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メルリアナへ
282話
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兵士との交渉も終わり、雲海や黄金の薔薇の面々はいよいよ遺跡のある場所から離れることになる。
そんな中、アランはどこか名残惜しげに遺跡を眺めていた。
「どうした、アラン。遺跡の方を見て。もっと潜りたかったのか?」
ロッコーモの言葉に、アランは首を横に振る。
「そういう訳じゃないんですけど。……ほら、他の遺跡に転移で行けたじゃないですか。そこでグヴィスたちに会ったことを思いだして」
「ああ、あの連中」
ロッコーモも、グヴィスとの戦闘には参加しているので、顔を見ている。
だからこそ、アランの友人のグヴィスたちを知っているのだ。
「はい。まぁ、イルゼンさんのおかげで転移装置は停止したので、もうこっちに攻めてくるといったことはないと思いますけど。……やっぱりグヴィスたちとは敵対するしかないんだな、と思ってしまって」
アランにしてみれば、数少ない友人だ。
いや、正確には雲海や黄金の薔薇には友人と呼ぶべき者たちもいるのだが、それとは違った場所にいるという意味の友人は非常に希少だった。
「その辺は気にするな。一度殺し合ったからって、友人じゃなくなるってことはないからな。俺も何度か殺し合った友人はいるぞ」
「……それって、友人って呼べるんですか?」
ロッコーモの言葉にアランが思い浮かべたのは、夕方の河原で殴り合い、『やるな』『お前もな』といったように最終的に二人の間に友情が芽生える……といったような光景だったが、アランとグヴィスが行ったのは喧嘩ではなく殺し合いだ。
正確には、グヴィスはアランを捕らえようとしていたのであって、殺し合いではないのだが。
「取りあえず、今はしょうがないだろ。また今度会ったときは、また別の関係になっているかもしれないし、それを期待していろ」
そう言われれば、アランもそれ以上は何も言えなくなる。
実際、ロッコーモの言う通りのようなことになる可能性は否定出来ない事実だったのだから。
「アラン、そろそろ出発するわよ。……ロッコーモ、アランに何か妙なことを教えてないでしょうね?」
「母さん」
アランに言葉をかけてきたのは、母親のリア。
ハーフエルフであるにもかかわらず、魔法よりも長剣を使った近接戦闘を得意としている人物だ。
ハーフエルフという種族であるにも関わらず、その身体能力は非常に高い。
持ち前の戦闘センスもあってか、魔法を使わない純粋な近接戦闘の実力では雲海の中もでもトップクラスの実力を持つ。
それこそ、身体が大きなロッコーモであってもあっさりと倒してしまうほどに。
「いつまでもここにいる訳にいかないのは分かってるでしょ。準備はいいんでしょうね? もしまだ出発する準備が出来ていないなら……分かってるわね?」
「準備は出来てるって。ねぇ、ロッコーモさん」
「俺を巻き込むな。俺は俺でやることがあるんだから、悪いけどこの辺で失礼するぞ」
ロッコーモは、自分を巻き込むなと言いたげにアランを見て、その場から立ち去る。
それこそ、つい先程までは男同士でしみじみと語り合っていたとは思えないような、そんな行動。
思わず裏切り者と言いたくなったアランだったが、今この状況でそのようなことを言っても意味はないと判断し……仕方なく自分だけで母親の相手をすることにする。
「それで母さん、これからどこに向かうのかは決まったの? そろそろドットリオン王国に戻ってもいいと思うんだけど」
元々アランたちがドットリオン王国とは正反対の方向にあるこの遺跡を一時的な拠点としていたのは、追撃隊がドットリオン王国方面に向かったと、そうイルゼンが判断したためだ。
だが、どのような手段かは分からないが、アランたちがここにいるのをガリンダミア帝国軍は知った。
(グヴィスたちからの報告か? いや、グヴィスたちはあの遺跡がどこに転移で繋がっているのかは分からなかったはずだ。そして転移システムもイルゼンさんが止めた。だとすれば、ここに俺たちがいるって分かったのは……本当にどうやってだ?)
