剣と魔法の世界で俺だけロボット

神無月 紅

文字の大きさ
257 / 422
逃避行

256話

しおりを挟む
 人形の製造設備のある場所での戦い。
 当然の話だが、そのような場所で戦う以上は大規模は破壊を伴うような攻撃は出来ない。
 具体的には、ロッコーモが心核でオーガに変身して攻撃をするといったことや、大規模な魔法を使っての攻撃はまず使えなかった。
 前者はともかくとして、後者の魔法が使えないというのはこの場合痛い。
 蜂の数は多く、それでいて素早く空を飛ぶという高い機動力を持っている。
 そのような相手を攻撃する場合は、一匹ずつ狙って攻撃をする点の攻撃ではなく、その機動力で移動出来る範囲内を纏めて攻撃する面の攻撃が非常に有効だった。
 だが、この製造設備の価値を考えると、可能な限り破壊しないで敵を倒したい。
 だからこそ、ある程度の範囲攻撃を持っている者たちは、蜂の人形を相手にしながら歯痒い思いをしていた。

「はぁっ!」

 そんな中、アランは心核を使ったり魔法を使ったりといったようなことはせず、長剣で蜂の人形と戦っていた。
 アランの場合、心核を使ってゼオンを召喚してもこの場所では十分に暴れさせることは出来ない。
 ……それどころか、ゼオンを召喚しただけで製造設備のあるこの空間の天井を破壊して、目的の製造設備その物が破壊されてしまう。
 また、魔法にかんしてはそもそも範囲攻撃が可能な魔法を使えないという点もある。
 だからこそ、アランは最初から攻撃手段に悩むことはなく、長剣で蜂の人形と戦っていたのだ。
 振るわれたアランの長剣だったが、蜂の人形はそんな一撃を飛んで回避する。
 蜂は拳大と相応の大きさを持つが、それでも自由に空中を飛ぶことによって相手の攻撃を回避することは難しくない。
 それどころか、そもそもアランの攻撃が届かない高さまで移動してしまえば、遠距離攻撃の手段を持っていないアランには対処のしようがない。
 そして……

「ちぃっ!」

 蜂が針の先端を自分に向けたのを見たアランは、半ば反射的に長剣を振るう。
 ……以前までの、ガリンダミア帝国に捕まる前のアランであれば、その攻撃に対処は出来なかったかもしれない。
 だが、幸か不幸かアランは帝城で軟禁されているときに戦闘訓練をする機会がかなり頻繁にあった。
 もちろんリアとの訓練も十分効果的ではあるのだが、それでも違う相手との訓練というのは大きかったのだろう。
 ともあれ、その訓練の効果によって振るわれたアランの一撃は、自分に向かって飛んでくる針を叩き落とすことに成功する。
 しかし……他の蜂の人形もそうだが、放たれて蜂から消えたはずの針は再びすぐに生えてくる。

(あの針、どうなってるんだ!?)

 長剣を構えつつ、戸惑うアラン。
 蜂の大きさは拳大ほどで、そこから伸びている針もかなりの長さだ。
 普通に考えれば、一度針を撃ってしまった蜂が再び針を生やす……といった真似は、大きさ的に不可能なように思える。
 あるいは、二本目の針が一本目の針よりも短ければアランも納得出来ただろう。
 だが、蜂の人形から生えている針は二本目も一本目と変わらない長さの針だった。
 それを思えば、アランが疑問に思うのも当然だったが……この遺跡は古代魔法文明の遺跡であると考えれば、このようなこともすぐに納得出来てしまう。
 何より……

「くそっ! こっち数が多い!」

 先程の蜂の人形とは別の相手から放たれた針を長剣で弾きながら、アランは叫ぶ。
 そう、一匹だけに集中していればいいのではなく、蜂の人形がアランが最初に戦っていた個体以外にもまだ複数いるのだ。
 蜂の人形にしてみれば、自分達の方が数という点で圧倒的にアランたちよりも勝っているのだから、別に一人に対して一匹で戦うなどといった必要はないのだから。
 せめてもの救いだったのは、技量が低いためか蜂の人形がアランをそこまで重要度の高くない敵と認識し、アランに攻撃してくる蜂の人形の数が少なかったことか。
 他の探索者たち……特に戦闘力に特化しているロッコーモは、十匹以上の蜂の人形に襲われているのだから。

(それで、何で無事なのかが分からないけどな!)

