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メルリアナへ
298話
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「……え?」
翌日、アランは出発の準備をしているときに、クラリスからそのことを聞かされ、驚きの声を上げる。
「えっと、悪いけどもう一度聞かせてくれるか? もしかしたら、俺の聞き間違えかもしれないし」
「イルゼンさんと交渉して、少しの間護衛をして貰うことになりました」
クラリスのその言葉に、自分の聞き間違いではなかったと確認したアランは、素直に驚きの表情を浮かべる。
クラリスにイルゼンと交渉しては? と提案したのは、アランだ。
それは間違いないのだが、それでも半ば駄目元という思いがあったのは間違いない。
イルゼンがメルリアナには向かうのは、少し前に戦ったガリンダミア帝国軍が使った死の瞳について何かを調べるためだというのは、アランも理解している。
だからこそ、イルゼンがクラリスからの要請――もしくは依頼――を引き受けたというのは、驚きだった。
(もしかして、クラリスは交渉が上手かったりするのか? もしくは、言霊を使って? ……取りあえず後者は、クラリスの性格的にはなさそうだけど)
自分の言葉を相手に聞かせるだけでその通りに動かすことが出来る、言霊。
その威力は非常に強力だが、強力だからこそクラリスはそう簡単に使ったりといったようなことはしないだろうとアランには思えた。
「どういう報酬で釣ったんだ?」
「え? いえ、別に報酬らしい報酬は約束してませんよ。ただ、私が長になることが出来たら、何かあったら助けて欲しいとは言われましたけど」
「……それだけで?」
もちろん、何かあったときに獣人たちの力を借りることが出来るというのは、大きな意味を持つ。
ただし、イルゼンが死の瞳の件を後回しにしてまでクラリスに協力するかと言われれば、アランとしては素直に頷く真似は出来ないだろう。
(つまり、イルゼンさんには何か狙いが? なら、それは何だ? いや、これならいっそ本人に聞けばいいか)
アランはそう判断し、クラリスにちょっとイルゼンさんに用事があるからと言って、一旦別れる。
クラリスはもう少しアランと話したかったようだったが、アランの様子から何かイルゼンと大事なことでもあるのだろうと判断して見送るのだった。
「イルゼンさん、クラリスから話を聞いたんですけど、どういうことですか?」
「おや、アラン君のことだから、てっきり喜ぶと思ったんですが?」
「それはまぁ、そうですけど。だからって、イルゼンさんは俺が喜ぶからってことだけで、クラリスからの依頼……もしくは頼みですか? それを受けるとは思えないんですけど。報酬も正直微妙なところですし」
クラリスが長になったらというのは、いつクラリスが長になるか分からない以上、確実性はない。
あるいは、今が特に何か忙しい用事がないときであれば、イルゼンがクラリスを見捨てるのも可哀想だと思い、依頼を受けていたかもしれないが。
しかし、今は死の瞳の件についてメルリアナに向かっているはずだった。
その状況で、しかもガリンダミア帝国軍に狙われているアランは、自分で言うのも何だが生身での戦闘は決して得意ではない。
そうである以上、自分がわざわざ雲海や黄金の薔薇から離れてクラリスの方に行くというのは、理解出来なかった。
「だから、ですよ。正直なところ僕も迷ったんですけどね。ですが、ガリンダミア帝国軍の目を分散させるというのは、決して悪い選択ではありません。特に向こうは、アラン君のいる方に意識を集中して、こちらについては注意深くならないでしょう。……もちろん、見つからないのが一番ですが」
イルゼンの説明で、アランはクラリスたちを囮にしようとしているのだと、理解する。
当然、アランにとってはまだ会って一日程度だが、妹のような存在となりつつあるクラリスをそんな目に遭わせるのは……という思いから、自然とイルゼンに向ける視線は責めるようなものになる。
