201 / 422
ザッカラン防衛戦
200話
しおりを挟む
ガリンダミア帝国軍の撤退。
最初にそれを見たザッカランの兵士たは、一瞬それを欺瞞か何かではないかと思った。
ザッカランの城壁が頑丈で、しかも空には黄金のドラゴンがいるのだ。
それを考えれば、このまままともに戦うよりも、一度撤退したと見せて自分たちを油断させようとしているのだろうと。
そのように思ったのは、一人の兵士だけではなく、他にも大勢がその様子から同様の疑問を抱く。
だが……実際にガリンダミア帝国軍は、見せかけではなく本気で撤退していったと理解したのは、数時間後。
ザッカランから見えない場所までガリンダミア帝国軍が移動したのだ。
あるいは、見えない場所で疲れを癒やし、時間を潰して黄金のドラゴンがいなくなったらまたやってくるのではと警戒もしたが、黄金のドラゴンの姿が降雨中から消えても、ガリンダミア帝国軍が戻ってくることはない。
本当に撤退したのかどうかは、もう少し様子を見る必要があるが、それでも兵士たちの中に安堵の気持ちが広がったのは間違いのない事実だ。
だが……そうして安堵しているのは、事情を知らない兵士たちだけだ。
何故ガリンダミア帝国軍が撤退したのかを知っている者……特に当事者たる雲海や黄金の薔薇の面々は、その理由を理解しているがゆえに、現在の状況を最悪だと理解出来ていた。
「イルゼンさん、どうするんだよ! このままアランを見捨てるのか!?」
雲海の面々……だけではなく、黄金の薔薇の者たちも集まっている領主の館にある会議室の一室。
その会議室の中には、探索者の面々だけではなくボーレスの姿もある。
ザッカランを占領したドットリオン王国軍のトップで、現在は実質ザッカランを治めている立場にいる者だ。
そのような人物やその側近――あるいは取り巻き――がここにいるのは、アランが誘拐されたというのがそれだけ大きいからだろう。
何よりもボーレスが危惧しているのは、アランがガリンダミア帝国軍の戦力として出て来ないかということだ。
普通に考えれば、それはとてもではないがありえない。
だが、世の中には相手の意思を奪ったり洗脳したりといったような方法は多数存在する。
そのような能力を使って、アランが敵の戦力として出て来た場合……ゼオンがどれだけの力を持っているのかを理解しているからこそ、それを危惧するのは当然だった。
ボーレスにとっては、レオノーラが変身する黄金のドラゴンにも恐怖や畏怖を覚えるが、アランの操縦するゼオンはそれ以上の恐怖を抱くべき存在だった。
黄金のドラゴンであれば、まだかろうじてその存在は理解出来る。
だが、ゼオンは……あまりにも異質なのだ。
無理矢理分類するのであれば、ゴーレムということになるのだろうが……そもそも、ゴーレムは肩や腕の上に乗ったりすることはあっても、その内部に乗るようなこととはない。
ましてや、ゼオンのように光の一撃……いわゆるビームを撃ったりもしない。
ザッカランを占領したときにも見た、その圧倒的な性能。
それを行ったゼオンが敵として現れる可能性を考えると、現在ザッカランを治めているボーレスとしても、この話し合いに参加しないという選択肢は存在しなかった。
「まさか、そんな訳がないでしょう? アランは僕たちの家族です。それを見捨てるなどという真似をするつもりは、一切ありません」
探索者の言葉にイルゼンがそう答え、それを聞いていた多くの者たちは安堵する。
……だが、中にはイルゼンの言葉の意味を理解し、厳しい表情を浮かべる者もいた。
それはつまり、雲海が……そして恐らく黄金の薔薇の面々もザッカランから出て行くということを意味していたためだ。
アランを見捨てない。つまり、助けに行く。どこに? それは当然のように、ガリンダミア帝国の領土内だった。
いや、領土内というだけではなく、そこは恐らくガリンダミア帝国の首都たる帝都だろう。
もちろん、可能なら帝都に到着するよりも前にアランを助け出すことが出来れば最善だったのだが、アランを連れ去った者も当然のようにその辺りのことは分かっている。
だからこそ、敵に追いつかれないように……可能な限り素早くアランを帝都に運び、防御が万全な場所で戦いを行うというのが、向こうにとっては最善なのだ。
それを追うとなると、雲海や黄金の薔薇の面々も全力を出す必要がある。
そして全力を出すためには、当然のようにクラン全員の力が必要となり……つまり、ザッカランの防衛戦には強力出来なくなるということを意味していた。
現在はガリンダミア帝国軍の姿はない。
撤退もザッカランにいる者たちを誘き寄せるための罠ではなく、本当に撤退しているということが確認されている。
だが……撤退したあとで、再び態勢を整えてまた攻めてくるという可能性は十分にあるのだ。
イルゼンの言葉に厳しい表情を浮かべている者は、その辺りの事情をしっかりと理解している者たちなのだろう。
