54 / 422
辺境にて
053話
しおりを挟む
「アラン、ちょっと、アラン。起きて!」
「……ん……あ……?」
頭がぼうっとしている状態ではあったが、聞こえてきた声にゆっくりと目を開く。
テントの周囲にいくつか存在する篝火によって、誰が自分に声をかけているのかというのを十数秒経ち、それでようやく理解する。
そして同時に、聞こえてくるの何らかの喧噪。
まだ完全に頭が起きていない状況では、何が起きているのかが全く理解出来ない。
「レオノーラ……一体、どうしたんだ?」
「馬鹿っ! この音を聞いても本当に理解出来ないの!?」
焦り……いや、憤りすら感じさせる様子で叫ぶレオノーラだったが、アランはそれでも反応が鈍い。
そんなアランの様子に、レオノーラは苛立つ。
いっそ鞭で叩けばしっかりと意識が覚醒するのではないかと思いつつ、そこまでするのは悪いかと判断し、アランの頬を少し強めに叩く。
……拳ではなく平手、いわゆるビンタだったのは、レオノーラの優しさからだろう。
強い衝撃によってようやくしっかりと意識を覚醒させることに成功したアランは、改めてテントの外から聞こえてくる喧噪に気が付く。
「これは……えっと、何が起きた? あれ?」
首を振りつつそう呟いたアランだったが、意識はある程度はっきりしているのに、どうにも頭がろくに働かない。
それどころか、強い倦怠感に襲われてすらいた。
(風邪? こんなときに……)
この世界においても、風邪という病気は存在する。
アランもこの世界に転生して十年以上。
当然その中で何度か風邪を引いたことはあったが、微妙に今の自分の症状は風邪とは違うように思えた。
基本的に、風邪というのは個人によって影響の出る場所は様々だ。
鼻が詰まる者もいれば、喉が腫れる者、腹痛になる者……といったように。
そういう意味では現在のアランの状況は、風邪ではないように思えた。
「ちょっと、アラン?」
そんなアランの様子を見て、ようやくレオノーラも違和感を抱いたのだろう。
不思議そうな、それでいて不安そうな様子でアランの名前を呼ぶ。
「ぴ? ぴぴ? ぴぴ!」
アランの心核たるカロも、自分の主人が調子を悪そうにしているのに気が付いたのか、心配そうに鳴き声を上げる。
普段ならカロの鳴き声が周囲に聞こえないようにと心配するアランだったが、今は野営地が騒がしくてそんな状況ではない。
「アラン、身体の症状は?」
「意識はしっかりしてるけど、どうにも考えるのが辛い。それと、かなり強い倦怠感があるな」
「……病気? いえ、それにしては随分とタイミングが……アラン、何か妙なものを拾って食べたりはしてないでしょうね?」
自分が何か酷い侮辱を受けているのは、今の状況でもアランには理解出来た。
だが、十分に食料が用意されているのに、わざわざ拾い食いをしたり、森に入って山菜やキノコのように毒と食用の見分けがつきにくいものを食べたりもしてはいない。
「普通に食事はしたけど……」
「なら、何で……いえ、今はそれどころじゃないわね」
野営地を襲撃した盗賊が、次第に近づいてきているのが、次第に大きくなってくる喧噪の声で理解出来た。
レオノーラとしては、このままここにいてはどうしようもないのは間違いない。
何よりも厄介なのは、野営地に盗賊たちが入り込んでしまっていることだろう。
レオノーラが変身する黄金のドラゴンや、アランが呼び出せるゼオンでは、こうして混戦になってしまえば非常に戦いにくい。
「取りあえず、このままテントの中にいても盗賊たちに見つかるだけよ。今はここから避難しましょう」
「あー……うん。そうした方がいいのか?」
「全くもう」
要領を得ないかのようなアランの言葉に、レオノーラは若干の呆れを感じつつも、その身体を無理矢理起こして引っ張ってテントから出る。
本来なら、アランがいつも着ている皮鎧を着せてやりたいところだったが、今はそんな時間もない。
せめてもと、アランの武器たる長剣を持って。
そうしてテントから出れば、野営地中から戦闘の声が聞こえてくる。
「不味いわね。完全に敵に入り込まれているわ。こっちにはまだ来てないみたいだけど、いつ来てもおかしくはない、か」
レオノーラとアランのテントが用意された場所は、野営地の中でも端の方だ。
