”オマケ”の狐はお暇したいと思います

雨宮天音

文字の大きさ
34 / 42
ジェラード博士の歴史学講義

しおりを挟む
「入れ」

ジェラード君の許可を得て入ってきたのは。
強烈な香りだった。
…俺にとっては。

鼻がひん曲がるような。
耐えがたい刺激臭に思わず顔をしかめる。

がんばれば耐えれなくはないが。
耐えたくはない。
そんなにおい。

鼻を押さえようとして。
前にジェラード君が居ることを思い出す。
鼻を押さるのは失礼にあたるだろう。

「ハーヴェイ。スパイス入りは今すぐ、下げてくれるかい?」
御意ぎょいに」
「ごめんね。少し窓を開けようか。ギャルロン」

俺が顔をしかめていたのを不憫に思ったのか。
窓をあけて換気をするよう指示をしてくれた。
ありがとうジェラード君。

でも。
あなたの視線の先。

あなたの代わりに書類整理してくれてたっぽい。
金髪さんに頼まなくても良かったんじゃないかな?

金髪碧眼の王子様。
違った。
ギャルロンさんだ。

ギャルロンさんとリック君が窓を開けてくれたおかげで。
刺激臭がうすれて息がしやすくなった。

2人に感謝だな。
ありがとう。
と2人に向けて会釈えしゃくする。

リック君の満面の笑みと。
ギャルロンさんの会釈えしゃくが。
返ってきた。

トン。
と机から音がした。

机を見れば。
美味しそうに湯気をたてるなにかが入った皿。

驚いて。
皿を置いた人をみると。
初めて見る侍従じじゅうさんだった。

小紫こむらさき色の髪にて桔梗ききょう色の瞳。
髪と瞳の色以外は中東出身っぽい容姿の背の高い人だ。
ヒゲはないけど。

トーブ中東の頭にかぶる布かぶって。
サングラスかけたら。
石油王の出来上がりだ。

髪と目の色違うけど。
なんて冗談はさておき。

服からただよう刺激臭からするに。
この人がハーヴェイさんなのだろう。

ペコッと会釈えしゃくすると。
綺麗な会釈えしゃくが帰ってきた。
顔は無表情だったけど。

せっかく持ってきてくれたのに顔しかめてごめんなさい。
無表情でカトラリーを置くハーヴェイさんに。
もう一度ペコッと謝る。

ハーヴェイさんは俺を無視して。
伏せてあるティーカップを手に取ると。
ジェラード君の方から先に注いだ。

わーい。
マスカットの腐ったいい香り。
かと思いきや。

ティーカップを満たす琥珀色の液体は。
お茶の独特の香りと腐ったマスカットがいい具合に混ざって。
そこまで嫌なにおいではなくなった。

不思議だ。

ハーヴェイさんは。
中心にティーポットを置くと。
そのまま無表情で礼をして退室した。

うん。
嫌われたかな。

「食べながらでいいから、話をしようか」

コクンと一つうなずく。

ビアトリクス・ポターのような。
可愛らしい動物の柄がえがかれた陶器。

その皿に盛られた白い物体は。
すごく美味しそうな香りをしている。

ところどころにある薄ピンクの丸い物体は肉だろうか?
カトラリーの中から真ん中のスプーンをチョイスして。

なぜふちではなく真ん中から取ったか。
なんとなくこれ一品しか出てこない気がしたからだ。
だったら一番食べやすいものを手に取りたい。

気をとりなおして。
さあ食べよう。

と思って。
ふと止まる。

いただきますってどうやるんだっけ?
日本流ならできる。
でも欧米流ってどうだ?

困った末に。
左手の人差し指と中指を使って十字架を作って。

アーメン。
と指で作った十字架を使って十字を切る。

『だーかーら!それアンタの宗教じゃないでしょ!』
という女性の悲鳴が。
遠くで聞こえた気がした。

なんとなく。
その女性は白髪はくはつな気がした。
根拠はないけど。

なんちゃってキリスト教風いただきますをしてから。
湯気をたてる白い物体を。
スプーンで取って口に運ぶ。

口元に持ってきたとき。
じゃがいものいい香りが広がった。
これじゃがいもか!

口に入れると。
ちょうどいい温度のじゃがいもが解けていく。
おいしい!

お腹がいているせいか。
塩味全くしないないけどめちゃくちゃ美味しい!

味に感動していると。
ジェラード君がふふっと笑った。

「口に合ったならなによりだよ。そんなに美味しそうに食べてくれて、料理人の面目躍如めんもくやくじょだね」

ニコニコとそうのたまった。
そんなに顔に出てただろうか?

恥ずかしくなって。
大人しくゆっくりスプーンを運ぶ。

うん。
シンプルなじゃがいも味と。
これなんだろう?

なにかのひき肉。
あっさりしてるから鳥だろうか?
その肉がアクセントになって美味しい。

なんて。
朝ごはんを楽しんでいる俺に。
ジェラード君が尋ねた。

「ねえ。キミはなにから知りたい?」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *本編完結しました

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式の話

八億児
BL
架空の国と儀式の、真面目騎士×どスケベビッチ王。 古代アイルランドには臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式があったそうで、それはよいものだと思いましたので古代アイルランドとは特に関係なく王の乳首を吸ってもらいました。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

処理中です...