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12話

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 さて、管理室に帰ってきたわたしだが今回のことで1つ確証を得たことがある。
 実はこの世界モンスターを倒したら強くなれると言う眉唾な最早都市伝説のような噂がある。
 実際魔物を討伐する事を生業としている連中は実際普通に鍛えた一般の兵士達と較べるとおかしいくらい強さに差があることは判明していた。
 その事実に関する世の中の反応は強大な存在に挑んで生き残ったらそりゃあ強くなるさ!だった。
 私もそう思っていたのだが今回村の子供達がヨボヨボアーマーを倒すことで有り得ない早さで強くなって行ったのを目の当たりにして考えを変えざるを得ない事態に陥った。

 最もだから如何したって話なんだが…。
 だってそれがわかったからって私がダンジョンモンスターを倒して強くなるのか?答えは…ぶっちゃけ変わらない、というか変わらなかった。
 私は意外にもダンジョンでモンスターを倒しまくってはいる…スライムばっかりなのだが。
 そう、麻痺槍を回収する際何度も何度もダンジョンに潜っているのでスライム達は数えるのが億劫になるレベルで倒しているし…なのにノリで下の階層に下りようとして第一層のフロアボスに毎回返り討ちにあっている私だ、私がモンスターを倒して成長しないならモンスターを倒して成長する奴らなんてどうでも良いというのが今の私の持論である。

「それって多分テイマーさんがボス部屋に入ったときだけ階層毎に掛かっている制限が解除されるからじゃないの?」

 私がモンスターハンター達に対するジェラシーでやる気を無くしていると突然後ろから声がかけられる。
 しかし声をかけた相手より言葉の内容が気になったので声の主を横目でちらちら見ながら思案に暮れる。

「……」

 アババババ……!

「無視しながら人をちらちら見るとか失礼じゃない?」

 声を怒らせながら電撃を放つサキ嬢、だがそれを言うならいきなり電撃を放つのも失礼なんじゃジャジャジャジャジャ…。

「そのケンカ買おうか?」

 売ってないです!非売品です!勝手に買おうとしないで下さい!

「ならまずどうすれば良いかな?」

 まず?なる程彼女は私に無視されたのが気に食わなかったと…ならこちらも勇気を出して!

「おっ!まさか声を出す気になったの?」

 そう言って驚きに目を見開いた彼女は腕を組んで何やら感動して何かを抑えるように目を閉じてうんうん頷いている。
 なので私は勇気を出してサキ嬢の胸を鷲掴みにしてみた。

「………へ?」

 一瞬の空白、そして私の顔面を強烈な拳が襲いかかる。
 しかし私はその拳をよく見て躱そうとして…次の瞬間背後にあった壁まで殴り飛ばされる。

「てめえどう言うつもりだ?あぁん?死にたいなら引導わたすぞコラ」

 サキ嬢が怒りでヤクザっぽくなっている…強くなっているなら躱せるんじゃ無いかなって思ったんだがやはりサキ嬢は強いまだ勝てないな。

「なんだ自殺志願か」

 違いますごめんなさい許して下さい。

「いや、無理、死んで」

 サキ嬢の周りでバチバチ何かが弾ける音がする、私に明確な死が足音を立てて近付いてくる。
 ちょっとヤバいです。
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