358 / 422
獣人を率いる者
357話
しおりを挟む
十人いた仲間のうち、いきなり二人が死んだ。
あっさりとゼオンのビームライフルと頭部バルカンによって死んだように見える二人だったが、そんな二人は本来十分に腕利きと呼ぶに相応しい技量を持っていた。
でなければ、ガリンダミア帝国の中でも大きな権力を持つビッシュ直属の裏の部隊で運用されるような真似はしれない。
そんな腕利きの心核使いではあったが、そんな相手であっても一切の容赦なく消滅させる……そんな威力が、ゼオンの持つ武器にはあった。
だが、そんな仲間の様子を見ても残り八人の心核使いたちは動揺した様子もなく、真っ直ぐゼオンに向かい……
「ギャオオオオオオオオオ!」
そんな中、自分を無視するなといったように、レオノーラが変身した黄金のドラゴンが横薙ぎに尻尾を振るう。
尻尾をただ振るっただけの一撃ではあったが、それはドラゴンの尻尾だ。
当然その辺の動物の尻尾とは違い、家の一軒や二軒は容易に破壊するだけの威力を持つ一撃だ。
「がっ!」
殆どの心核使いはそんな尻尾の一撃を回避したが、手が四本ある熊のモンスターは回避行動に間に合わず、尻尾の一撃をまともに受ける。
元々が力自慢のパワーファイターだった男だが、それでも相手がドラゴンともなればパワーで対抗するのは難しい。
そのまま吹き飛ばされ……それでも頑丈な体毛と厚い皮膚、強靱な筋肉によって、骨は折れたもの一撃で死ぬといったようなことにはならず……だが、再度突撃しようとした次の瞬間、ゼオンの放ったビームライフルの一撃によって、黄金のドラゴンの一撃すら耐えきった身体が、次の瞬間には何も残さずに消滅する。
「これで三人……いや、四人だな」
黄金のドラゴンの手によって叩き潰された心核使いを映像モニタで確認し、アランが呟く。
続けて別の敵を狙おうとして映像モニタで周囲を見ると、見る間に近付いて来る何かを見つけ、半ば反射的に頭部バルカンを撃つ。
「って、嘘だろ!?」
その光景を見たアランの口から、驚愕の声が上がる。
何しろ、今まで多数の相手を容易に殺してきた頭部バルカンの弾丸が、コックピットに向かって突っ込んできた相手に弾かれたからだ。
一体、どれだけの防御力を持っていれば頭部バルカンの攻撃を防げるのか。
そんな様子に驚きを浮かべるアランだったが、だからといって敵の攻撃を黙って受ける訳にはいかない。
驚きつつも、半ば反射的に腕を上げて敵の攻撃を防ぐ。
機体を通して、コックピットにまで甲高い金属音が周囲に響く。
それはつまり、敵の攻撃は強力で、ゼオンに対してもそれなりに有効な一撃となる……ということを意味している。
アランの視線の先にある映像モニタでは、ゼオンの腹部にぶつかって大きく飛んでいく球体の存在が見える。
恐らく、アルマジロやハリネズミといったような、そんなモンスターなのだろうと理解しつつ……だが、そちらにだけは視線を向け続けるといったことは出来ない。
映像モニタには、不意に全高十メートル程にまで巨大化した人型の存在が映し出された。
そんな巨大な――それでもゼオンの半分くらいの大きさだが――敵はいなかったはずと、そんな疑問を抱くアランだったが、心核使いが変身したモンスターの中には、大きさこそ違うものの、外見は同じだった人型のモンスターがいたのを思い出す。
「スプリガンか!?」
巨人型のモンスター、スプリガン。
普段は小柄な外見なのだが、いざ戦闘になれば巨大化するといった能力を持つ。
そんなことを思い出しつつ、だが巨大になったところでそれは攻撃が命中しやすくなっただけであり、そういう意味ではアランにとっては攻撃しやすい相手となる。
「驚いたけど、結局それだけだな」
呟き、ビームライフルを撃とうとした瞬間……不意に違和感を抱く。
それもちょっとやそっと程度ではない、猛烈な違和感。
アランは、その違和感を信じるかどうか迷いつつ……ビームライフルではなく、頭部バルカンを発射する。
すると次の瞬間には先程とはまた違った意味で違和感があり……ガガガガ、という音と共に、激しい衝撃が機体を揺らす。