そんな疑問を抱くアランだったが、分からない以上はそれを考えても意味はないとそれ以上考える野は止める。
「で、どこに行くのかイルゼンさんは言ってた?」
「聞いてないわ。けど、イルゼンならその辺は上手くやるでしょ」
リアも普段はイルゼンのことを適当に扱ってはいるが、それでも心の底では信じているのだろう。
長い付き合いなので、飄々としたいつものイルゼンに対する扱いというのに慣れてしまっているのだ。
「そう言えば、母さん。イルゼンさんのことでちょっと聞きたいんだけど」
「何? 言っておくけど、イルゼンのことで色々と難しく考えても意味はないわよ。それこそイルゼンだからで納得した方がいいわ」
イルゼンだから。
その言葉には強い……それこそもの凄く強い説得力がある。
実際にアランもそのように思っていたのは、間違いのない事実なのだから。
だが、それでも野営地で行われた一件……具体的に人形の製造設備を自由に扱って自分たちの援軍として使ったとなると『イルゼンだから』ですませるような気にはなれない。
……とはいえ、それはあくまでもアランだからそのように思っているのであって、他の面々は相変わらず『イルゼンだから』で納得してしまっているのだが。
「でも、古代魔法文明の遺産をあそこまで自由に使ったっていうのは、ちょっと納得出来ないんだけど。本人は偶然だって言ったけど、偶然で古代魔法文明の遺産を使いこなせるってのは、おかしくないか?」
「どうかしらね。……ロッコーモはどう思う?」
「ん? イルゼンさんだからで、いいと思うけどな」
ロッコーモは、リアの言葉にそう返す。
元々ロッコーモは難しいことを考えるのを好まない。
そうである以上『イルゼンだから』で納得出来るのなら、それでいいという風に思ったのだろう。
「ロッコーモさんなら、そう言うと思ってたんですけどね」
とはいえ、リアもロッコーモもイルゼンについてこれ以上聞いても何か教えて貰えるとは思えない以上、アランとしてはそれ以上聞くのは止めておく。
そして出発の準備も終わっているので、そちらに向かおうとしたアランの背中にリアが声をかける。
「アラン」
「母さん? どうしたんだ?」
「これだけは言っておくわよ。探索者の中には……いえ、冒険者や傭兵もそうだけど、人の過去は詮索をするものじゃないよ」
そう告げるリアの言葉には、強い意思が宿っていた。
それこそ、もしアランがこれ以上イルゼンについて探ろうとしているのなら、実力行使をしてでも止めようという。
そんなリアの視線に射竦められたアランは、数秒の沈黙のあとで仕方がないと息を吐く。
(この様子を見ると、母さんももしかして人に知られたくない秘密とか、そういうのを持ってるのか?)
ハーフエルフのリアだけに、小さな頃に色々とあってもおかしくはないとアランには思えた。
ハーフエルフといった存在はそれなりに珍しいが、皆無といった訳ではない。
元々エルフというのは顔立ちが整っているだけに、人間から見て美形ばかりだ。
それだけに、人間とエルフの間で恋愛感情が生まれ、子供が出来るといったことは珍しくない。
中には、奴隷として捕らえられて売られ、その結果としてハーフエルフが生まれる場合おあるのだが。
ともあれ、そんなハーフエルフのリアだけに、過去に何かあってもおかしくはないし、アランもそれを無理に聞こうとは思わなかった。
「分かったよ」
短くそれだけ言って、アランはその場をあとにする。
そんなアランの背中を見送ったリアは、隣で自分を見ているロッコーモに気が付く。
「私は気にしてないわよ」
その言葉がどこまで真実なのかは、ロッコーモにも分からない。
だが、今はリアにこれ以上聞けるような状態ではないと判断し、黙り込む。
リアはそんなロッコーモの姿を一瞥すると、その場から離れてアランを追うのだった。
「では、出発します。向かうのは、ガリンダミア帝国の隣国メルリアナ。……もっとも、実際にはガリンダミア帝国の従属国という扱いになっているので、注意する必要がありますが」
イルゼンのその言葉に、雲海と黄金の薔薇の探索者たちはそれぞれ疑問を抱く。
向かう先は、てっきりドットリオン王国だとばかり思っていたためだ。