本来なら今回の切り札とも言うべきレオノーラたちは、何かあったときにもすぐに反応出来るように、野営地の中央辺りにテントを用意してもおかしくはなかった。
それが出来なかったのは色々な理由があるが、中でも一番大きな理由としては、やはりレオノーラの美貌だろう。
討伐隊の中にレオノーラのテントを用意すれば、より多くの者がレオノーラの姿を見ることになり、不埒な考えを抱く者が出て来てもおかしくはない。
だからこそ、無駄な騒動を引き起こしたくないので、今回の一件ではレオノーラのテントを野営地に外れに用意させて欲しいと言われれば、レオノーラも拒否出来るはずがなかった。
また、レオノーラのテントが野営地の端に用意されるということは、当然のようにレオノーラの仲間のアランもまた、そのテントの側に用意することになる。
そんな理由から、アランとレオノーラのテントはこのような場所にあったのだが……それが結果として、盗賊たちの注意を惹かなかったことになり、まだここは安全だった。
とはいえ、野営地の中にテントがあるのは変わりない以上、いずれ盗賊たちがここまでやって来るのも間違いはなかったが。
「あー……じゃあ、迎えが来るまでここで待ってるとか?」
「ぴ!」
アランの言葉に、カロが怒ったように鳴く。
レオノーラもまた、そんなアランの様子にその美しく整った眉を顰める。
明らかに、今のアランは普通の状態ではない。
最初は病気かとも思ったのだが、改めて考えればタイミングが良すぎる。
(盗賊が野営地を襲うのに合わせて、偶然病気に? ……それに、この野営地も盗賊に襲撃されないように十分注意をしていたはず。そうなると……)
レオノーラの頭の中に、裏切り者や内通者といった言葉が浮かぶ。
実際にしっかりと見張りがいた中でこうして襲撃が行われているのを考えれば、討伐隊の中に盗賊と繋がっている者が……それも一人や二人ではなく、十人、二十人といった数がいなければ、おかしい。
つまり、この討伐隊は最初から盗賊達に存在を知られており、さらには獲物として見られてもいたのだろう。
「ここはさっさとここから逃げるべきかしら」
盗賊たちから逃げ出すというのは、レオノーラにとっても面白くはない。
だが現状を考えた場合、自分たちがここにいても戦力にならないというのは間違いのない事実なのだ。
そうであれば、今はとにかくここから一度距離を取り……
「誰?」
何人かの人影が自分たちの方に近づいてくるのを見て、レオノーラは鋭く叫ぶ。
肩を貸しているアランの様子を気にしつつ、いざというときはすぐにでも腰にある鞭に手を伸ばせるようにしながら。
野営地の端にある自分たちのテントのある場所だけに、やってくる相手は恐らく盗賊たちだろうと、そう思いつつ。
だが……
「ご無事でしたか!」
そう笑みを浮かべつつ姿を現したのは、騎士と兵士が数人。
そんな相手ではあったが、盗賊と繋がっていると思しき相手が多数いると予想している以上、最初レオノーラの視線には疑惑の色が濃かった。
だが、やってきたのがモリクと仲の良かった騎士であるのが篝火や月明かりによって判明すると、少しだけ気を抜く。
「ええ。そちらは随分と大変なようね。まさか討伐隊に対して、これだけ大規模な夜襲を仕掛けてきて……しかも成功させるなんて」
言葉では大変だと口にしているレオノーラだが、その口調の中には責める色が強い。
当然だろう。この野営地は討伐隊がいるので絶対に安全だと言われていたにもかかわらず、実際には討伐隊の中に少なからぬ裏切り者が潜んでおり、こうして盗賊たちを招き入れたのだ。
その上、アランの様子がおかしいのもタイミングが良すぎる。
このような現状で、レオノーラが討伐隊を責めるなとういう方が無理だった。
騎士もそれが分かっているのか、申し訳なさそうな顔をして頭を下げる。
「申し訳ありません。正直なところ、こちらとしてもまさかこのようなことになるとは思ってもいませんでした。とにかく、このままここにいては盗賊たちに狙われる危険もあります。現に私たちがここに来るまでの間に、何度か盗賊と戦いましたし」
そう告げる騎士の鎧には、返り血と思しきものが付着している。
レオノーラと話している騎士だけではなく、他の騎士や兵士といった者たちまでもが同じような状況であるのを考えれば、盗賊がレオノーラたちのいるこの場所に近づいてくるのも時間の問題といったとろか。