 内心で不満を抱きつつも、アランは長剣を振るって再度飛んできた針を弾き……

「そこだ!」

 その針を放った蜂が空中で一瞬動きを止め……さらにその場所がアランの長剣の届く範囲内だったということもあり、素早く長剣を振るう。
 破壊音と共に、蜂の人形の身体は吹き飛ぶ。
 小さく、空を飛び、それでいて高い攻撃力を持つ。
 そんな蜂の人形だけに、当然の話だが防御力という点では他の人形よりもかなり劣る。
 極力軽くし、空を飛んで攻撃する際の機動力を少しでも高めるという設計思想で生み出された人形なのだろう。
 それはアランにも分かったが、だからといって敵を倒すことが出来なければ意味はない。
 結局のところ、空を飛ばれればアランはどうしようもないのだから。
 何らかの理由で、今のようにアランの攻撃が届く場所まで降りてきてくれれば対処のしようはあったのだが。

「はぁっ!」

 空中から針を放ってくる蜂の人形の攻撃に、アランは長剣を振るってそれを回避する。
 とはいえ、その一撃を回避しても敵が空を飛んだままであれば、どうしようもないのは間違いなかったが。

「アラン、援護する!」

 そんな声と共に射られた矢が空中を飛び、蜂の人形に命中する。
 高い機動力を持つ蜂の人形であっても、手練れの探索者が射る矢を回避するといった真似は出来なかったらしい。
 そんな一撃にアランは笑みを浮かべ、長剣を構えたまま口を開く。

「ありがとうございます!」
「いいから、敵に集中しろ!」

 アランの感謝の言葉に、黄金の薔薇の探索者の男は鋭く叫ぶ。
 男にしてみれば、ここでアランを死なせるなどといったような真似は絶対に出来ないのだ。
 個人的にはアランのことを気にくわないのだが、それでもアランは男が忠誠を誓っているレオノーラと友好的な関係にある人物だ。
 そうである以上、レオノーラのためにもアランを殺されるなどといった真似は絶対に避けるべきだったし、同時に可能な限りアランに怪我をさせないようにする必要があった。
 そんな男の考えは理解していないのだろうが、それでも今の状況では男の言う通りにまずは敵に対処する方が先立った。

「来い、こっちに来い! 俺にかかってきてみろ!」

 挑発するように叫ぶアランだったが、相手が生き物ならそんなアランの行動に何らかの反応を見せたかもしないが、生憎とアランと対峙しているのは蜂の人形だ。
 自分の中にある命令だけを忠実に果たすことだけを目的としており、挑発など何の効果もない。
 アランも蜂の人形が自分の方に向かって降りてこないのを見て、挑発の効果がなかったことを残念に思う。

「こういうとき、やっぱり遠距離攻撃の手段が欲しいよな。母さんにちょっと頼んでみるか? ……けど、長剣の修行だけで一杯一杯だしな」

 呟きながらも、アランの視線は自分を囲むようにして飛んでいる蜂の人形たちから視線を逸らさない。
 アランにとって幸運だったのは、人形の命令がそうなっているのか、それとも他の場所で戦っている仲間との距離の関係なのか、アランの周囲にいる蜂の人形ではあったが、その背後に回るといったようなことはしなかったということだろう。
 もし背後に回られていれば、今のアランでは対処のしようがなかったのは間違いない。

「っと!」
「今だ!」

 蜂の人形の一匹が針を飛ばしたのをアランが長剣で弾くと、その隙をつくかのように先程の男が矢を放って蜂の人形に命中させる。
 元々がそこまで大きくない以上、矢が命中すれば容易に破壊され、もしくは吹き飛ぶ。
 アランは素早く地面に落ちた蜂の人形の近くまで行き、思い切り踏みつけ、破壊する。
 矢の一撃で致命的なダメージを受けていた可能性も高かったが、相手は人形だ。
 生き物であれば、激痛でろくに動けないようなことがあってもおかしくはないのだが、人形には当然の話だが痛覚の類は存在しない。
 そうである以上、矢で射貫いたとしてもそれで本当に倒した訳ではない以上、しっかりと倒しておく必要があった。
 これが、長剣や棍棒といったような武器で砕いたのならともかく、矢では射貫いただけで、その状況からまだ動けてもおかしくはない。
 だからこその、アランの行動だった
 そして矢を射った男も、そんなアランの行動には理解を示しているのか、特に何か不満を口にするような様子はない。
 そうである以上、今は全く何の問題もなく次の敵に狙いを定め……

「アラン、次の敵に攻撃をするぞ! 準備しろ!」

 鋭く叫び、矢を射る。
 アランはその言葉に反応し、素早く武器を構えて蜂の人形を警戒する。
 そして仲間から放たれた矢の一撃に貫かれ、地上に落下してくる相手の動きを待ち……

「回避した!? けど!」

 仲間が矢で射貫かれたためだろう。蜂の人形は矢の一撃を回避することに成功する。
 その様子は当然のようにアランを愕かせるが、それでもすぐに走ったのは、蜂の人形がより高い場所に向かって退避したのではなく、地上に向かって……それこそ、アランの長剣の届く範囲内に降りてきたためだ。
 普通に考えれば、敵の攻撃を回避するのなら別にアランのいる地上付近まで降りてくる必要はない。
 そのようなことになったのは、蜂の人形の中にあるプログラムが、敵との距離を開けすぎるなと、そのようになっていたためなのだろう。
 頭の片隅でそんなことを考えつつ振るわれたアランの長剣は、蜂の人形を破壊することに成功する。

「よし!」

 アランの口から出る言葉。
 だが、そんなアランに弓を使っている男は鋭く叫ぶ。

「一匹倒しただけで喜ぶな! 次だ!」
「分かってます!」

 素早く叫び、男の矢によって射貫かれた蜂の人形に近づき、踏み砕く。
 踏み砕いた瞬間に針があらぬ方向に飛んでいくといったようなこともあったが、幸いにしてその針が誰かに刺さるといったようなことはない。
 そんなやり取りをしながら戦いは続き……二十分ほどの時間が経過すると、蜂の人形は全滅する。

「俺たちの、勝利だ!」

 そう叫ぶアランの言葉が、周囲に響き渡るのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜

駄作ハル
ファンタジー
異世界の大貴族レオ=ウィルフリードとして転生した平凡サラリーマン。 しかし、待っていたのは平和な日常などではなかった。急速な領土拡大を目論む帝国の貴族としての日々は、戦いの連続であった─── そんなレオに与えられたスキル『英雄召喚』。それは現世で英雄と呼ばれる人々を呼び出す能力。『鬼の副長』土方歳三、『臥龍』所轄孔明、『空の魔王』ハンス=ウルリッヒ・ルーデル、『革命の申し子』ナポレオン・ボナパルト、『万能人』レオナルド・ダ・ヴィンチ。 前世からの知識と英雄たちの逸話にまつわる能力を使い、大切な人を守るべく争いにまみれた異世界に平和をもたらす為の戦いが幕を開ける! 完結まで毎日投稿!

残念ながら主人公はゲスでした。~異世界転移したら空気を操る魔法を得て世界最強に。好き放題に無双する俺を誰も止められない!~

日和崎よしな
ファンタジー
―あらすじ― 異世界に転移したゲス・エストは精霊と契約して空気操作の魔法を獲得する。 強力な魔法を得たが、彼の真の強さは的確な洞察力や魔法の応用力といった優れた頭脳にあった。 ゲス・エストは最強の存在を目指し、しがらみのない異世界で容赦なく暴れまくる! ―作品について― 完結しました。 全302話(プロローグ、エピローグ含む),約100万字。

【完結】剣聖と聖女の娘はのんびりと(?)後宮暮らしを楽しむ

O.T.I
ファンタジー
かつて王国騎士団にその人ありと言われた剣聖ジスタルは、とある事件をきっかけに引退して辺境の地に引き籠もってしまった。 それから時が過ぎ……彼の娘エステルは、かつての剣聖ジスタルをも超える剣の腕を持つ美少女だと、辺境の村々で噂になっていた。 ある時、その噂を聞きつけた辺境伯領主に呼び出されたエステル。 彼女の実力を目の当たりにした領主は、彼女に王国の騎士にならないか?と誘いかける。 剣術一筋だった彼女は、まだ見ぬ強者との出会いを夢見てそれを了承するのだった。 そして彼女は王都に向かい、騎士となるための試験を受けるはずだったのだが……

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

商人でいこう!

八神
ファンタジー
「ようこそ。異世界『バルガルド』へ」

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

異世界召喚は7回目…って、いい加減にしろよ‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
『おぉ、勇者達よ! 良くぞ来てくれた‼︎』 見知らぬ城の中、床には魔法陣、王族の服装は中世の時代を感じさせる衣装… 俺こと不知火 朔夜(しらぬい さくや)は、クラスメートの4人と一緒に異世界に召喚された。 突然の事で戸惑うクラスメート達… だが俺はうんざりした顔で深い溜息を吐いた。 「またか…」 王族達の話では、定番中の定番の魔王が世界を支配しているから倒してくれという話だ。 そして儀式により…イケメンの正義は【勇者】を、ギャルっぽい美紅は【聖戦士】を、クラス委員長の真美は【聖女】を、秀才の悠斗は【賢者】になった。 そして俺はというと…? 『おぉ、伝承にある通り…異世界から召喚された者には、素晴らしい加護が与えられた!』 「それよりも不知火君は何を得たんだ?」 イケメンの正義は爽やかな笑顔で聞いてきた。 俺は儀式の札を見ると、【アンノウン】と書かれていた。 その場にいた者達は、俺の加護を見ると… 「正体不明で気味が悪い」とか、「得体が知れない」とか好き放題言っていた。 『ふむ…朔夜殿だけ分からずじまいか。だが、異世界から来た者達よ、期待しておるぞ!』 王族も前の4人が上位のジョブを引いた物だから、俺の事はどうでも良いらしい。 まぁ、その方が気楽で良い。 そして正義は、リーダーとして皆に言った。 「魔王を倒して元の世界に帰ろう!」 正義の言葉に3人は頷いたが、俺は正義に言った。 「魔王を倒すという志は立派だが、まずは魔物と戦って勝利をしてから言え!」 「僕達には素晴らしい加護の恩恵があるから…」 「肩書きがどんなに立派でも、魔物を前にしたら思う様には動けないんだ。現実を知れ!」 「何よ偉そうに…アンタだったら出来るというの?」 「良いか…殴り合いの喧嘩もしたことがない奴が、いきなり魔物に勝てる訳が無いんだ。お前達は、ゲーム感覚でいるみたいだが現実はそんなに甘く無いぞ!」 「ずいぶん知ったような口を聞くね。不知火は経験があるのか?」 「あるよ、異世界召喚は今回が初めてでは無いからな…」 俺は右手を上げると、頭上から光に照らされて黄金の甲冑と二振の聖剣を手にした。 「その…鎧と剣は?」 「これが証拠だ。この鎧と剣は、今迄の世界を救った報酬として貰った。」 「今迄って…今回が2回目では無いのか?」 「今回で7回目だ!マジでいい加減にして欲しいよ。」 俺はうんざりしながら答えた。 そう…今回の異世界召喚で7回目なのだ。 いずれの世界も救って来た。 そして今度の世界は…? 6月22日 HOTランキングで6位になりました! 6月23日 HOTランキングで4位になりました! 昼過ぎには3位になっていました.°(ಗдಗ。)°. 6月24日 HOTランキングで2位になりました! 皆様、応援有り難う御座いますm(_ _)m

転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。 コイツは何かがおかしい。 本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。 目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

処理中です...