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ラリアント防衛戦
084話
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モリクとスオールの交渉は、すぐに終わった。
スオールにしてみれば、心核使いを取り戻せたことは成果かもしれないが、心核使いの持つ心核を手に入れられなかったというのは、大きなマイナスだったのは間違いない。
かなり乱暴ではあるが、心核使いというのは心核があれば誰でもなれる。……もちろん、その心核使いがどのようなモンスターに変身出来るかどうかというのは別にしての話だが。
つまり、心核使いで重要なのはあくまでも心核なのだ。
だというのに、肝心のその心核を取り戻すことが出来なかったのだから、スオールにとっては大きな失点だろう。
他にスオールの成果は、ラリアントが現在増築工事を行って防御力を高めているというのと……ザラクニアが負けた原因の一つであるゼオンを間近で見たということか。
もっとも、ゼオンは特に武器を使ったりといったことはしていないので、本当に間近で見ることが出来たというだけだが。
それれでもゼオンを見たことがなかった者にしてみれば、ゼオンを近くで見たというだけで大きいのは間違いなかった。
『わあああああああああああああああああああっ!』
スオールが馬車に乗って立ち去ったのを見て、モリクが交渉している光景を見ていた者たちが歓声を上げる。
ガリンダミア帝国に一矢報いたと、ラリアントは決してお前たちに負けはしないのだと、そう態度で示して。
実際には戦いで勝った訳でもなく、あくまでも使者との交渉に勝っただけでしかない。
ガリンダミア帝国にとっては、実質的な被害はほとんどないだろう。
……いや、心核を取り戻すことが出来ないという意味では、かなり大きな被害なのは間違いなかったが。
それでも現状のガリンダミア帝国にしてみれば、まだ戦力は多い。
それでも……そう、それでもラリアントがガリンダミア帝国に一矢報いたというのは、この場合非常に大きい出来事なのだ。
次にスオールが……あるいはスオールではないかもしれないが、心核使いと兵士の代金を持ってきたときは、そこでまた自分たちがガリンダミア帝国に勝ったとして、士気を上げることが出来るだろう。
もっともそのようなことをした以上、ガリンダミア帝国がラリアントの攻略に本気になるのは間違いなかったが。
いや、元々昔からガリンダミア帝国はラリアントを……ドットリオン王国の領土を奪おうとしていた。
それを思えば、今のこの状況はこれ以上ない好機と言ってもいい。
そうである以上、ラリアントの攻略に本気を出さないということはないだろうが。
(しかし、それでも……本当にこれでよかったのか?)
歓声をその身に受けながら、モリクは少し離れた場所に立つゼオンに視線を向ける。
ゼオンが非常に強力な戦力であるというのは、戦いのときに自分の目で見て知っていた。
それこそ、アランとレオノーラの二人がいなければ、ザラクニア率いるラリアント軍と戦ったときに負けていただろうと思えるほどには。
だがそれでも、今回のように心核を全てイルゼンに渡したとなれば、ガリンダミア帝国に延々と狙われることになるのではないかと、そう思ってしまうのだ。
イルゼンもそれを知った上で今回のように提案してきたのだろうというのは、モリクにも理解出来る。
しかし……モリクから見て、ゼオンを操るアランはまだ若い。
そのような人物に、これ以上の重責を与えてもいいものかどうか。
そう思ってしまうのは、モリクの性格上どうしようもないのだろう。
すでに事態は動き出している。
そうである以上、今はそんなことを考えているよりもこれからのラリアントについて考える方が優先だろうと判断し、モリクは右手を挙げてから、大きく叫ぶ。
「見たか! 我らラリアントは、決してガリンダミア帝国に負けはしない!」
短い言葉ではあったが、それでもモリク本人の言葉ということもあり、聞いていた者たちは大勢が歓声を上げる。
「では、またガリンダミア帝国の者が来るまで、ラリアントの防護を今以上にしっかりと固め、向こうにこちらの底力を示す! それには皆の協力が必要だから、よろしく頼む!」
三度上がる歓声。