だが、メルリアナという国はガリンダミア帝国を挟んでドットリオン王国の反対側にある小国だ。
何故わざわざそのような国に? と疑問に思うのは当然だろう。
「イルゼンさん、何だってそんな小国に向かうんだ? せっかく襲ってきたガリンダミア帝国軍を倒したんだし、今のうちにドットリオン王国に戻った方がよくないか?」
探索者の一人が口にした質問に、他の者たちもそれぞれ同意するように頷く。
メルリアナという国はガリンダミア帝国に侵略戦争の矛先を向けられたとき、戦いもせずに降伏した国だ。
そういう意味で、周辺諸国……特にガリンダミア帝国軍と戦って敗れて従属された国からは、臆病者の国として見られることも多い。
もっとも、戦わず即座に降伏したからこそ、ある程度国力は維持されたままなのだが。
「あの国には、僕の知り合いがいるんですよ。その人なら、僕たちの現状をどうにかしてくれる可能性があります。それに……小国ではありますが、遺跡はそれなりに多いですよ」
その言葉に、話を聞いていた者たちの様子は少しだけ変わる。
探索者としては。やはり遺跡というのは非常に魅力的なのだ。
金を稼ぐという点でも大きいが、それ以上にやはり未知を求めるといったようなことは、探索者にとって非常に興味深い。
「遺跡が多いって、具体的にはどれくらいの数です?」
「そうですね。数そのものはかなり多いですが、巨大な遺跡よりは比較的小さな遺跡……それこそ、この遺跡よりも少し大きいくらいの遺跡が多いですね」
この遺跡は、古代魔法文明の遺跡としてみれば比較的小規模な遺跡だ。
それよりも大きいと言われても、それは質より量といったような遺跡のように思えたが……それでも、遺跡が多いというのは探索者たちにとっては楽しみだった。
そんな中、アランはどこか名残惜しげに遺跡を眺めていた。
「どうした、アラン。遺跡の方を見て。もっと潜りたかったのか?」
ロッコーモの言葉に、アランは首を横に振る。
「そういう訳じゃないんですけど。……ほら、他の遺跡に転移で行けたじゃないですか。そこでグヴィスたちに会ったことを思いだして」
「ああ、あの連中」
ロッコーモも、グヴィスとの戦闘には参加しているので、顔を見ている。
だからこそ、アランの友人のグヴィスたちを知っているのだ。
「はい。まぁ、イルゼンさんのおかげで転移装置は停止したので、もうこっちに攻めてくるといったことはないと思いますけど。……やっぱりグヴィスたちとは敵対するしかないんだな、と思ってしまって」
アランにしてみれば、数少ない友人だ。
いや、正確には雲海や黄金の薔薇には友人と呼ぶべき者たちもいるのだが、それとは違った場所にいるという意味の友人は非常に希少だった。
「その辺は気にするな。一度殺し合ったからって、友人じゃなくなるってことはないからな。俺も何度か殺し合った友人はいるぞ」
「……それって、友人って呼べるんですか?」
ロッコーモの言葉にアランが思い浮かべたのは、夕方の河原で殴り合い、『やるな』『お前もな』といったように最終的に二人の間に友情が芽生える……といったような光景だったが、アランとグヴィスが行ったのは喧嘩ではなく殺し合いだ。
正確には、グヴィスはアランを捕らえようとしていたのであって、殺し合いではないのだが。
「取りあえず、今はしょうがないだろ。また今度会ったときは、また別の関係になっているかもしれないし、それを期待していろ」
そう言われれば、アランもそれ以上は何も言えなくなる。
実際、ロッコーモの言う通りのようなことになる可能性は否定出来ない事実だったのだから。
「アラン、そろそろ出発するわよ。……ロッコーモ、アランに何か妙なことを教えてないでしょうね?」
「母さん」
アランに言葉をかけてきたのは、母親のリア。
ハーフエルフであるにもかかわらず、魔法よりも長剣を使った近接戦闘を得意としている人物だ。
ハーフエルフという種族であるにも関わらず、その身体能力は非常に高い。
持ち前の戦闘センスもあってか、魔法を使わない純粋な近接戦闘の実力では雲海の中もでもトップクラスの実力を持つ。
それこそ、身体が大きなロッコーモであってもあっさりと倒してしまうほどに。