「な!?」
一体何が起きたのか、理解は出来ない。
それでも咄嗟に機体の損傷をチェックする辺り、アランがゼオンの操縦に慣れているというのを示すには十分だろう。
幸いにして、今の衝撃で受けた被害は装甲に傷がついた程度のものでしかなく、ダメージ的には何の問題もないのが明らかだった。
しかし……それはそれ、一体自分がどのような攻撃をされたのか分からず、それを行ったと思われるスプリガンを見て、ふと疑問を抱く。
スプリガンそのものはともかく、スプリガンの背後に見える光景が明らかに先程までとは違っていた。
それは一体どういうことか。
そんな疑問を抱きつつも、他の心核使いよりスプリガンの方が間違いなく危険な相手だと判断し、ビームラフル……ではなく、ビームサーベルを装備する。
そんなゼオンの姿を見て、スプリガンは一瞬恐れたように後退った。
それが一体何を意味しているのかは、明らかだ。
頭部バルカン……射撃にかんしては自信を持っているように見えたのだが、ビームサーベルを手にした瞬間に怯えた様子を見せたのだ。
それは、明からに射撃武器には対応出来ないということを示しているように思える。
「……ん?」
ビームサーベルを手に、スプリガンの様子を見ていたアランは、少し離れた場所で黄金のドラゴンが暴れている光景を目にして、疑問を抱く。
何故なら、先程まで黄金のドラゴンはゼオンの右側にいたはずなのに、何故か今は左側に黄金のドラゴンの姿があったためだ。
もちろん、こうして暴れている以上、黄金のドラゴンが移動してもおかしくはない。
だが、今の違和感はそのようなことから来た訳ではないということを、アランは半ば本能的に理解し……同時に、前世で読んだ漫画について思い出す。
スプリガンというのは、普段は子供のような小さな姿をしており、いざとなれば巨大になって相手を攻撃する。
そこまでは現在の状況から納得出来る。……それでも、まさか巨人とはいえ十メートル近くまで大きくなるというのは、アランにしても予想外だった。
ともあれ、アランがスプリガンについて思い出したのはそれだけではなく……スプリガンの中には、チェンジリングを行う者がいるという情報だった。
スプリガンというのは、元々は巨人ではなく妖精という区別で、妖精らしく色々と悪戯をする。
その悪戯の一つが、チェンジリング……取り替え子という奴だ。
赤ん坊を連れ去り、代わりに妖精の子供を置いていくという、そんな悪戯。
妖精にとっては悪気のない悪戯なのかもしれないが、実際にやられてしまった人間にとってはとてもではないが悪戯で済むような代物ではない。
そんなチェンジリングが、今の状況でどう関係するのか。
取り替え子というのは、妖精と人間の赤ん坊を取り替える……交換するという現象だ。
そうである以上、相手と自分の位置を入れ替えるといったような真似が出来ても、おかしくはない。
いや、実際には色々とおかしいところも多いのだが、アランは何となく今の自分の予想が決して間違っていなかったと思えた。
あるいは、実際には全く違う能力を使ってこのような真似をしたという可能性もあったが、ともあれゼオンの頭部バルカンをゼオンが食らうといったような現象が起きているのだ。
それはどのような名前のスキルや魔法を使ったのかは分からないが、自分と相手の位置を入れ替えるといった能力を使っているのは間違いない。
「厄介だな」
ビームサーベルを構えつつ地面をこちらに向かって突っ込んでくる巨大な――ゼオンから見れば小さいが――トカゲに向かって、頭部バルカンを撃ちつつ、スプリガンとの間合いを取る。
スプリガンに集中していたアランに対し、その隙を逃がすような真似はしないと、そんな様子で突っ込んできた敵だったが、その動きは素早い。
あるいは頭部バルカンがどのような武器なのかというのを全て承知の上で、命中しないように動き回っていたのかもしれないが。
それでも、命中すればトカゲの皮膚など容易に突き破り、肉を抉り、骨を砕くといったような威力を持つゼオンの頭部バルカンだ。
