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辺境にて
063話
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夜のラリアントを、アランとレオノーラは進む。
本来なら、夜というのはそこまで騒がしくない。
それが今日に限ってまだ騒がしいのは、やはりアランとレオノーラがゼオンに乗って結界を破ったから、というのが大きいのだろう。
警備兵の数が街中にはかなり多く、それ以外にもゼオンを見た者たちが未だに街中に多くいる。
とはいえ、ゼオンがアランの心核によって生み出される存在である以上、街中でそう簡単に見るようなことは出来ないのだが。
「それで、ジャクソンの店はここから遠いの?」
ローブを着てフードを被り、その美貌を周囲の人に見えないようにしたレオノーラがアランに尋ねる。
出来るだけ早く仲間と……ザラクニアの魔の手から逃れた仲間たちと合流したいという思いがあるのだろう。
アランにしてみれば、イルゼンを含めて雲海の面々は基本的に自分よりも格上の立場だ。
それだけに、恐らく逃げ延びている者も多いだろうという予想は出来る。
仲間の実力を信じているという点では、レオノーラもアランとは変わらない。
だが、レオノーラとアランでは、その立場が大きく違う。
雲海の探索者の一人で、自分が一番格下だと思っているアラン。
実力とカリスマ性で黄金の薔薇を率いているレオノーラ。
この二人の立場が違うのは、当然のことだろう。
「ああ。もうちょっと歩けば見えてくる。ただ、問題は……ジャクソンの店は知っていても、トラスートって宿は知らないんだよな。どうすればいいと思う? いっそ、その辺に歩いている連中に聞くか?」
ゼオンの騒動で、普通の夜とは思えないほどに多くの人が街中に溢れている。
いや、ゼオンの件もそうだが、やはり盗賊によってラリアントが封鎖されているという点が大きいのだろう。
だからこそ、ゼオンの件にも過敏に反応することになっている。
そんな風に、アランには思えた。
だからこそ、トラスートという宿がどこにあるのかと聞けば、思っているよりもあっさりと教えて貰えそうな気がした。
少しでも多くの情報が欲しいということは、相手が知らないで自分が知ってる情報ならそれなりに楽に教えると、そう思ったためだ。
また、いざとなればレオノーラの美貌を使って聞けば、大抵の男ならあっさりと情報を話してくれるという予想もある。
……もっとも、レオノーラの美貌を見た男が、レオノーラを口説こうと妙な問題にならないとも限らなかったが。
「出来ればあまり人目につきたつくないわ。……どうしても見つからなかったら、そうしましょう」
レオノーラとしては、早く仲間と合流したい。
だが同時に、誰かにトラスートという宿がどこにあるのかを聞いて、その結果として自分の顔を他人に覚えられるといったことも遠慮したかった。
レオノーラは自分の顔立ちが整っており、男の欲望を刺激するということは十分に理解している。
だからこそ、トラスートに早く到着したいが、人にも聞きたくないといった様子を見せていた。
「なら……あ」
そんなレオノーラに何かを言おうとしたアランだったが、その言葉が途中で止まる。
疑問を抱いたレオノーラがアランの視線を追うと、道の先にはトラスートと書かれた素っ気ない看板があった。
「あった」
「……あったわね」
アランの言葉にレオノーラが短く告げる。
だが、二人が驚いて動きを止めたのも、長い間ではない。
実際には十秒にも満たないくらいの時間だろう。
道で長時間止まっていれば……ましてや、それが一人ではなく二人であれば、当然のように目立つ。
だからこそ、アランとレオノーラの二人は人混みを縫うようにしてトラスートと看板の掲げられている宿屋に向かう。
店の前に立った二人だったが、アランが見た限りでは目の前の宿が何か特別な宿であるようには見えない。
それこそ、何も知らなければ普通の宿であると判断するだろう。
もっとも、金を貰えば犯罪者であっても匿う宿なのだから、これ見よがしに怪しげな様子を見せるというのは、警備兵達に対しては自殺行為でしかないのだろうが。
「入るわよ」
そう言い、レオノーラが扉を開ける。
扉を開けた先にあったのは、これまで普通の宿にしか見えない場所だ。
実際、何人かの客が宿の一階にあるホールで知り合いや友人と思しき者と話している。
(ここでいいんだよな?)
