剣と魔法の世界で俺だけロボット

神無月 紅

文字の大きさ
357 / 422
獣人を率いる者

356話

しおりを挟む
「きゃあああああああああああああああああああああ!」

 不意に聞こえてきたその声に、アランたちは何があった? と視線を向ける。
 本来なら、ゴールスが負けたということで一族の長を巡っての争いもこれで終わったはずだった。
 だが、気が付けばそこにゴールスの姿はなく、これからどうするべきなのか? といった風に考えていたところで、聞こえてきた悲鳴だ。
 一体何があったのか。
 もしかして、試合の興奮が収まらないで暴動でも起きたのか。
 そんな風に思って視線を向けた先にいたのは……

「嘘だろ」

 アランの口から、そんな声が漏れる。
 当然だろう。視線の先……公開試合を見に来ていた観客たちを挟んでその先にいたのは、何匹ものモンスターだったのだから。その数、十匹。
 ここはデルリアの外である以上、モンスターがやって来てもおかしくはない。
 しかし、その場合は同じ種類のモンスターではい限り、モンスター同士で戦ってもおかしくはない。
 しかし、現在アランの視線の先に存在するのは、その全てが全く違うモンスター。
 そのような状況で考えられる可能性は……とてもではないが信じられないが、一つしかない。

「心核使い……それも、あんなに大勢の?」

 心核使いというのは、非常に希少な存在だ。
 そうである以上、当然の話だがそのような者たちが十人も集まっているといった可能性は少ない。
 あるいは、アランたちのようにクランとして活動しているのなら、複数の心核使いがいてもおかしくはないが、それでも十人もの心核使いが纏まっているというのは、とてもではないが考えられない。
 少なくても、アランが知っている限りではどんなに多くても一つのクランに存在する心核使いは五人程度だ。
 ……もちろん、アランも世界中全ての心核使いを知っている訳ではない。
 もしかしたら、世の中には十人以上の心核使いを擁しているクランがあってもおかしくはない。おかしくはないが……それよりも、可能性のある相手をアランは知っていた。

「ガリンダミア帝国……」

 そう、どのような理由なのかは分からないが、執拗に自分を狙ってくる相手。
 そのガリンダミア帝国は、今まで何人もの心核使いたちをアランの確保に投入してきた。
 正直なところ、ガリンダミア帝国には無限に心核使いがいるのではないかと、そんな風にすら思ってしまう。
 それだけの数の心核使いが、アランの前に立ち塞がってきたのだ。
 ましてや、このメルリアナはガリンダミア帝国の従属国の一つでもある。
 そうである以上、ここにアランがいるというのを知れば、ガリンダミア帝国がアランを確保するために人材を派遣してきてもおかしくはない。

「参ったわね。こんな場所で出て来るということは、もしかしてゴールスはガリンダミア帝国と繋がっていたのかしら?」
「そんな!?」

 レオノーラの言葉に、クラリスは信じられないといったように呟く。
 クラリスにしてみれば、ゴールスは自分の命を狙っていた相手ではあるが、それでも一族のことをしっかりと考えていると思っていたのだ。
 だというのに、そんなゴールスがガリンダミア帝国と繋がっていたというのは、とてもではないが信じられない。
 とはいえ、現在の状況を思えばレオノーラの言葉を信じざるをえない。

「恐らく、レオノーラ様の考え通りで間違いないですね。しかし、それでもこうして堂々とこちらに手を出してくるとなると……」
「出来れば、ゴールスが公開試合で勝つというのが、向こうにとっての最善だったんでしょうね」
「いや、それはどうなんだ? もし公開試合で勝ったとしても、俺たちは特に何か影響がある訳じゃないぞ?」
「向こうの考えを全て分かる訳ではないわよ。……それよりも、覚悟を決めなさい。十人の心核使いを相手にするとなると、アランも武器の召喚だけで対処するのは難しいわよ」