「いつまでもここにいる訳にいかないのは分かってるでしょ。準備はいいんでしょうね? もしまだ出発する準備が出来ていないなら……分かってるわね?」
「準備は出来てるって。ねぇ、ロッコーモさん」
「俺を巻き込むな。俺は俺でやることがあるんだから、悪いけどこの辺で失礼するぞ」
ロッコーモは、自分を巻き込むなと言いたげにアランを見て、その場から立ち去る。
それこそ、つい先程までは男同士でしみじみと語り合っていたとは思えないような、そんな行動。
思わず裏切り者と言いたくなったアランだったが、今この状況でそのようなことを言っても意味はないと判断し……仕方なく自分だけで母親の相手をすることにする。
「それで母さん、これからどこに向かうのかは決まったの? そろそろドットリオン王国に戻ってもいいと思うんだけど」
元々アランたちがドットリオン王国とは正反対の方向にあるこの遺跡を一時的な拠点としていたのは、追撃隊がドットリオン王国方面に向かったと、そうイルゼンが判断したためだ。
だが、どのような手段かは分からないが、アランたちがここにいるのをガリンダミア帝国軍は知った。
(グヴィスたちからの報告か? いや、グヴィスたちはあの遺跡がどこに転移で繋がっているのかは分からなかったはずだ。そして転移システムもイルゼンさんが止めた。だとすれば、ここに俺たちがいるって分かったのは……本当にどうやってだ?)
そんな疑問を抱くアランだったが、分からない以上はそれを考えても意味はないとそれ以上考える野は止める。
「で、どこに行くのかイルゼンさんは言ってた?」
「聞いてないわ。けど、イルゼンならその辺は上手くやるでしょ」
リアも普段はイルゼンのことを適当に扱ってはいるが、それでも心の底では信じているのだろう。
長い付き合いなので、飄々としたいつものイルゼンに対する扱いというのに慣れてしまっているのだ。
「そう言えば、母さん。イルゼンさんのことでちょっと聞きたいんだけど」
「何? 言っておくけど、イルゼンのことで色々と難しく考えても意味はないわよ。それこそイルゼンだからで納得した方がいいわ」
イルゼンだから。
その言葉には強い……それこそもの凄く強い説得力がある。
実際にアランもそのように思っていたのは、間違いのない事実なのだから。
だが、それでも野営地で行われた一件……具体的に人形の製造設備を自由に扱って自分たちの援軍として使ったとなると『イルゼンだから』ですませるような気にはなれない。
……とはいえ、それはあくまでもアランだからそのように思っているのであって、他の面々は相変わらず『イルゼンだから』で納得してしまっているのだが。
「でも、古代魔法文明の遺産をあそこまで自由に使ったっていうのは、ちょっと納得出来ないんだけど。本人は偶然だって言ったけど、偶然で古代魔法文明の遺産を使いこなせるってのは、おかしくないか?」
「どうかしらね。……ロッコーモはどう思う?」
「ん? イルゼンさんだからで、いいと思うけどな」
ロッコーモは、リアの言葉にそう返す。
元々ロッコーモは難しいことを考えるのを好まない。
そうである以上『イルゼンだから』で納得出来るのなら、それでいいという風に思ったのだろう。
「ロッコーモさんなら、そう言うと思ってたんですけどね」
とはいえ、リアもロッコーモもイルゼンについてこれ以上聞いても何か教えて貰えるとは思えない以上、アランとしてはそれ以上聞くのは止めておく。
そして出発の準備も終わっているので、そちらに向かおうとしたアランの背中にリアが声をかける。
「アラン」
「母さん? どうしたんだ?」
「これだけは言っておくわよ。探索者の中には……いえ、冒険者や傭兵もそうだけど、人の過去は詮索をするものじゃないよ」
そう告げるリアの言葉には、強い意思が宿っていた。
それこそ、もしアランがこれ以上イルゼンについて探ろうとしているのなら、実力行使をしてでも止めようという。
そんなリアの視線に射竦められたアランは、数秒の沈黙のあとで仕方がないと息を吐く。
(この様子を見ると、母さんももしかして人に知られたくない秘密とか、そういうのを持ってるのか?)
