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獣人を率いる者
335話
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夜、当然だがギジュの屋敷の見張りは厳重となっていた。
当然だろう。少し前には敷地内に侵入され、生首を置かれるといったような真似をした。
また、今日の夕方……つまり、今から数時間前にはクラリスが街中で獣牙衆に襲われている。
それを思えば、今日の見張りが厳しくなるのは当然の話だった。
「けど、こんなに厳重に警備していれば、敵が襲ってくるなんて事は、まずないだろ?」
そう口にしたのは、ギジュが臨時で雇った傭兵の一人。
腕はそれなりに立ち、それでいて性格的にもそこまで問題がないという……そういう意味では有能な人材ではあったのだが、気を抜くことが多いという欠点もあった。
今日は警備が厳重だからちということで、まず敵は襲ってこないだろうと考え、気を抜いて一緒に見回りをしていた同僚と話をしていた。
「まぁ、そうだよな。今日襲撃があったんだから、警備が厳しくなるってのは当然向こうも理解しているだろ。……けど、考えようによっては、今日は何も起きないんだぞ? そうだとすれば、特に気を張って見張りをする必要もないんだから、楽だろ?」
同僚のその言葉に、男は納得した様子を見せる。
見張りをする時は、当然のように周囲の様子を警戒する必要がある。
しかし、相棒の言葉から考えると今日はまず襲撃がないと思ってもいい。
そういう意味では、今日の仕事はただ拾い屋敷の敷地内を散歩しているだけということになる。
「なるほど、話は分かった。けど……どうせこうして夜の散歩をするのなら、お前みたいな男じゃなくて女と一緒に散歩したかったな」
男はその言葉に相棒が馬鹿な突っ込みをいれてくれるだろうと、そう思っていた。
しかし、つい数秒前まで話していた相棒が何も反応しないのを疑問に思い、自分の少し後ろを進んでいた相棒に、何か言えよと口を開こうとし……
「え?」
そこに相棒の姿が存在しないことに気が付き、そんな間の抜けた声が漏れる。
一瞬前までは、間違いなくそこに相棒がいたのだ。
相棒と話していたのだから、それは間違いない。
だというのに、何故か相棒の姿は現在消えている。
一体何があった?
そんな疑問を男が抱くのは当然だろう。
「あら、ならちょうどよかったじゃない。私みたいな美人と一緒にこういう夜を一緒に楽しめるんだから」
「え?」
予想外の言葉が聞こえ、一体何が? と思って声の聞こえた方に視線を向けようとした男は……そのまま、一瞬にして意識を失う。
「ふぅ、こんなものかしらね」
そう言ったのは、獣人の女。
猫……いや、豹、それもただの豹ではなく黒豹の獣人。
身体は非常に豊かな曲線を描いており、服装は特に艶っぽい訳でもないのだが、身体の曲線がしっかりと判断出来るような、そんな服装で、それこそその辺の娼婦よりも男を誘うのに向いているだろう。
顔立ちも派手な美人といった顔立ちだったが……その目にあるのは、凶暴そうな色だ。
「まぁ、この男たちが言ってた通り、気を抜いてなければ私に気が付いたかもしれないけど。……そういう意味では、運がよかったわね」
この女は、会話をしつつ見回りをしていた二人の男を追っていた。
今日襲撃があったばかりで警備も厳しいし、今日は襲撃がない。
雇われた者の中には、そんなことを考える者が絶対にいる。
そう判断しての行動だったのだが、まさかいきなりそのような相手を見つけられるとは、思ってもいなかった。
そういう意味では、やはり今回の仕事はそこまで難しくはない。
そう考えつつ、女は気を失った二人を庭の茂みに隠す。
(こうして行動に移した以上、この二人が戻ってこないということになれば、間違いなく騒動になるはず。そして捜せば、当然のようにこの二人はすぐに見つかる)
茂みに隠した程度である以上、そう長時間隠しておくような真似は出来ない。
だからこそ、仕事は素早く行う必要があった。