 観客たちに構わず、自分たちのいる方に向かって進んで来る心核使いたちを見て、レオノーラが呟く。
 心核使いたちは、特に観客たちに配慮してはいない。
 それこそ自分たちの前にいれば殺すが、道を妨げないのなら手を出すようなことはしなかった。
 何人かが殴り飛ばされたのを見て、観客たちも場所を空ければ自分たちに危害を加えられないと判断したのか、心核使いたちの移動を遮らないようにする。
 しかし、それで本当に殺されない訳ではない。

「ひぃっ!」

 心核使いたちが通った場所のすぐ横にいた観客の一人が、モンスターに変身した心核使いを見て、恐怖のあまり悲鳴を上げる。
 そして、次の瞬間には悲鳴を上げられたリザードマンに変身した心核使いがおもむろに鋭い爪を振るって頭部を破壊した。
 心核使いたちにしてみれば、メルリアナの国の住人はガリンダミア帝国の住人ではないという時点で、遠慮する必要はない。
 そうである以上、邪魔をしなければ排除したりといったような真似はしないが、不愉快な相手がいればそれを排除するのに躊躇う必要はなかった。

「きゃあああああああああっ!」

 いきなり自分の側にいた観客が死んだのを見て、その側にいた女が悲鳴を上げる。
 だが、次の瞬間にはリザードマンの尻尾が勢いよく振るわれ、首の骨をへし折られ、叫んでいた女は絶命する。
 そのような光景を目の前で見たからだろう。
 殺された女の側にいた者たちは、自分が何か声を上げれば殺されてしまうと考え、黙り込む。
 心核使いたちは、そんな周囲の様子にようやくうるさい連中が黙り込んだと判断し、アランたちのいる方に向かって歩み続ける。

「アラン、いいわね?」

 レオノーラの言葉が、何を意味しているのかはアランにも十分に理解出来た。
 見るからに腕利きと思われる心核使いが十人以上。
 そのような集団を擁するためには、当然ながら大きな力が必要となる。
 それは、つまりガリンダミア帝国。
 そうである以上、アランが先程の公開試合で行ったように武器だけを召喚するといったような真似をしても、すでに意味はない。
 現在の状況でやるべきは、武器の召喚ではなく……その武器を自由に使いこなす、ゼオンの召喚。
 向こうが狙っているのがアランである以上、生身の状況で武器を召喚して戦うよりも、ゼオンのコックピットの中にいた方が安心なのは間違いない。

「分かってる。……カロ、頼む!」
「ピ!」

 レオノーラに短く告げ、カロを手にしてゼオンを召喚する。
 すると次の瞬間、アランのすぐ側に突然全長十八メートルもの人型機動兵器が姿を現す。

「では、私はどうしましょう?」
「そうね。私とアランで向こうの心核使いたちを倒すから、ジャスパーはクラリスたちを守ってくれる?」
「分かりました。レオノーラ様、ご武運を」

 その言葉と共にジャスパーもまた心核を使い、リビングメイルへと変身する。

「貴方たちは、少し離れてなさい。向こうは私たちのお客みたいだしね」
「大丈夫なの?」

 いつもレオノーラに向けるのとは違う、どこか心細そうな声でクラリスが尋ねる。
 しかし、レオノーラはそんなクラリスに対し、満面の笑みを浮かべ……そして口を開く。

「大丈夫よ。これでも、このくらいの戦いは今まで何度も乗り越えてきたんだから」

 レオノーラの口からは、自信に満ちた言葉が出る。
 レオノーラ本人の美しさもあり、その様子はまさに戦女神と呼ぶに相応しい、そんな光景であった。
 ……とはいえ、レオノーラも多数の心核使いと戦うなどといったことになったのは、それこそアランと関わってからだ。
 そうである以上、言葉通りに自信がある訳ではないのだが。
 それでもクラリスを前に、弱気なところを見せる訳にもいかない。

(アランを狙ってきたのに、私を敵として見ていないのは……少し、面白くないわね)

 そんなことを考えつつ、レオノーラもまた心核を使う。
 次の瞬間、そこに姿を現したのは黄金のドラゴン。

「グガアアアアアアアア!」

 周囲に響くような、その雄叫び。
 その雄叫びを聞き、周囲で動けなくなっていた観客たちが一気に動き出す。

「ナイス、レオノーラ」

 ゼオンのコックピットの中で、アランはそう呟く。
 こちらに向かって来ている心核使いたちに攻撃をしようとしても、その周囲にはまだ多数の観客たちがいる。
 ここで下手に攻撃をしようものなら、そのような観客たちにも被害を与えてしまうだろう。
 それが分かっているからこそ、アランはゼオンに乗り込んだものの、心核使いたちに攻撃を出来なかったのだ。
 アランにしてみれば、敵の実力云々以前の前にその辺りをどうにかする必要があった。
 もっとも、今の場合必要なのはあくまでもアランがゼオンのコックピットに入って身の安全を図ることだ。
 そういう意味では、今のこの状況で十分役割を果たしていた。

「にしても、どうやって俺がここにいるって情報を知ったんだ? 向こうにしてみれば、俺たちがどこにいるのかなんて、全く分からなかったはずだろうに」

 そう呟きつつも、アランはビームライフルの銃口を心核使いたちの方に向け……だが、その瞬間心核使いたちはいっきに速度を上げ、さらにはそれぞれが別の方向に進む。
 ビームライフルがどのような武器なのかを知っているからこその、行動。
 一瞬戸惑ったアランだったが、ガリンダミア帝国から派遣されてきた心核使いたちである以上、こちらの情報を持っているのは当然の話だった。

「ちっ!」

 だが、アランも心核使い特化と呼ばれている存在だ。
 全ての敵を一気に仕留めるのは難しいと判断し、心核使いの中の一人に狙いを定め、ビームライフルのトリガーを引く。
 放たれたビームは、そのまま悲鳴も残さずにリザードマンを消滅させ、地面に着弾すると巨大な爆発を引き起こす。
 アランはその結果を確認することなく、頭部バルカンのトリガーを引く。
 まさに弾幕の嵐といったような、そんな状況になり……ワーウルフの身体が一瞬にして肉片へと姿を変える。
 非常に高い速度を持つワーウルフであっても、頭部バルカンから放たれた弾丸をまともに喰らえば、それを防ぐことは不可能。
 そして……瞬く間に二人が減った心核使いたちだったが、それでも全く躊躇することなくゼオンと黄金のドラゴンに襲いかかるのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜

駄作ハル
ファンタジー
異世界の大貴族レオ=ウィルフリードとして転生した平凡サラリーマン。 しかし、待っていたのは平和な日常などではなかった。急速な領土拡大を目論む帝国の貴族としての日々は、戦いの連続であった─── そんなレオに与えられたスキル『英雄召喚』。それは現世で英雄と呼ばれる人々を呼び出す能力。『鬼の副長』土方歳三、『臥龍』所轄孔明、『空の魔王』ハンス=ウルリッヒ・ルーデル、『革命の申し子』ナポレオン・ボナパルト、『万能人』レオナルド・ダ・ヴィンチ。 前世からの知識と英雄たちの逸話にまつわる能力を使い、大切な人を守るべく争いにまみれた異世界に平和をもたらす為の戦いが幕を開ける! 完結まで毎日投稿!

残念ながら主人公はゲスでした。~異世界転移したら空気を操る魔法を得て世界最強に。好き放題に無双する俺を誰も止められない!~

日和崎よしな
ファンタジー
―あらすじ― 異世界に転移したゲス・エストは精霊と契約して空気操作の魔法を獲得する。 強力な魔法を得たが、彼の真の強さは的確な洞察力や魔法の応用力といった優れた頭脳にあった。 ゲス・エストは最強の存在を目指し、しがらみのない異世界で容赦なく暴れまくる! ―作品について― 完結しました。 全302話(プロローグ、エピローグ含む),約100万字。