「では、私たちはすぐにでも出発の用意をしますので、この辺りで失礼します。……ドットリオン王国からの援軍が出来るだけ早く来ることを祈っています」
『なっ!?』
イルゼンが言った先程の言葉の意味をようや理解した者たちの口から、驚きの声が上がる。
アランを捜すことを諦めないと言っていたことが、言葉通りの意味だったと理解したのだ。
だが、自分たちもそんなイルゼンの言葉に問題ないと頷いていた以上、ここで不満を口には出来ない。
もしここでそれを口に出来るとすれば、現在ザッカランにいるドットリオン王国軍のトップにして、実質的にザッカランを治めているボーレスだろう。
にもかかわらず、そのボーレスは何を言うようなこともない。
まるでイルゼンの行動を認めているかのような態度だ。
……いや、この場合はまるでではなく、実際にイルゼンの行動を認めているのだろうが。
そもそもも、ボーレスと雲海、黄金の薔薇は雇用契約の類を結んでいる訳ではなく、あくまでも雲海や黄金の薔薇の思惑……ガリンダミア帝国軍がアランに手を出してくるという行為に対して、自分たちに手を出したら大きな被害を受けるというのを、思い知らせるため一緒に行動していたのだ。
……ザッカランに存在する遺跡が目当てというのも、あったのだが。
ともあれ、ガリンダミア帝国軍が目指す最大の目的たるアラン奪われてしまった以上、それを奪還しないという選択肢は存在しない。
もし何らかの手段で雲海や黄金の薔薇の行動を束縛しようとすれば、その場合は二つの有力なクランの牙の向けられる先が自分たちになってしまう。
ボーレスは、そう確信してもいたのだろうし……実際、それは間違いという訳でもない。
……もっとも、ボーレスは雲海や黄金の薔薇に感謝こそすれ、無理矢理に行動を拘束するようなつもりは最初からなかったのだが。
あるいは、現在進行形でザッカランが攻められている最中なら、もしかしたらボーレスも無理を承知でもう少し残ってくれるように頼んだかもしれないが、幸いにして今はガリンダミア帝国軍の姿も消えている。
「では、失礼します」
「そちらも無事を祈る」
頭を下げて部屋を出ていくイルゼンに、ボーレスは短くそれだけを告げる。
そして雲海と黄金の薔薇の面々がいなくなると、会議室の中には色々な者たちの様々な声が響くのだった。
「さて、ではこれから忙しくなりますね。……一応念のために聞いておきますが、黄金の薔薇は今回僕たちと一緒に行動をするという認識でいいのでしょうか?」
「当然そうさせてもらうわ」
廊下を進みながら尋ねるイルゼンに、レオノーラは即座にそう言葉を返す。
その後ろに続く黄金の薔薇の探索者たちの中には、そんなレオノーラの言葉が面白くないと思っているような者もいた。
だが、黄金の薔薇を率いるのがレオノーラであり、自分たちが忠誠を誓っているのがレオノーラである限り、その言葉に否はない。
間違いなく、今の状況ではレオノーラがアランを助けに行くと、そう言うのは分かりきっていたのだから。
黄金の薔薇の面々にしてみれば、レオノーラとアランの仲が近すぎるというのが面白くないと思う者もいる。
だが、それとは反対にアランという人物のおかげで、レオノーラが力を抜くことを覚えたことを喜んでいる者もいた。
レオノーラがアランと話しているとき、少女らしい笑いを浮かべているのを見た者も多い。
それを嬉しく思う者もいれば、アランに対して嫉妬する者もいる。
色々と理由はあれど、今の状況は決して楽という訳ではないのは分かっている。
だが、それでも……たとえアランに嫉妬している者がいても、だからといってレオノーラが悲しんでいる顔を見たいと思う者はいない。
「なら、まずは準備をする必要があるね。僕たちの方は今回の会議の前からもう準備をしていたけど……黄金の薔薇の方はどうかな?」
「問題ないわ。私たちの方でも、もう準備はさせてるから、すぐにでも出発出来るはずよ」
イルゼンの言葉に、レオノーラは自信に満ちた笑みを浮かべる。
……それでも、レオノーラの浮かべている笑みのいくらかには強がっているのがレオノーラと親しい者には理解出来てしまう。
レオノーラ本人もそれは実感している。
だが、それでも今の状況でそのようなことを口にしても意味はない。
だあらこそ、今は自分のやるべきこと……アランを取り返すというのを最優先に考える必要があった。
「アラン君が心核を取り戻すことが出来れば、僕たちの心配もいらないんだけどね」
「そうね。でも今この状況になってもまだアランが戻ってこないということは……間違いなく心核とアランは離されているはず。それをどうにかしないと」
アランを助けるのは当然だが、そのアランの心核たるカロを取り戻すことも優先する必要がある。
アランにとって、カロはすでに単なる心核ではなく、仲間という認識なのだから。
「助けるわ。必ず。……そしてガリンダミア帝国には、アランを連れ去ったことを後悔して貰う必要があるでしょうね」