……本来なら、暗殺をしようと考えた場合、実行に移すよりも前にしっかりと下調べをする必要がある。
そうして調べて相手の隙を探していき、最終的に実行するのが普通の暗殺者だ。
だが、女は隠密行動を得意としているのは事実だが、暗殺者ではない。
あくまでも獣牙衆の一員だった。
だからこそ、こうして普通の暗殺者なら半ば無謀だろうという行動に出ることも出来る。
また、特に下調べに時間を掛けた訳ではなかったが、それでも標的がどこいるのかといったようなことは知っている。
ギジュの屋敷には大勢が働いており、ましてや今はそこに臨時で雇われた兵士も多数いるのだ。
そんな者の中には、当然だが色々と後ろ暗いところがある者もいる。
ましてや、ギジュは臨時で……つまり、急いで傭兵や冒険者、探索者といった面々を戦力として雇ったので、そのような者は多い。
そしてこのデルリアにおいて、ゴールスの権力は強い。
そうである以上、クラリスの部屋がどこにあるのかといったようなことを調べるのは難しくはない。
「あとは、さっさと片付けましょうか」
そう言うと、女は人目につかないように屋敷の中に入っていく。
その動きのしなやかさは、それこそ見ている者がいれば目を奪われるのは間違いないだろう。
「っと」
そして屋敷の中で自分の向かっている方向から誰かがやって来るのを察知すると、そのまま壁を蹴って天井にぶら下がる。
天井には、取っ手のような明確に手で掴めるような場所はない。
だというのに、女は指の力だけで天井にある微かな出っ張りや隙間で自分の体重を支える。
豹の獣人というよりは、見ようによってはトカゲの獣人と表現してもおかしくはないだろう、そんな様子。
もっとも、これは別に女が生まれつきの能力でやっている事……といった訳ではなく、しっかりと訓練を重ねたことで可能になった技術だ。
屋敷の中を見回っている者たちも、まさか天井に張り付いているような相手がいるとは思わない。
あるいは、直線でかなり距離のある通路でなら、天井に張り付いていれば分かるかもしれないが、その辺は女もしっかりと理解している。
そのような場所であれば別の方法で見張りをやりすごすし、このような場所と状況であるからこそ、天井に隠れているのだ。
「ふぅ。……さて急ぎましょうか」
見回りの兵士をやりすごし、女は標的のいる場所……クラリスのために用意された部屋へと向かう。
その途中で何度か同じような見回りの兵士たちと遭遇したものの、全てを見つからないようにやりすごす。
外で遭遇したときのように、相手を気絶させる……もしくは殺すといったような真似をしてもいいのだが、屋敷の中だとどうしても隠す場所が限られてしまう。
だからこそ、こうしてやりすごしていた。
……庭で気絶してい二人が見つかれば間違いなく騒動になるので、今は少しでも早く標的を殺して脱出する必要があるのだが。
そうして見張りの兵士に見つからないように移動を続け、やがて目的の場所に到着する。
到着するが……
(当然よね)
クラリスの部屋の前には、護衛の姿がある。
少女であることを考慮してか、その護衛は男ではなく女だ。
だが、ギジュも当然のようにクラリスに何かあれば自分の面子が潰れてしまう以上、相応の実力の護衛を用意するのは当然だった。
とはいえ……それはあくでも相応の実力であって、獣牙衆に所属する女にしてみれば、対処するのは難しい相手ではない。
問題なのは、扉の前にいる護衛の二人を倒すのにどれくらいの時間がかかるかといったことだろう。
一人を倒すのに無駄に時間を消費してしまった場合、もう一人の護衛は間違いなく仲間を呼ぶ。
もちろん、そのようになったときも対処する自信はない訳ではなかったが……それでも、今の状況を考えれば、時間は少しでもあった方がいい。
(そうなると、残念だけど……死んで貰うしかないわね)
出来れば無関係な相手は殺したくないという気持ちを持っている女ではあったが、それはあくまでも出来ればだ。
つまり、それに対処出来ないのであれば、相手を殺すといったような真似を躊躇するつもりはなかった。