そんな攻撃が放たれている中を進んでくるのだから、度胸という意味では非常に大きいものがあるのは間違いない。
「こうなったら……フェルス!」
アランはビームライフルのような武器では、現状を打破出来ないと判断。
あるいは敵に対して大きなダメージを与えることは出来るかもしれないが、その場合はデルリアに対しても……そして、住人に対しても大きなダメージを与えるだろうと判断する。
アランにしてみれば、敵を倒すのはともかく、無関係の住人に被害を与えるといったような真似はしたくない。
そのような真似をすれば、それこそ数え切れない程の犠牲者が出てしまうだろう。
だからこそ、アランはフェルスを……自分の意思で自由に操作出来て、相手に対しては致命傷を与えつつも、ビームライフルのように周辺に大きな被害を与える……といったようなことがない武器を使うことを決めたのだ。
フェルスは、アランにとっても切り札のような武器だ。
そうである以上、ガリンダミア帝国の手の者にあまりこの武器を見せたくはなかった。
……もっとも、今まで何度もフェルスを使っているので、すでにガリンダミア帝国側でもフェルスについての情報をそれなりに得ているのは間違いないだろう。
事実、ゼオンの背後の空間に波紋が浮かび、そこからフェルスが出て来た瞬間、トカゲはゼオンに近付くといった動きを止め、距離を取り始めたのだから。
スプリガンの方も、アランに向かって警戒の視線を向けつつも、攻撃をしてくる様子はない。
(ここでビーム砲を撃ったら、多分また入れ替えられるだろ。それは厄介だ。だとすれば……やっぱりビームサーベルか?)
この場合のビームサーベルというのは、あくまでもゼオンの手に持つビームサーベルであって、フェルスが展開することが出来るビームサーベルではない。
フェルスそのものが飛び道具である以上、フェルスがビームサーベルを使っても、そのまま位置を入れ替えさせられれば、意味はない。
そう判断し、アランは狙いを行動に移すのだった。
あっさりとゼオンのビームライフルと頭部バルカンによって死んだように見える二人だったが、そんな二人は本来十分に腕利きと呼ぶに相応しい技量を持っていた。
でなければ、ガリンダミア帝国の中でも大きな権力を持つビッシュ直属の裏の部隊で運用されるような真似はしれない。
そんな腕利きの心核使いではあったが、そんな相手であっても一切の容赦なく消滅させる……そんな威力が、ゼオンの持つ武器にはあった。
だが、そんな仲間の様子を見ても残り八人の心核使いたちは動揺した様子もなく、真っ直ぐゼオンに向かい……
「ギャオオオオオオオオオ!」
そんな中、自分を無視するなといったように、レオノーラが変身した黄金のドラゴンが横薙ぎに尻尾を振るう。
尻尾をただ振るっただけの一撃ではあったが、それはドラゴンの尻尾だ。
当然その辺の動物の尻尾とは違い、家の一軒や二軒は容易に破壊するだけの威力を持つ一撃だ。
「がっ!」
殆どの心核使いはそんな尻尾の一撃を回避したが、手が四本ある熊のモンスターは回避行動に間に合わず、尻尾の一撃をまともに受ける。
元々が力自慢のパワーファイターだった男だが、それでも相手がドラゴンともなればパワーで対抗するのは難しい。
そのまま吹き飛ばされ……それでも頑丈な体毛と厚い皮膚、強靱な筋肉によって、骨は折れたもの一撃で死ぬといったようなことにはならず……だが、再度突撃しようとした次の瞬間、ゼオンの放ったビームライフルの一撃によって、黄金のドラゴンの一撃すら耐えきった身体が、次の瞬間には何も残さずに消滅する。
「これで三人……いや、四人だな」
黄金のドラゴンの手によって叩き潰された心核使いを映像モニタで確認し、アランが呟く。
続けて別の敵を狙おうとして映像モニタで周囲を見ると、見る間に近付いて来る何かを見つけ、半ば反射的に頭部バルカンを撃つ。
「って、嘘だろ!?」
その光景を見たアランの口から、驚愕の声が上がる。
何しろ、今まで多数の相手を容易に殺してきた頭部バルカンの弾丸が、コックピットに向かって突っ込んできた相手に弾かれたからだ。