凄惨な笑みを浮かべて呟くレオノーラは、それでもなお美しかった。
最初にそれを見たザッカランの兵士たは、一瞬それを欺瞞か何かではないかと思った。
ザッカランの城壁が頑丈で、しかも空には黄金のドラゴンがいるのだ。
それを考えれば、このまままともに戦うよりも、一度撤退したと見せて自分たちを油断させようとしているのだろうと。
そのように思ったのは、一人の兵士だけではなく、他にも大勢がその様子から同様の疑問を抱く。
だが……実際にガリンダミア帝国軍は、見せかけではなく本気で撤退していったと理解したのは、数時間後。
ザッカランから見えない場所までガリンダミア帝国軍が移動したのだ。
あるいは、見えない場所で疲れを癒やし、時間を潰して黄金のドラゴンがいなくなったらまたやってくるのではと警戒もしたが、黄金のドラゴンの姿が降雨中から消えても、ガリンダミア帝国軍が戻ってくることはない。
本当に撤退したのかどうかは、もう少し様子を見る必要があるが、それでも兵士たちの中に安堵の気持ちが広がったのは間違いのない事実だ。
だが……そうして安堵しているのは、事情を知らない兵士たちだけだ。
何故ガリンダミア帝国軍が撤退したのかを知っている者……特に当事者たる雲海や黄金の薔薇の面々は、その理由を理解しているがゆえに、現在の状況を最悪だと理解出来ていた。
「イルゼンさん、どうするんだよ! このままアランを見捨てるのか!?」
雲海の面々……だけではなく、黄金の薔薇の者たちも集まっている領主の館にある会議室の一室。
その会議室の中には、探索者の面々だけではなくボーレスの姿もある。
ザッカランを占領したドットリオン王国軍のトップで、現在は実質ザッカランを治めている立場にいる者だ。
そのような人物やその側近――あるいは取り巻き――がここにいるのは、アランが誘拐されたというのがそれだけ大きいからだろう。
何よりもボーレスが危惧しているのは、アランがガリンダミア帝国軍の戦力として出て来ないかということだ。
普通に考えれば、それはとてもではないがありえない。
だが、世の中には相手の意思を奪ったり洗脳したりといったような方法は多数存在する。
そのような能力を使って、アランが敵の戦力として出て来た場合……ゼオンがどれだけの力を持っているのかを理解しているからこそ、それを危惧するのは当然だった。
ボーレスにとっては、レオノーラが変身する黄金のドラゴンにも恐怖や畏怖を覚えるが、アランの操縦するゼオンはそれ以上の恐怖を抱くべき存在だった。
黄金のドラゴンであれば、まだかろうじてその存在は理解出来る。
だが、ゼオンは……あまりにも異質なのだ。
無理矢理分類するのであれば、ゴーレムということになるのだろうが……そもそも、ゴーレムは肩や腕の上に乗ったりすることはあっても、その内部に乗るようなこととはない。
ましてや、ゼオンのように光の一撃……いわゆるビームを撃ったりもしない。
ザッカランを占領したときにも見た、その圧倒的な性能。
それを行ったゼオンが敵として現れる可能性を考えると、現在ザッカランを治めているボーレスとしても、この話し合いに参加しないという選択肢は存在しなかった。
「まさか、そんな訳がないでしょう? アランは僕たちの家族です。それを見捨てるなどという真似をするつもりは、一切ありません」
探索者の言葉にイルゼンがそう答え、それを聞いていた多くの者たちは安堵する。
……だが、中にはイルゼンの言葉の意味を理解し、厳しい表情を浮かべる者もいた。
それはつまり、雲海が……そして恐らく黄金の薔薇の面々もザッカランから出て行くということを意味していたためだ。
アランを見捨てない。つまり、助けに行く。どこに? それは当然のように、ガリンダミア帝国の領土内だった。
いや、領土内というだけではなく、そこは恐らくガリンダミア帝国の首都たる帝都だろう。
もちろん、可能なら帝都に到着するよりも前にアランを助け出すことが出来れば最善だったのだが、アランを連れ去った者も当然のようにその辺りのことは分かっている。
だからこそ、敵に追いつかれないように……可能な限り素早くアランを帝都に運び、防御が万全な場所で戦いを行うというのが、向こうにとっては最善なのだ。
それを追うとなると、雲海や黄金の薔薇の面々も全力を出す必要がある。
そして全力を出すためには、当然のようにクラン全員の力が必要となり……つまり、ザッカランの防衛戦には強力出来なくなるということを意味していた。
現在はガリンダミア帝国軍の姿はない。
撤退もザッカランにいる者たちを誘き寄せるための罠ではなく、本当に撤退しているということが確認されている。
だが……撤退したあとで、再び態勢を整えてまた攻めてくるという可能性は十分にあるのだ。
イルゼンの言葉に厳しい表情を浮かべている者は、その辺りの事情をしっかりと理解している者たちなのだろう。
