剣と魔法の世界で俺だけロボット

神無月 紅

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ザッカラン防衛戦

198話

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 ギィ……と、そんな音を立てて門が開く。
 当然ながら、いきなり門が開けばその門を見張っていた兵士たちも気が付く。
 本来なら、門を開ける仕掛けのあった場所にいた兵士たちと同じように全員倒してしまいたかったのだが……門という重要な場所を見張るとなると、当然のように人数は多いし、一ヶ所に固まっている訳でもない。
 そうである以上、全員を一気に倒すことが出来ないのだから、迂闊に相手を警戒させないように倒すという手段は取らず、門が開いたら馬を奪って一気に逃げ出すという選択をすることになる。

「え? ……お、おい。門が開いてるぞ!?」

 兵士の一人がいきなり開いた門を見て叫び、その声が響くと同時に他の者たちもいきなり門が開いたのに気が付く。
 ……このときソランタたちにとって幸運だったのは、門が開いたということを叫んだことにより、門の周辺にいた兵士たちの視線が門だけに向けられたことだろう。
 いきなり門が開いたのだから、それお守っている兵士たちにしてみれば驚くなという方が無理だたが。
 ともあれ、そのおかげで兵士たちは門から少し離れた場所にある馬の側にいたソランタたちに気が付くことはなく……ソランタたちは、素早く馬を連れ出すことに成功する。
 ここまで来れば、もうソランタのスキルを使う余裕はないので、ソランタたちの姿は周囲から見えている。
 そんな中、ソランタたちは次々と自分で選んだ馬に乗る。
 ソランタも、軍に所属することになったときに乗馬訓練はしているので、馬には乗れた。
 もっとも、騎兵隊のような熟練者かと言われると、その答えは否なのだが。
 そしてアランは、最も体格の大きな馬の背に兵士の一人と同乗する形となる。

「行くぞ」

 周囲に聞こえず、仲間だけに聞こえる声で兵士が告げると、馬に乗ったソランタたちは一気に走り始める。
 そして、ここにいたってようやく門の側にいた兵士たちもソランタたちに気が付くが……もう遅い。
 本気で走らせている馬の前に、人が一人や二人立ち塞がっても意味はない。
 それでも兵士たちはそんな馬の前に立ち塞がろうと動くが、馬の速さに人が追いつくのは難しい。
 ましてや、いきなりの展開だったのだから、その辺はよけいにだろう。

「よし、このまま門を……ぐぁっ!」

 ソランタの仲間の兵士が、このまま門を潜り抜けてガリンダミア帝国軍に合流すると、そう言おうとした瞬間、不意に悲鳴を上げて馬から転げ落ちる。
 一体何があった。
 そんな風に疑問を抱くソランタたちだったが、現在の自分たちの状況は理解している。
 まずは一刻も早くザッカランを抜け出し、ガリンダミア帝国軍に合流するのだ。
 そうすれば。そこには多くの戦力が存在し……それこそザッカランから敵がやってきても対処するのは可能だ。
 いや、それどころか、ガリンダミア帝国軍としては高い防御力を持つ城壁からザッカランを守ってりドットリオン王国軍が出て来てくれるのは、願ったり叶ったりといったところだろう。
 であれば、敵は追ってこないはず。
 そう思いながら、ソランタたちは門を抜けていく。
 ……背後で、いきなりの攻撃に馬から落ちた兵士がソランタたちを追わせまいと痛む身体で無理をしながら門の近くにいた兵士たちと戦っている喧噪を聞きながら。

「逃がしたか」

 門の前で暴れている兵士を見ながら、ニコラスは風の刃を放った杖を下ろし、苦々しげに呟く。
 だが、当然のように全員を逃がした訳ではない。
 自分の魔法によって一人を怪我はさせたが殺さずに捕らえることには成功したし、門を開けた者も多少の被害は出たが捕らえることに成功したという話を聞いている。
 その者たちから情報を得ることは出来るだろうし、何より……

「ギャオオオオオオオオオ!」

 ザッカランの上空を、黄金のドラゴンが飛んで行ったのを見てニコラスが満足そうに頷く。
 レオノーラが心核で変身した黄金のドラゴン。
 その実力は非常に高く、それこそ普通の心核使いであれば容易に蹂躙出来るだけの実力があった。
 息子を連れ去った者たちがザッカランの外に逃げてしまったのは、ニコラスにとっても……そして現在自分のいる場所に向かって走ってきているだろうリアにとっても、大きな失態だ。
 だがそれでも、レオノーラが追ってくれたということで、強い安心の気持ちがあった。
 レオノーラは、自分の前でアランが連れ去られたことを強く悔やんでいた。
 それだけに、レオノーラなら敵が逃げてもそれを捕らえることは絶対に出来るはずだった。

「大人しく捕まっていればよかったものを」

 黄金のドラゴンに追われるという悪夢を体験するよりは、自分の魔法で捕まった者のように捕まっていれば、後日悪夢を見たりはしないものをと。
 そんな風に思うニコラスは空を飛んでいるレオノーラに向かって小さく頭を下げるのだった。





「おい、ドラゴンだ! 黄金のドラゴンがやって来たぞ! あれは、話に聞く黄金の薔薇を率いてる心核使いだ!」

 馬に乗ってガリンダミア帝国軍に向かっていたソランタたちだったが、当然のように追撃してくる者がいるかもしれないと、後方はしっかり確認していた。
 だが、籠城戦をやっている中で門を開けっぱなしにする方が不味いと判断したのか、それとも十分追撃出来るだけの馬を用意出来なかったのか。
 はたまた、それ以外の理由なのかは分からなかったが、ともあれソランタたちが出て来た門から追撃は来なかった。
 その変わり、後ろを警戒していた兵士が見たのはザッカランの上空から飛んでくる黄金のドラゴンの姿。
 ある意味、最悪の追っ手だろう。
 だが……相手が黄金のドラゴンだからこそ、対抗出来る手段がある。

「馬から飛び降りろ! ソランタのスキルで隠れるぞ! ザッカランから出たんだから、またスキルで隠れても構わないはずだ!」

 その叫びが聞こえた者たちは皆が馬から飛び降りる。
 そんな中で一番大変だったのは、アランを一緒の馬に乗せていた者だろう。
 全速力で走っている状態で、自分と一緒の馬に荷物のように乗せていたアランを持って馬から下りないといけなかったのだから。
 それも全速力で走っていた馬で。
 実際、アランを抱えていた兵士は着地した衝撃を完全に殺すようなことは出来ず、足を軽くではあるが挫くことになってしまった。
 それでも今はそんなことよりもやるべきことがあると、兵士は痛みを我慢してアランを抱えたまま仲間と合流する。

「発動します!」

 ソランタの叫びと共に、周囲に集まってきた兵士たちの姿が消える。
 当然のように、それは空を飛んで追ってきていたレオノーラからもしっかりと確認出来た。

(厄介な真似を!)

 黄金のドラゴンはそんな苛立ちを含めて雄叫びを上げる。
 今のレオノーラであれば、それこそ遠くからでも敵の姿は容易に確認出来た。
 それだけに、逃げていた馬から飛び降りたという光景は、しっかりとその目に映ったのだ。
 これは、正直なところレオノーラが一番やって欲しくないとことだった。
 何しろ、敵の姿が消えている以上、具体的にどこにいるのかというのが全く分からないのだから。
 もしアランを連れていないのであれば、レーザーブレスを使って地上を……馬から飛び降りた面々のいる辺りを手当たり次第に攻撃するといったような真似も出来ただろう。
 だが、姿を消した者の中にアランがいるとなると、そんな真似が出来るはずもない。
 アランを助け出すのに、そのアランが大怪我をしたり……最悪死んでしまうような行動が出来るはずがない。
 アランがゼオンに乗っているのならば、多少は無理な行動も出来るだろう。
 だが、捕らえられている今の状況で、まさか自由に心核を使わせて貰えるなどとはレオノーラには思えなかった。
 だからこそ、厄介な真似をとしみじみと思ったのだ。
 また、黄金のドラゴンとなって今のレオノーラであっても、ソランタのスキルで姿を消した一行を見つけることは出来ないというのが痛い。
 黄金のドラゴンとなったレオノーラには、当然のように人間だった頃よりも鋭い五感や……それを超える、第六感をも持つ。
 だというのにそれでも姿を消したアランたちを見つけることが出来ないのは、それだけソランタのスキルが強力であるということの証だろう。
 周囲を威圧するような鳴き声を上げながら、アランたちがいると思われる一帯の上空を飛ぶレオノーラ。
 レーザーブレスを放つこともできず、そもそもアランたちがどこにいるのかも分からない。
 そうである以上、今の状況ではそれくらいしか出来ることはなかった。
 ……とはいえ、ドラゴンの雄叫びだ。それくらいという言葉では言い表せないほどの影響を周囲に与えている。
 ザッカランの兵士たちは、黄金のドラゴンが味方だということを理解しているので、その雄叫び心強いものに感じられる。
 それこそ、万の援軍を得たかのような士気の上がり方だ。
 ガリンダミア帝国軍によって落ちていた士気、一時的にではあっても天井知らずに上がっていた。
 そんなザッカランの兵士たちとは反対の効果を発揮しているのが、ガリンダミア帝国軍だ。
 一定以上の地位にある者や、情報に聡い者はザッカランにレオノーラという黄金のドラゴンに変身する心核使いがいるというのは知っていた。
 だが、それ以外の大多数は、そこまで情報に詳しい訳でもない。
 いきなり黄金のドラゴンが姿を現せばパニックなると考え、薄らとした情報はそれなりに広がっていたのだが……それを信じる者は、どうしても多くはない。
 また信じていた者であっても、話を聞いただけだけの者と、実際にその目でしっかりと確認したのでは存在感が違う。
 結果として、今回の一件においてはいきなり姿を現した黄金のドラゴン……それも明らかに怒り狂っていると思われる存在を目にした者の中には、半ばパニックになった者も多かった。
 それでも完全にパニックになって瓦解するよりも前に、しっかりと上に立つ者たちが纏め直したあたり、さすがに連戦連勝――ドットリオン王国軍には負けたが――のガリンダミア帝国軍ということだろう。
 だが……空を飛ぶ黄金のドラゴンは、そんな周囲の様子を全く気にした様子もなく、アランの姿を探して鳴き声を上げるのだった。
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