(運が悪かったわね)
内心で呟くと、通路を曲がって素早く走る。
その速度は非常に素早く、仮にも護衛として用意された女の兵士たちが気が付いたときには、既に間近までやってきていたくらいだ。
護衛たちが反射的に武器を構えようとするものの、女はその隙を与えず一気に間合いを詰めると素早く爪を一閃する。
深く首を斬り裂かれ、そこから血が吹き出すが……そのときには、すでに女の姿はそこにはない。
もう一人の護衛が、今の攻撃を見ただけで自分ではどうしようもないと判断し、味方を呼ぼうと口を開くが……その口から声が出るよりも前に、掌で押さえられ、声を発することが出来なくなった瞬間、首の骨を折られて命を絶たれた。
そうして二人の護衛が床に倒れ込むよりも前に、女は身体を押さえる。
床に倒れることにより、周囲に音が響くのを防いだのだろう。
それでも、最初の一人は鋭い爪で斬られており、周囲には強い血の臭いが漂う。
そうである以上、そう遠くないうちに援軍が来るのはほぼ確実だろう。
だからこそ女は、素早く仕事をすませるべく部屋の中に入る。
「……え?」
部屋の中に入った女は、素早く周囲を見回して標的の姿を探し……そこに誰もいないのに気が付き、呆然とした声を上げる。
当然だろう。
部屋の中には標的がいるはずだったのに、実際に部屋の中に入ったところで誰もいなかったのだから。
(どうなってるの? 隠れた?)
刺客である自分が襲ってきたのを理解し、どこかに隠れたのか。
そうである以上、標的のいる場所を捜す必要があるのだが……部屋の中には、多数の家具がある。
クラリスのような子供であれば、隠れる場所はまだいくらでもあった。
そうである以上、今はどうするべきか。
それを考えつつ、部屋の中を見回し……そして、素早く部屋の出ることを選択する。
ここで無駄に時間を使っても、意味はない。
そう判断しての行動だったのだろう。
しかし、そうして部屋から外に出ると……
「おや、お早いお帰りですね」
ジャスパーが笑みを浮かべ、待ち構えていたのだった。
当然だろう。少し前には敷地内に侵入され、生首を置かれるといったような真似をした。
また、今日の夕方……つまり、今から数時間前にはクラリスが街中で獣牙衆に襲われている。
それを思えば、今日の見張りが厳しくなるのは当然の話だった。
「けど、こんなに厳重に警備していれば、敵が襲ってくるなんて事は、まずないだろ?」
そう口にしたのは、ギジュが臨時で雇った傭兵の一人。
腕はそれなりに立ち、それでいて性格的にもそこまで問題がないという……そういう意味では有能な人材ではあったのだが、気を抜くことが多いという欠点もあった。
今日は警備が厳重だからちということで、まず敵は襲ってこないだろうと考え、気を抜いて一緒に見回りをしていた同僚と話をしていた。
「まぁ、そうだよな。今日襲撃があったんだから、警備が厳しくなるってのは当然向こうも理解しているだろ。……けど、考えようによっては、今日は何も起きないんだぞ? そうだとすれば、特に気を張って見張りをする必要もないんだから、楽だろ?」
同僚のその言葉に、男は納得した様子を見せる。
見張りをする時は、当然のように周囲の様子を警戒する必要がある。
しかし、相棒の言葉から考えると今日はまず襲撃がないと思ってもいい。
そういう意味では、今日の仕事はただ拾い屋敷の敷地内を散歩しているだけということになる。
「なるほど、話は分かった。けど……どうせこうして夜の散歩をするのなら、お前みたいな男じゃなくて女と一緒に散歩したかったな」
男はその言葉に相棒が馬鹿な突っ込みをいれてくれるだろうと、そう思っていた。
しかし、つい数秒前まで話していた相棒が何も反応しないのを疑問に思い、自分の少し後ろを進んでいた相棒に、何か言えよと口を開こうとし……
「え?」
そこに相棒の姿が存在しないことに気が付き、そんな間の抜けた声が漏れる。
一瞬前までは、間違いなくそこに相棒がいたのだ。
相棒と話していたのだから、それは間違いない。
だというのに、何故か相棒の姿は現在消えている。
一体何があった?
