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ザッカラン防衛戦
176話
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ガリンダミア帝国軍、動く。
その報告が入ったのは、アランがダラスターを捕まえてから十日ほどが経った頃だった。
ドットリオン王国軍の偵察部隊――それもかなり遠距離を偵察する部隊――が進軍するガリンダミア帝国軍を発見したのだ。
当然のように、その情報は秘匿された。されたのだが……
「一体、どこから情報が漏れたんだろうな」
「さあ? でも、完全に情報を秘匿するのは、そう簡単な話ではないわ」
ザッカランの城壁の上から、正門を潜って逃げ出す商人やザッカランの有力者たちの姿を見送りながら、アランとレオノーラは言葉を交わす。
大樹の遺跡の一件で、ザッカランには多くの商人が商機を見いだして集まっていた。
だが、これから確実に戦場になると知っていれば、当然のようにいつまでもザッカランに留まっている訳にもいかず、逃げ出し始める。
もちろん、商人の中にはザッカランに残るという決心を固めた者もいた。
その人数は、多くはないものの決して少ない訳でもない。
今まで一度も攻略されたことのない大樹の遺跡を攻略したクランが協力している、というのがその大きな理由だろう。
また、アランが乗るゼオンの姿を直接見た者が多いというのも、その理由の一つだ。
……何より、ザッカランの住人の中には、それこそドットリオン王国軍との戦いのときに、ゼオンの実力を見ている。
それだけに、ガリンダミア帝国軍が襲ってきても何とかなると、そう考えている者も多かった。
それ以外にも、アランの所属する雲海や黄金の薔薇は今まで何度もガリンダミア帝国軍を撃退しているというのも大きいだろう。
「それでも、逃げるのは……まぁ、結局は当然の話なんだろうけどな」
「それは当然でしょう? 今の状況でここに残るというのが、むしろ疑問ね。……特に商人とか」
「商人は、損得勘定に厳しい。それでも残るってことは、やっぱり俺たちに勝ち目があると思ってるんだろ」
アランのその言葉に、レオノーラはそうねと呟く。
元王女だけに、レオノーラはその辺の認識には多少疎いのだろう。
実際には、黄金の薔薇を率いていた期間も相応に長く、商人と接することも多かったのだが。
それでも、生まれたときから一般人――探索者を一般人と認識してもいいのかどうかは微妙だが――のアランとは違う。
その上、アランの場合は前世があるのでその記憶がある分、商人の気持ちも分かりやすいのだろう。
日本にいる商人と、この世界の商人では大きく違うが。
「ともあれ、今はそれなりの数の商人が残ってくれたことを喜ぶしかないでしょうね。……それより、アランは気が付いてる?」
「何にだ?」
「ザッカランの中で妙な動きをしてる人たちがいるってことよ。……イルゼン辺りから、話は聞いてるんじゃないの?」
レオノーラの目から見ても、イルゼンは色々な意味で特殊な存在だった。
純粋に探索者としての技量では、レオノーラもイルゼンに負けるつもりはない。
だが、組織を率いる者として考えれば、その能力は間違いなくイルゼンの方が上だと、そう認識せざるをえなかったのだ。
それこそ、クランを率いる者として自分の能力は圧倒的に低いのではないか。
そう思ってしまうほどに、イルゼンの能力は高い。
そして事実、レオノーラの言葉にアランは頷く。
「その辺の話は聞いてる。元々、俺がこの前偵察に向かったのもその辺についての事情があっての話だったし。……結果として、あまり進展はなかったらしいけど」
むしろ、前回行った偵察で最も大きな利益となったのは、ダラスターを捕らえた件だろう。
今回ザッカランを取り戻すために近付いているガリンダミア帝国軍については、何の情報も持ってはいなかった。
だが、その代わりにガリンダミア帝国に対する情報……それも、いわゆる色々な貴族の醜聞については、同じ穴のムジナだからか、結構な情報を持っていた。
