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ザッカラン防衛戦
199話
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「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」
ザッカランから……いや、空に存在する黄金のドラゴンから少しでも遠ざかるべく、ソランタたちは必死に走っていた。
腕利きが揃っていたのだが、今までのやり取りでその人数も随分と減ってしまった。
そして当然の話だが、人数が減れば一人辺りの仕事も増える。
現在、その最大の仕事はアランを運ぶことだった。
現在、アランは兵士たちによって気絶させられており、言葉を発するようなこともない。
だが……気を失った人というのは、普通に運ぶよりも重く感じてしまうものだ。
それの重さが、現在兵士たちを苦しめている。
しかし、だからといってこの状況でアランが目覚めて暴れるような真似をされるのも非常に困る。
今の状況を考えれば、アランを気絶させるというのが最善の選択なのだから。
そんな気絶したアランを抱えつつ、男たちは何とか少しでもこの場から離れるべく行動を行う。
「おい、このままガリンダミア帝国軍に向かうのか!?」
兵士の一人が、近くにいる者たちだけに聞こえるような声で尋ねる。
元々の計画では、ザッカランを脱出したらガリンダミア帝国軍に合流する予定だった。
だが、それはあくあまでも元々の計画であればの話だ。
今の状況でそのような真似をした場合、それこそ上空にいる黄金のドラゴンがガリンダミア帝国軍に攻撃してくるのではないかと、そう思ってしまう。
もちろん、ガリンダミア帝国軍の何も心核使いはいる。
それもただの心核使いではない。
ドットリオン王国軍に……正確には協力者としての立場を取っているアランとレオノーラという、強力な心核使いがいると知っている以上、それに対処するための心核使いを連れてくると、ソランタを含めた者たちは、そう聞かされていた。
だが……ならば、何故現状でその心核使いが出て来て、黄金のドラゴンに対処しないのか。
もしここで黄金のドラゴンを倒すことが出来れば、それはガリンダミア帝国軍として大きな意味を持つことのはずだろう。
そんな状況で、黄金のドラゴンに狙われている自分たちがガリンダミア帝国軍の陣地に逃げ込むような真似をした場合、それはガリンダミア帝国軍に対する黄金のドラゴンの攻撃を誘発し、敗北に直結するのではないか。
それを恐れたのだ。
だが……ここでガリンダミア帝国軍に向かわないというのは、味方を見捨てるということにもなりかねない。
何より、ザッカラン攻略に参加しているガリンダミア帝国軍の中には、ソランタや兵士たちが忠誠を誓っているバストーレがいるのだ。
そのバストーレを見捨てるような真似をしたりといったようなことは、当然の話だが出来るはずもない。
だとすれば、現在のソランタたちがやるべきことはやはりガリンダミア帝国軍の陣地に逃げ込むことなのだが……むしろ、自分たちが陣地に逃げ込むことで、黄金のドラゴンの攻撃の矛先がそちらに向くというのは、出来れば遠慮したかった。
「なら、ソランタとアランを運んでる奴以外の一人が陣地に向かって、アランを確保した件を説明してくるってのはどうだ? そうすれば、任務の成功を知らせることが出来るし、バストーレ様ならこの状況でもどうとでも上手く出来るだろう」
兵士の一人の言葉は、納得出来る方法ではあった。
現実的ですらある。
