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囚われの姫君?
208話
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「はああああああああああ……」
自分の中にある疲れと共に息を吐き出しながら、アランはベッドの上に寝転がる。
ビッシュとの会談は、結局特に何も収穫がないままで終わった。
……いや、ビッシュという存在を知ることが出来た以上、収穫はあったのだろうが。
それと、この部屋から出たときにアランの見張りとしてついてきた騎士のうち、アランに対して突っかかっていた騎士が、帰りには微妙に人当たりが柔らかくなったのも収穫だろう。
もっとも、一番大きな収穫は何かと言われれば、ここがガリンダミア帝国の帝都であり、皇帝の住まう城であるということだったが。
自分が一ヶ月近くも眠っていたということには驚いた。
ともあれ、色々な意味で衝撃の大きかった面談を終えたアランは、現在その疲れを癒やしていた。
(そう言えば、ビッシュって結局どういう立場だったんだ? 皇帝……って訳じゃなさそうだし)
アランも実際にガリンダミア帝国の皇帝を見たことはないが、それでもどのような人物なのかという話くらいは聞いている。
それによると、ガリンダミア帝国の皇帝は侵略国家という国是を採り、周辺諸国に次々と戦いを挑んでいるのを象徴するような、筋骨隆々の男だと、そう聞かされている。
十歳くらいの子供のビッシュと比べると、その外見は明らかに違う。
(だとすれば、皇帝の子供……ってのが一番ありそうな話だけど……)
皇子。
そんな言葉を思い浮かべるアランだったが、ビッシュの持つ圧倒的なまでの存在感を思うと、とてもではないが皇子という言葉が似合わないように感じられた。
あくまでもアランの感覚ではあったが、皇帝と呼ばれてもおかしくはないだけの人物。
それでいながら、外見は子供で皇帝とは思えない。
それが余計にアランに混乱を与えていた。
「失礼します。紅茶をお持ちしました」
そう言いながら、メローネが部屋に入ってくる。
その手には、紅茶を淹れる道具の一式と、お茶菓子なのだろう。焼き菓子がある。
クッキーと呼ぶには少し厚いその焼き菓子を見て、アランは少し空腹であることを自覚する。
ビッシュとの会談でも、一応紅茶の類は用意されていたのだが……とてもではないが、それを楽しむような余裕はなかった。
特にアランは、ビッシュの魔眼によって身体の動きを止められたりしていのだから尚更だろう。
そんなアランにとって、メローネが持ってきてくれた紅茶と焼き菓子は非常にありがたい。
(一ヶ月近くも眠っていたって話だったけど……栄養補給とか水分補給はどうなっていたんだろうな? それに最初の方は食べたり飲んだりしなくても、出るものは出るだろうし)
想像しただけですぐに嫌な気分になったアランは、首を横に振ってその想像を掻き消す。
マジックアイテムで自分の眠らせたのだから、恐らくは食べたり飲んだり、出したり……その手のこともきっとマジックアイテムの効果で必要なかったのだろうと、そう思いながら。
実際、もし食べたり飲んだり出したりといったようなことをしなければならない場合、アランを運んでいる者達はかなり大変だったはずだ。
何より、そのような用途……誘拐した相手を無力化して運ぶという意味では、食べたり飲んだり出したりといった行為をするには、非常に手間がかかってしまう。
その辺の事情を考えると……と、そう自分に言い聞かせる。
「アラン様、どうしました?」
「あ、いえ。何でもないです」
自分が妙な真似をしているということを、メローネの言葉で認識アランは、首を横に振って何でもないと否定する。
そんなアランの態度を見たメローネは、何かあったのだろうというのは予想出来たものの、今の状況で自分が何を言っても意味はないだろうと判断したのか、それ以上は口にしない。
「メローネさんも一緒にどうです?」
「私はメイドですので」