「本気ですか?」
「ええ、もちろん。ああ、ちなみに言っておきますが、この件は向こうも知っています。この状況で護衛を頼んでくる以上、こちらの事情を話しておく必要があると考えましたので」
「それは……」
普通に考えれば、獣牙衆といった面々に襲撃されるよりもガリンダミア帝国という一国を敵に回す方が脅威のはずだ。
そうである以上、クラリスはそれを断ってもいいのだが……何故か、クラリスはそれを受け入れたのだ。
そしてクラリスが全てを知って自分たちを護衛として雇うと判断した以上、アランとしてはそれ以上不満を口には出せない。
「それで、こっちの戦力はどのくらいです? 自慢じゃないですけど、心核を使わないと、俺は獣牙衆って連中には勝てないと思いますよ?」
「ピ!」
アランの言葉に、カロが鳴き声を上げる。
自分がいれば大丈夫と、そう言ってるようにアランには思えた。
実際、カロのその言葉――というほどにはっきりとしたものはないが――は事実だ。
しかし、それはあくまでもアランが心核を使って召喚したゼオンに乗っていればの話だが。
イルゼンの贔屓目という訳ではなく、実際にゼオンに乗ったアランは非常に強い。
空を飛ぶことが出来て、地上からの攻撃は届かない高度からビームライフルを始めとした様々な攻撃を行うことが出来る。
ビームライフルは非常に強力で、それこそ心核使いが変身したモンスターを相手にしても、致命的な一撃を当たることが出来る。
腹部拡散ビーム砲は、拡散している分だけ一撃の威力は低いものの、それはあくまでも集束しているビームに比べての話であって、人間を殺す程度の威力は十分に持っていた。
とはいえ、それはあくまでもゼオンに乗っていればの話だ。
普通に行動しているときは、当然ながらゼオンを召喚したりはしていない。
そのような状況で獣牙衆に襲われるようなことがあった場合、間違いなく面倒なことになってしまうだろう。
アランも自分が生身での戦いでは決して強くないと理解しているからこそ、自分だけではなく、どれだけの人数を護衛に回すのかといったとこを聞いたのだろう。
「そうですね。七割……いえ、八割はそっちに行って下さい」
「……え?」
八割をイルゼンが連れていく。
そう言ったのかと思ったが、改めて今のイルゼンの言葉を思い出すと、八割をアランの方にと言ってる。
「えっと、それは本気ですか?」
「もちろん本気だよ。そもそも、ガリンダミア帝国軍の目をアラン君の方に向けるために別行動をするんだ。それを考えれば、中途半端にこちらに戦力を連れていくというのは、止めた方がいいと思うだろう?」
「それは……まぁ……」
アランにもイルゼンの言ってる内容は理解出来る。
そもそもの話、ガリンダミア帝国軍の目をアランに向けるのだから、イルゼンとしては少数の方が動きやすいのだ。
それこそ、本音を言えば八割でなく九割はアランと一緒に行動して欲しいと思うほどだ。
だが、一割となるとこっそり活動するのは問題ないが、もし何らかの理由で戦闘になったときには戦力不足になりかねない。
もちろんイルゼンも探索者である以上相応の強さを持つが、それでも念には念を入れた方がいいのは間違いない。
そのために、アランたち戦力の大部分を同行させ、自分たちは少ない人数で行動することにしたのだろう。
「あの死の瞳ってマジックアイテムのことは、じゃあ俺たちは知ることが出来ないんですか?」
イルゼンがアランと別行動をするということは、当然ながら死の瞳についての情報はイルゼンたちが聞くということになるだろう。
心核使いにとっては鬼門とも呼ぶべきマジックアイテムだけに、アランとしては出来るだけ多くの情報を知っておきたかった。
しかし、そんなアランの言葉にイルゼンは何を言ってるんです? といったような視線を向ける。
「元々、死の瞳については僕だけで調べる予定でしたよ。アラン君たちは……少なくても今は知るべきことではないですから」
「何でです? 心核使いにとっては、あの件については絶対に知っておいた方がいいじゃないですか」
アランにしてみれば、あの死の瞳というマジックアテムは脅威だ。
ただでさえ、アランは心核使いに特化している存在だというのに、そんなアランが心核を使えなくなるのだ。
それを考えれば、死の瞳が非常に厄介な存在なのは間違いない。
発動させるのに、使用者の命を使う必要があるとしても、それはアランにとって決して安心出来ることではなかった。
「そうかもしれませんが、先程も言った通り、今はまだ早いのです。それに……当然ですが、死の瞳などというマジックアイテムがそう多くある訳ではありません。基本的には、死の瞳について警戒する必要はありませんよ」
「そう言っても……空を飛んでいるときに、いきなり死の瞳を使われたら、かなり厳しいですよ?」
これで、ゼオンが空を飛べないのであれば、死の瞳を使われても墜落死の心配をする必要はなかっただろう。
地上を歩いて移動しているところで、急にゼオンが消失するだけなのだから。
とはいえ、ゼオンの全高は十八メートル。
コックピットがあるのは胴体なので、それだけの高さという訳ではないが……それでも、下手をすれば十メートル以上の高さから地面に落ちることになるだろう。
アランが生身でも高い身体能力を発揮出来るのならともかく、そのような真似が出来ない以上、それが致命傷になる危険はある。
だが、それでも空を……高度百メートルほどの場所を飛んでいるときに、いきなりゼオンが消滅するといったようなことを考えなくてもいいだけ、楽かもしれないが。
「その辺はどうしようもないですね。まさか、地面のすぐ近くを飛ぶといった風にもいかないでしょうし。……ちなみに出来るんですよね?」
「出来ますよ。あまり意味がないからやりませんけど」
アランが知っているロボットのアニメでも、重装甲で地面を浮かんで移動するホバータイプの人型機動兵器があった。
地上を歩くよりも高い機動力を持つが、それでもやはり空を飛ぶ機動力には及ばない。
より正確には、最初は空を飛ばそうと研究が行われ、その結果として妥協案的にホバー移動をするようになった……といった設定だった。
久しぶりにあのアニメがみたいな。
そう思いながら、アランはイルゼンと言葉を交わすのだった。
翌日、アランは出発の準備をしているときに、クラリスからそのことを聞かされ、驚きの声を上げる。
「えっと、悪いけどもう一度聞かせてくれるか? もしかしたら、俺の聞き間違えかもしれないし」
「イルゼンさんと交渉して、少しの間護衛をして貰うことになりました」
クラリスのその言葉に、自分の聞き間違いではなかったと確認したアランは、素直に驚きの表情を浮かべる。
クラリスにイルゼンと交渉しては? と提案したのは、アランだ。
それは間違いないのだが、それでも半ば駄目元という思いがあったのは間違いない。
イルゼンがメルリアナには向かうのは、少し前に戦ったガリンダミア帝国軍が使った死の瞳について何かを調べるためだというのは、アランも理解している。
だからこそ、イルゼンがクラリスからの要請――もしくは依頼――を引き受けたというのは、驚きだった。
(もしかして、クラリスは交渉が上手かったりするのか? もしくは、言霊を使って? ……取りあえず後者は、クラリスの性格的にはなさそうだけど)
自分の言葉を相手に聞かせるだけでその通りに動かすことが出来る、言霊。
その威力は非常に強力だが、強力だからこそクラリスはそう簡単に使ったりといったようなことはしないだろうとアランには思えた。
「どういう報酬で釣ったんだ?」
「え? いえ、別に報酬らしい報酬は約束してませんよ。ただ、私が長になることが出来たら、何かあったら助けて欲しいとは言われましたけど」
「……それだけで?」
もちろん、何かあったときに獣人たちの力を借りることが出来るというのは、大きな意味を持つ。
ただし、イルゼンが死の瞳の件を後回しにしてまでクラリスに協力するかと言われれば、アランとしては素直に頷く真似は出来ないだろう。
(つまり、イルゼンさんには何か狙いが? なら、それは何だ? いや、これならいっそ本人に聞けばいいか)
アランはそう判断し、クラリスにちょっとイルゼンさんに用事があるからと言って、一旦別れる。
クラリスはもう少しアランと話したかったようだったが、アランの様子から何かイルゼンと大事なことでもあるのだろうと判断して見送るのだった。
「イルゼンさん、クラリスから話を聞いたんですけど、どういうことですか?」
「おや、アラン君のことだから、てっきり喜ぶと思ったんですが?」
「それはまぁ、そうですけど。だからって、イルゼンさんは俺が喜ぶからってことだけで、クラリスからの依頼……もしくは頼みですか? それを受けるとは思えないんですけど。報酬も正直微妙なところですし」
クラリスが長になったらというのは、いつクラリスが長になるか分からない以上、確実性はない。
あるいは、今が特に何か忙しい用事がないときであれば、イルゼンがクラリスを見捨てるのも可哀想だと思い、依頼を受けていたかもしれないが。
しかし、今は死の瞳の件についてメルリアナに向かっているはずだった。
その状況で、しかもガリンダミア帝国軍に狙われているアランは、自分で言うのも何だが生身での戦闘は決して得意ではない。
そうである以上、自分がわざわざ雲海や黄金の薔薇から離れてクラリスの方に行くというのは、理解出来なかった。
「だから、ですよ。正直なところ僕も迷ったんですけどね。ですが、ガリンダミア帝国軍の目を分散させるというのは、決して悪い選択ではありません。特に向こうは、アラン君のいる方に意識を集中して、こちらについては注意深くならないでしょう。……もちろん、見つからないのが一番ですが」
イルゼンの説明で、アランはクラリスたちを囮にしようとしているのだと、理解する。
当然、アランにとってはまだ会って一日程度だが、妹のような存在となりつつあるクラリスをそんな目に遭わせるのは……という思いから、自然とイルゼンに向ける視線は責めるようなものになる。
「本気ですか?」
「ええ、もちろん。ああ、ちなみに言っておきますが、この件は向こうも知っています。この状況で護衛を頼んでくる以上、こちらの事情を話しておく必要があると考えましたので」
「それは……」
普通に考えれば、獣牙衆といった面々に襲撃されるよりもガリンダミア帝国という一国を敵に回す方が脅威のはずだ。
そうである以上、クラリスはそれを断ってもいいのだが……何故か、クラリスはそれを受け入れたのだ。
そしてクラリスが全てを知って自分たちを護衛として雇うと判断した以上、アランとしてはそれ以上不満を口には出せない。
「それで、こっちの戦力はどのくらいです? 自慢じゃないですけど、心核を使わないと、俺は獣牙衆って連中には勝てないと思いますよ?」
「ピ!」
アランの言葉に、カロが鳴き声を上げる。
自分がいれば大丈夫と、そう言ってるようにアランには思えた。
実際、カロのその言葉――というほどにはっきりとしたものはないが――は事実だ。
しかし、それはあくまでもアランが心核を使って召喚したゼオンに乗っていればの話だが。
イルゼンの贔屓目という訳ではなく、実際にゼオンに乗ったアランは非常に強い。
空を飛ぶことが出来て、地上からの攻撃は届かない高度からビームライフルを始めとした様々な攻撃を行うことが出来る。
ビームライフルは非常に強力で、それこそ心核使いが変身したモンスターを相手にしても、致命的な一撃を当たることが出来る。
腹部拡散ビーム砲は、拡散している分だけ一撃の威力は低いものの、それはあくまでも集束しているビームに比べての話であって、人間を殺す程度の威力は十分に持っていた。
とはいえ、それはあくまでもゼオンに乗っていればの話だ。
普通に行動しているときは、当然ながらゼオンを召喚したりはしていない。
そのような状況で獣牙衆に襲われるようなことがあった場合、間違いなく面倒なことになってしまうだろう。
アランも自分が生身での戦いでは決して強くないと理解しているからこそ、自分だけではなく、どれだけの人数を護衛に回すのかといったとこを聞いたのだろう。
「そうですね。七割……いえ、八割はそっちに行って下さい」
「……え?」
八割をイルゼンが連れていく。
そう言ったのかと思ったが、改めて今のイルゼンの言葉を思い出すと、八割をアランの方にと言ってる。
「えっと、それは本気ですか?」
「もちろん本気だよ。そもそも、ガリンダミア帝国軍の目をアラン君の方に向けるために別行動をするんだ。それを考えれば、中途半端にこちらに戦力を連れていくというのは、止めた方がいいと思うだろう?」
「それは……まぁ……」
アランにもイルゼンの言ってる内容は理解出来る。
そもそもの話、ガリンダミア帝国軍の目をアランに向けるのだから、イルゼンとしては少数の方が動きやすいのだ。
それこそ、本音を言えば八割でなく九割はアランと一緒に行動して欲しいと思うほどだ。
だが、一割となるとこっそり活動するのは問題ないが、もし何らかの理由で戦闘になったときには戦力不足になりかねない。
もちろんイルゼンも探索者である以上相応の強さを持つが、それでも念には念を入れた方がいいのは間違いない。
そのために、アランたち戦力の大部分を同行させ、自分たちは少ない人数で行動することにしたのだろう。
「あの死の瞳ってマジックアイテムのことは、じゃあ俺たちは知ることが出来ないんですか?」
イルゼンがアランと別行動をするということは、当然ながら死の瞳についての情報はイルゼンたちが聞くということになるだろう。
心核使いにとっては鬼門とも呼ぶべきマジックアイテムだけに、アランとしては出来るだけ多くの情報を知っておきたかった。
しかし、そんなアランの言葉にイルゼンは何を言ってるんです? といったような視線を向ける。
「元々、死の瞳については僕だけで調べる予定でしたよ。アラン君たちは……少なくても今は知るべきことではないですから」
「何でです? 心核使いにとっては、あの件については絶対に知っておいた方がいいじゃないですか」
アランにしてみれば、あの死の瞳というマジックアテムは脅威だ。
ただでさえ、アランは心核使いに特化している存在だというのに、そんなアランが心核を使えなくなるのだ。
それを考えれば、死の瞳が非常に厄介な存在なのは間違いない。
発動させるのに、使用者の命を使う必要があるとしても、それはアランにとって決して安心出来ることではなかった。
「そうかもしれませんが、先程も言った通り、今はまだ早いのです。それに……当然ですが、死の瞳などというマジックアイテムがそう多くある訳ではありません。基本的には、死の瞳について警戒する必要はありませんよ」
「そう言っても……空を飛んでいるときに、いきなり死の瞳を使われたら、かなり厳しいですよ?」
これで、ゼオンが空を飛べないのであれば、死の瞳を使われても墜落死の心配をする必要はなかっただろう。
地上を歩いて移動しているところで、急にゼオンが消失するだけなのだから。
とはいえ、ゼオンの全高は十八メートル。
コックピットがあるのは胴体なので、それだけの高さという訳ではないが……それでも、下手をすれば十メートル以上の高さから地面に落ちることになるだろう。
アランが生身でも高い身体能力を発揮出来るのならともかく、そのような真似が出来ない以上、それが致命傷になる危険はある。
だが、それでも空を……高度百メートルほどの場所を飛んでいるときに、いきなりゼオンが消滅するといったようなことを考えなくてもいいだけ、楽かもしれないが。
「その辺はどうしようもないですね。まさか、地面のすぐ近くを飛ぶといった風にもいかないでしょうし。……ちなみに出来るんですよね?」
「出来ますよ。あまり意味がないからやりませんけど」
アランが知っているロボットのアニメでも、重装甲で地面を浮かんで移動するホバータイプの人型機動兵器があった。
地上を歩くよりも高い機動力を持つが、それでもやはり空を飛ぶ機動力には及ばない。
より正確には、最初は空を飛ばそうと研究が行われ、その結果として妥協案的にホバー移動をするようになった……といった設定だった。
久しぶりにあのアニメがみたいな。
そう思いながら、アランはイルゼンと言葉を交わすのだった。
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