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第10話「イリスという少女」
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「さあ話もついたし。帰りましょ」
「ちょっと待て! 俺はまだ聖龍王に聞きたいことが──」
「いいからいいから!」
話がひと段落するやいなやイリスが俺の背中を押して玉座の間を出ていくこと急かす。
「レッドよ。この聖龍王、逃げも隠れもせぬ。いつでも来るがよい」
「あ、ああ! わかった!」
聖龍王に別れ代わりの言葉を言うとイリスの背中を押されながら玉座の間を出ていく。
「どうしたんだよ」
「どうもしないわ。まさか聖龍王様とずっと話していたかったの?」
「いや、そういうわけじゃないけど」
聖龍王に聞きたいことは数多い。だが聖龍王に頼り切るのは良くないかもしれない。
「なら行きましょ? どうせ暇なんでしょう?」
「そりゃやることはないけどさ」
「ねえ、レッド」
「うん?」
イリスは階段を降りながら、いやに真剣な声色になると別の話を切り出した。
「その……マリンを助けてくれてありがとね?」
「え? ああ、別にいいよ礼なんて。あのときは俺も必死だったし」
「それでもありがとう。あたしにとって、あの子は妹みたいな存在だから」
「大切な存在なんだな、マリンは」
イリスのことはよくわからない。出会ったばっかだし、何考えてるかわからない。でもイリスがマリンを大事に思っていることは伝わってきた。
「当然よ。それよりレッド、あんたロリコンじゃないでしょうね!?」
「は、はあ? いきなりなんだよ。俺がロリコンなわけないだろ!」
「どうだか……」
「なんでそんな疑ってるんだよ」
イリスは俺をジトーっと疑いの眼差しを向けてきた。なぜだかわからないがこいつは俺をロリコンだと疑ってるらしい。
「いきなりマリンと契約したことが怪しい」
「……いや、あれは緊急事態でな」
「仕方なく契約したの?」
「ち、違う! 俺はマリンを護りたくて!」
そうだ。俺はマリンを護りたかったんだ。あのときの俺は我が身を犠牲にしてでもマリンを護りたいって心から思ったんだ。
「くす、冗談よ。でも良かったわ。その様子だと、あんたはロリコンじゃないみたいね」
「最初からそう言ってるだろ……」
「確認よ、か・く・に・ん」
笑われてしまった。聖龍王の前ではキリッとしっかりしていて少し怖そうなイメージだったがこんなに柔らかく笑うんだな。
「そうですか」
「ええ。そういえば城下町は案内してもらった?」
「いや? まだだよ」
「そう。じゃあせっかくだし、案内しましょうか」
聖龍城を出て城下町に続く橋を渡っていく。外はマリンを追って戦闘したとき以来かもしれない。新鮮だ。
「本当か? 助かるよ」
「任せなさい! って言っても私もそこまで詳しくないけどね」
「そうなのか?」
「そうよ。私、この国のドラゴンじゃないし」
イリスは俺が思っていた疑問の答えを口にした。守護聖龍たちは同じ括りではあるものの、髪色や髪質、翼、尻尾の形状などもバラバラだった。
「そ、そうなのか……?」
「えぇ。レティシアはこの国の生まれだけれど、あたしは雷龍国出身だし、マリンだって青龍国って国の出身だしね?」
「……守護聖龍はレティシア以外はみんな、別の国から来てるのか?」
「そう。それぞれの国の、それぞれのお姫さま。それが私たち、守護聖龍の正体よ」
俺は驚いた。レティシアがお姫さまってことは知っていたが、まさかイリスやマリンまでお姫さまだったなんて。
「……なによその顔。私にはお姫さまなんて似合わないって言いたいの?」
「いや違う! ただ大変なんだなって思ってな」
「……大変よ。聖龍界の命運がかかってるんだから」
「聖龍界の命運、か」
俺が思っていた以上に聖龍界の状況は良くないのかもしれない。イリスは遠くをまっすぐに見つめて言った。視線の先には楽しそうにボール遊びをしている城下町の子供たちの姿があった。その言葉はあまりにも重く、一国を――いや、世界を背負うイリスなりの決意を感じた。
「……ごめんなさい。こんなことを話すためにあなたを城下町に連れてきたわけじゃないの…………」
「わかってるよ。ただイリスは城下町のドラゴンたちを護りたい、そうだろ?」
「城下のドラゴンたちだけじゃないけれど、たしかにそうよ。聖龍国のドラゴンたちは他国の私やマリンにも優しくしてくれる。そんな良いドラゴンを護ってあげたいって思うのは当然のことでしょう?」
「……そうだな」