だが、今度はその歓声を最後に、ほぼ全ての者たちが自分の仕事に戻っていく。
今回の一件によって、ラリアントの士気は間違いなく上がった。
……だが、それでも圧倒的な物量でどうにか出来るとは、思えなかった。
(敵軍の接近が確定的になったら、雲海から提案されたあの策を行う必要があるか。……また、アランに頼ることになってしまうな)
そう思うも、ラリアントの現状を考えれば、取れる手段は限られているし、立っている者は親でも使えというような状況だ。
それこそ、猫の手でもいいから借りたいと思うほどに。
そうである以上、有効な戦術があるのならそれを使わないといった手段はなかった。
今は、出来るだけ早く援軍が来ること願い、同時に出来るだけ遅くガリンダミア帝国軍の侵略が遅くなることを祈るばかりだ。
「モリク様、ちょっといいですか? 報告があります」
部下の言葉に、モリクは頷き、仕事に戻るのだった。
ラリアントからそれなりに離れた場所にある草原では、現在戦いが起こっていた。
「もしかしてこの連中、ラリアントにやって来ていた盗賊の生き残りかしら!」
そう言いながら、レオノーラの振るう鞭の先端が音速を超えて長剣を持った男の顔面を抉る。
「ぎゃっ、ぎゃあああああああああああっ!」
鞭というのは、肉を裂き、骨を切断するといったような直接的な威力という点では決して強力ではない武器だ。
だが、振るわれる一撃は皮膚を破き、肉を抉り、裂くといった真似は出来る。
表面的な痛みという点では、長剣よりも上だろう。
ましてや、一流の使い手が振るう鞭の先端は容易に音速を超え、長剣といった武器よりも間合いも長い。
使う者が使えば、その威力は凶悪の一言だ。
現に、盗賊を率いていた男も、手にしていた長剣を放り投げて地面を転げ回っている。
……顔を打たれた衝撃で右目が眼球から飛び出しているのだから、そのようになっても仕方がないのだろうが。
「その可能性はありますね。ですが、私たちを襲ったのが運のつきです」
レオノーラの隣で槍を持つ女は、とてもではないがその辺の兵士には放てないような鋭い突きで、盗賊の首を狙う。
当然のことだが、首というのは胴体や頭部と比べて細い。
それだけに、一撃が致命傷となる。……ただし、それが当たればの話だが。
頭部や胴体に比べて小さく細い分、どうしてもその一撃は命中させるのが難しくなる。
それをあっさりと行っている辺り、女の技量の高さが目立つ。
「そう言えば、黄金の薔薇だけで動くのも久しぶりなような気がしますね。実際には雲海と……あ」
「馬鹿っ!」
少し離れた場所でアランピアを手に戦っていた男が、言葉の途中でしまったといったように口を押さえる。
それを聞いていた槍を持つ女は、鋭く叱るように叫ぶ。
そんなやり取りをしながらではあるが、それでも黄金の薔薇の面々は盗賊たちを相手にかなりの余裕をもって戦っていた。
「気にしないで。雲海と別行動をすると決めたのは私よ。黄金の薔薇に、無駄な被害を与える訳にはいかないでしょ」
そう言いつつも鞭を振るうレオノーラだったが、レオノーラとの付き合いが長い黄金の薔薇の面々にしてみれば、振るわれる鞭の速度や鋭さ、狙いといったものがいつもと比べて明らかに劣っているように感じられた。
また、その口から出た言葉も問題だ。
黄金の薔薇に無駄な被害を与えたくない。
それはつまり、本来なら自分もラリアントに残って雲海と一緒にガリンダミア帝国と戦いたかったが、そうすれば仲間にも被害を与えることになる。
そのような理由から、ラリアントを見捨てて雲海と別れるという行動をとったというのが、明らかだったためだ。
レオノーラの言葉を聞いていた何人かは、近くにいる仲間と目配せをする。
自分たちのためを思っての行動だというのは理解していたのだが、それでも今回の一件を考えるとレオノーラにはそれよりも自分の気持ちに素直になって動いて欲しいと、そう思ったためだ。
とはいえ、レオノーラは黄金の薔薇を率いているという強い責任感があるので、ここで何を言ってもとてもではないが聞くとは思えなかったが。
「お前ら、俺たちと戦いながら好き勝手言ってるんじゃねぇっ!」
盗賊の一人が、苛立ち混じりに叫びながら、弓で引き絞っていた矢を射る。
絶世の美女を見つけて襲ってみれば、その美女は自分たちとは比べものにならないほどの強さを持ち、その上で他の面々もその女には及ばずとも、盗賊たちではとてもではないが太刀打ち出来ない強さを持っていた。