レオノーラにしてみれば、騎士たちが盗賊たちを倒したからこそ、ここには何かがあると判断され、より多くの盗賊たちがやってくるような気がしないでもなかったのだが。
とはいえ、もし騎士たちが盗賊を倒していなければ、ここでレオノーラが盗賊と戦う必要があったのだ。
盗賊程度の相手に負けるようなつもりはレオノーラにはなかったが、調子の悪いアランという足手纏いを抱えた上では、盗賊たちの相手をするのは不可能……とまでは言わないが、難しいのは事実だ。
「そう、ありがとう。それで、これから私たちはどうすればいいのかしら? 見ての通り、アランの調子がよくないようなんだけど」
「ここにいては危険なので、野営地の中心に。現在そこでは、討伐隊の上層部が集まって防衛戦の指揮を執っています。最初こそ夜襲だったのでこちらが押されていましたが、動揺から立ち直れば盗賊相手に負けることはありません」
そう断言する様子には強い自信が……いや、確信が感じられた。
そうである以上、この場所にいるよりはそちらに向かった方がいいだろうと判断し、レオノーラは頷く。
「では、そちらに行くので案内をしてちょうだい」
「分かりました。では、こちらです」
そう言い、騎士が先導するように、そして前後左右にレオノーラとアランを囲むようにして移動し……数分歩いた瞬間、不意にレオノーラは横から強く押され、吹き飛ばされるのだった。
「……ん……あ……?」
頭がぼうっとしている状態ではあったが、聞こえてきた声にゆっくりと目を開く。
テントの周囲にいくつか存在する篝火によって、誰が自分に声をかけているのかというのを十数秒経ち、それでようやく理解する。
そして同時に、聞こえてくるの何らかの喧噪。
まだ完全に頭が起きていない状況では、何が起きているのかが全く理解出来ない。
「レオノーラ……一体、どうしたんだ?」
「馬鹿っ! この音を聞いても本当に理解出来ないの!?」
焦り……いや、憤りすら感じさせる様子で叫ぶレオノーラだったが、アランはそれでも反応が鈍い。
そんなアランの様子に、レオノーラは苛立つ。
いっそ鞭で叩けばしっかりと意識が覚醒するのではないかと思いつつ、そこまでするのは悪いかと判断し、アランの頬を少し強めに叩く。
……拳ではなく平手、いわゆるビンタだったのは、レオノーラの優しさからだろう。
強い衝撃によってようやくしっかりと意識を覚醒させることに成功したアランは、改めてテントの外から聞こえてくる喧噪に気が付く。
「これは……えっと、何が起きた? あれ?」
首を振りつつそう呟いたアランだったが、意識はある程度はっきりしているのに、どうにも頭がろくに働かない。
それどころか、強い倦怠感に襲われてすらいた。
(風邪? こんなときに……)
この世界においても、風邪という病気は存在する。
アランもこの世界に転生して十年以上。
当然その中で何度か風邪を引いたことはあったが、微妙に今の自分の症状は風邪とは違うように思えた。
基本的に、風邪というのは個人によって影響の出る場所は様々だ。
鼻が詰まる者もいれば、喉が腫れる者、腹痛になる者……といったように。
そういう意味では現在のアランの状況は、風邪ではないように思えた。
「ちょっと、アラン?」
そんなアランの様子を見て、ようやくレオノーラも違和感を抱いたのだろう。
不思議そうな、それでいて不安そうな様子でアランの名前を呼ぶ。
「ぴ? ぴぴ? ぴぴ!」
アランの心核たるカロも、自分の主人が調子を悪そうにしているのに気が付いたのか、心配そうに鳴き声を上げる。
普段ならカロの鳴き声が周囲に聞こえないようにと心配するアランだったが、今は野営地が騒がしくてそんな状況ではない。
「アラン、身体の症状は?」
「意識はしっかりしてるけど、どうにも考えるのが辛い。それと、かなり強い倦怠感があるな」
「……病気? いえ、それにしては随分とタイミングが……アラン、何か妙なものを拾って食べたりはしてないでしょうね?」
自分が何か酷い侮辱を受けているのは、今の状況でもアランには理解出来た。
だが、十分に食料が用意されているのに、わざわざ拾い食いをしたり、森に入って山菜やキノコのように毒と食用の見分けがつきにくいものを食べたりもしてはいない。
「普通に食事はしたけど……」
「なら、何で……いえ、今はそれどころじゃないわね」
野営地を襲撃した盗賊が、次第に近づいてきているのが、次第に大きくなってくる喧噪の声で理解出来た。
レオノーラとしては、このままここにいてはどうしようもないのは間違いない。
何よりも厄介なのは、野営地に盗賊たちが入り込んでしまっていることだろう。
レオノーラが変身する黄金のドラゴンや、アランが呼び出せるゼオンでは、こうして混戦になってしまえば非常に戦いにくい。
「取りあえず、このままテントの中にいても盗賊たちに見つかるだけよ。今はここから避難しましょう」
「あー……うん。そうした方がいいのか?」
「全くもう」
要領を得ないかのようなアランの言葉に、レオノーラは若干の呆れを感じつつも、その身体を無理矢理起こして引っ張ってテントから出る。
本来なら、アランがいつも着ている皮鎧を着せてやりたいところだったが、今はそんな時間もない。
せめてもと、アランの武器たる長剣を持って。
そうしてテントから出れば、野営地中から戦闘の声が聞こえてくる。
「不味いわね。完全に敵に入り込まれているわ。こっちにはまだ来てないみたいだけど、いつ来てもおかしくはない、か」
レオノーラとアランのテントが用意された場所は、野営地の中でも端の方だ。
本来なら今回の切り札とも言うべきレオノーラたちは、何かあったときにもすぐに反応出来るように、野営地の中央辺りにテントを用意してもおかしくはなかった。
それが出来なかったのは色々な理由があるが、中でも一番大きな理由としては、やはりレオノーラの美貌だろう。
討伐隊の中にレオノーラのテントを用意すれば、より多くの者がレオノーラの姿を見ることになり、不埒な考えを抱く者が出て来てもおかしくはない。
だからこそ、無駄な騒動を引き起こしたくないので、今回の一件ではレオノーラのテントを野営地に外れに用意させて欲しいと言われれば、レオノーラも拒否出来るはずがなかった。
また、レオノーラのテントが野営地の端に用意されるということは、当然のようにレオノーラの仲間のアランもまた、そのテントの側に用意することになる。
そんな理由から、アランとレオノーラのテントはこのような場所にあったのだが……それが結果として、盗賊たちの注意を惹かなかったことになり、まだここは安全だった。
とはいえ、野営地の中にテントがあるのは変わりない以上、いずれ盗賊たちがここまでやって来るのも間違いはなかったが。
「あー……じゃあ、迎えが来るまでここで待ってるとか?」
「ぴ!」
アランの言葉に、カロが怒ったように鳴く。
レオノーラもまた、そんなアランの様子にその美しく整った眉を顰める。
明らかに、今のアランは普通の状態ではない。
最初は病気かとも思ったのだが、改めて考えればタイミングが良すぎる。
(盗賊が野営地を襲うのに合わせて、偶然病気に? ……それに、この野営地も盗賊に襲撃されないように十分注意をしていたはず。そうなると……)
レオノーラの頭の中に、裏切り者や内通者といった言葉が浮かぶ。
実際にしっかりと見張りがいた中でこうして襲撃が行われているのを考えれば、討伐隊の中に盗賊と繋がっている者が……それも一人や二人ではなく、十人、二十人といった数がいなければ、おかしい。
つまり、この討伐隊は最初から盗賊達に存在を知られており、さらには獲物として見られてもいたのだろう。
「ここはさっさとここから逃げるべきかしら」
盗賊たちから逃げ出すというのは、レオノーラにとっても面白くはない。
だが現状を考えた場合、自分たちがここにいても戦力にならないというのは間違いのない事実なのだ。
そうであれば、今はとにかくここから一度距離を取り……
「誰?」
何人かの人影が自分たちの方に近づいてくるのを見て、レオノーラは鋭く叫ぶ。
肩を貸しているアランの様子を気にしつつ、いざというときはすぐにでも腰にある鞭に手を伸ばせるようにしながら。
野営地の端にある自分たちのテントのある場所だけに、やってくる相手は恐らく盗賊たちだろうと、そう思いつつ。
だが……
「ご無事でしたか!」
そう笑みを浮かべつつ姿を現したのは、騎士と兵士が数人。
そんな相手ではあったが、盗賊と繋がっていると思しき相手が多数いると予想している以上、最初レオノーラの視線には疑惑の色が濃かった。
だが、やってきたのがモリクと仲の良かった騎士であるのが篝火や月明かりによって判明すると、少しだけ気を抜く。
「ええ。そちらは随分と大変なようね。まさか討伐隊に対して、これだけ大規模な夜襲を仕掛けてきて……しかも成功させるなんて」
言葉では大変だと口にしているレオノーラだが、その口調の中には責める色が強い。
当然だろう。この野営地は討伐隊がいるので絶対に安全だと言われていたにもかかわらず、実際には討伐隊の中に少なからぬ裏切り者が潜んでおり、こうして盗賊たちを招き入れたのだ。
その上、アランの様子がおかしいのもタイミングが良すぎる。
このような現状で、レオノーラが討伐隊を責めるなとういう方が無理だった。
騎士もそれが分かっているのか、申し訳なさそうな顔をして頭を下げる。
「申し訳ありません。正直なところ、こちらとしてもまさかこのようなことになるとは思ってもいませんでした。とにかく、このままここにいては盗賊たちに狙われる危険もあります。現に私たちがここに来るまでの間に、何度か盗賊と戦いましたし」
そう告げる騎士の鎧には、返り血と思しきものが付着している。
レオノーラと話している騎士だけではなく、他の騎士や兵士といった者たちまでもが同じような状況であるのを考えれば、盗賊がレオノーラたちのいるこの場所に近づいてくるのも時間の問題といったとろか。
レオノーラにしてみれば、騎士たちが盗賊たちを倒したからこそ、ここには何かがあると判断され、より多くの盗賊たちがやってくるような気がしないでもなかったのだが。
とはいえ、もし騎士たちが盗賊を倒していなければ、ここでレオノーラが盗賊と戦う必要があったのだ。
盗賊程度の相手に負けるようなつもりはレオノーラにはなかったが、調子の悪いアランという足手纏いを抱えた上では、盗賊たちの相手をするのは不可能……とまでは言わないが、難しいのは事実だ。
「そう、ありがとう。それで、これから私たちはどうすればいいのかしら? 見ての通り、アランの調子がよくないようなんだけど」
「ここにいては危険なので、野営地の中心に。現在そこでは、討伐隊の上層部が集まって防衛戦の指揮を執っています。最初こそ夜襲だったのでこちらが押されていましたが、動揺から立ち直れば盗賊相手に負けることはありません」
そう断言する様子には強い自信が……いや、確信が感じられた。
そうである以上、この場所にいるよりはそちらに向かった方がいいだろうと判断し、レオノーラは頷く。
「では、そちらに行くので案内をしてちょうだい」
「分かりました。では、こちらです」
そう言い、騎士が先導するように、そして前後左右にレオノーラとアランを囲むようにして移動し……数分歩いた瞬間、不意にレオノーラは横から強く押され、吹き飛ばされるのだった。
0
あなたにおすすめの小説
英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜
駄作ハル
ファンタジー
異世界の大貴族レオ=ウィルフリードとして転生した平凡サラリーマン。
しかし、待っていたのは平和な日常などではなかった。急速な領土拡大を目論む帝国の貴族としての日々は、戦いの連続であった───
そんなレオに与えられたスキル『英雄召喚』。それは現世で英雄と呼ばれる人々を呼び出す能力。『鬼の副長』土方歳三、『臥龍』所轄孔明、『空の魔王』ハンス=ウルリッヒ・ルーデル、『革命の申し子』ナポレオン・ボナパルト、『万能人』レオナルド・ダ・ヴィンチ。
前世からの知識と英雄たちの逸話にまつわる能力を使い、大切な人を守るべく争いにまみれた異世界に平和をもたらす為の戦いが幕を開ける!
完結まで毎日投稿!
残念ながら主人公はゲスでした。~異世界転移したら空気を操る魔法を得て世界最強に。好き放題に無双する俺を誰も止められない!~
日和崎よしな
ファンタジー
―あらすじ―
異世界に転移したゲス・エストは精霊と契約して空気操作の魔法を獲得する。
強力な魔法を得たが、彼の真の強さは的確な洞察力や魔法の応用力といった優れた頭脳にあった。
ゲス・エストは最強の存在を目指し、しがらみのない異世界で容赦なく暴れまくる!
―作品について―
完結しました。
全302話(プロローグ、エピローグ含む),約100万字。
【完結】剣聖と聖女の娘はのんびりと(?)後宮暮らしを楽しむ
O.T.I
ファンタジー
かつて王国騎士団にその人ありと言われた剣聖ジスタルは、とある事件をきっかけに引退して辺境の地に引き籠もってしまった。
それから時が過ぎ……彼の娘エステルは、かつての剣聖ジスタルをも超える剣の腕を持つ美少女だと、辺境の村々で噂になっていた。
ある時、その噂を聞きつけた辺境伯領主に呼び出されたエステル。
彼女の実力を目の当たりにした領主は、彼女に王国の騎士にならないか?と誘いかける。
剣術一筋だった彼女は、まだ見ぬ強者との出会いを夢見てそれを了承するのだった。
そして彼女は王都に向かい、騎士となるための試験を受けるはずだったのだが……
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
異世界召喚は7回目…って、いい加減にしろよ‼︎
アノマロカリス
ファンタジー
『おぉ、勇者達よ! 良くぞ来てくれた‼︎』
見知らぬ城の中、床には魔法陣、王族の服装は中世の時代を感じさせる衣装…
俺こと不知火 朔夜(しらぬい さくや)は、クラスメートの4人と一緒に異世界に召喚された。
突然の事で戸惑うクラスメート達…
だが俺はうんざりした顔で深い溜息を吐いた。
「またか…」
王族達の話では、定番中の定番の魔王が世界を支配しているから倒してくれという話だ。
そして儀式により…イケメンの正義は【勇者】を、ギャルっぽい美紅は【聖戦士】を、クラス委員長の真美は【聖女】を、秀才の悠斗は【賢者】になった。
そして俺はというと…?
『おぉ、伝承にある通り…異世界から召喚された者には、素晴らしい加護が与えられた!』
「それよりも不知火君は何を得たんだ?」
イケメンの正義は爽やかな笑顔で聞いてきた。
俺は儀式の札を見ると、【アンノウン】と書かれていた。
その場にいた者達は、俺の加護を見ると…
「正体不明で気味が悪い」とか、「得体が知れない」とか好き放題言っていた。
『ふむ…朔夜殿だけ分からずじまいか。だが、異世界から来た者達よ、期待しておるぞ!』
王族も前の4人が上位のジョブを引いた物だから、俺の事はどうでも良いらしい。
まぁ、その方が気楽で良い。
そして正義は、リーダーとして皆に言った。
「魔王を倒して元の世界に帰ろう!」
正義の言葉に3人は頷いたが、俺は正義に言った。
「魔王を倒すという志は立派だが、まずは魔物と戦って勝利をしてから言え!」
「僕達には素晴らしい加護の恩恵があるから…」
「肩書きがどんなに立派でも、魔物を前にしたら思う様には動けないんだ。現実を知れ!」
「何よ偉そうに…アンタだったら出来るというの?」
「良いか…殴り合いの喧嘩もしたことがない奴が、いきなり魔物に勝てる訳が無いんだ。お前達は、ゲーム感覚でいるみたいだが現実はそんなに甘く無いぞ!」
「ずいぶん知ったような口を聞くね。不知火は経験があるのか?」
「あるよ、異世界召喚は今回が初めてでは無いからな…」
俺は右手を上げると、頭上から光に照らされて黄金の甲冑と二振の聖剣を手にした。
「その…鎧と剣は?」
「これが証拠だ。この鎧と剣は、今迄の世界を救った報酬として貰った。」
「今迄って…今回が2回目では無いのか?」
「今回で7回目だ!マジでいい加減にして欲しいよ。」
俺はうんざりしながら答えた。
そう…今回の異世界召喚で7回目なのだ。
いずれの世界も救って来た。
そして今度の世界は…?
6月22日
HOTランキングで6位になりました!
6月23日
HOTランキングで4位になりました!
昼過ぎには3位になっていました.°(ಗдಗ。)°.
6月24日
HOTランキングで2位になりました!
皆様、応援有り難う御座いますm(_ _)m
転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~
ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。
コイツは何かがおかしい。
本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。
目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる