4 / 12
誘拐された姫を探せ
ですが王子……
しおりを挟む
自分の婚約者が何者かに誘拐された、一国の王子ルイは会議や謁見などのスケジュールを全てキャンセルし、直ぐに救出すると宣言していた。
彼は1万人の兵を束ねる賢い男で、誰よりもアントワネットを理解する存在である。
屈強という単語は似合わぬが、堅実さと聡明さを兼ねそろえていた。
急遽用意された彼の書斎では兵と召使が慌ただしく雑踏している。
「ルイ王子。巨大な飛行船が、南東のドールドへ向かったと多数の目撃情報が寄せられています」
ひとりの兵が書斎の前で敬礼し、ルイとその執事に目配りをした。
「ふむ……。ドールドか」
「ドールドといえば、永久の戦場と言われている、あの……」
執事はキラリと眼鏡を輝かせ、白鬚を撫で、声を震わせる。
ルイは「うん」と深く頷くと、
「5000人を派兵、飛行船を5機使用、今からドールドへ直行するぞ」
「しかし、王子……。ここはフレイで遊覧船しかございません。
一度自国へ戻り戦闘用の飛行船を出した方が……」
「そんなことをしていたら、日が暮れてしまうぞ!」
ガタリと音をたてて、弾かれたように自分の席を立つ。
甲冑を装備する兵の胸倉をつかみ、精悍な顔立ちの前へ引き寄せる。
「なんとかアントワネットを我が手で連れ戻すのだ、一刻も早く!」
「で、ですが王子……」
もうひとり、お付きの兵らしき男が声をひそめながら言う。
「お言葉ですが、王子。一度我が国へ帰られた方がよろしいかと思います。
王子が御注文なさっていた、アントワネット様への贈り物が出来た模様ですので……」
「ぐぬぬぬぬ……」
兵の言葉に帰ることを余儀なくされる。
実は今日のパーティで渡すはずだったアントワネットへのプレゼントは、予定通りの時間に間に合わず持って来ることが出来なかった。
触るな、と執事にも念を押したプレゼントはパーティの最中に出来上がっても持ってくることは出来ないのだ。
ルイは一度、溜息混じりに身体の力を抜く。
そして「仕方のない」表情で目を細め、ぼすんと席へ腰を落ち着かせた。
「分かった。この国で一番速い馬を出せ、森を抜ける」
「ははっ」
彼は1万人の兵を束ねる賢い男で、誰よりもアントワネットを理解する存在である。
屈強という単語は似合わぬが、堅実さと聡明さを兼ねそろえていた。
急遽用意された彼の書斎では兵と召使が慌ただしく雑踏している。
「ルイ王子。巨大な飛行船が、南東のドールドへ向かったと多数の目撃情報が寄せられています」
ひとりの兵が書斎の前で敬礼し、ルイとその執事に目配りをした。
「ふむ……。ドールドか」
「ドールドといえば、永久の戦場と言われている、あの……」
執事はキラリと眼鏡を輝かせ、白鬚を撫で、声を震わせる。
ルイは「うん」と深く頷くと、
「5000人を派兵、飛行船を5機使用、今からドールドへ直行するぞ」
「しかし、王子……。ここはフレイで遊覧船しかございません。
一度自国へ戻り戦闘用の飛行船を出した方が……」
「そんなことをしていたら、日が暮れてしまうぞ!」
ガタリと音をたてて、弾かれたように自分の席を立つ。
甲冑を装備する兵の胸倉をつかみ、精悍な顔立ちの前へ引き寄せる。
「なんとかアントワネットを我が手で連れ戻すのだ、一刻も早く!」
「で、ですが王子……」
もうひとり、お付きの兵らしき男が声をひそめながら言う。
「お言葉ですが、王子。一度我が国へ帰られた方がよろしいかと思います。
王子が御注文なさっていた、アントワネット様への贈り物が出来た模様ですので……」
「ぐぬぬぬぬ……」
兵の言葉に帰ることを余儀なくされる。
実は今日のパーティで渡すはずだったアントワネットへのプレゼントは、予定通りの時間に間に合わず持って来ることが出来なかった。
触るな、と執事にも念を押したプレゼントはパーティの最中に出来上がっても持ってくることは出来ないのだ。
ルイは一度、溜息混じりに身体の力を抜く。
そして「仕方のない」表情で目を細め、ぼすんと席へ腰を落ち着かせた。
「分かった。この国で一番速い馬を出せ、森を抜ける」
「ははっ」
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
悪役断罪?そもそも何かしましたか?
SHIN
恋愛
明日から王城に最終王妃教育のために登城する、懇談会パーティーに参加中の私の目の前では多人数の男性に囲まれてちやほやされている少女がいた。
男性はたしか婚約者がいたり妻がいたりするのだけど、良いのかしら。
あら、あそこに居ますのは第二王子では、ないですか。
えっ、婚約破棄?別に構いませんが、怒られますよ。
勘違い王子と企み少女に巻き込まれたある少女の話し。
サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします
二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位!
※この物語はフィクションです
流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。
当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。
冷遇妃マリアベルの監視報告書
Mag_Mel
ファンタジー
シルフィード王国に敗戦国ソラリから献上されたのは、"太陽の姫"と讃えられた妹ではなく、悪女と噂される姉、マリアベル。
第一王子の四番目の妃として迎えられた彼女は、王宮の片隅に追いやられ、嘲笑と陰湿な仕打ちに晒され続けていた。
そんな折、「王家の影」は第三王子セドリックよりマリアベルの監視業務を命じられる。年若い影が記す報告書には、ただ静かに耐え続け、死を待つかのように振舞うひとりの女の姿があった。
王位継承争いと策謀が渦巻く王宮で、冷遇妃の運命は思わぬ方向へと狂い始める――。
(小説家になろう様にも投稿しています)
私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。
石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。
自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。
そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。
好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。
この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる