愚かな誘拐犯と全てを知る女

ハジェンズ

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誘拐された姫を探せ

ですが王子……

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 自分の婚約者が何者かに誘拐された、一国の王子ルイは会議や謁見などのスケジュールを全てキャンセルし、直ぐに救出すると宣言していた。


  彼は1万人の兵を束ねる賢い男で、誰よりもアントワネットを理解する存在である。


  屈強という単語は似合わぬが、堅実さと聡明さを兼ねそろえていた。


  急遽用意された彼の書斎では兵と召使が慌ただしく雑踏している。


 「ルイ王子。巨大な飛行船が、南東のドールドへ向かったと多数の目撃情報が寄せられています」


  ひとりの兵が書斎の前で敬礼し、ルイとその執事に目配りをした。


 「ふむ……。ドールドか」


 「ドールドといえば、永久の戦場と言われている、あの……」


  執事はキラリと眼鏡を輝かせ、白鬚を撫で、声を震わせる。


  ルイは「うん」と深く頷くと、


 「5000人を派兵、飛行船を5機使用、今からドールドへ直行するぞ」


 「しかし、王子……。ここはフレイで遊覧船しかございません。


  一度自国へ戻り戦闘用の飛行船を出した方が……」


 「そんなことをしていたら、日が暮れてしまうぞ!」


  ガタリと音をたてて、弾かれたように自分の席を立つ。


  甲冑を装備する兵の胸倉をつかみ、精悍な顔立ちの前へ引き寄せる。


 「なんとかアントワネットを我が手で連れ戻すのだ、一刻も早く!」


 「で、ですが王子……」


  もうひとり、お付きの兵らしき男が声をひそめながら言う。


 「お言葉ですが、王子。一度我が国へ帰られた方がよろしいかと思います。


  王子が御注文なさっていた、アントワネット様への贈り物が出来た模様ですので……」


 「ぐぬぬぬぬ……」


  兵の言葉に帰ることを余儀なくされる。


  実は今日のパーティで渡すはずだったアントワネットへのプレゼントは、予定通りの時間に間に合わず持って来ることが出来なかった。


  触るな、と執事にも念を押したプレゼントはパーティの最中に出来上がっても持ってくることは出来ないのだ。


  ルイは一度、溜息混じりに身体の力を抜く。


  そして「仕方のない」表情で目を細め、ぼすんと席へ腰を落ち着かせた。


 「分かった。この国で一番速い馬を出せ、森を抜ける」


 「ははっ」
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