(多分)
アランとレオノーラの二人は視線で会話をしたあとで、宿のカウンターに向かう。
ここが本当に酒場の店主に言われた宿なのは確実なのだが、もしかして騙されたのでは? と、少しだけだがそう思いながら。
「いらっしゃい。何泊?」
宿のカウンターにいた若い男が、アランとレオノーラにそう尋ねる。
だが、レオノーラはそんな男の言葉に答える様子もなく、そっと取り出したコインをカウンターの上に置く。
「……なるほど。ちょっとここだと話せない用事か。ちょっと待ってろ。……おい、スージー! 店番を頼む!」
「あーい」
若い男の声に、カウンターの奥から一人の女が出て来た。
今までカウンターにいた男と同年代のその女は、何故かアランの顔を見て驚きの表情を浮かべる。
「え? えーっと……俺が何か?」
「スージー?」
「えっと、何でもないよ。その、ちょっと驚いただけだから」
何故自分の顔を見て驚くのかといった疑問はあったのだが、今はそれよりもこの宿に匿われている仲間と合流する方が先だった。
「分かった。なら、俺は奥の部屋でこいつらと話をするから、ここは頼んだ」
「あーい」
先程も聞こえた、どこか気の抜けるような返事を聞きながら、レオノーラとアランの二人は奥の部屋に通される。
その部屋は、少し前に酒場で通された部屋とどこか似ていた。
正確には、四方に窓の類が存在しないところや、部屋がかなり狭いというところだが。
その狭い部屋に用意されてあったテーブルの椅子も同じだろう。
もちろん全く同じという訳ではなく、ところどころ微妙に違ってはいる。
そんな中、椅子に座ったアランとレオノーラに対し、男は口を開く。
「さて、お前たちがやってきた用件は分かっている。前もって雲海や黄金の薔薇の連中に話は聞いていたからな」
単刀直入。
前置きも何もなしで尋ねてくる男だったが、その情報はアランとレオノーラの二人が欲していたものなのは間違いない。
「やはりここにいるのだな?」
「そうだ。今は……何人か、特に雲海の連中が変装して外に出ているが、黄金の薔薇は結構な人数が残っている」
「あー……やっぱり」
男の言葉に、アランの口からはそんな声が出る。
少し情報を集めれば、結界を突破してラリアントに侵入したのがゼオンであるというのは、容易に理解出来るだろうし、想像も出来るだろう。
であれば、雲海のメンバーとしてはアランを探すために街中に出るというのは、そうおかしな話ではなかった。
アランは、純粋に探索者としては決して優れている訳ではないが、心核使いとしては間違いなく非常に高い能力を持つ。
また、それを抜きにしてもアランのことを心配しているというのも大きいのだろう。
アランとレオノーラの二人が盗賊の討伐でラリアントからいなくなっていて、そのすぐあとに雲海と黄金の薔薇の面々が捕まったといのも大きいだろう。
「出来れば呼び戻して欲しいんだけど……難しいですか?」
「今は街中に出ている連中が多い。そんな中で、人目を隠れて移動している連中を見つけるのは難しい。大人しく、ここで待っていた方がいいと思うぞ。そうすれば、一旦ここに戻ってきた連中と合流出来るだろうし」
そう言われれば、アランとしてもその指示に従うしかない。
実際にここで待っていれば間違いなく戻ってくるというのに、そんな状況で無理に出て行く必要があるとは思えなかった。
「雲海の件はそれでいいとして、黄金の薔薇はここに残ってる人も多いのよね?」
「ああ。何人かは出てるが、大半は残ってる」
その言葉に、レオノーラは微妙な表情を浮かべる。
レオノーラとしては、出来れば黄金の薔薇の面々にもアランを探しに行って欲しかったのだ。
アランの心核使いとしての才能……そしてこことは違う日本という場所で生きていたが故の奇抜な発想は、黄金の薔薇としても非常に欲しいものなのだから。
また、アランと一緒に討伐隊に同行したのだから、アランが戻ってきたかもしれないということは、レオノーラが戻ってきたとしてもおかしくはない。