ハーフエルフのリアだけに、小さな頃に色々とあってもおかしくはないとアランには思えた。
ハーフエルフといった存在はそれなりに珍しいが、皆無といった訳ではない。
元々エルフというのは顔立ちが整っているだけに、人間から見て美形ばかりだ。
それだけに、人間とエルフの間で恋愛感情が生まれ、子供が出来るといったことは珍しくない。
中には、奴隷として捕らえられて売られ、その結果としてハーフエルフが生まれる場合おあるのだが。
ともあれ、そんなハーフエルフのリアだけに、過去に何かあってもおかしくはないし、アランもそれを無理に聞こうとは思わなかった。
「分かったよ」
短くそれだけ言って、アランはその場をあとにする。
そんなアランの背中を見送ったリアは、隣で自分を見ているロッコーモに気が付く。
「私は気にしてないわよ」
その言葉がどこまで真実なのかは、ロッコーモにも分からない。
だが、今はリアにこれ以上聞けるような状態ではないと判断し、黙り込む。
リアはそんなロッコーモの姿を一瞥すると、その場から離れてアランを追うのだった。
「では、出発します。向かうのは、ガリンダミア帝国の隣国メルリアナ。……もっとも、実際にはガリンダミア帝国の従属国という扱いになっているので、注意する必要がありますが」
イルゼンのその言葉に、雲海と黄金の薔薇の探索者たちはそれぞれ疑問を抱く。
向かう先は、てっきりドットリオン王国だとばかり思っていたためだ。
だが、メルリアナという国はガリンダミア帝国を挟んでドットリオン王国の反対側にある小国だ。
何故わざわざそのような国に? と疑問に思うのは当然だろう。
「イルゼンさん、何だってそんな小国に向かうんだ? せっかく襲ってきたガリンダミア帝国軍を倒したんだし、今のうちにドットリオン王国に戻った方がよくないか?」
探索者の一人が口にした質問に、他の者たちもそれぞれ同意するように頷く。
メルリアナという国はガリンダミア帝国に侵略戦争の矛先を向けられたとき、戦いもせずに降伏した国だ。
そういう意味で、周辺諸国……特にガリンダミア帝国軍と戦って敗れて従属された国からは、臆病者の国として見られることも多い。
もっとも、戦わず即座に降伏したからこそ、ある程度国力は維持されたままなのだが。
「あの国には、僕の知り合いがいるんですよ。その人なら、僕たちの現状をどうにかしてくれる可能性があります。それに……小国ではありますが、遺跡はそれなりに多いですよ」
その言葉に、話を聞いていた者たちの様子は少しだけ変わる。
探索者としては。やはり遺跡というのは非常に魅力的なのだ。
金を稼ぐという点でも大きいが、それ以上にやはり未知を求めるといったようなことは、探索者にとって非常に興味深い。
「遺跡が多いって、具体的にはどれくらいの数です?」
「そうですね。数そのものはかなり多いですが、巨大な遺跡よりは比較的小さな遺跡……それこそ、この遺跡よりも少し大きいくらいの遺跡が多いですね」
この遺跡は、古代魔法文明の遺跡としてみれば比較的小規模な遺跡だ。
それよりも大きいと言われても、それは質より量といったような遺跡のように思えたが……それでも、遺跡が多いというのは探索者たちにとっては楽しみだった。
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