優しくされたら優しくしたい。護られたなら護ってあげたい。そう思うのは人間もドラゴンもそう変わらないのかもしれない。
「ちょっと待て! 俺はまだ聖龍王に聞きたいことが──」
「いいからいいから!」
話がひと段落するやいなやイリスが俺の背中を押して玉座の間を出ていくこと急かす。
「レッドよ。この聖龍王、逃げも隠れもせぬ。いつでも来るがよい」
「あ、ああ! わかった!」
聖龍王に別れ代わりの言葉を言うとイリスの背中を押されながら玉座の間を出ていく。
「どうしたんだよ」
「どうもしないわ。まさか聖龍王様とずっと話していたかったの?」
「いや、そういうわけじゃないけど」
聖龍王に聞きたいことは数多い。だが聖龍王に頼り切るのは良くないかもしれない。
「なら行きましょ? どうせ暇なんでしょう?」
「そりゃやることはないけどさ」
「ねえ、レッド」
「うん?」
イリスは階段を降りながら、いやに真剣な声色になると別の話を切り出した。
「その……マリンを助けてくれてありがとね?」
「え? ああ、別にいいよ礼なんて。あのときは俺も必死だったし」
「それでもありがとう。あたしにとって、あの子は妹みたいな存在だから」
「大切な存在なんだな、マリンは」
イリスのことはよくわからない。出会ったばっかだし、何考えてるかわからない。でもイリスがマリンを大事に思っていることは伝わってきた。
「当然よ。それよりレッド、あんたロリコンじゃないでしょうね!?」
「は、はあ? いきなりなんだよ。俺がロリコンなわけないだろ!」
「どうだか……」
「なんでそんな疑ってるんだよ」
イリスは俺をジトーっと疑いの眼差しを向けてきた。なぜだかわからないがこいつは俺をロリコンだと疑ってるらしい。
「いきなりマリンと契約したことが怪しい」
「……いや、あれは緊急事態でな」
「仕方なく契約したの?」
「ち、違う! 俺はマリンを護りたくて!」
そうだ。俺はマリンを護りたかったんだ。あのときの俺は我が身を犠牲にしてでもマリンを護りたいって心から思ったんだ。
「くす、冗談よ。でも良かったわ。その様子だと、あんたはロリコンじゃないみたいね」
「最初からそう言ってるだろ……」
「確認よ、か・く・に・ん」
笑われてしまった。聖龍王の前ではキリッとしっかりしていて少し怖そうなイメージだったがこんなに柔らかく笑うんだな。
「そうですか」
「ええ。そういえば城下町は案内してもらった?」
「いや? まだだよ」
「そう。じゃあせっかくだし、案内しましょうか」
聖龍城を出て城下町に続く橋を渡っていく。外はマリンを追って戦闘したとき以来かもしれない。新鮮だ。
「本当か? 助かるよ」
「任せなさい! って言っても私もそこまで詳しくないけどね」
「そうなのか?」
「そうよ。私、この国のドラゴンじゃないし」
イリスは俺が思っていた疑問の答えを口にした。守護聖龍たちは同じ括りではあるものの、髪色や髪質、翼、尻尾の形状などもバラバラだった。
「そ、そうなのか……?」
「えぇ。レティシアはこの国の生まれだけれど、あたしは雷龍国出身だし、マリンだって青龍国って国の出身だしね?」
「……守護聖龍はレティシア以外はみんな、別の国から来てるのか?」
「そう。それぞれの国の、それぞれのお姫さま。それが私たち、守護聖龍の正体よ」
俺は驚いた。レティシアがお姫さまってことは知っていたが、まさかイリスやマリンまでお姫さまだったなんて。
「……なによその顔。私にはお姫さまなんて似合わないって言いたいの?」
「いや違う! ただ大変なんだなって思ってな」
「……大変よ。聖龍界の命運がかかってるんだから」
「聖龍界の命運、か」
俺が思っていた以上に聖龍界の状況は良くないのかもしれない。イリスは遠くをまっすぐに見つめて言った。視線の先には楽しそうにボール遊びをしている城下町の子供たちの姿があった。その言葉はあまりにも重く、一国を――いや、世界を背負うイリスなりの決意を感じた。
「……ごめんなさい。こんなことを話すためにあなたを城下町に連れてきたわけじゃないの…………」
「わかってるよ。ただイリスは城下町のドラゴンたちを護りたい、そうだろ?」
「城下のドラゴンたちだけじゃないけれど、たしかにそうよ。聖龍国のドラゴンたちは他国の私やマリンにも優しくしてくれる。そんな良いドラゴンを護ってあげたいって思うのは当然のことでしょう?」
「……そうだな」
優しくされたら優しくしたい。護られたなら護ってあげたい。そう思うのは人間もドラゴンもそう変わらないのかもしれない。
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