普段であれば、そのくらいは容易に頭が回ってもおかしくはないのだが、今回はそのようなことはなかった。
この辺は、やはりレオノーラがいないというのが、大きなことなのだろう。
実際、レオノーラが黄金の薔薇を結成してから、今までこのような状況になったことはないのだから。
もっとも、隔離されるほどに強力な心核を手に入れたのがつい最近なのだから、今のような状況になったことがなくても仕方がないのだが。
「なら、取りあえず会わせて貰える?」
「そうしよう。お前があのコインを持ってきたということは、偽物ということもないんだろうし」
酒場の店主から貰ったコインの威力は、強力だった。
もっとも、そうでもなければ、宿にやってきて表向きは秘密にしている商売の内容について話すからと言ってきた相手に、そうほいほいと事情を話したりはしないだろうが。
「ちょっと待ってろ。今から連れてくる。……いいか。一応言っておくが、くれぐれもこの部屋から出るような真似はするなよ」
そう言い残し、男が部屋から出ていく。
部屋で二人きりになったところで、アランは今の男の最後の言葉を疑問に思う。
「なぁ、今の最後の言葉って、どういう意味だと思う?」
「特に何か意味はないと思うわよ? 恐らく……いえ、ほぼ確実にね。見知らぬ客が宿の中を歩き回ると面倒なことになるから、というのが大きいんじゃない?」
「そうか? 何か意味ありげな言葉に聞こえたんだけどな」
そう告げるアランだったが、レオノーラは全く気にした様子がない。
それこそ、もし何かがあれば自分ならどうとでも出来るという、強い自信からだろう。
野営地のときとは違い、油断なく待ち……やがて、部屋の扉が開く音が聞こえ、アランとレオノーラの二人は、そちらに視線を向けるのだった。
本来なら、夜というのはそこまで騒がしくない。
それが今日に限ってまだ騒がしいのは、やはりアランとレオノーラがゼオンに乗って結界を破ったから、というのが大きいのだろう。
警備兵の数が街中にはかなり多く、それ以外にもゼオンを見た者たちが未だに街中に多くいる。
とはいえ、ゼオンがアランの心核によって生み出される存在である以上、街中でそう簡単に見るようなことは出来ないのだが。
「それで、ジャクソンの店はここから遠いの?」
ローブを着てフードを被り、その美貌を周囲の人に見えないようにしたレオノーラがアランに尋ねる。
出来るだけ早く仲間と……ザラクニアの魔の手から逃れた仲間たちと合流したいという思いがあるのだろう。
アランにしてみれば、イルゼンを含めて雲海の面々は基本的に自分よりも格上の立場だ。
それだけに、恐らく逃げ延びている者も多いだろうという予想は出来る。
仲間の実力を信じているという点では、レオノーラもアランとは変わらない。
だが、レオノーラとアランでは、その立場が大きく違う。
雲海の探索者の一人で、自分が一番格下だと思っているアラン。
実力とカリスマ性で黄金の薔薇を率いているレオノーラ。
この二人の立場が違うのは、当然のことだろう。
「ああ。もうちょっと歩けば見えてくる。ただ、問題は……ジャクソンの店は知っていても、トラスートって宿は知らないんだよな。どうすればいいと思う? いっそ、その辺に歩いている連中に聞くか?」
ゼオンの騒動で、普通の夜とは思えないほどに多くの人が街中に溢れている。
いや、ゼオンの件もそうだが、やはり盗賊によってラリアントが封鎖されているという点が大きいのだろう。
だからこそ、ゼオンの件にも過敏に反応することになっている。
そんな風に、アランには思えた。
だからこそ、トラスートという宿がどこにあるのかと聞けば、思っているよりもあっさりと教えて貰えそうな気がした。
少しでも多くの情報が欲しいということは、相手が知らないで自分が知ってる情報ならそれなりに楽に教えると、そう思ったためだ。