イルゼンが見せた笑みを思えば、恐らくろくでもないことなのだろうというのは、アランにも容易に想像出来たが、取りあえずその辺に突っ込むと藪蛇となりそうだったので、アランはスルーしている。
「とにかく、私たちも戦いの準備はしっかりとする必要があるわね。……特にアランの場合はしっかりと」
そう言われれば、アランとしては何も言い返せない。
心核使いとしては、レオノーラに負けるつもりは全くない。
だが、生身での戦いとなれば、それこそ奇跡でも起きない限りアランはレオノーラに勝つことは出来ないのかだから。
そして、奇跡というのはそう簡単に起きないからこそ、奇跡と言われるのだ。
「分かってるよ。一応、雲海の方で何人か護衛として俺につけてくれるって話だし」
一応とはいえ、探索者の自分が仲間に護衛される。
正直なところを言えば、それは非常に悔しい。
しかし、ガリンダミア帝国軍と戦うのに、ゼオンという戦力は絶対的に必要だ。
そうである以上、アランとしてはイルゼンが決めたその決定に異を唱えることは出来ない。
「そう、なら安心ね」
レオノーラとしても、アランについては心配していたのか、安心したように呟く。
心配されたアランとしては、若干面白くないところも多かったが。
「レオノーラ様!」
と、城壁の上に不意にそんな声が響く。
レオノーラだけではなく、アランもまた声のした方に視線を向けると、そこには黄金の薔薇の探索者が走ってきている。
一体何があったのか、その表情には切迫した表情が浮かんでいた。
『……』
アランとレオノーラは、無言で視線を交わす。
そして、すぐにレオノーラが走ってきた探索者に尋ねる。
「そんなに急いで、どうしたの? 何か問題でも?」
「はい。これはアランにも……いえ、雲海にも関係のある話なのですが……」
「雲海にも?」
レオノーラの視線が、一瞬アランに向けられる。
その視線に嫌な予感を覚えたアランは、すぐにレオノーラの隣まで移動した。
「何があったんです?」
「ザッカランの住人の一部が、雲海と黄金の薔薇にここから出て行くようにと、そう主張している」
「それは……また……」
少しだけ驚きながら、レオノーラが呟く。
レオノーラも、ザッカランの中にガリンダミア帝国軍の手の者が混ざっているというのは、予想していた。
だが、それでもまさかここまで直接的な行動に移るとは、思っていなかったのだ。
(そもそも、まだガリンダミア帝国軍が到着していない。となると……手柄を焦った者の独断かしら? けど、それにしてもお粗末としか言いようがないわね)
黄金の髪を弄りながら、少しだけ考え……ふと、思いつく。
「もしかして囮?」
「囮、ですか?」
「ええ。わざわざこうして目立った真似をする以上、何か別の隠さなければならないことを隠そうとしている。……そうは思えないかしら?」
「それは……そう言われると、そんな気がしますね」
わざわざ目立つような真似をしたのだから、それが囮だという可能性は高い。
横で二人の話を聞いていたアランが口を開く。
「取りあえず、俺はイルゼンさんに話してくる。イルゼンさんなら、何か情報を掴んでいる可能性は高いし」
アランから見ても意味不明な情報収集能力を持っているイルゼンなら、今回の一件についても何か知ってるのではないか。
そんな思いで告げたアランは、城壁から降りていく。
「ええ、お願い。こっちでも色々と探ってみるから」
アランの背中に、そう声を掛けるレオノーラ。
今回の一件が、侵入していた者の暴走だとすると色々と不味い。
暴走だけに、本来なら考えられない行動を取らないとも限らないのだ。
相手の尻尾を掴むという点では間違いないのかもしれないが、暴走しているが故にレオノーラが思いも寄らない行動を取らないとも限らない。
「それにしても……アランの態度、普通に考えれば妙ですよね?」
報告を持ってきた男の言葉に、レオノーラは何が? と視線を向ける。
そんなレオノーラの視線で何が言われているのかが分かったのだろう。
