君としようか。
おそらくワイン君が紙を持ってきてくれたんだろう。
後でお礼言わなきゃな。
ワイン君と目があったので。
入ってくださいと手招きする。
するとワイン君は俺に一礼して入室した。
なるほど。
白服さんたちは皆。
僕をこの部屋の客人として扱ってくれてるようだ。
後ろから群青君が呆れ顔で入ってきた。
ドアをいたわるようにゆっくり閉めてくれる。
ありがとう群青君。
その間にも。
ズカズカと部屋を歩く神父。
おー。
さすが天牡の同族なだけある。
なんてのんきに感心してたら。
こっち来た。
は?
俺なんかした?
「で?」
ドカッとベッドサイドにトランクを投げ捨て。
俺を上から睨みつけてくる。
「このオキツネサマがなんだって?」
「ケーレブ猊下。あまり手荒になさらぬよう」
「アイザック・ドーソン。俺は教皇でも枢機卿でもないんだがな」
ケーレブ?
喉のぐあい診に来てくれるって言っていた?
あのケーレブさんが?
このチンピラ神父!?
いや司祭か。
えー!!!
嘘だろ!
医師ってもっと優しそうで。
フレンドリーな感じでしょ。
俺の主治医ちょっといい加減な感じだけど。
ひとりごとも多いけど。
めっちゃ優しい先生だよ。
俺が呆気にとられてケーレブさんを見る。
するとケーレブさんは面倒そうにこちらを見返した。
「いえ。ケーレブ猊下。いずれ貴方が手にされる称号です」
「どなたかに似てる顔使ってか?」
ケーレブさんは誰かに似ているらしい。
たぶん身分が上のほうの誰か。
それが嫌なのか。
こちらを向いたまま苦虫をかみつぶしたような顔をしている。
「猊下ってのをやめろ。これのせいでヤツらにありもしない噂を流されてんだ」
地を這うような声で。
ケーレブさんは反論した。
激情を抑えて。
ドーソンさんにぶつけないようにしているかのようだ。
「俺はケーレブ・テンプルトン司祭であって、それ以外の何者でもない。で?お前はどうしたんだ?」
この話は終わった。
と言わんばかりにこちらを睨みつけてくる。
ヒーッ。
こっちに飛び火しないでくれないかな。
【あの。始めまして】
「挨拶はいい。早くしろ。お前らのおかげで、この国の魔術の第一人者が、予断を許さない状態なんだから」
スゲー。
めちゃくちゃトゲがある言い方。
えっと。
どうしたらいいの?
とドーソンさんとワイン君に助けを求める。
「トヨミ様は喉の調子が優れません。先ほども体調を「紙があんだから自分で書け」
ケーレブさんがしかめっ面で指示してくる。
うー怖。
でも正論だ。
びくびくしながら声が出ないことを紙に書く。
その間にもケーレブさんは毒を吐く。
「ったく。お前らは常識ってもんがない。人をなんだと思ってるんだ」
【声が出ない以外は
常識がないってどういうことですか?】
ムスッとしながら“常識がない”の辺りを万年筆のうしろでトントンする。
天牡にはなくても俺にはあるわっ!
結果。
ケーレブさんに鼻で笑われた。
「今にも死にそうな人間にツッコむヤツのどこに常識があるってんだ?え?お前だってベッドでくつろぎながら俺を呼び付けて、いいご身分なこって」
ベッドに寝かされたままなのは悪いとは思うけど。
返事も待たずに入ってきたのそっちだよね?
ん?
今にも死にそうな人間にツッコむ?
なんでやねん。
と手を横に動かす。
これ?
天牡こんなことやったの?
今にも死にそうな人に?
なんで?
それこそなんでやねんだろ。
花月でツッコミ習ってこいと言いたい。
そうじゃなく。
人命救助習ってこいって言うべきか。
「なにやってんだ?」
【ツッコミです】
ケーレブさんに怪訝そうな顔をされた。
いや。
あんたが言ったんですよ。
天牡が今にも死にそうな人間にツッコミしてたって。
それから。
ちょっと考えてたかと思えば哀れむような顔でこちらを見てきた。
なんでやねん!
「なあドーソン。このオキツネサマとっくに成人してるよな?」
「ええ。そうだと思いますが」
「なんで通じないんだ?機能不全か?」
「…そこまでは存じ上げませんので」
「それも調べるか?」
「声の不調の原因でしたらお願いします。そうでないのでしたら、ご意向にそってください。私は感度さえ良ければいいですから」
「は?」
「はい?」
ケーレブさんが真顔で問うた。
ドーソンさんは笑顔で答えた。
「ゴホン。わかった。で?お前は声が出ないんだったな?」
なんか。
おかしな方向に話がブレたぞ。
俺が機能不全だって?
…まあ。
そういえば。
そういう方面は全くだな。
元から相手を作るつもりはなかったし。
勝手に押し出される分で汚れたものを。
朝キレイにしてただけだし。
だからってそんなのは診ないでいいから!
喉だけでいいから!
【はい。声が出ません】
「いつからだ?」
んーと。
あれはいつからと言えばいいんだろう?
夕方?
【夕方からです】
「夕方?生れつきではないんだな?」
コクンと1つ。
うなずく。
「ここに来た時に出なくなったのか?」
もう1つコクン。
「お前。ここに来る前なにしてた?」
【自販機で買った紅茶を飲んでました】
「それに毒物が入ってたのかもしれん。吐き気は?」
は?
毒物?
ありえない!
自販機買った時ちゃんと。
1つしかペットボトルなかったし。
俺に毒入れるメリットなんてないだろ。
ブンブン首を振って否定する。
「腹痛は?」
まだ毒のはなししてる。
ムスッとしながら反論する。
【僕に毒をあたえるメリットがないでしょう】
ふたたび。
万年筆のうしろでトントンする。
でも。
ケーレブさんはあきれ顔で言った。
「はあ。ずいぶんマヌケなオキツネサマだな。まあいい」
そう言ってケーレブさんはトランクを開けた。
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