また、いざとなればレオノーラの美貌を使って聞けば、大抵の男ならあっさりと情報を話してくれるという予想もある。
……もっとも、レオノーラの美貌を見た男が、レオノーラを口説こうと妙な問題にならないとも限らなかったが。
「出来ればあまり人目につきたつくないわ。……どうしても見つからなかったら、そうしましょう」
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だが同時に、誰かにトラスートという宿がどこにあるのかを聞いて、その結果として自分の顔を他人に覚えられるといったことも遠慮したかった。
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だからこそ、トラスートに早く到着したいが、人にも聞きたくないといった様子を見せていた。
「なら……あ」
そんなレオノーラに何かを言おうとしたアランだったが、その言葉が途中で止まる。
疑問を抱いたレオノーラがアランの視線を追うと、道の先にはトラスートと書かれた素っ気ない看板があった。
「あった」
「……あったわね」
アランの言葉にレオノーラが短く告げる。
だが、二人が驚いて動きを止めたのも、長い間ではない。
実際には十秒にも満たないくらいの時間だろう。
道で長時間止まっていれば……ましてや、それが一人ではなく二人であれば、当然のように目立つ。
だからこそ、アランとレオノーラの二人は人混みを縫うようにしてトラスートと看板の掲げられている宿屋に向かう。
店の前に立った二人だったが、アランが見た限りでは目の前の宿が何か特別な宿であるようには見えない。
それこそ、何も知らなければ普通の宿であると判断するだろう。
もっとも、金を貰えば犯罪者であっても匿う宿なのだから、これ見よがしに怪しげな様子を見せるというのは、警備兵達に対しては自殺行為でしかないのだろうが。
「入るわよ」
そう言い、レオノーラが扉を開ける。
扉を開けた先にあったのは、これまで普通の宿にしか見えない場所だ。
実際、何人かの客が宿の一階にあるホールで知り合いや友人と思しき者と話している。
(ここでいいんだよな?)
(多分)
アランとレオノーラの二人は視線で会話をしたあとで、宿のカウンターに向かう。
ここが本当に酒場の店主に言われた宿なのは確実なのだが、もしかして騙されたのでは? と、少しだけだがそう思いながら。
「いらっしゃい。何泊?」
宿のカウンターにいた若い男が、アランとレオノーラにそう尋ねる。
だが、レオノーラはそんな男の言葉に答える様子もなく、そっと取り出したコインをカウンターの上に置く。
「……なるほど。ちょっとここだと話せない用事か。ちょっと待ってろ。……おい、スージー! 店番を頼む!」
「あーい」
若い男の声に、カウンターの奥から一人の女が出て来た。
今までカウンターにいた男と同年代のその女は、何故かアランの顔を見て驚きの表情を浮かべる。
「え? えーっと……俺が何か?」
「スージー?」
「えっと、何でもないよ。その、ちょっと驚いただけだから」
何故自分の顔を見て驚くのかといった疑問はあったのだが、今はそれよりもこの宿に匿われている仲間と合流する方が先だった。
「分かった。なら、俺は奥の部屋でこいつらと話をするから、ここは頼んだ」
「あーい」
先程も聞こえた、どこか気の抜けるような返事を聞きながら、レオノーラとアランの二人は奥の部屋に通される。
その部屋は、少し前に酒場で通された部屋とどこか似ていた。
正確には、四方に窓の類が存在しないところや、部屋がかなり狭いというところだが。
その狭い部屋に用意されてあったテーブルの椅子も同じだろう。
もちろん全く同じという訳ではなく、ところどころ微妙に違ってはいる。
そんな中、椅子に座ったアランとレオノーラに対し、男は口を開く。
「さて、お前たちがやってきた用件は分かっている。前もって雲海や黄金の薔薇の連中に話は聞いていたからな」