男は少し誤魔化すように、口を開く。
「レオノーラ様に対しては普通に話しているのに、私たちに対しては丁寧な言葉遣いじゃないですか。……これ、普通なら逆ですよね?」
「その辺はしょうがないわよ」
アランにとって、レオノーラというのは自分が転生してきたという秘密を知っていて、自分と同じくらい強力な心核使いだという相手だ。
それに対して、レオノーラの部下は貴族出身。
……実際には、レオノーラも王女なのだから、そういう意味ではむしろ他の面々よりも身分的には上なのだが。
ただし、やはりアランにとってレオノーラは……そう、壁の内側にいる相手なのだろう。
レオノーラとしても、正直なところアランとのそんな関係は決して嫌いではなく、寧ろ好ましい。
だからこそ、今の状況では特に問題はなかった。
アランにとってレオノーラが特別な存在であるように、レオノーラにとってもアランは特別な存在だったと、そういうことなのだろう。
「雲海と黄金の薔薇は、出て行け!」
『出て行け!』
イルゼンのいる場所……雲海の宿舎となっている場所に向かう途中、アランの耳はそんな声を聞き取る。
その声が何を意味しているのかというのは、それこそすぐに分かった。
何しろ、この一件の情報を聞いてイルゼンに会いにきたのだから。
とはいえ……
(不味いな)
その言葉は、二重の意味を持っていた。
一つは、雲海の心核使い……それもゼオンのパイロットとして、アランの顔はかなり売れている。
また、もう一つはアランが思っていた以上にこの騒動に参加している者が多かったということだ。
てっきり、一人や二人……とは言わないまでも、十人かそこらが騒いでいるのだろうと、そう予想していたアランだったが、聞こえてくる声はそれよりもかなり多い。
レオノーラと話していた時もそうだったが、現在ザッカランにはかなり多くの商人が残っている。
そのような状況でこのような真似をするのは、それこそ自殺行為としかアランには思えなかったのだが……逆に言えば、そのような状況でも騒動を起こすだけの何かがあるのだと、そう理解するのだった。
その報告が入ったのは、アランがダラスターを捕まえてから十日ほどが経った頃だった。
ドットリオン王国軍の偵察部隊――それもかなり遠距離を偵察する部隊――が進軍するガリンダミア帝国軍を発見したのだ。
当然のように、その情報は秘匿された。されたのだが……
「一体、どこから情報が漏れたんだろうな」
「さあ? でも、完全に情報を秘匿するのは、そう簡単な話ではないわ」
ザッカランの城壁の上から、正門を潜って逃げ出す商人やザッカランの有力者たちの姿を見送りながら、アランとレオノーラは言葉を交わす。
大樹の遺跡の一件で、ザッカランには多くの商人が商機を見いだして集まっていた。
だが、これから確実に戦場になると知っていれば、当然のようにいつまでもザッカランに留まっている訳にもいかず、逃げ出し始める。
もちろん、商人の中にはザッカランに残るという決心を固めた者もいた。
その人数は、多くはないものの決して少ない訳でもない。
今まで一度も攻略されたことのない大樹の遺跡を攻略したクランが協力している、というのがその大きな理由だろう。
また、アランが乗るゼオンの姿を直接見た者が多いというのも、その理由の一つだ。
……何より、ザッカランの住人の中には、それこそドットリオン王国軍との戦いのときに、ゼオンの実力を見ている。
それだけに、ガリンダミア帝国軍が襲ってきても何とかなると、そう考えている者も多かった。
それ以外にも、アランの所属する雲海や黄金の薔薇は今まで何度もガリンダミア帝国軍を撃退しているというのも大きいだろう。
「それでも、逃げるのは……まぁ、結局は当然の話なんだろうけどな」
「それは当然でしょう? 今の状況でここに残るというのが、むしろ疑問ね。……特に商人とか」
「商人は、損得勘定に厳しい。それでも残るってことは、やっぱり俺たちに勝ち目があると思ってるんだろ」
アランのその言葉に、レオノーラはそうねと呟く。