誘ったアランにも、メローネは首を横に振ってやんわりと断る。
アランはメイドという存在に夢を持っている訳ではない。
それでもメローネの態度は好ましいものに思えた。
(メイド喫茶とかにいるメイドとは、やっぱり違うんだろうな。……前世では行ったことがなかったけど)
東北の田舎にメイド喫茶などあるはずもない。
県庁所在地まで出ればメイド喫茶があると誰かから聞いたことはあったが、そこまで行くのにはそれなりに交通費もかかるので、アランも前世ではメイド喫茶には行ったことがなかった。
また、前世に日本で読んだ漫画では、メイド喫茶のメイドは本物のメイドではないといったような台詞もよく見た覚えがあったのだが……メローネを見れば、その台詞にも納得出来るものがある。
……もちろん、アランはメローネが初めて見たメイドという訳ではない。
雲海というクランで行動している以上、大きな商会を経営している商人の屋敷に招待されることもあるし。貴族の屋敷に招待されることもある。
それらの屋敷には、当然のようにメイドはいた。
だが……それでも、メローネと比べるとメイドとしてどこかが違う。
具体的にどこが違うのかと言われれば、答えに詰まるのだが。
強いて言えば、纏っている雰囲気が違うと言うべきか。
「どうなされました?」
「いや、何でもないです。……それにしても、俺はいつまでここにいればいいんですかね?」
何気なく呟かれたアランの言葉だったが、それを聞いたメローネは申し訳なさそうに首を横に振る。
「私には、分かりかねます。ただ……ビッシュ様の提案に賛同していただければ、すぐにでもこの状況は変わると思いますが」
「残念ですが、そのつもりはありませんね。俺が戻るべき場所はガリンダミア帝国ではなくて、仲間……雲海のいる場所ですから」
そんなアランの言葉に、メローネは眩しいものを見るように目を細める。
メローネにも、何かアランの態度に思うところがあったのだろう。
とはいえ、メローネはガリンダミア帝国のメイドである以上、その言葉に対して素直に頷くような真似は出来なかったが。
メローネに出来るのは、あくまでも現在の状況のアランに……籠の中の鳥というべき状況であっても、せめて少しでも快適にすごしてもらうことだけだ。
「そう言えば、アラン様は何か食べたいものはありますか? もし何かありましたら、厨房の方に伝えてそれを作って貰いますが……」
「え? あー……そうですね」
何故かいきなり料理に話が移ったことに若干の戸惑いを覚えながらも、アランは少し考え、口を開く。
「魚介類……特に貝を使った料理が食べたいです」
「貝、ですか。分かりました。厨房の方にそう伝えておきます。それにしても、アラン様くらいの年齢でしたら、お肉を食べたいのかと思いましたが……」
少し驚きました。
そう告げるメローネに対し、アランはも納得したように頷く。
実際、普通に考えればアランくらいの年齢……十代であれば、肉、肉、肉と言ってるイメージが強い。
もちろん、全ての十代がそんな訳ではなく、あくまでもイメージ的なものだ。
「肉も好きですけど、貝類の類は最近食べてませんでしたので、貝の種類にもよりますけど、バターと醤油で一緒に焼くと美味しいんですよね」
「……醤油、ですか? それはどんな調味料でしょう?」
初めて聞いた調味料の名前に、メローネは不思議そうに尋ねる。
一流のメイドとして、料理に関しても相応の自信を持つメローネだったが、醤油という調味料は知らなかったのだろう。
アランも、口が滑ったと自覚する。
自分を捕らえようとしていた敵の本拠地におり、何だかんだと緊張していたところでメローネという優しい相手が自分の身をあれこれ心配してくれることに、自然と警戒心を解いていたのだろう。
あるいは、これも向こうの手なのかもしれないとすら思う。
……もっとも、メローネの様子を見る限りでは、本人は特に何かを狙ってそのような真似をしているとは思えなかったが。
とはいえ、幸いなことにアランは探索者だ。
色々な場所を旅する関係上、世間的にはほとんど知られていない調味料について知っていてもおかしくはない。
「どこだったか忘れましたけど、旅の途中で寄った地方で使われていた調味料ですね。たしか、豆と塩で作るとか」
実際に醤油をどうやって作るのかは、アランも分からない。
前世でTVを見たときに、何となくそのような感じで醤油を作っていたのを思い出し、そう告げる。
実際に豆と塩があれば醤油が作られるのかどうかは、アランにも分からない。
あるいは、大豆以外の豆であったりしても、それが醤油になるのかも分からない。
ともあれ、そんなアランの言葉に、メローネは興味深そうな視線を向ける。
豆と塩で出来るのなら、自分たちでも作れるのではないか、と。
……実際には豆と塩以外にも小麦だったり麹だったりが必要とするのだが、生憎とアランにはその辺の知識がないので話すことが出来ない。
塩と魚があれば魚醤が出来るのだが、生憎とこちらもアランは作り方の知識は知らなかった。
アランの故郷では、しょっつるという魚醤がかなり有名だったのだが。
「醤油というのがどのような調味料かは分かりませんが、取りあえず貝は準備しておくように厨房に言っておきます。どのような料理がお好みでしょう?」
「うーん、バターを入れて貝殻を焼くのもいいし、酒蒸しとかもいいですね」
「……では、取りあえずそちらを。ただ、厨房の方に材料があれば、ですが」
ここは大国たるガリンダミア帝国の帝都にして、皇帝のいる城だ。
当然のように大量の食材が揃っており、その中にはアランが希望した貝の類もある。
だが……厨房に食材があるというのと、その食材をアランに食べさせる料理のために使ってもいいかというのは、別の話だった。
待遇は客人といったアランだったが、それでも本来の身分は捕虜なのだ。
そうである以上、アランに対して好き勝手に食材を使ってもいいと許可が出るかどうかは微妙なところだった。
……もっとも、メローネは許可が出ると判断していたが。
ビッシュがアランを自分たちに引き込もうとしていた以上、その待遇は決して悪いものにはならないはずだったのだから。
自分の中にある疲れと共に息を吐き出しながら、アランはベッドの上に寝転がる。
ビッシュとの会談は、結局特に何も収穫がないままで終わった。
……いや、ビッシュという存在を知ることが出来た以上、収穫はあったのだろうが。
それと、この部屋から出たときにアランの見張りとしてついてきた騎士のうち、アランに対して突っかかっていた騎士が、帰りには微妙に人当たりが柔らかくなったのも収穫だろう。
もっとも、一番大きな収穫は何かと言われれば、ここがガリンダミア帝国の帝都であり、皇帝の住まう城であるということだったが。
自分が一ヶ月近くも眠っていたということには驚いた。
ともあれ、色々な意味で衝撃の大きかった面談を終えたアランは、現在その疲れを癒やしていた。
(そう言えば、ビッシュって結局どういう立場だったんだ? 皇帝……って訳じゃなさそうだし)
アランも実際にガリンダミア帝国の皇帝を見たことはないが、それでもどのような人物なのかという話くらいは聞いている。
それによると、ガリンダミア帝国の皇帝は侵略国家という国是を採り、周辺諸国に次々と戦いを挑んでいるのを象徴するような、筋骨隆々の男だと、そう聞かされている。
十歳くらいの子供のビッシュと比べると、その外見は明らかに違う。
(だとすれば、皇帝の子供……ってのが一番ありそうな話だけど……)
皇子。
そんな言葉を思い浮かべるアランだったが、ビッシュの持つ圧倒的なまでの存在感を思うと、とてもではないが皇子という言葉が似合わないように感じられた。
あくまでもアランの感覚ではあったが、皇帝と呼ばれてもおかしくはないだけの人物。
それでいながら、外見は子供で皇帝とは思えない。
それが余計にアランに混乱を与えていた。
「失礼します。紅茶をお持ちしました」
そう言いながら、メローネが部屋に入ってくる。
その手には、紅茶を淹れる道具の一式と、お茶菓子なのだろう。焼き菓子がある。
クッキーと呼ぶには少し厚いその焼き菓子を見て、アランは少し空腹であることを自覚する。
ビッシュとの会談でも、一応紅茶の類は用意されていたのだが……とてもではないが、それを楽しむような余裕はなかった。
特にアランは、ビッシュの魔眼によって身体の動きを止められたりしていのだから尚更だろう。
そんなアランにとって、メローネが持ってきてくれた紅茶と焼き菓子は非常にありがたい。
(一ヶ月近くも眠っていたって話だったけど……栄養補給とか水分補給はどうなっていたんだろうな? それに最初の方は食べたり飲んだりしなくても、出るものは出るだろうし)
想像しただけですぐに嫌な気分になったアランは、首を横に振ってその想像を掻き消す。
マジックアイテムで自分の眠らせたのだから、恐らくは食べたり飲んだり、出したり……その手のこともきっとマジックアイテムの効果で必要なかったのだろうと、そう思いながら。
実際、もし食べたり飲んだり出したりといったようなことをしなければならない場合、アランを運んでいる者達はかなり大変だったはずだ。
何より、そのような用途……誘拐した相手を無力化して運ぶという意味では、食べたり飲んだり出したりといった行為をするには、非常に手間がかかってしまう。
その辺の事情を考えると……と、そう自分に言い聞かせる。
「アラン様、どうしました?」
「あ、いえ。何でもないです」
自分が妙な真似をしているということを、メローネの言葉で認識アランは、首を横に振って何でもないと否定する。
そんなアランの態度を見たメローネは、何かあったのだろうというのは予想出来たものの、今の状況で自分が何を言っても意味はないだろうと判断したのか、それ以上は口にしない。
「メローネさんも一緒にどうです?」
「私はメイドですので」
誘ったアランにも、メローネは首を横に振ってやんわりと断る。
アランはメイドという存在に夢を持っている訳ではない。
それでもメローネの態度は好ましいものに思えた。
(メイド喫茶とかにいるメイドとは、やっぱり違うんだろうな。……前世では行ったことがなかったけど)
東北の田舎にメイド喫茶などあるはずもない。
県庁所在地まで出ればメイド喫茶があると誰かから聞いたことはあったが、そこまで行くのにはそれなりに交通費もかかるので、アランも前世ではメイド喫茶には行ったことがなかった。
また、前世に日本で読んだ漫画では、メイド喫茶のメイドは本物のメイドではないといったような台詞もよく見た覚えがあったのだが……メローネを見れば、その台詞にも納得出来るものがある。
……もちろん、アランはメローネが初めて見たメイドという訳ではない。
雲海というクランで行動している以上、大きな商会を経営している商人の屋敷に招待されることもあるし。貴族の屋敷に招待されることもある。
それらの屋敷には、当然のようにメイドはいた。
だが……それでも、メローネと比べるとメイドとしてどこかが違う。
具体的にどこが違うのかと言われれば、答えに詰まるのだが。
強いて言えば、纏っている雰囲気が違うと言うべきか。
「どうなされました?」
「いや、何でもないです。……それにしても、俺はいつまでここにいればいいんですかね?」
何気なく呟かれたアランの言葉だったが、それを聞いたメローネは申し訳なさそうに首を横に振る。
「私には、分かりかねます。ただ……ビッシュ様の提案に賛同していただければ、すぐにでもこの状況は変わると思いますが」
「残念ですが、そのつもりはありませんね。俺が戻るべき場所はガリンダミア帝国ではなくて、仲間……雲海のいる場所ですから」
そんなアランの言葉に、メローネは眩しいものを見るように目を細める。
メローネにも、何かアランの態度に思うところがあったのだろう。
とはいえ、メローネはガリンダミア帝国のメイドである以上、その言葉に対して素直に頷くような真似は出来なかったが。
メローネに出来るのは、あくまでも現在の状況のアランに……籠の中の鳥というべき状況であっても、せめて少しでも快適にすごしてもらうことだけだ。
「そう言えば、アラン様は何か食べたいものはありますか? もし何かありましたら、厨房の方に伝えてそれを作って貰いますが……」
「え? あー……そうですね」
何故かいきなり料理に話が移ったことに若干の戸惑いを覚えながらも、アランは少し考え、口を開く。
「魚介類……特に貝を使った料理が食べたいです」
「貝、ですか。分かりました。厨房の方にそう伝えておきます。それにしても、アラン様くらいの年齢でしたら、お肉を食べたいのかと思いましたが……」
少し驚きました。
そう告げるメローネに対し、アランはも納得したように頷く。
実際、普通に考えればアランくらいの年齢……十代であれば、肉、肉、肉と言ってるイメージが強い。
もちろん、全ての十代がそんな訳ではなく、あくまでもイメージ的なものだ。
「肉も好きですけど、貝類の類は最近食べてませんでしたので、貝の種類にもよりますけど、バターと醤油で一緒に焼くと美味しいんですよね」
「……醤油、ですか? それはどんな調味料でしょう?」
初めて聞いた調味料の名前に、メローネは不思議そうに尋ねる。
一流のメイドとして、料理に関しても相応の自信を持つメローネだったが、醤油という調味料は知らなかったのだろう。
アランも、口が滑ったと自覚する。
自分を捕らえようとしていた敵の本拠地におり、何だかんだと緊張していたところでメローネという優しい相手が自分の身をあれこれ心配してくれることに、自然と警戒心を解いていたのだろう。
あるいは、これも向こうの手なのかもしれないとすら思う。
……もっとも、メローネの様子を見る限りでは、本人は特に何かを狙ってそのような真似をしているとは思えなかったが。
とはいえ、幸いなことにアランは探索者だ。
色々な場所を旅する関係上、世間的にはほとんど知られていない調味料について知っていてもおかしくはない。
「どこだったか忘れましたけど、旅の途中で寄った地方で使われていた調味料ですね。たしか、豆と塩で作るとか」
実際に醤油をどうやって作るのかは、アランも分からない。
前世でTVを見たときに、何となくそのような感じで醤油を作っていたのを思い出し、そう告げる。
実際に豆と塩があれば醤油が作られるのかどうかは、アランにも分からない。
あるいは、大豆以外の豆であったりしても、それが醤油になるのかも分からない。
ともあれ、そんなアランの言葉に、メローネは興味深そうな視線を向ける。
豆と塩で出来るのなら、自分たちでも作れるのではないか、と。
……実際には豆と塩以外にも小麦だったり麹だったりが必要とするのだが、生憎とアランにはその辺の知識がないので話すことが出来ない。
塩と魚があれば魚醤が出来るのだが、生憎とこちらもアランは作り方の知識は知らなかった。
アランの故郷では、しょっつるという魚醤がかなり有名だったのだが。
「醤油というのがどのような調味料かは分かりませんが、取りあえず貝は準備しておくように厨房に言っておきます。どのような料理がお好みでしょう?」
「うーん、バターを入れて貝殻を焼くのもいいし、酒蒸しとかもいいですね」
「……では、取りあえずそちらを。ただ、厨房の方に材料があれば、ですが」
ここは大国たるガリンダミア帝国の帝都にして、皇帝のいる城だ。
当然のように大量の食材が揃っており、その中にはアランが希望した貝の類もある。
だが……厨房に食材があるというのと、その食材をアランに食べさせる料理のために使ってもいいかというのは、別の話だった。
待遇は客人といったアランだったが、それでも本来の身分は捕虜なのだ。
そうである以上、アランに対して好き勝手に食材を使ってもいいと許可が出るかどうかは微妙なところだった。
……もっとも、メローネは許可が出ると判断していたが。
ビッシュがアランを自分たちに引き込もうとしていた以上、その待遇は決して悪いものにはならないはずだったのだから。
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