だが……それでも現在のこの状況で、また一人兵士が減るのは避けたいと、そう思うのも皆同様に思うことだった。
「迷っている暇はねえだろ。俺たちが命じられたのは、アランの確保だ。……正確には、アランとその心核のな。それを考えれば、今やるべきことをしっかりとやる必要がある。……違うか?」
提案した兵士がそう言えば、他の者も異論は口に出来ない。
今はまず、自分がやるべきことをやる必要があるというのは理解しているのだから。
「……分かった、頼む。ただし、本陣に近付くまでは俺たちも一緒に行くぞ。ここでお前が姿を現せば、あのドラゴンに見つかる可能性はあるしな」
兵士の一人が仲間の提案に頷き、そう告げる。
その言葉には強い説得力がある。
元々、ドラゴンは人間とは比べものにならないくらい鋭い五感を持っている以上、ザッカランからそう離れていない場所でいきなり兵士が姿を現せば、それを敵だと……アランを連れ去った相手だと認識するのは難しい話ではない。
そうして、ソランタたちはガリンダミア帝国軍の本陣に向かって近付いていく。
とはいえ、ソランタたちが出た扉はガリンダミア帝国軍が攻めている正門ではない。
ザッカランの兵士が少ない門である以上、当然ながら目的地までは結構な距離があった。
その結構な距離を、上空にいる黄金のドラゴンに気をつけながら移動するのだ。
感じるプレッシャーは、並大抵のものではない。
それでも、今はその行動をやらなければならないために、精神的な消耗を覚えながらも進んでいく。
黄金のドラゴンにしてみれば、ザッカラン周辺のどこにアランがいるのか分からない以上、どこに攻撃をするような真似も出来ず、ただじっと地上を睨み付けているだけだ。
……いっそガリンダミア帝国軍の方を片付けてしまおうかとも思ったが、もしかしたら何らかの手段ですでにアランがそちらに合流しているという可能性を考えると、そちらをレーザーブレスで一掃するような真似も出来ない。
ガリンダミア帝国軍の方も、突然黄金のドラゴンが姿を現したということで、先程までと違って動くに動けなくなっているが。
ここで先程までのようにザッカランにいる兵士たちを挑発したり、精神的に疲労させるために動いた場合、黄金のドラゴンの注意を惹く可能性がある。
黄金のドラゴンの登場で、ガリンダミア帝国軍もザッカラン側も双方が動けなくなってしまう。
「バストーレ様、どうします? こちらからも心核使いを出せば膠着状態を打破出来ると思いますが」
「いや、今のままでいい」
「……いいんですか?」
上司の考えは理解していた副官だったが、それでも念のためといった風に尋ねる。
それに対し、バストーレは当然といったように頷く。
「こっちに入ってる情報からでも、あの黄金のドラゴンに変身しているレオノーラが厄介な相手なのは間違いない。なら、こっちの切り札をそう簡単に見せる訳にもいかないだろ。……ただし、向こうがこっちを攻撃してくるようなことがればすぐに対処しろ」
いくら切り札であっても、味方の命と引き換えにしてまで隠すような代物ではない。
そうである以上、現在の状況が少しでも悪化しそうになれば、容赦なく切り札を使うつもりではあった。
「はい。そのように手配を。……それにしても、情報として知ってはいても、こうして実際に見ると凄いですね」
副官のしみじみとした言葉に、バストーレもまた頷く。
その言葉に異論は全く抱かなかったためだ。
空に存在する黄金のドラゴン。
その姿は、まるでこの世界の王が君臨している中のようにすら思える。
(いや、黄金のドラゴンの正体はレオノーラとかいう女なんだから、この場合は王じゃなくて女王という表現の方が的確か?)