自分たちはこの周辺では最大規模の盗賊であり、それこそ今までは多くの襲撃を成功させてきた。
だからこそ今回の襲撃も成功し、この絶世の美女をじっくりと味わうという、至福の一時が待っているはずだった。
だというのに、現実はこれだ。
死に物狂いで戦っている自分たちとは裏腹に、向こうは話をしながら戦うといったことをするだけの余裕がある。
だからこそ、話している隙を突いての一撃だったのだが……
「何かしました?」
女の持っている槍により、あっさりと射られた矢は叩き落とされる。
何が驚いたのかと言えば、盗賊の目では槍の軌跡を追うだけで精一杯だったということだろう。
明らかに、自分たちでどうにかなる技量ではないと、ようやく理解したのだ。
「くそっ、何だってこんな手練れがこんな場所にいるんだよ!」
「さて、何故かしらね。正直なところ、その辺は私にも分からないのよ。何となく、としか言いようがないわね。そんな私たちを襲った自分たちの身の不運を嘆きなさい」
そう言い、レオノーラは鞭に紫電を纏わせて男に振るい、あっという間に気絶させる。
最後の盗賊が倒れたところで、ようやく戦いは終わった。
「私たちを見れば、クランだと分かりそうなものだけど」
「レオノーラ様の美貌に釣られたんでしょうね。……それで、この盗賊たちはどうします?」
盗賊の類は、一応街や都市といった場所まで連れて行けば、犯罪奴隷として売り払うことも出来る。
また、盗賊が所有しているお宝の類も、倒した者が貰える。
結果として、あまり好みではなかったが……黄金の薔薇は生きている盗賊たちを尋問してアジトを聞き出し、そこに捕まっている者を解放し、盗賊のお宝を奪い、盗賊を犯罪奴隷として売り払って相応の――探索者基準だが――報酬を得るのだった。
スオールにしてみれば、心核使いを取り戻せたことは成果かもしれないが、心核使いの持つ心核を手に入れられなかったというのは、大きなマイナスだったのは間違いない。
かなり乱暴ではあるが、心核使いというのは心核があれば誰でもなれる。……もちろん、その心核使いがどのようなモンスターに変身出来るかどうかというのは別にしての話だが。
つまり、心核使いで重要なのはあくまでも心核なのだ。
だというのに、肝心のその心核を取り戻すことが出来なかったのだから、スオールにとっては大きな失点だろう。
他にスオールの成果は、ラリアントが現在増築工事を行って防御力を高めているというのと……ザラクニアが負けた原因の一つであるゼオンを間近で見たということか。
もっとも、ゼオンは特に武器を使ったりといったことはしていないので、本当に間近で見ることが出来たというだけだが。
それれでもゼオンを見たことがなかった者にしてみれば、ゼオンを近くで見たというだけで大きいのは間違いなかった。
『わあああああああああああああああああああっ!』
スオールが馬車に乗って立ち去ったのを見て、モリクが交渉している光景を見ていた者たちが歓声を上げる。
ガリンダミア帝国に一矢報いたと、ラリアントは決してお前たちに負けはしないのだと、そう態度で示して。
実際には戦いで勝った訳でもなく、あくまでも使者との交渉に勝っただけでしかない。
ガリンダミア帝国にとっては、実質的な被害はほとんどないだろう。
……いや、心核を取り戻すことが出来ないという意味では、かなり大きな被害なのは間違いなかったが。
それでも現状のガリンダミア帝国にしてみれば、まだ戦力は多い。
それでも……そう、それでもラリアントがガリンダミア帝国に一矢報いたというのは、この場合非常に大きい出来事なのだ。
次にスオールが……あるいはスオールではないかもしれないが、心核使いと兵士の代金を持ってきたときは、そこでまた自分たちがガリンダミア帝国に勝ったとして、士気を上げることが出来るだろう。
もっともそのようなことをした以上、ガリンダミア帝国がラリアントの攻略に本気になるのは間違いなかったが。
いや、元々昔からガリンダミア帝国はラリアントを……ドットリオン王国の領土を奪おうとしていた。
それを思えば、今のこの状況はこれ以上ない好機と言ってもいい。
そうである以上、ラリアントの攻略に本気を出さないということはないだろうが。
(しかし、それでも……本当にこれでよかったのか?)
