剣と魔法の世界で俺だけロボット

神無月 紅

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メルリアナへ

314話

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 食事が終わると、アランはクラリスに呼ばれる。
 正確にはアランだけではなくジャスパーも一緒だったが。
 そうして移動した先は、クラリスが使っている部屋だ。
 アランたちが使っている部屋もそれなりにいい部屋ではあったが、クラリスが使っている部屋はアランたちが使っている部屋と比べても数段上の豪華さを持つ。
 とはいえ、アランとしては別にそれに文句はない。
 今回の一件の主役は、あくまでもクラリスだ。
 アランたちは護衛である以上、むしろもっと質素な部屋でも構わなかったのだから。
 そういう意味では、ギジュも気を使ったのだろう。
 ……ただし、気を遣ったのはアランではなく、アランを兄のように慕っているクラリスに対してだろうが。
 また、部屋にはギジュの屋敷で働いているメイドや、ロルフの仲間でも女の獣人の護衛の姿もある。
 これは当然だろう。
 旅をしているときならともかく、この屋敷の中ではクラリスのような立場のある女の部屋に男だけで尋ねるといったような行為は問題となる。
 アランは別に何もやましい気持ちもないし、クラリスに対して感じているのは異性という意味での女ではなく、妹的な存在としての女だ。
 そういう意味では、アランがクラリスに妙なちょっかいを出すといったような真似はまずすることはないのだが、それはあくまでもアランだから分かる事だ。
 アランの趣味を知らない者にしてみれば、万が一に備えるのは当然だろう。

「早速ですが、もう少ししたら出かける場所があります」
「この状況でか?」

 そんなアランの言葉に、ジャスパーや護衛の獣人の女はともかく、メイドが微かに眉を顰める。
 ギジュにとって、クラリスは非常に重要な存在だ。
 それだけに、クラリスは賓客としてもてなしていた。
 だからこそ、メイドは護衛でしかないアランがクラリスに対してこのような言葉遣いをするのが不満だったのだろう。
 ただし、このアランの言葉遣いはクラリスがそう望んで行っているものだけに、メイドの行動はクラリスにとってあまり面白いものではなかった。
 それでもクラリスはメイドの様子に気が付きながらも、不満を口に出すようなことはしなかった。
 自分がアランと接している様子を見れば、いずれ自分たちの関係を理解出来るだろうと、そう思ったためだ。
 ギジュの屋敷で世話になっているだけに、ことを荒立てるような真似をしたくなかったという点もあるのだろうが

「ええ。ゴールスに対処するためには、色々と手を回す必要がありますから」
「向こうが暗殺を企んでいるんだから、いっそこっちから攻めるのはどうだ?」

 アランのその言葉に、クラリスは首を横に振る。

「出来れば、あまり大袈裟にしたくありません。それに……アランさんが動くと、このデルリアに大きな被害がありそうですし」

 そう告げたクラリスが思い浮かべたのは、デルリアに来るまでに試した、アランの武器だけを召喚するという行為。
 ビームライフルとビームサーベルの威力は凄まじく、人のいない場所で試したとはいえ、間違いなくビームライフルやビームサーベルで破壊された場所についての噂は広がっているはずだった。
 丘が消えたり、林が消滅したりといったような威力を持つ武器を街中で使ったらどうなるか。
 それこそ、ゴールスだけではなく、他の場所にも大きな被害が出るのは間違いないだろう。
 だからこそ、クラリスはアランにそんな真似をして欲しくはなかった。
 この中で、唯一事情を知らないメイドだけが、先程のクラリスに対する言葉遣いの件もあってか、アランが本当にこう言われるだけの実力を持っているのか? といった視線を向けていたが。
 ギジュに仕えている者として、メイドは多数の客人を見てきた。
 その中には、非常に腕の立つ者も含まれており、そのような者たちと比べると、明らかにアランは弱そうに見える。
 本当にアランにそのような実力が? と疑問を抱くも、それを表情に出すようなことはない。
 アランの隣で話を聞いているジャスパーは、見るからに強そうでクラリスにそのように言われても間違いではないと思うのだが。
 そして、実際にそれは間違っていない。
 ゼオンという人型機動兵器やその武器のビームライフルやビームサーベルを召喚出来るアランは、心核使いとしての攻撃力は非常に高いものの、攻撃力が高すぎてこのような街中での戦いには向いていない。
 それに比べると、リビングアーマーに変身するジャスパーは、人より若干大きいだけの姿だけに、街中での戦いには非常に向いている。
 それこそ腕利きの心核使いのジャスパーなら、リビングメイルに変身してゴールスのいる場所に突っ込めば、ゴールスを倒すことが出来るのは間違いない。
 そう思うアランだったが、視線を向けられたジャスパーは首を横に振る。

「今のところ、私はそのような真似をする気はないよ。クラリスさんたちも、色々と考えていることはあるのだろうし。それを私が邪魔するというのは、どうかと思うだろう?」

 そう言われれば、アランとしてもその言葉に反論は出来ない。
 簡単な打ち合わせを終えると、それぞれ外出する準備を整えるのだった。





「ほう、ワストナさんに会いに行くのか。それはいい判断かもしれないな」

 そう口にしたのは、ガーウェイ。
 本来なら、アランとしては怪しい動きをしているガーウェイと一緒に外出はしたくなかった。
 だが、ガーウェイがギジュの屋敷にいるのは、あくまでもクラリスの護衛のためだ。
 正確には、クラリスの護衛ではなくゴールスに獣牙衆がいいように使われているのが面白くないので、それに反抗するためというのが正しい。
 現状でゴールスが一番嫌がるのは、間違いなくクラリスの護衛だ。
 だからこそ、こうして現在はクラリスの護衛のため一緒に行動することになる。
 そんなガーウェイが一緒に来たのが嬉しかったのだろう。
 ロルフはガーウェイの言葉を聞いて、嬉しそうに口を開く。

「ワストナさんって、このデルリアで薬を売ってる商人の元締めをしてる人ですよね? ガーウェイさんは会ったことがあるんですか?」
「ああ、仕事で何度か会ったし、話したこともある。かなり個性的だが、悪い人じゃないぞ」

 ガーウェイの言う個性的というのが、一体どのような相手なのか。
 アランとしては、若干気になるところではあった。
 とはいえ、アランはそれよりも前に聞きたいことを口にする。

「そう言えば、ガーウェイさん以外の獣牙衆の人は遅れて合流するって話でしたが、いつくらいに合流するんですか?」

 そう尋ねたのは、戦力的に期待して……という訳ではない。
 むしろ、怪しい動きを見せているガーウェイの仲間ということで、出来れば会いたくないというのが正直なところだった。
 もちろん、他の援軍が全員ガーウェイのように何かを企んでいるのかというのは、分からないが。

「ん? ああ、今朝連絡が来た。どうやら少し遅れるらしい」

 ガーウェイの言葉に、一体どう反応すればいいのか、アランは迷う。
 怪しい動きをするガーウェイの仲間が増えないのは喜ぶべきか、それとも自分たちに合流しないで何か妙な行動をするのではないか。
 どちらにせよ、アランとしては決していい話でないのは事実だった。

「そうですか。残念ですね」

 それでも取りあえず、そのように言っておく。

(ジャスパーさんに、昨夜の件を言っておいた方がいいか?)

 ジャスパーは、アランの様子から何かあったのだろうというのは、予想出来ているはずだった。
 それでもアランに対して聞いたりといったような真似をしないのは、アランから直接話してくるまでは自分から行動を起こさない方がいいだろうと、そう考えたのだろう。
 そうして考え込むアランだったが、当然ながらそうやって考えている間にもクラリスの乗っている馬車は進み、その護衛としてアランたちも街中を進む。
 そうして二十分程進むと、やがて目的の場所に到着した。

「ここが……」

 ロルフの仲間の獣人の一人が、視線の先にある建物を見て驚いたような、それでいて呆気にとられたように呟く。
 ギジュの屋敷に比べれば小さいが、それでも結構な大きさを持つ建物だったからだ。
 そうして屋敷を見て驚くと、それからすぐに再び進み始める。
 あるいは、クラリスの乗っている馬車が少しでも待っていたのは、アランたちに対しての思いやりだったのかもしれないが。
 屋敷に到着すると、アランたちはすぐに屋敷の中に案内される。
 本来なら、向こうは社会的な地位のある人物である以上、そう簡単に会える訳ではない。
 それでもこうしてすぐ会えたのは、やはりクラリスという人物がそれだけ獣人の間はでは重要視されており、その上でギジュから前もって連絡があったからだろう。
 ……とはいえ、当然だが護衛全員が入れるような場所ではなく、クラリスとワストナの会談にアランとジャスパーは参加出来ないことになる。

「いいんですか? 俺たち、クラリスの護衛なのに」
「獣人だけで話し合いたいと言われるとね。私たちは結局雇われ兵だから」

 アランとジャスパーは、用意された部屋でそんな風に話す。
 当然だが、ロルフの仲間の獣人も全員がクラリスの護衛として話し合いに参加している訳ではなく、入りきれなかった者たちはアランたちと同じ部屋の中で待機していた。

(ゴドフリーが来なかったのは、こうなるって分かってからからか?)

 アランたちとは違ってきちんとした護衛のゴドフリーだが、種族的には人間だ。
 そうである以上、もし来ていればアランたちと同じようにこの部屋で待機することになるはずだった。
 もしかしてそれを知っていたので、来なかったのか。
 そんな風に考えるアランだったが、今はそれを考える必要もない。

「失礼します。お茶を軽食をお持ちしました」

 部屋の中で話していると、メイドがそう言って部屋の中に入ってくる。
 そうしてそれぞれの部屋の前に紅茶をサンドイッチや焼き菓子を置いていく。
 そのどれもが非常に美味そうで、早速アランが手を伸ばすが……

「何のつもりかな?」

 自分の前に置かれた紅茶を一口飲んだジャスパーは、自分の前にいるメイドに鋭い視線を向けるのだった。
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