「では、私たちはすぐにでも出発の用意をしますので、この辺りで失礼します。……ドットリオン王国からの援軍が出来るだけ早く来ることを祈っています」
『なっ!?』
イルゼンが言った先程の言葉の意味をようや理解した者たちの口から、驚きの声が上がる。
アランを捜すことを諦めないと言っていたことが、言葉通りの意味だったと理解したのだ。
だが、自分たちもそんなイルゼンの言葉に問題ないと頷いていた以上、ここで不満を口には出来ない。
もしここでそれを口に出来るとすれば、現在ザッカランにいるドットリオン王国軍のトップにして、実質的にザッカランを治めているボーレスだろう。
にもかかわらず、そのボーレスは何を言うようなこともない。
まるでイルゼンの行動を認めているかのような態度だ。
……いや、この場合はまるでではなく、実際にイルゼンの行動を認めているのだろうが。
そもそもも、ボーレスと雲海、黄金の薔薇は雇用契約の類を結んでいる訳ではなく、あくまでも雲海や黄金の薔薇の思惑……ガリンダミア帝国軍がアランに手を出してくるという行為に対して、自分たちに手を出したら大きな被害を受けるというのを、思い知らせるため一緒に行動していたのだ。
……ザッカランに存在する遺跡が目当てというのも、あったのだが。
ともあれ、ガリンダミア帝国軍が目指す最大の目的たるアラン奪われてしまった以上、それを奪還しないという選択肢は存在しない。
もし何らかの手段で雲海や黄金の薔薇の行動を束縛しようとすれば、その場合は二つの有力なクランの牙の向けられる先が自分たちになってしまう。
ボーレスは、そう確信してもいたのだろうし……実際、それは間違いという訳でもない。
……もっとも、ボーレスは雲海や黄金の薔薇に感謝こそすれ、無理矢理に行動を拘束するようなつもりは最初からなかったのだが。
あるいは、現在進行形でザッカランが攻められている最中なら、もしかしたらボーレスも無理を承知でもう少し残ってくれるように頼んだかもしれないが、幸いにして今はガリンダミア帝国軍の姿も消えている。
「では、失礼します」
「そちらも無事を祈る」
頭を下げて部屋を出ていくイルゼンに、ボーレスは短くそれだけを告げる。
そして雲海と黄金の薔薇の面々がいなくなると、会議室の中には色々な者たちの様々な声が響くのだった。
「さて、ではこれから忙しくなりますね。……一応念のために聞いておきますが、黄金の薔薇は今回僕たちと一緒に行動をするという認識でいいのでしょうか?」
「当然そうさせてもらうわ」
廊下を進みながら尋ねるイルゼンに、レオノーラは即座にそう言葉を返す。
その後ろに続く黄金の薔薇の探索者たちの中には、そんなレオノーラの言葉が面白くないと思っているような者もいた。
だが、黄金の薔薇を率いるのがレオノーラであり、自分たちが忠誠を誓っているのがレオノーラである限り、その言葉に否はない。
間違いなく、今の状況ではレオノーラがアランを助けに行くと、そう言うのは分かりきっていたのだから。
黄金の薔薇の面々にしてみれば、レオノーラとアランの仲が近すぎるというのが面白くないと思う者もいる。
だが、それとは反対にアランという人物のおかげで、レオノーラが力を抜くことを覚えたことを喜んでいる者もいた。
レオノーラがアランと話しているとき、少女らしい笑いを浮かべているのを見た者も多い。
それを嬉しく思う者もいれば、アランに対して嫉妬する者もいる。
色々と理由はあれど、今の状況は決して楽という訳ではないのは分かっている。
だが、それでも……たとえアランに嫉妬している者がいても、だからといってレオノーラが悲しんでいる顔を見たいと思う者はいない。
「なら、まずは準備をする必要があるね。僕たちの方は今回の会議の前からもう準備をしていたけど……黄金の薔薇の方はどうかな?」
「問題ないわ。私たちの方でも、もう準備はさせてるから、すぐにでも出発出来るはずよ」
イルゼンの言葉に、レオノーラは自信に満ちた笑みを浮かべる。
……それでも、レオノーラの浮かべている笑みのいくらかには強がっているのがレオノーラと親しい者には理解出来てしまう。
レオノーラ本人もそれは実感している。
だが、それでも今の状況でそのようなことを口にしても意味はない。
だあらこそ、今は自分のやるべきこと……アランを取り返すというのを最優先に考える必要があった。
「アラン君が心核を取り戻すことが出来れば、僕たちの心配もいらないんだけどね」
「そうね。でも今この状況になってもまだアランが戻ってこないということは……間違いなく心核とアランは離されているはず。それをどうにかしないと」
アランを助けるのは当然だが、そのアランの心核たるカロを取り戻すことも優先する必要がある。
アランにとって、カロはすでに単なる心核ではなく、仲間という認識なのだから。
「助けるわ。必ず。……そしてガリンダミア帝国には、アランを連れ去ったことを後悔して貰う必要があるでしょうね」
凄惨な笑みを浮かべて呟くレオノーラは、それでもなお美しかった。
