剣と魔法の世界で俺だけロボット

神無月 紅

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ラリアント防衛戦

116話

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『アラン、まだ無事ね?』
『ああ、何とかな。けど、いつまでもこのままだと、こっちも保たないぞ。というか、現状でもかなり厳しい』

 近づいてくる複数の心核使いを相手に、アランはゼオンのビームライフル、腹部拡散ビーム砲、頭部バルカンといった武器を使って、近づかせないことを第一に考えて攻撃していた。
 フェルスを使おうかとも思ったのだが、残念ながら体力的、精神的な疲労から完全に操ることは出来ず、無駄に撃墜されるだけだと判断して今は使っていない。
 今の状況ではフェルスを使うよりも、それ以外の武器を使った方がいいからだと、そう思ったためだ。
 そんなアランの言葉に、ラリアントの上空を飛びながらガリンダミア帝国軍の牽制をしているレオノーラは、このままでは不味いと感じる。
 そもそも、心核使いという一人いるだけで戦局を左右することも珍しくない存在が、多数ゼオンに攻撃を集中してるのだ。
 むしろ今までよく保ったという方が正しい。
 それはアランの心核使いとしての才能が突出しているということも意味しているし、セレモーナがアランの援護に何人かの心核使いを回したというのも影響している。
 だがそれでも、やはり何事にも限界というのはあるのだ。
 今のままだと、そう長い間アランは保たない。
 そう考えたレオノーラは、再度地上を見回す。
 最初に放ったレーザーブレスの一撃によって、ガリンダミア帝国軍の多くは空を飛ぶ黄金のドラゴンを強く警戒している。
 中には黄金のドラゴンの攻撃を奇貨として城壁との間合いを詰めた者たちもいたが、その数はどうしても少なくなる。
 つまり、間違いなくレオノーラがここに来るまでと比べると、ラリアント側の負担は楽になっているのだ。
 であれば、今はアランの方に戦力を集中させても問題はなく……

(ゼオリューンになれれば、この状況も対処出来るんでしょうけど)

 ゼオリューン。
 それは、以前スタンピードをどうにかしようとしていたとき、一度だけ出来たゼオンとドラゴンの合体した姿だ。
 合体したことにより、その能力はゼオンとドラゴンのそれとは比較にならないほどに強力なものとなった。
 アランとレオノーラの間で念話が使えるのと、同じ理由……二人が持っている心核に何らかの理由があって、それで出来るだろう合体。
 とはいえ、その合体はそう簡単にできるものではない。
 実際、スタンピードの一件が終わったあとでアランとレオノーラは何度も行おうとしたのだが、それが成功したことはスタンピードの一件以来は一度もないのだから。
 だが、もし今ゼオリューンになることが出来れば……その実力は、ガリンダミア帝国軍をどうにか出来るだけのものがあるのは間違いない。
 また、ガリンダミア帝国軍がゼオリューンという存在を知らないというのも、この場合は大きい。
 ザラクニアとの戦いでゼオンと黄金のドラゴンの実力は知っているが、スタンピードの一件以来、合体したことがないのだから、その情報を持っているはずがない。
 だからこそ、今の状況でゼオリューンに合体することが出来れば、この状況を覆せるのは間違いないのだが……問題なのは、この状況で本当にそのような真似が出来るのかということだった。
 今まで一度しか成功していない、合体。
 それが今この状態で出来るかと言われて、素直に出来ると言えるはずもない。
 だが、今の状況で戦うとなると、ゼオリューンになるのが一番なのも、事実。
 スタンピードのときの戦いを思い出せば、現在ゼオンの周囲にいる心核使いを相手にしても、それを倒せるだろうという強い確信がある。

(やるのなら、今のうち……かしらね)

 今なら、ゼオンを操縦しているアランも、精神的、体力的に疲れてはいるが、それでもまだ戦える。
 レオノーラに限っては、戦場に来たばかりである以上、疲れはまだほとんどない。
 ましてや、我が物顔で上空を飛ぶ黄金のドラゴンを相手にして、地上にいるガリンダミア帝国軍の多くは迂闊にラリアントに近づけなくなっている。
 ……中には、黄金のドラゴンの存在を見たがゆえに、ラリアントの城壁に近づいた部隊もあったが。
 ともあれ、今ならまだ余裕がある。
 黄金のドラゴンという、ガリンダミア帝国軍にとっては予想外の存在が来たがゆえに。

『アラン、聞こえている? アラン』
『どうした? こっちは忙しいから、手短に頼む!』

 地上に視線を向けたレオノーラの視線に映ったのは、多数の心核使いを相手に戦っているゼオンの姿。
 一対一で戦えば、間違いなくゼオンが勝つだろう。
 だが、それはあくまでも一対一で戦えばの話だ。
 一対二、一対三といった程度なら、まだ何とか対処も出来るだろうが、その数が五、十、十五となってくれば、話は変わってくる。
 今の状況で出来るのは、少しでも自分のダメージを抑えながら攻撃をして、出来るだけ敵にダメージを与えることだろう。

『そっちが忙しいのは分かってるから、手短に言うわよ。……ゼオリューンに合体するわ』
『は!?』

 アランにとって、その言葉は完全に予想外だった。
 当然のように、アランもゼオリューンに変身すれば、それが大きな戦力となるのは、理解している。
 だが、それでも……そう、ゼオリューンへの合体が非常に難しいというのは、アランにも今までの経験から理解していた。

『無理だろ、それ! 今までで一回しか成功したことがないんだぞ!? なのに、なんで今になって……』
『今だからよ! ほら、そっち。右側から狙われてるわよ!』

 上空を飛んでいるレオノーラだからこそ分かったのか、念話を使ってアランに注意を促す。
 アランはその忠告に頷き、ビームライフルを使って自分右側から突っ込もうとしていた豹のような巨大な猫科のモンスターを撃ち抜く。
 高い俊敏性を持つ猫科のモンスターは、普通の攻撃なら回避するのはそう難しい話ではない。
 だが、それはあくまでも普通の攻撃であればの話だ。
 いくら俊敏性が高くても、ビームライフルのビームを回避出来るほどではない。

『今なら、私の存在でガリンダミア帝国軍も全面攻勢には出ていないわ。だからこそ今のうちなら、敵が警戒しているうちにゼオリューンの合体が試せるのよ』

 そう説明されるアランだったが、それでも素直に頷くことが出来ないのは、ゼオリューンへの合体の成功率の低さと……何よりも、ここで合体をするような真似をした場合、この場にいる心核使いたちがその隙を突いて城壁に攻撃するのではないかと、そう思ったためだ。
 心核使いたちは、ゼオンを倒すためにここに集まっている。
 アランもそれは当然のように知っているが、だからといってゼオンを素通りして城壁に攻撃を出来る余裕があるのであれば、そちらの行動を実行してもおかしくはない。
 もちろん、城壁にはロッコーモのように何人かの心核使いがアランの援護をするべく待機しているのだから、それでも……今の状況を考えると、多くの心核使いが来た場合、それを防ぐのは難しい。
 そして心核使いが数人でも……いや、場合によっては一人でもラリアントの中に入ってしまえば、ラリアントは大きな被害を受ける。
 ロッコーモが腕利きの心核使いであっても、一人や二人ならともかく、五人、十人といった心核使いを相手にして、どうにか出来るだけの実力はない。
 だからこそ、自分がここで少しでも粘る必要があるというのが、アランの判断だったのだが……

『今のままだと、ジリ貧でしかないわ。今はいいけど、時間が経つに連れて……いえ、今の状況でも、アランはかなり危険な状態なんでしょう?』

 それは……と。
 その言葉が事実であるゆえに、アランもレオノーラの言葉に反論することは出来なかった。
 実際、レオノーラが来る寸前にはかなり追い詰められていたのだから。
 そこにレオノーラがやって来たことで、何とか気力を振り絞って今の状況になっているのだが、この状況が長く続かないというのも、アランは理解していた。
 そしてアランが本当に限界を迎えた場合、ゼオンを倒すために集まった心核使いたちは、一気に城壁を乗り越えてラリアントに攻め込むだろう。

(なら、ここは起死回生を狙って、ゼオリューンに……いや、だが……)

 悩むアラン。
 だが、アランが悩んでいる間も、当然のように心核使いたちはそれを待っている義理はない訳で……腕が四本あるゴリラが襲ってきたのを、ビームサーベルの一閃で斬り捨てる。

『ほら、時間がないでしょ? 今は、少しでも早く決断しなさい』

 レオノーラからの念話に、アランは迷い……だが、このままだと自分はおろか、ラリアントまでもが危険なのが分かっている以上、決断をする。
 仲間を……家族を、そのまま放っておく訳にはいかないと。
 そう判断したために。

『分かった、一か八かだけど試してみるなら、それに付き合う!』
『私が考える限り、そこまで分の悪い賭けという訳でもないと思うわよ?』

 以前ゼオリューンに合体したときは、アランもレオノーラも、かなり追い詰められている状況だった。
 だからこそあのときは合体出来て、それ以降は危機感の類がないからこそ合体出来なかったのではないか。
 レオノーラは、何となく……無理矢理に理由を付けるとすれば、女の勘でゼオリューンになれたときとなれなかった理由について予想していた。
 そんなレオノーラの言葉を、アランも完全に信じた訳ではない、
 だが、今の状況を思えば、少しで楽観的な……前向きな気分になりたいと思うのは当然だった。

『分かった。なら、まずは俺の周囲にいる敵を一時的にでもいいから牽制してくれ』
『任せて』

 その言葉と共に、上空から一条のレーザーブレスが放たれる。
 それも、一発撃って終わりというのではなく、レーザーブレスを放ったままで首を動かし……それこそ、レーザーブレスをレーザーブレードのように使って、ゼオンと周囲の心核使いたちを分断するように一撃を放つ。
 ガリンダミア帝国軍の心核使いたちがその一撃に思わず数歩後退ったとろで、上空から黄金のドラゴンが半ば体当たりするかのように突っ込んできて……そしてゼオンと黄金のドラゴンが折衝した瞬間、アランはゼオリューンへの合体が成功すると、半ば本能的にではあるが、理解していた。
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