自分でも半ば冗談であるかのように考えるバストーレだったが、それはそのように思わなければ、黄金のドラゴンの持つ迫力に圧倒されてしまいかねないからだろう。
今の状況であのような存在を前に、自分が怯むなどというところを周囲に見せる訳はいかない。
自分は将軍……この軍を率いる者なのだから。
「恐れるな! 敵はドラゴンであろうとも、結局は一人の心核使いでしかない。ここで恐れれば、向こうの思惑通りになるぞ!」
心の中には自分にも恐れはある。
それは恐れではなく、畏れと言ってもいいのかもしれない。
それだけ、ドラゴンという存在は圧倒的なのだ。
だが、そんなドラゴンの姿に圧倒されていて兵士たちも、バストーレの言葉を聞くと我に返っていく。
……実際には、バストーレも自分の中にある恐怖に押し殺されないように必死なのだが。
将軍であるバストーレは、そんな自分の様子を表に出すようなことはない。
そのおかげもあって、兵士たちは……少なくても、バストーレからそう離れていない場所にいる兵士たちは、黄金のドラゴンの存在を目にしても、恐怖や緊張から暴走するようなことはなかった。
そして周囲が落ち着いたおかげで、その他の者たちも次第に落ち着いていく。
後方からその様子を見て、バストーレは安堵する。
ここで兵士たちに暴走され、黄金のドラゴン怖さに逃げ出したり……ザッカランに向かって突撃したり、場合によっては黄金のドラゴンに向かって攻撃をしたりといったような真似をする者が出来れば、最悪としか言いようがない。
今はとにかく、落ち着くことが大事だった。
そうして落ち着いたところで……
「バストーレ様」
そんな声と共に、兵士が一人近付いてくる。
その姿を見て、今更……本当に今更ではあるが、何故ここで黄金のドラゴンが出て来たのかを理解した。
「そうか。アランを確保することに成功したのか」
「はい。ですが……」
「いや、言わなくてもいい。見れば分かる」
空中から地面を睥睨している黄金のドラゴンに視線を向け、バストーレはそう兵士の言葉を遮る。
つまり、アランの確保の成功したからこそ、それに怒りを覚えたレオノーラが黄金のドラゴンとなって姿を現したのだろう、と。
そう理解すると、バストーレの口には笑みが浮かぶ。
つい先程までは、黄金のドラゴンという存在に圧倒的なまでの恐怖を覚えていたのだが、今は何故このようなことになっているのかを理解しているために、そんな思いも消えた。
「それで、アランは?」
「すでに戦場から離れています。ソランタのスキルを使ってるので、見つかることもないでしょう」
「そうか。よくやった」
苦労して捕らえた獲物を自分の目で見ることが出来ないのは残念だったが、その機会はすぐにやってくるはずであった。
であれば、今の状況で自分たちがやるべきなのは……
「撤退だな」
あっさりと、そう断言する。
ザッカランを落とせなかったのは残念だったが、それよりも優先するアランの確保は成功したのだ。
であれば、ここは無理をする必要がないというのがバストーレの判断だった。
ザッカランから……いや、空に存在する黄金のドラゴンから少しでも遠ざかるべく、ソランタたちは必死に走っていた。
腕利きが揃っていたのだが、今までのやり取りでその人数も随分と減ってしまった。
そして当然の話だが、人数が減れば一人辺りの仕事も増える。
現在、その最大の仕事はアランを運ぶことだった。
現在、アランは兵士たちによって気絶させられており、言葉を発するようなこともない。
だが……気を失った人というのは、普通に運ぶよりも重く感じてしまうものだ。
それの重さが、現在兵士たちを苦しめている。
しかし、だからといってこの状況でアランが目覚めて暴れるような真似をされるのも非常に困る。
今の状況を考えれば、アランを気絶させるというのが最善の選択なのだから。
そんな気絶したアランを抱えつつ、男たちは何とか少しでもこの場から離れるべく行動を行う。
「おい、このままガリンダミア帝国軍に向かうのか!?」
兵士の一人が、近くにいる者たちだけに聞こえるような声で尋ねる。
元々の計画では、ザッカランを脱出したらガリンダミア帝国軍に合流する予定だった。
だが、それはあくあまでも元々の計画であればの話だ。
今の状況でそのような真似をした場合、それこそ上空にいる黄金のドラゴンがガリンダミア帝国軍に攻撃してくるのではないかと、そう思ってしまう。
もちろん、ガリンダミア帝国軍の何も心核使いはいる。
それもただの心核使いではない。
ドットリオン王国軍に……正確には協力者としての立場を取っているアランとレオノーラという、強力な心核使いがいると知っている以上、それに対処するための心核使いを連れてくると、ソランタを含めた者たちは、そう聞かされていた。
だが……ならば、何故現状でその心核使いが出て来て、黄金のドラゴンに対処しないのか。
もしここで黄金のドラゴンを倒すことが出来れば、それはガリンダミア帝国軍として大きな意味を持つことのはずだろう。