一体、どれだけの防御力を持っていれば頭部バルカンの攻撃を防げるのか。
そんな様子に驚きを浮かべるアランだったが、だからといって敵の攻撃を黙って受ける訳にはいかない。
驚きつつも、半ば反射的に腕を上げて敵の攻撃を防ぐ。
機体を通して、コックピットにまで甲高い金属音が周囲に響く。
それはつまり、敵の攻撃は強力で、ゼオンに対してもそれなりに有効な一撃となる……ということを意味している。
アランの視線の先にある映像モニタでは、ゼオンの腹部にぶつかって大きく飛んでいく球体の存在が見える。
恐らく、アルマジロやハリネズミといったような、そんなモンスターなのだろうと理解しつつ……だが、そちらにだけは視線を向け続けるといったことは出来ない。
映像モニタには、不意に全高十メートル程にまで巨大化した人型の存在が映し出された。
そんな巨大な――それでもゼオンの半分くらいの大きさだが――敵はいなかったはずと、そんな疑問を抱くアランだったが、心核使いが変身したモンスターの中には、大きさこそ違うものの、外見は同じだった人型のモンスターがいたのを思い出す。
「スプリガンか!?」
巨人型のモンスター、スプリガン。
普段は小柄な外見なのだが、いざ戦闘になれば巨大化するといった能力を持つ。
そんなことを思い出しつつ、だが巨大になったところでそれは攻撃が命中しやすくなっただけであり、そういう意味ではアランにとっては攻撃しやすい相手となる。
「驚いたけど、結局それだけだな」
呟き、ビームライフルを撃とうとした瞬間……不意に違和感を抱く。
それもちょっとやそっと程度ではない、猛烈な違和感。
アランは、その違和感を信じるかどうか迷いつつ……ビームライフルではなく、頭部バルカンを発射する。
すると次の瞬間には先程とはまた違った意味で違和感があり……ガガガガ、という音と共に、激しい衝撃が機体を揺らす。
「な!?」
一体何が起きたのか、理解は出来ない。
それでも咄嗟に機体の損傷をチェックする辺り、アランがゼオンの操縦に慣れているというのを示すには十分だろう。
幸いにして、今の衝撃で受けた被害は装甲に傷がついた程度のものでしかなく、ダメージ的には何の問題もないのが明らかだった。
しかし……それはそれ、一体自分がどのような攻撃をされたのか分からず、それを行ったと思われるスプリガンを見て、ふと疑問を抱く。
スプリガンそのものはともかく、スプリガンの背後に見える光景が明らかに先程までとは違っていた。
それは一体どういうことか。
そんな疑問を抱きつつも、他の心核使いよりスプリガンの方が間違いなく危険な相手だと判断し、ビームラフル……ではなく、ビームサーベルを装備する。
そんなゼオンの姿を見て、スプリガンは一瞬恐れたように後退った。
それが一体何を意味しているのかは、明らかだ。
頭部バルカン……射撃にかんしては自信を持っているように見えたのだが、ビームサーベルを手にした瞬間に怯えた様子を見せたのだ。
それは、明からに射撃武器には対応出来ないということを示しているように思える。
「……ん?」
ビームサーベルを手に、スプリガンの様子を見ていたアランは、少し離れた場所で黄金のドラゴンが暴れている光景を目にして、疑問を抱く。
何故なら、先程まで黄金のドラゴンはゼオンの右側にいたはずなのに、何故か今は左側に黄金のドラゴンの姿があったためだ。
もちろん、こうして暴れている以上、黄金のドラゴンが移動してもおかしくはない。
だが、今の違和感はそのようなことから来た訳ではないということを、アランは半ば本能的に理解し……同時に、前世で読んだ漫画について思い出す。
スプリガンというのは、普段は子供のような小さな姿をしており、いざとなれば巨大になって相手を攻撃する。
そこまでは現在の状況から納得出来る。……それでも、まさか巨人とはいえ十メートル近くまで大きくなるというのは、アランにしても予想外だった。
ともあれ、アランがスプリガンについて思い出したのはそれだけではなく……スプリガンの中には、チェンジリングを行う者がいるという情報だった。