【完結】剣聖と聖女の娘はのんびりと(?)後宮暮らしを楽しむ

O.T.I
ファンタジー
かつて王国騎士団にその人ありと言われた剣聖ジスタルは、とある事件をきっかけに引退して辺境の地に引き籠もってしまった。 それから時が過ぎ……彼の娘エステルは、かつての剣聖ジスタルをも超える剣の腕を持つ美少女だと、辺境の村々で噂になっていた。 ある時、その噂を聞きつけた辺境伯領主に呼び出されたエステル。 彼女の実力を目の当たりにした領主は、彼女に王国の騎士にならないか?と誘いかける。 剣術一筋だった彼女は、まだ見ぬ強者との出会いを夢見てそれを了承するのだった。 そして彼女は王都に向かい、騎士となるための試験を受けるはずだったのだが……

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

商人でいこう!

八神
ファンタジー
「ようこそ。異世界『バルガルド』へ」

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

異世界召喚は7回目…って、いい加減にしろよ‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
『おぉ、勇者達よ! 良くぞ来てくれた‼︎』 見知らぬ城の中、床には魔法陣、王族の服装は中世の時代を感じさせる衣装… 俺こと不知火 朔夜(しらぬい さくや)は、クラスメートの4人と一緒に異世界に召喚された。 突然の事で戸惑うクラスメート達… だが俺はうんざりした顔で深い溜息を吐いた。 「またか…」 王族達の話では、定番中の定番の魔王が世界を支配しているから倒してくれという話だ。 そして儀式により…イケメンの正義は【勇者】を、ギャルっぽい美紅は【聖戦士】を、クラス委員長の真美は【聖女】を、秀才の悠斗は【賢者】になった。 そして俺はというと…? 『おぉ、伝承にある通り…異世界から召喚された者には、素晴らしい加護が与えられた!』 「それよりも不知火君は何を得たんだ?」 イケメンの正義は爽やかな笑顔で聞いてきた。 俺は儀式の札を見ると、【アンノウン】と書かれていた。 その場にいた者達は、俺の加護を見ると… 「正体不明で気味が悪い」とか、「得体が知れない」とか好き放題言っていた。 『ふむ…朔夜殿だけ分からずじまいか。だが、異世界から来た者達よ、期待しておるぞ!』 王族も前の4人が上位のジョブを引いた物だから、俺の事はどうでも良いらしい。 まぁ、その方が気楽で良い。 そして正義は、リーダーとして皆に言った。 「魔王を倒して元の世界に帰ろう!」 正義の言葉に3人は頷いたが、俺は正義に言った。 「魔王を倒すという志は立派だが、まずは魔物と戦って勝利をしてから言え!」 「僕達には素晴らしい加護の恩恵があるから…」 「肩書きがどんなに立派でも、魔物を前にしたら思う様には動けないんだ。現実を知れ!」 「何よ偉そうに…アンタだったら出来るというの?」 「良いか…殴り合いの喧嘩もしたことがない奴が、いきなり魔物に勝てる訳が無いんだ。お前達は、ゲーム感覚でいるみたいだが現実はそんなに甘く無いぞ!」 「ずいぶん知ったような口を聞くね。不知火は経験があるのか?」 「あるよ、異世界召喚は今回が初めてでは無いからな…」 俺は右手を上げると、頭上から光に照らされて黄金の甲冑と二振の聖剣を手にした。 「その…鎧と剣は?」 「これが証拠だ。この鎧と剣は、今迄の世界を救った報酬として貰った。」 「今迄って…今回が2回目では無いのか?」 「今回で7回目だ!マジでいい加減にして欲しいよ。」 俺はうんざりしながら答えた。 そう…今回の異世界召喚で7回目なのだ。 いずれの世界も救って来た。 そして今度の世界は…? 6月22日 HOTランキングで6位になりました! 6月23日 HOTランキングで4位になりました! 昼過ぎには3位になっていました.°(ಗдಗ。)°. 6月24日 HOTランキングで2位になりました! 皆様、応援有り難う御座いますm(_ _)m

転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。 コイツは何かがおかしい。 本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。 目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

処理中です...