一振りの刃となって

なんてこった

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66.ニコルと新入り達2

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「ゴッゴ、ブ・・・」
 襲ってきていたゴブリンの群れの最後の一匹にとどめを刺すと、
「それじゃあ行きましょう、耳は・・・一応切り取っておきましょう」
 とニコルの指示に、
「雪鱗さんの許に急いだほうがいいのでは?昨日の皆さんの報告でオーガがこのあたりを狩り場にしているそうじゃないですか」
 コリンが急いだほうがいいと提案してくるが、
「まぁサン太郎がついてくれてるだろうから大丈夫だと思うわ」
「それにあたしたちがいにゃいほうが戦いやすい奴もいるしねー」
 というニナのセリフにニコルがニナをキッと睨んで黙らせる。
「急いで剥ぎ取るよ!ライカちゃん!」
「そうだね~でもゴブリンの血の匂いで~ブレードドックが近づいてくるだろうから待っててもいい気がするけどね~」
 ビビるニナとマイペースなライカ、実際動き回るよりどっちかが留まっていたほうがいいのだが、
「それでも心配なものは心配よ?いつでも動けるように手早く進めましょう」
 サラが昨日のことを思い出しながらやれることはさっさと済ましとこうと提案する、作業中にイレギュラーがあるのは避けるべきなのは確かだからだ。


「これでラストー!」
 跳びかかってくるブレードドックを躱し横にまわり槍を上段からたたきつける、ブレードドックの断末魔が響くと静寂が森に戻る。
「サンちゃんお疲れさん!」
「ワウ!」
 10数匹のブレードドックの群れを倒しきるとさすがに疲れたのか近くの根に腰掛ける。
「ふぃーちかれたー」
「くぅん」
 溜息と共に横にお座り状態で待機しているサン太郎の頭を撫でる、
「こんだけ頑張れば師匠も一目置いてくれるよね?」
 何の気なしにサン太郎に訊いてみる、サン太郎自身いまだ本気で相手と「闘い」をしたことのない主がどれだけの戦果で褒めてくれるか全くわからないために首を固めけて小さく「くぅぅん」と鳴くくらいしかできなかった。
 そんな一人と一匹の背後から迫る巨大な影が両人の横ににゅっと顔を出す、
『やれやれお前はそんなことが目的でこんな無謀な突撃を行ったのか?』
 サンダーエッジが雪鱗の横まで伸ばした顔から話しかける、
『主の実力ははっきり言えば未知数だ、そんな主が褒めるとしたら無茶をしてけがと共に得た戦果よりも怪我なく確実に得た戦果を笑顔で報告したほうが良いと思うぞ?』
「未知数ってかなり追い込ん出たじゃん!」
 昨日あれだけダメージを与えていた相手が実力がはかれなかったと言われて、何言ってんの?ってテンションで言い返す、
『あれは大分手加減されていた、眷属となった今主の実力の底知れなさがわかるのだ・・・主が最初から我を殺そうとしていたのなら、我は主と数秒の相対で終わっていたであろう』
「うっそだー!」
『証拠に主は我に対してあの御剣での攻撃は最後までしてこなかった。あの御剣の斬撃であれば我のこの鱗ですら紙くず同然であっただろう』
 と竜はその時に起こり得た可能性に身震いしながら喋る。
「そんなに切れ味がいいの?」
『うむ』
「ウチもそんな武器が欲しいなー」
 そこまででなくともそれに迫れるような武器が欲しいと雪鱗は思う、実際敵対者の攻撃に耐えられないなら躱せばいい場合が多いが攻撃が通らない場合は前衛職としてはお手上げ状態にならざるを得ない場合が多いからだ。
『ふむ、ならば小娘これをやろう』
 とサンダーエッジはおもむろに自分の前足の人で言う人差し指の爪を血が出ない程度に噛み千切りついでに自分の鱗も数枚剥がして、その様をあっけに取られてみていた雪鱗の膝の上に置く、鱗が数枚滑り落ちる。
『これだけあればいい武器ができるのではないか?余った鱗数枚を金に換えれば加工費にもなるだろうしな』
「こんな!貰っちゃってもいいの!?」
『もうこの身からとれたものだ、戻したくても戻せまいて』
 と鱗をはがした際ちょっと涙目になった眼を軽くこさぎながら雪鱗に譲る。
「なんか親切すぎて怪しすぎる・・・」
 疑いの眼差しを向けると、
『気にするな、貴様の血に親近感がわいてな、昨日は真っ先に食らってやろうと思ったくらいなのだぞ?』
「何その過剰な親愛の表現!」
 そういや昨日「雪鱗が~真っ先に~食べられそうになってたんだよ~」と先輩であるライカにいわれてたな~と思いだした。
「ん~それじゃあこれは昨日のお詫びってことで貰うね!」
『それで構わん、今更返すと言われる方が困る・・・む?』
 話している最中に竜は何かに気づく、
『ふむ、この気配はオーガか・・・我が蹴散らしとくから貴様たちは依頼の部位を回収してくるといい』
 と竜は雪鱗達に指示を出すと、
「グゥルオオオオオオオ!」
 咆哮をあげ気配のしている方に走り出す。


「グゥルオオオオオオオ!」
 静かだった森に突如鳴り響いた竜の咆哮にニコルたち一行は何事かと周りを見渡す、ニコルとコリン以外は昨日子の声を聴いてるため冷静であったがニコルとコリンは初めて聞いた咆哮だ。
 ニコルは比較的に落ち着いている3人と一匹を見て昨日訊いた話を思い出し冷静さを取り戻したが、コリンは・・・
「今のは竜の咆哮!もしや先日見かけたサンダーエッジ!?」
 と混乱を起こしてこう繋げる、
「いけません!このまま森にいてもし見つかったら、私たちにも被害が・・・最悪全滅してしまいますよ!
 と判断し、
「仕方ありません!ここは撤退してください!町に戻りましょう」
 という提案をニコルたちに告げる。
 ニコルは、
「そうですね。雪鱗さんには悪いですが、サラさんとニナさんとライカさんはコリンさんを連れて町に至急戻ってください」
「ニコルさん!今はあなたも一緒に戻るべきです!」
 とニコルの判断に真っ向から反論するコリン、
「いえ、今日は僕が兄さんの代わりにこのパーティのリーダーです。僕は仲間を見捨てるような兄さんは見たくありません、なら代わりを務めている僕も仲間を見捨てる姿を兄さんに見せる訳にはいかないのです」
 という言葉でコリンを黙らせてツー太郎とともに走り出すニコル、
「今回はお嬢様みたいに殺したりしません、安心してください兄さん」
 走りながら腰にさしているいつもより綺麗になっているショートソードに小声でそう告げるのだった・・・
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