そんな状況で、黄金のドラゴンに狙われている自分たちがガリンダミア帝国軍の陣地に逃げ込むような真似をした場合、それはガリンダミア帝国軍に対する黄金のドラゴンの攻撃を誘発し、敗北に直結するのではないか。
それを恐れたのだ。
だが……ここでガリンダミア帝国軍に向かわないというのは、味方を見捨てるということにもなりかねない。
何より、ザッカラン攻略に参加しているガリンダミア帝国軍の中には、ソランタや兵士たちが忠誠を誓っているバストーレがいるのだ。
そのバストーレを見捨てるような真似をしたりといったようなことは、当然の話だが出来るはずもない。
だとすれば、現在のソランタたちがやるべきことはやはりガリンダミア帝国軍の陣地に逃げ込むことなのだが……むしろ、自分たちが陣地に逃げ込むことで、黄金のドラゴンの攻撃の矛先がそちらに向くというのは、出来れば遠慮したかった。
「なら、ソランタとアランを運んでる奴以外の一人が陣地に向かって、アランを確保した件を説明してくるってのはどうだ? そうすれば、任務の成功を知らせることが出来るし、バストーレ様ならこの状況でもどうとでも上手く出来るだろう」
兵士の一人の言葉は、納得出来る方法ではあった。
現実的ですらある。
だが……それでも現在のこの状況で、また一人兵士が減るのは避けたいと、そう思うのも皆同様に思うことだった。
「迷っている暇はねえだろ。俺たちが命じられたのは、アランの確保だ。……正確には、アランとその心核のな。それを考えれば、今やるべきことをしっかりとやる必要がある。……違うか?」
提案した兵士がそう言えば、他の者も異論は口に出来ない。
今はまず、自分がやるべきことをやる必要があるというのは理解しているのだから。
「……分かった、頼む。ただし、本陣に近付くまでは俺たちも一緒に行くぞ。ここでお前が姿を現せば、あのドラゴンに見つかる可能性はあるしな」
兵士の一人が仲間の提案に頷き、そう告げる。
その言葉には強い説得力がある。
元々、ドラゴンは人間とは比べものにならないくらい鋭い五感を持っている以上、ザッカランからそう離れていない場所でいきなり兵士が姿を現せば、それを敵だと……アランを連れ去った相手だと認識するのは難しい話ではない。
そうして、ソランタたちはガリンダミア帝国軍の本陣に向かって近付いていく。
とはいえ、ソランタたちが出た扉はガリンダミア帝国軍が攻めている正門ではない。
ザッカランの兵士が少ない門である以上、当然ながら目的地までは結構な距離があった。
その結構な距離を、上空にいる黄金のドラゴンに気をつけながら移動するのだ。
感じるプレッシャーは、並大抵のものではない。
それでも、今はその行動をやらなければならないために、精神的な消耗を覚えながらも進んでいく。
黄金のドラゴンにしてみれば、ザッカラン周辺のどこにアランがいるのか分からない以上、どこに攻撃をするような真似も出来ず、ただじっと地上を睨み付けているだけだ。
……いっそガリンダミア帝国軍の方を片付けてしまおうかとも思ったが、もしかしたら何らかの手段ですでにアランがそちらに合流しているという可能性を考えると、そちらをレーザーブレスで一掃するような真似も出来ない。
ガリンダミア帝国軍の方も、突然黄金のドラゴンが姿を現したということで、先程までと違って動くに動けなくなっているが。
ここで先程までのようにザッカランにいる兵士たちを挑発したり、精神的に疲労させるために動いた場合、黄金のドラゴンの注意を惹く可能性がある。
黄金のドラゴンの登場で、ガリンダミア帝国軍もザッカラン側も双方が動けなくなってしまう。
「バストーレ様、どうします? こちらからも心核使いを出せば膠着状態を打破出来ると思いますが」
「いや、今のままでいい」
「……いいんですか?」
上司の考えは理解していた副官だったが、それでも念のためといった風に尋ねる。
それに対し、バストーレは当然といったように頷く。
「こっちに入ってる情報からでも、あの黄金のドラゴンに変身しているレオノーラが厄介な相手なのは間違いない。なら、こっちの切り札をそう簡単に見せる訳にもいかないだろ。……ただし、向こうがこっちを攻撃してくるようなことがればすぐに対処しろ」
いくら切り札であっても、味方の命と引き換えにしてまで隠すような代物ではない。
そうである以上、現在の状況が少しでも悪化しそうになれば、容赦なく切り札を使うつもりではあった。
「はい。そのように手配を。……それにしても、情報として知ってはいても、こうして実際に見ると凄いですね」
副官のしみじみとした言葉に、バストーレもまた頷く。
その言葉に異論は全く抱かなかったためだ。
空に存在する黄金のドラゴン。
その姿は、まるでこの世界の王が君臨している中のようにすら思える。
(いや、黄金のドラゴンの正体はレオノーラとかいう女なんだから、この場合は王じゃなくて女王という表現の方が的確か?)
自分でも半ば冗談であるかのように考えるバストーレだったが、それはそのように思わなければ、黄金のドラゴンの持つ迫力に圧倒されてしまいかねないからだろう。
今の状況であのような存在を前に、自分が怯むなどというところを周囲に見せる訳はいかない。
自分は将軍……この軍を率いる者なのだから。
「恐れるな! 敵はドラゴンであろうとも、結局は一人の心核使いでしかない。ここで恐れれば、向こうの思惑通りになるぞ!」
心の中には自分にも恐れはある。
それは恐れではなく、畏れと言ってもいいのかもしれない。
それだけ、ドラゴンという存在は圧倒的なのだ。
だが、そんなドラゴンの姿に圧倒されていて兵士たちも、バストーレの言葉を聞くと我に返っていく。
……実際には、バストーレも自分の中にある恐怖に押し殺されないように必死なのだが。
将軍であるバストーレは、そんな自分の様子を表に出すようなことはない。
そのおかげもあって、兵士たちは……少なくても、バストーレからそう離れていない場所にいる兵士たちは、黄金のドラゴンの存在を目にしても、恐怖や緊張から暴走するようなことはなかった。
そして周囲が落ち着いたおかげで、その他の者たちも次第に落ち着いていく。
後方からその様子を見て、バストーレは安堵する。
ここで兵士たちに暴走され、黄金のドラゴン怖さに逃げ出したり……ザッカランに向かって突撃したり、場合によっては黄金のドラゴンに向かって攻撃をしたりといったような真似をする者が出来れば、最悪としか言いようがない。
今はとにかく、落ち着くことが大事だった。
そうして落ち着いたところで……
「バストーレ様」
そんな声と共に、兵士が一人近付いてくる。
その姿を見て、今更……本当に今更ではあるが、何故ここで黄金のドラゴンが出て来たのかを理解した。
「そうか。アランを確保することに成功したのか」
「はい。ですが……」
「いや、言わなくてもいい。見れば分かる」
空中から地面を睥睨している黄金のドラゴンに視線を向け、バストーレはそう兵士の言葉を遮る。
つまり、アランの確保の成功したからこそ、それに怒りを覚えたレオノーラが黄金のドラゴンとなって姿を現したのだろう、と。
そう理解すると、バストーレの口には笑みが浮かぶ。
つい先程までは、黄金のドラゴンという存在に圧倒的なまでの恐怖を覚えていたのだが、今は何故このようなことになっているのかを理解しているために、そんな思いも消えた。
「それで、アランは?」
「すでに戦場から離れています。ソランタのスキルを使ってるので、見つかることもないでしょう」
「そうか。よくやった」
苦労して捕らえた獲物を自分の目で見ることが出来ないのは残念だったが、その機会はすぐにやってくるはずであった。
であれば、今の状況で自分たちがやるべきなのは……
「撤退だな」
あっさりと、そう断言する。
ザッカランを落とせなかったのは残念だったが、それよりも優先するアランの確保は成功したのだ。
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