歓声をその身に受けながら、モリクは少し離れた場所に立つゼオンに視線を向ける。
ゼオンが非常に強力な戦力であるというのは、戦いのときに自分の目で見て知っていた。
それこそ、アランとレオノーラの二人がいなければ、ザラクニア率いるラリアント軍と戦ったときに負けていただろうと思えるほどには。
だがそれでも、今回のように心核を全てイルゼンに渡したとなれば、ガリンダミア帝国に延々と狙われることになるのではないかと、そう思ってしまうのだ。
イルゼンもそれを知った上で今回のように提案してきたのだろうというのは、モリクにも理解出来る。
しかし……モリクから見て、ゼオンを操るアランはまだ若い。
そのような人物に、これ以上の重責を与えてもいいものかどうか。
そう思ってしまうのは、モリクの性格上どうしようもないのだろう。
すでに事態は動き出している。
そうである以上、今はそんなことを考えているよりもこれからのラリアントについて考える方が優先だろうと判断し、モリクは右手を挙げてから、大きく叫ぶ。
「見たか! 我らラリアントは、決してガリンダミア帝国に負けはしない!」
短い言葉ではあったが、それでもモリク本人の言葉ということもあり、聞いていた者たちは大勢が歓声を上げる。
「では、またガリンダミア帝国の者が来るまで、ラリアントの防護を今以上にしっかりと固め、向こうにこちらの底力を示す! それには皆の協力が必要だから、よろしく頼む!」
三度上がる歓声。
だが、今度はその歓声を最後に、ほぼ全ての者たちが自分の仕事に戻っていく。
今回の一件によって、ラリアントの士気は間違いなく上がった。
……だが、それでも圧倒的な物量でどうにか出来るとは、思えなかった。
(敵軍の接近が確定的になったら、雲海から提案されたあの策を行う必要があるか。……また、アランに頼ることになってしまうな)
そう思うも、ラリアントの現状を考えれば、取れる手段は限られているし、立っている者は親でも使えというような状況だ。
それこそ、猫の手でもいいから借りたいと思うほどに。
そうである以上、有効な戦術があるのならそれを使わないといった手段はなかった。
今は、出来るだけ早く援軍が来ること願い、同時に出来るだけ遅くガリンダミア帝国軍の侵略が遅くなることを祈るばかりだ。
「モリク様、ちょっといいですか? 報告があります」
部下の言葉に、モリクは頷き、仕事に戻るのだった。
ラリアントからそれなりに離れた場所にある草原では、現在戦いが起こっていた。
「もしかしてこの連中、ラリアントにやって来ていた盗賊の生き残りかしら!」
そう言いながら、レオノーラの振るう鞭の先端が音速を超えて長剣を持った男の顔面を抉る。
「ぎゃっ、ぎゃあああああああああああっ!」
鞭というのは、肉を裂き、骨を切断するといったような直接的な威力という点では決して強力ではない武器だ。
だが、振るわれる一撃は皮膚を破き、肉を抉り、裂くといった真似は出来る。
表面的な痛みという点では、長剣よりも上だろう。
ましてや、一流の使い手が振るう鞭の先端は容易に音速を超え、長剣といった武器よりも間合いも長い。
使う者が使えば、その威力は凶悪の一言だ。
現に、盗賊を率いていた男も、手にしていた長剣を放り投げて地面を転げ回っている。
……顔を打たれた衝撃で右目が眼球から飛び出しているのだから、そのようになっても仕方がないのだろうが。
「その可能性はありますね。ですが、私たちを襲ったのが運のつきです」
レオノーラの隣で槍を持つ女は、とてもではないがその辺の兵士には放てないような鋭い突きで、盗賊の首を狙う。
当然のことだが、首というのは胴体や頭部と比べて細い。
それだけに、一撃が致命傷となる。……ただし、それが当たればの話だが。
頭部や胴体に比べて小さく細い分、どうしてもその一撃は命中させるのが難しくなる。
それをあっさりと行っている辺り、女の技量の高さが目立つ。
「そう言えば、黄金の薔薇だけで動くのも久しぶりなような気がしますね。実際には雲海と……あ」
「馬鹿っ!」
少し離れた場所でアランピアを手に戦っていた男が、言葉の途中でしまったといったように口を押さえる。
それを聞いていた槍を持つ女は、鋭く叱るように叫ぶ。
そんなやり取りをしながらではあるが、それでも黄金の薔薇の面々は盗賊たちを相手にかなりの余裕をもって戦っていた。
「気にしないで。雲海と別行動をすると決めたのは私よ。黄金の薔薇に、無駄な被害を与える訳にはいかないでしょ」
そう言いつつも鞭を振るうレオノーラだったが、レオノーラとの付き合いが長い黄金の薔薇の面々にしてみれば、振るわれる鞭の速度や鋭さ、狙いといったものがいつもと比べて明らかに劣っているように感じられた。
また、その口から出た言葉も問題だ。
黄金の薔薇に無駄な被害を与えたくない。
それはつまり、本来なら自分もラリアントに残って雲海と一緒にガリンダミア帝国と戦いたかったが、そうすれば仲間にも被害を与えることになる。
そのような理由から、ラリアントを見捨てて雲海と別れるという行動をとったというのが、明らかだったためだ。
レオノーラの言葉を聞いていた何人かは、近くにいる仲間と目配せをする。
自分たちのためを思っての行動だというのは理解していたのだが、それでも今回の一件を考えるとレオノーラにはそれよりも自分の気持ちに素直になって動いて欲しいと、そう思ったためだ。
とはいえ、レオノーラは黄金の薔薇を率いているという強い責任感があるので、ここで何を言ってもとてもではないが聞くとは思えなかったが。
「お前ら、俺たちと戦いながら好き勝手言ってるんじゃねぇっ!」
盗賊の一人が、苛立ち混じりに叫びながら、弓で引き絞っていた矢を射る。
絶世の美女を見つけて襲ってみれば、その美女は自分たちとは比べものにならないほどの強さを持ち、その上で他の面々もその女には及ばずとも、盗賊たちではとてもではないが太刀打ち出来ない強さを持っていた。
自分たちはこの周辺では最大規模の盗賊であり、それこそ今までは多くの襲撃を成功させてきた。
だからこそ今回の襲撃も成功し、この絶世の美女をじっくりと味わうという、至福の一時が待っているはずだった。
だというのに、現実はこれだ。
死に物狂いで戦っている自分たちとは裏腹に、向こうは話をしながら戦うといったことをするだけの余裕がある。
だからこそ、話している隙を突いての一撃だったのだが……
「何かしました?」
女の持っている槍により、あっさりと射られた矢は叩き落とされる。
何が驚いたのかと言えば、盗賊の目では槍の軌跡を追うだけで精一杯だったということだろう。
明らかに、自分たちでどうにかなる技量ではないと、ようやく理解したのだ。
「くそっ、何だってこんな手練れがこんな場所にいるんだよ!」
「さて、何故かしらね。正直なところ、その辺は私にも分からないのよ。何となく、としか言いようがないわね。そんな私たちを襲った自分たちの身の不運を嘆きなさい」
そう言い、レオノーラは鞭に紫電を纏わせて男に振るい、あっという間に気絶させる。
最後の盗賊が倒れたところで、ようやく戦いは終わった。
「私たちを見れば、クランだと分かりそうなものだけど」
「レオノーラ様の美貌に釣られたんでしょうね。……それで、この盗賊たちはどうします?」
盗賊の類は、一応街や都市といった場所まで連れて行けば、犯罪奴隷として売り払うことも出来る。
また、盗賊が所有しているお宝の類も、倒した者が貰える。
結果として、あまり好みではなかったが……黄金の薔薇は生きている盗賊たちを尋問してアジトを聞き出し、そこに捕まっている者を解放し、盗賊のお宝を奪い、盗賊を犯罪奴隷として売り払って相応の――探索者基準だが――報酬を得るのだった。
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