そんな疑問を男が抱くのは当然だろう。
「あら、ならちょうどよかったじゃない。私みたいな美人と一緒にこういう夜を一緒に楽しめるんだから」
「え?」
予想外の言葉が聞こえ、一体何が? と思って声の聞こえた方に視線を向けようとした男は……そのまま、一瞬にして意識を失う。
「ふぅ、こんなものかしらね」
そう言ったのは、獣人の女。
猫……いや、豹、それもただの豹ではなく黒豹の獣人。
身体は非常に豊かな曲線を描いており、服装は特に艶っぽい訳でもないのだが、身体の曲線がしっかりと判断出来るような、そんな服装で、それこそその辺の娼婦よりも男を誘うのに向いているだろう。
顔立ちも派手な美人といった顔立ちだったが……その目にあるのは、凶暴そうな色だ。
「まぁ、この男たちが言ってた通り、気を抜いてなければ私に気が付いたかもしれないけど。……そういう意味では、運がよかったわね」
この女は、会話をしつつ見回りをしていた二人の男を追っていた。
今日襲撃があったばかりで警備も厳しいし、今日は襲撃がない。
雇われた者の中には、そんなことを考える者が絶対にいる。
そう判断しての行動だったのだが、まさかいきなりそのような相手を見つけられるとは、思ってもいなかった。
そういう意味では、やはり今回の仕事はそこまで難しくはない。
そう考えつつ、女は気を失った二人を庭の茂みに隠す。
(こうして行動に移した以上、この二人が戻ってこないということになれば、間違いなく騒動になるはず。そして捜せば、当然のようにこの二人はすぐに見つかる)
茂みに隠した程度である以上、そう長時間隠しておくような真似は出来ない。
だからこそ、仕事は素早く行う必要があった。
……本来なら、暗殺をしようと考えた場合、実行に移すよりも前にしっかりと下調べをする必要がある。
そうして調べて相手の隙を探していき、最終的に実行するのが普通の暗殺者だ。
だが、女は隠密行動を得意としているのは事実だが、暗殺者ではない。
あくまでも獣牙衆の一員だった。
だからこそ、こうして普通の暗殺者なら半ば無謀だろうという行動に出ることも出来る。
また、特に下調べに時間を掛けた訳ではなかったが、それでも標的がどこいるのかといったようなことは知っている。
ギジュの屋敷には大勢が働いており、ましてや今はそこに臨時で雇われた兵士も多数いるのだ。
そんな者の中には、当然だが色々と後ろ暗いところがある者もいる。
ましてや、ギジュは臨時で……つまり、急いで傭兵や冒険者、探索者といった面々を戦力として雇ったので、そのような者は多い。
そしてこのデルリアにおいて、ゴールスの権力は強い。
そうである以上、クラリスの部屋がどこにあるのかといったようなことを調べるのは難しくはない。
「あとは、さっさと片付けましょうか」
そう言うと、女は人目につかないように屋敷の中に入っていく。
その動きのしなやかさは、それこそ見ている者がいれば目を奪われるのは間違いないだろう。
「っと」
そして屋敷の中で自分の向かっている方向から誰かがやって来るのを察知すると、そのまま壁を蹴って天井にぶら下がる。
天井には、取っ手のような明確に手で掴めるような場所はない。
だというのに、女は指の力だけで天井にある微かな出っ張りや隙間で自分の体重を支える。
豹の獣人というよりは、見ようによってはトカゲの獣人と表現してもおかしくはないだろう、そんな様子。
もっとも、これは別に女が生まれつきの能力でやっている事……といった訳ではなく、しっかりと訓練を重ねたことで可能になった技術だ。
屋敷の中を見回っている者たちも、まさか天井に張り付いているような相手がいるとは思わない。
あるいは、直線でかなり距離のある通路でなら、天井に張り付いていれば分かるかもしれないが、その辺は女もしっかりと理解している。
そのような場所であれば別の方法で見張りをやりすごすし、このような場所と状況であるからこそ、天井に隠れているのだ。
「ふぅ。……さて急ぎましょうか」
見回りの兵士をやりすごし、女は標的のいる場所……クラリスのために用意された部屋へと向かう。
その途中で何度か同じような見回りの兵士たちと遭遇したものの、全てを見つからないようにやりすごす。
外で遭遇したときのように、相手を気絶させる……もしくは殺すといったような真似をしてもいいのだが、屋敷の中だとどうしても隠す場所が限られてしまう。
だからこそ、こうしてやりすごしていた。
……庭で気絶してい二人が見つかれば間違いなく騒動になるので、今は少しでも早く標的を殺して脱出する必要があるのだが。
そうして見張りの兵士に見つからないように移動を続け、やがて目的の場所に到着する。
到着するが……
(当然よね)
クラリスの部屋の前には、護衛の姿がある。
少女であることを考慮してか、その護衛は男ではなく女だ。
だが、ギジュも当然のようにクラリスに何かあれば自分の面子が潰れてしまう以上、相応の実力の護衛を用意するのは当然だった。
とはいえ……それはあくでも相応の実力であって、獣牙衆に所属する女にしてみれば、対処するのは難しい相手ではない。
問題なのは、扉の前にいる護衛の二人を倒すのにどれくらいの時間がかかるかといったことだろう。
一人を倒すのに無駄に時間を消費してしまった場合、もう一人の護衛は間違いなく仲間を呼ぶ。
もちろん、そのようになったときも対処する自信はない訳ではなかったが……それでも、今の状況を考えれば、時間は少しでもあった方がいい。
(そうなると、残念だけど……死んで貰うしかないわね)
出来れば無関係な相手は殺したくないという気持ちを持っている女ではあったが、それはあくまでも出来ればだ。
つまり、それに対処出来ないのであれば、相手を殺すといったような真似を躊躇するつもりはなかった。
(運が悪かったわね)
内心で呟くと、通路を曲がって素早く走る。
その速度は非常に素早く、仮にも護衛として用意された女の兵士たちが気が付いたときには、既に間近までやってきていたくらいだ。
護衛たちが反射的に武器を構えようとするものの、女はその隙を与えず一気に間合いを詰めると素早く爪を一閃する。
深く首を斬り裂かれ、そこから血が吹き出すが……そのときには、すでに女の姿はそこにはない。
もう一人の護衛が、今の攻撃を見ただけで自分ではどうしようもないと判断し、味方を呼ぼうと口を開くが……その口から声が出るよりも前に、掌で押さえられ、声を発することが出来なくなった瞬間、首の骨を折られて命を絶たれた。
そうして二人の護衛が床に倒れ込むよりも前に、女は身体を押さえる。
床に倒れることにより、周囲に音が響くのを防いだのだろう。
それでも、最初の一人は鋭い爪で斬られており、周囲には強い血の臭いが漂う。
そうである以上、そう遠くないうちに援軍が来るのはほぼ確実だろう。
だからこそ女は、素早く仕事をすませるべく部屋の中に入る。
「……え?」
部屋の中に入った女は、素早く周囲を見回して標的の姿を探し……そこに誰もいないのに気が付き、呆然とした声を上げる。
当然だろう。
部屋の中には標的がいるはずだったのに、実際に部屋の中に入ったところで誰もいなかったのだから。
(どうなってるの? 隠れた?)
刺客である自分が襲ってきたのを理解し、どこかに隠れたのか。
そうである以上、標的のいる場所を捜す必要があるのだが……部屋の中には、多数の家具がある。
クラリスのような子供であれば、隠れる場所はまだいくらでもあった。
そうである以上、今はどうするべきか。
それを考えつつ、部屋の中を見回し……そして、素早く部屋の出ることを選択する。
ここで無駄に時間を使っても、意味はない。
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