元王女だけに、レオノーラはその辺の認識には多少疎いのだろう。
実際には、黄金の薔薇を率いていた期間も相応に長く、商人と接することも多かったのだが。
それでも、生まれたときから一般人――探索者を一般人と認識してもいいのかどうかは微妙だが――のアランとは違う。
その上、アランの場合は前世があるのでその記憶がある分、商人の気持ちも分かりやすいのだろう。
日本にいる商人と、この世界の商人では大きく違うが。
「ともあれ、今はそれなりの数の商人が残ってくれたことを喜ぶしかないでしょうね。……それより、アランは気が付いてる?」
「何にだ?」
「ザッカランの中で妙な動きをしてる人たちがいるってことよ。……イルゼン辺りから、話は聞いてるんじゃないの?」
レオノーラの目から見ても、イルゼンは色々な意味で特殊な存在だった。
純粋に探索者としての技量では、レオノーラもイルゼンに負けるつもりはない。
だが、組織を率いる者として考えれば、その能力は間違いなくイルゼンの方が上だと、そう認識せざるをえなかったのだ。
それこそ、クランを率いる者として自分の能力は圧倒的に低いのではないか。
そう思ってしまうほどに、イルゼンの能力は高い。
そして事実、レオノーラの言葉にアランは頷く。
「その辺の話は聞いてる。元々、俺がこの前偵察に向かったのもその辺についての事情があっての話だったし。……結果として、あまり進展はなかったらしいけど」
むしろ、前回行った偵察で最も大きな利益となったのは、ダラスターを捕らえた件だろう。
今回ザッカランを取り戻すために近付いているガリンダミア帝国軍については、何の情報も持ってはいなかった。
だが、その代わりにガリンダミア帝国に対する情報……それも、いわゆる色々な貴族の醜聞については、同じ穴のムジナだからか、結構な情報を持っていた。
イルゼンが見せた笑みを思えば、恐らくろくでもないことなのだろうというのは、アランにも容易に想像出来たが、取りあえずその辺に突っ込むと藪蛇となりそうだったので、アランはスルーしている。
「とにかく、私たちも戦いの準備はしっかりとする必要があるわね。……特にアランの場合はしっかりと」
そう言われれば、アランとしては何も言い返せない。
心核使いとしては、レオノーラに負けるつもりは全くない。
だが、生身での戦いとなれば、それこそ奇跡でも起きない限りアランはレオノーラに勝つことは出来ないのかだから。
そして、奇跡というのはそう簡単に起きないからこそ、奇跡と言われるのだ。
「分かってるよ。一応、雲海の方で何人か護衛として俺につけてくれるって話だし」
一応とはいえ、探索者の自分が仲間に護衛される。
正直なところを言えば、それは非常に悔しい。
しかし、ガリンダミア帝国軍と戦うのに、ゼオンという戦力は絶対的に必要だ。
そうである以上、アランとしてはイルゼンが決めたその決定に異を唱えることは出来ない。
「そう、なら安心ね」
レオノーラとしても、アランについては心配していたのか、安心したように呟く。
心配されたアランとしては、若干面白くないところも多かったが。
「レオノーラ様!」
と、城壁の上に不意にそんな声が響く。
レオノーラだけではなく、アランもまた声のした方に視線を向けると、そこには黄金の薔薇の探索者が走ってきている。
一体何があったのか、その表情には切迫した表情が浮かんでいた。
『……』
アランとレオノーラは、無言で視線を交わす。
そして、すぐにレオノーラが走ってきた探索者に尋ねる。
「そんなに急いで、どうしたの? 何か問題でも?」
「はい。これはアランにも……いえ、雲海にも関係のある話なのですが……」
「雲海にも?」
レオノーラの視線が、一瞬アランに向けられる。
その視線に嫌な予感を覚えたアランは、すぐにレオノーラの隣まで移動した。
「何があったんです?」
「ザッカランの住人の一部が、雲海と黄金の薔薇にここから出て行くようにと、そう主張している」
「それは……また……」
少しだけ驚きながら、レオノーラが呟く。
レオノーラも、ザッカランの中にガリンダミア帝国軍の手の者が混ざっているというのは、予想していた。
だが、それでもまさかここまで直接的な行動に移るとは、思っていなかったのだ。
(そもそも、まだガリンダミア帝国軍が到着していない。となると……手柄を焦った者の独断かしら? けど、それにしてもお粗末としか言いようがないわね)
黄金の髪を弄りながら、少しだけ考え……ふと、思いつく。
「もしかして囮?」
「囮、ですか?」
「ええ。わざわざこうして目立った真似をする以上、何か別の隠さなければならないことを隠そうとしている。……そうは思えないかしら?」
「それは……そう言われると、そんな気がしますね」
わざわざ目立つような真似をしたのだから、それが囮だという可能性は高い。
横で二人の話を聞いていたアランが口を開く。
「取りあえず、俺はイルゼンさんに話してくる。イルゼンさんなら、何か情報を掴んでいる可能性は高いし」
アランから見ても意味不明な情報収集能力を持っているイルゼンなら、今回の一件についても何か知ってるのではないか。
そんな思いで告げたアランは、城壁から降りていく。
「ええ、お願い。こっちでも色々と探ってみるから」
アランの背中に、そう声を掛けるレオノーラ。
今回の一件が、侵入していた者の暴走だとすると色々と不味い。
暴走だけに、本来なら考えられない行動を取らないとも限らないのだ。
相手の尻尾を掴むという点では間違いないのかもしれないが、暴走しているが故にレオノーラが思いも寄らない行動を取らないとも限らない。
「それにしても……アランの態度、普通に考えれば妙ですよね?」
報告を持ってきた男の言葉に、レオノーラは何が? と視線を向ける。
そんなレオノーラの視線で何が言われているのかが分かったのだろう。
男は少し誤魔化すように、口を開く。
「レオノーラ様に対しては普通に話しているのに、私たちに対しては丁寧な言葉遣いじゃないですか。……これ、普通なら逆ですよね?」
「その辺はしょうがないわよ」
アランにとって、レオノーラというのは自分が転生してきたという秘密を知っていて、自分と同じくらい強力な心核使いだという相手だ。
それに対して、レオノーラの部下は貴族出身。
……実際には、レオノーラも王女なのだから、そういう意味ではむしろ他の面々よりも身分的には上なのだが。
ただし、やはりアランにとってレオノーラは……そう、壁の内側にいる相手なのだろう。
レオノーラとしても、正直なところアランとのそんな関係は決して嫌いではなく、寧ろ好ましい。
だからこそ、今の状況では特に問題はなかった。
アランにとってレオノーラが特別な存在であるように、レオノーラにとってもアランは特別な存在だったと、そういうことなのだろう。
「雲海と黄金の薔薇は、出て行け!」
『出て行け!』
イルゼンのいる場所……雲海の宿舎となっている場所に向かう途中、アランの耳はそんな声を聞き取る。
その声が何を意味しているのかというのは、それこそすぐに分かった。
何しろ、この一件の情報を聞いてイルゼンに会いにきたのだから。
とはいえ……
(不味いな)
その言葉は、二重の意味を持っていた。
一つは、雲海の心核使い……それもゼオンのパイロットとして、アランの顔はかなり売れている。
また、もう一つはアランが思っていた以上にこの騒動に参加している者が多かったということだ。
てっきり、一人や二人……とは言わないまでも、十人かそこらが騒いでいるのだろうと、そう予想していたアランだったが、聞こえてくる声はそれよりもかなり多い。
レオノーラと話していた時もそうだったが、現在ザッカランにはかなり多くの商人が残っている。
そのような状況でこのような真似をするのは、それこそ自殺行為としかアランには思えなかったのだが……逆に言えば、そのような状況でも騒動を起こすだけの何かがあるのだと、そう理解するのだった。
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