0
あなたにおすすめの小説
残念ながら主人公はゲスでした。~異世界転移したら空気を操る魔法を得て世界最強に。好き放題に無双する俺を誰も止められない!~
日和崎よしな
ファンタジー
―あらすじ―
異世界に転移したゲス・エストは精霊と契約して空気操作の魔法を獲得する。
強力な魔法を得たが、彼の真の強さは的確な洞察力や魔法の応用力といった優れた頭脳にあった。
ゲス・エストは最強の存在を目指し、しがらみのない異世界で容赦なく暴れまくる!
―作品について―
完結しました。
全302話(プロローグ、エピローグ含む),約100万字。
氷弾の魔術師
カタナヅキ
ファンタジー
――上級魔法なんか必要ない、下級魔法一つだけで魔導士を目指す少年の物語――
平民でありながら魔法が扱う才能がある事が判明した少年「コオリ」は魔法学園に入学する事が決まった。彼の国では魔法の適性がある人間は魔法学園に入学する決まりがあり、急遽コオリは魔法学園が存在する王都へ向かう事になった。しかし、王都に辿り着く前に彼は自分と同世代の魔術師と比べて圧倒的に魔力量が少ない事が発覚した。
しかし、魔力が少ないからこそ利点がある事を知ったコオリは決意した。他の者は一日でも早く上級魔法の習得に励む中、コオリは自分が扱える下級魔法だけを極め、一流の魔術師の証である「魔導士」の称号を得る事を誓う。そして他の魔術師は少年が強くなる事で気づかされていく。魔力が少ないというのは欠点とは限らず、むしろ優れた才能になり得る事を――
※旧作「下級魔導士と呼ばれた少年」のリメイクとなりますが、設定と物語の内容が大きく変わります。
クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした
コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。
クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。
召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。
理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。
ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。
これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。
ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います
とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。
食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。
もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。
ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。
ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。
異世界へ行って帰って来た
バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。
そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる
国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。
持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。
これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。
エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~
シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。
主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。
追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。
さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。
疫病? これ飲めば治りますよ?
これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる