剣と魔法の世界で俺だけロボット

神無月 紅

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囚われの姫君?

232話

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「そう、ようやく手掛かりを見つけられた訳ね」

 夜、いつものように人目に付きにくい場所で合流したダーナとメライナの二人は、情報交換を行っていた。
 その情報の中で、一番重要だったのは……当然のように、アランの姿を確認出来たことだ。
 正直なところ、黄金の薔薇のメライナはともかく、鋼の蜘蛛のダーナにしてみればアランが見つかったと言われても、そこまで喜ばしいことではない。
 結局のところ、ダーナにとって重要なのは鋼の蜘蛛の面々なのだ。
 そして現在、鋼の蜘蛛は砦の襲撃に失敗してそれなりに大きなダメージを受けていた。
 不幸中の幸いと言うべきか、砦の戦いに参加したのは鋼の蜘蛛だけではなく、他のレジスタンスたちも多い。
 そのおかげで、鋼の蜘蛛が受けた被害は当初よりも大分少なかった。
 ……それでも笑って受け入れられるほどのダメージではないのだが。
 また、鋼の蜘蛛を率いている人物が魔法薬を製造出来るということもあり、ポーションの類もそれなりに豊富なのは、好材料だった。
 そのおかげで、結構な怪我人は出たが死者の数そのものは少ない。
 他のレジスタンスに対しても、相応にポーションの類を分けているので、今回の一件についても鋼の蜘蛛が必要以上に責められたはしていなかった。

「ええ。けど、問題はまだあるわ。貴賓室の類に軟禁されているのは分かったけど、具体的にどんな場所なのかはまだ分からないし……何より、当然だけど心核が取り上げられているらしいわ」

 アランは、心核使いに特化している探索者だ。
 普通の探索者として考えれば、どうやって頑張ってもどうにか平均的な能力に届くかどうかといった程度の技量でしかない。
 だからこそ、アランを救出するのと同時に、心核を確保する必要もあった。
 だが、最大の問題なのは……

「けど、心核がどこにあるのか分からないというのは、難しいわね」

 ダーナが言うように、それがアランを見つけた現在、最大の問題はそれだった。
 もちろん、メライナたちも以前からアランを探すのと同時に心核を探してもいた。
 しかし……当然の話だが、そう簡単に心核は見つからない。
 心核の重要性を考えれば、それはある意味で当然のことではあったのだろうが。
 心核というのは、元々非常に希少だ。
 メライナが所属する黄金の薔薇においては何故か敵として遭遇することが多かったが、田舎に住んでいる者であれば……いや、ある程度発展している村や街であっても、産まれてから一生心核使いを見ないで暮らすというのも、珍しい話ではない。
 そんな貴重な存在だけに、ガリンダミア帝国としてもアランから奪ったカロは、厳重に保管しておくのは当然だった。
 ましてや、カロという心核に宿る自我の存在を認識されているのかどうかは分からなかったが、もしカロの存在を知られていれば、それは余計に保管する際の厳重度は上がっているだろう。

「ガリンダミア帝国のことだから、宝物庫に保管する……といったような単純な手段は取らないでしょうね」
「ダーナの言いたいことも分かるけど、じゃあ、どこに?」
「……それをこれから調べるんでしょ? それにアランも貴賓室にいるとは言っていたけど、どこの貴賓室なのかは分からないでしょうし」
「それは……」

 ダーナの言葉に、メライナは言葉を返せない。
 実際、アランが貴賓室にいるという話は聞いてはいるが、どこの貴賓室にいるのかというのは不明なのだ。
 帝城の大きさを考えれば、貴賓室のような場所はいくらあってもおかしくはない。
 ……実際、今までメイドたちに情報を流し、好奇心を煽って探すといったような真似をしていたが、それでも見つけるようなことは出来なかったのだから。
 貴賓室が複数あり、それを使っている者も別にアランだけではなく、この帝城にやって来ている相応の立場のある者たちが相応に多い……というのもあるのだろう。

「結局、やるべきことは多数ある訳ね。……そっちもそっちで忙しいらしいけど?」

 自分だけがやるべきことが多いのは面白くない。
 そんな思いで、メライナはダーナに向かって視線を向ける。

「そうね。……正直なところ、砦の一件で受けた被害は予想していたよりも大きかったのは事実よ。そのおかげで、こっちの計画も若干修正が必要になったけど……」

 そう告げるダーナだったが、言葉程にはうんざりした様子を見せてはいない。
 客観的に見て、現在のダーナとメライナのどちらが忙しいことになるのかと考えると、それは明らかにメライナだった。
 そう態度で示されたメライナは、当然だが面白くはない。
 だが、ダーナの言葉が事実である以上、その言葉を素直に受け止めるしかなかった。





「……嘘でしょう?」

 ダーナとの情報交換をしてから数日。
 メライナの口からは、そんな声が漏れた。
 当然だろう。一番探すのが難しいと思っていたカロの保管場所が、あっさりと判明したのだから。
 もちろん、保管場所が判明したからといって、すぐに盗み出す訳にもいかない。
 何故なら、それは帝城の一画にある研究室が集まっている場所にカロが保管されている……という状況だったのだから。
 当然の話だが、そのような場所だけに警備は厳しい。

(それでも、場所が判明しただけよしとした方がいいわね。……この場所の仕事を与えられたのは、幸運だったかしら)

 本来なら入ってはいけない場所……ビッシュとアランの会談が行われた場所に入った罰として、メライナはこの研究区画の仕事に回された。
 当然の話だが、メイドがやる仕事である以上は掃除だったりゴミを捨てたりといったようなものが大半だ。
 研究区画にいる者たちは、自分の研究に集中すると周囲の様子が全く気にせず、それどころか食事すらも一日二日は抜いても研究に熱中するような者が多い。
 また、研究をしている最中に書き損じた紙を適当に丸めてその辺にすてたりといったようなこともするので、それらを片付けるのもメイドの仕事なのだが……この仕事、メイドたちには好まれていない。
 掃除の類をするだけなら問題はないのだが、研究者たちは……変人と呼ぶべき者が多く、突然奇声を上げたりといったような真似もする。
 また、身体を拭いたり水浴びをしたりといったことも、数日……どころか、十日以上平気でそのような真似をするので、強烈な異臭もする。
 メイドも女だ。それも、年齢の若い者が花嫁修業的な意味でメイドをしている者も多い。
 そのような者たちにとって、そのような研究者の相手は可能な限り避けたい。
 だからこそ、メライナには罰代わりに研究所での仕事が命じられたのだ。
 ……研究所で行われている研究は、本当にその道の専門家でもなければ分からないので、メイドにはその辺が分からないだろうという目論見もあったし、実際に今まではそうだったのだろうが、今回のメイドはメライナだった。
 もちろん、メライナも本職の研究者と同じような知識を持っている訳ではない。
 だが、それでも黄金の薔薇の探索者として多くの遺跡に潜り、貧乏ではあっても貴族としての教育を受けていたメライナであれば、散らばっている紙からある程度研究の内容を察することが出来た。
 それ以外にも、研究所にいる研究者たちは変人ということもあり、メライナがいても自分の研究について延々と喋りながら自分の研究を纏めている者もいれば、他の研究者と討論をしている者もいる。
 結果として、そのような諸々から、メライナは何人かの研究者がカロについての研究をしているということを知ることが出来たのだ。

(少し、都合がよすぎるような……もしかして、私は泳がされているの?)

 現在の自分の状況を考えれば、メライナがそのように思ってもおかしくはない。
 だが、周囲の様子を窺うも、怪しいところ……自分の様子を探っているような者はどこにもいない。
 メライナよりも圧倒的に技量が高く、存在を察知させないような者がいてもおかしくはないのだが……それでも、メライナにとって現在の状況は疑問であると同時に、絶好のチャンスであるのもまた事実だった。

(とにかく、カロの所在を確認出来ただけでも儲けものね。宝物庫の類にあるのかと思っていたら)

 研究者たちの会話や地面に転がっている書類を盗み見たところ、この研究室が集まっている一画のどこかにカロが保管されているというのは確実だった。
 ガリンダミア帝国にしてみれば、ゼオンという人型機動兵器を使うことが出来るカロという存在は、非常に興味深い代物なのだろう。
 もっとも、心核使いが変身――ゼオンの場合は召喚といった感じだが――するモンスターは、基本的に心核の問題ではなく、心核使いにその理由がある。
 そうである以上、カロを研究してもその辺の情報は何も得られない。
 メライナはそう思うのだが、ガリンダミア帝国の帝城で行われている研究である以上、そこに何らかの意味があるのは間違いないのだろう。

「おい、どうした?」

 メライナが自分の幸運に驚き……あるいは、もしかしたら罠ではないかとすら疑っていると、不意にそんな声がかけられる。
 そんな声に一瞬だけ驚きの表情を浮かべたメライナだったが、幸いにして声をかけてきた相手はメライナの後ろにいたので、その表情を見られるようなことはない。

「いえ、何でもありません。少し考えごとをしていただけすので。それで、何かありましたか?」
「ああ、俺の部屋の片付けも頼む。ゴミが多くなってきてな」

 それなら自分で片付けろ。
 不意にそんな風に言いたくなったが、今の自分はメイドであるということを思い出し、声をかけてきた研究者に深々と頭を下げる。

「かしこまりました。この部屋の清掃が片付いたらすぐに向かわせていただきます。それで、お部屋の方はどこでしょう?」
「この部屋の隣だ。じゃあ、頼んだぞ」

 それだけを告げると、その研究者はメライナにも理解の出来ないようなことを口にしながらその場から立ち去る。
 高度な研究をしているのだろうというのは、メライナにも理解出来た。
 だが、その研究が具体的にどのようなもなのかというのは分からず……だが、今はそれよりもやるべきことが多いので、そちらに専念するのだった。
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