単刀直入。
前置きも何もなしで尋ねてくる男だったが、その情報はアランとレオノーラの二人が欲していたものなのは間違いない。
「やはりここにいるのだな?」
「そうだ。今は……何人か、特に雲海の連中が変装して外に出ているが、黄金の薔薇は結構な人数が残っている」
「あー……やっぱり」
男の言葉に、アランの口からはそんな声が出る。
少し情報を集めれば、結界を突破してラリアントに侵入したのがゼオンであるというのは、容易に理解出来るだろうし、想像も出来るだろう。
であれば、雲海のメンバーとしてはアランを探すために街中に出るというのは、そうおかしな話ではなかった。
アランは、純粋に探索者としては決して優れている訳ではないが、心核使いとしては間違いなく非常に高い能力を持つ。
また、それを抜きにしてもアランのことを心配しているというのも大きいのだろう。
アランとレオノーラの二人が盗賊の討伐でラリアントからいなくなっていて、そのすぐあとに雲海と黄金の薔薇の面々が捕まったといのも大きいだろう。
「出来れば呼び戻して欲しいんだけど……難しいですか?」
「今は街中に出ている連中が多い。そんな中で、人目を隠れて移動している連中を見つけるのは難しい。大人しく、ここで待っていた方がいいと思うぞ。そうすれば、一旦ここに戻ってきた連中と合流出来るだろうし」
そう言われれば、アランとしてもその指示に従うしかない。
実際にここで待っていれば間違いなく戻ってくるというのに、そんな状況で無理に出て行く必要があるとは思えなかった。
「雲海の件はそれでいいとして、黄金の薔薇はここに残ってる人も多いのよね?」
「ああ。何人かは出てるが、大半は残ってる」
その言葉に、レオノーラは微妙な表情を浮かべる。
レオノーラとしては、出来れば黄金の薔薇の面々にもアランを探しに行って欲しかったのだ。
アランの心核使いとしての才能……そしてこことは違う日本という場所で生きていたが故の奇抜な発想は、黄金の薔薇としても非常に欲しいものなのだから。
また、アランと一緒に討伐隊に同行したのだから、アランが戻ってきたかもしれないということは、レオノーラが戻ってきたとしてもおかしくはない。
普段であれば、そのくらいは容易に頭が回ってもおかしくはないのだが、今回はそのようなことはなかった。
この辺は、やはりレオノーラがいないというのが、大きなことなのだろう。
実際、レオノーラが黄金の薔薇を結成してから、今までこのような状況になったことはないのだから。
もっとも、隔離されるほどに強力な心核を手に入れたのがつい最近なのだから、今のような状況になったことがなくても仕方がないのだが。
「なら、取りあえず会わせて貰える?」
「そうしよう。お前があのコインを持ってきたということは、偽物ということもないんだろうし」
酒場の店主から貰ったコインの威力は、強力だった。
もっとも、そうでもなければ、宿にやってきて表向きは秘密にしている商売の内容について話すからと言ってきた相手に、そうほいほいと事情を話したりはしないだろうが。
「ちょっと待ってろ。今から連れてくる。……いいか。一応言っておくが、くれぐれもこの部屋から出るような真似はするなよ」
そう言い残し、男が部屋から出ていく。
部屋で二人きりになったところで、アランは今の男の最後の言葉を疑問に思う。
「なぁ、今の最後の言葉って、どういう意味だと思う?」
「特に何か意味はないと思うわよ? 恐らく……いえ、ほぼ確実にね。見知らぬ客が宿の中を歩き回ると面倒なことになるから、というのが大きいんじゃない?」
「そうか? 何か意味ありげな言葉に聞こえたんだけどな」
そう告げるアランだったが、レオノーラは全く気にした様子がない。
それこそ、もし何かがあれば自分ならどうとでも出来るという、強い自信からだろう。
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