スプリガンというのは、元々は巨人ではなく妖精という区別で、妖精らしく色々と悪戯をする。
その悪戯の一つが、チェンジリング……取り替え子という奴だ。
赤ん坊を連れ去り、代わりに妖精の子供を置いていくという、そんな悪戯。
妖精にとっては悪気のない悪戯なのかもしれないが、実際にやられてしまった人間にとってはとてもではないが悪戯で済むような代物ではない。
そんなチェンジリングが、今の状況でどう関係するのか。
取り替え子というのは、妖精と人間の赤ん坊を取り替える……交換するという現象だ。
そうである以上、相手と自分の位置を入れ替えるといったような真似が出来ても、おかしくはない。
いや、実際には色々とおかしいところも多いのだが、アランは何となく今の自分の予想が決して間違っていなかったと思えた。
あるいは、実際には全く違う能力を使ってこのような真似をしたという可能性もあったが、ともあれゼオンの頭部バルカンをゼオンが食らうといったような現象が起きているのだ。
それはどのような名前のスキルや魔法を使ったのかは分からないが、自分と相手の位置を入れ替えるといった能力を使っているのは間違いない。
「厄介だな」
ビームサーベルを構えつつ地面をこちらに向かって突っ込んでくる巨大な――ゼオンから見れば小さいが――トカゲに向かって、頭部バルカンを撃ちつつ、スプリガンとの間合いを取る。
スプリガンに集中していたアランに対し、その隙を逃がすような真似はしないと、そんな様子で突っ込んできた敵だったが、その動きは素早い。
あるいは頭部バルカンがどのような武器なのかというのを全て承知の上で、命中しないように動き回っていたのかもしれないが。
それでも、命中すればトカゲの皮膚など容易に突き破り、肉を抉り、骨を砕くといったような威力を持つゼオンの頭部バルカンだ。
そんな攻撃が放たれている中を進んでくるのだから、度胸という意味では非常に大きいものがあるのは間違いない。
「こうなったら……フェルス!」
アランはビームライフルのような武器では、現状を打破出来ないと判断。
あるいは敵に対して大きなダメージを与えることは出来るかもしれないが、その場合はデルリアに対しても……そして、住人に対しても大きなダメージを与えるだろうと判断する。
アランにしてみれば、敵を倒すのはともかく、無関係の住人に被害を与えるといったような真似はしたくない。
そのような真似をすれば、それこそ数え切れない程の犠牲者が出てしまうだろう。
だからこそ、アランはフェルスを……自分の意思で自由に操作出来て、相手に対しては致命傷を与えつつも、ビームライフルのように周辺に大きな被害を与える……といったようなことがない武器を使うことを決めたのだ。
フェルスは、アランにとっても切り札のような武器だ。
そうである以上、ガリンダミア帝国の手の者にあまりこの武器を見せたくはなかった。
……もっとも、今まで何度もフェルスを使っているので、すでにガリンダミア帝国側でもフェルスについての情報をそれなりに得ているのは間違いないだろう。
事実、ゼオンの背後の空間に波紋が浮かび、そこからフェルスが出て来た瞬間、トカゲはゼオンに近付くといった動きを止め、距離を取り始めたのだから。
スプリガンの方も、アランに向かって警戒の視線を向けつつも、攻撃をしてくる様子はない。
(ここでビーム砲を撃ったら、多分また入れ替えられるだろ。それは厄介だ。だとすれば……やっぱりビームサーベルか?)
この場合のビームサーベルというのは、あくまでもゼオンの手に持つビームサーベルであって、フェルスが展開することが出来るビームサーベルではない。
フェルスそのものが飛び道具である以上、フェルスがビームサーベルを使っても、そのまま位置を入れ替えさせられれば、意味はない。
そう判断し、アランは狙いを行動に移すのだった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
153
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる