愚かな誘拐犯と全てを知る女

ハジェンズ

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誘拐された姫を探せ

過去と現在

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 アントワネットは記憶の箱を無理矢理開けられる感覚に陥り、あの時肌身に感じたことに悪寒の意を示していた。


 「お前は俺を婚約相手に選ばなかった。俺はお前と結婚することで国を救えたというのに」


 「やめろ……」


 「俺の国は戦争が耐えなくてな、同盟国も次々と滅んでいたんだ。


  俺がお前をモノにしたかったってこと、一国を背負うお前なら痛いほどわかるだろ」


 「やめろ……」


  リザードは、アントワネットの頬にかかるくるんとカーブした髪の毛を甘く指で弄り、にっこりとほほ笑んだ。


 「俺の国は消滅してしまった。お前のせいでな。


  俺があんなに迫ったのに、お前は俺に見向きもしてくれなかった」


  整った顔立ちが、微笑むことによって綺麗にも不快にも映える。


  アントワネットはその表情にゾクリと背筋をふるわせ、リザードから足をひいた。


  それから間髪を入れずに、リザードはアントワネットを囲うように壁に手をついた。


 「俺はな、お前の一生をかけて呪うって決めてんだよ。


  お前を凌辱した人間の≪嫁≫になるって、どんな気持ちなんだ?」


  聞かせてくれよ、と言わんばかりに無遠慮にも問う。


  顎をぐいとひかれたアントワネットは、今にも泣きそうに瞳をふるわせている。


  それから暫くの沈黙が続き、リザードは緩く、そのキツい表情を解いた。


 「まあいいだろう」


  アントワネットの恐怖に怯える表情を深く一瞥すると、満足したように踵を返した。


 「女が泣き止んだら、飛行船の俺の部屋に連れてこい」


 「はっ」


  傭兵に一言投げかけ、リザードは牢屋から姿を消した。


  激痛性のダメージだった。アントワネットは胸を抱え込み、その場へ腰を落とす。
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