剣と魔法の世界で俺だけロボット

神無月 紅

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ガリンダミア帝国との決着

375話

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 高圧的に声をかけられても、アランはそこまで不満を感じなかった。
 不愉快かどうかと言われれば、不愉快だと声を上げるだろう。
 声をかけてきた相手……街中で略奪をしている軍を率いるだろう五十代ほどの男が、必死に虚勢を張っているというのがすぐに分かったからだ。
 考えてみれば当然なのだが、街を略奪している軍の中に心核使いはいない。
 あるいはいても、アランとレオノーラ……ゼオンと黄金のドラゴンを相手にどうにか出来るような心核使いというのは、そう多くはない。
 そのような心核使いがいれば、連合軍を結成する前であっても、ガリンダミア帝国軍を相手に苦戦をするような真似はなかったんだろう。
 この世界において突出した個というのは、それだけ大きな実力を発揮出来るのだから。

「そうだ。俺は雲海に所属する心核使いで、隣のドラゴンは黄金の薔薇に所属する心核使いだ」

 正確には、アランの場合は雲海に所属するというのは事実だが、レオノーラの場合は黄金の薔薇に所属するのではなく、黄金の薔薇を率いるといった方が正しい。
 とはいえ、今の状況ではその件について隠しておいた方がいいと判断しての言葉。

『では、話は早い。この方面の戦いは私たちに任されているはず。心核使いの二人が何故このような場所にいるのかは分からないが、早くここを立ち去って欲しい』

 それは、男にしてみれば少しでも早くアランとレオノーラにいなくなって欲しいという思いから出た言葉なのだろう。
 本来なら街を襲撃している現場を見られた以上は口封じをしたいのだが、まさか心核使いを相手にそのような真似は出来ない。
 この状況で心核使いに襲いかかっても、間違いなく自分たちが負けるというのは想像出来る。
 そうである以上、指揮官としてはアランたちを倒すのではなく、少しでも素早く排除出来るようにと考えた。
 今回の一件が広まれば、男にとって……いや、男の国にとっても致命的な事態となりかねないのだが、男にしてみれば今は少しでもアランたちをどうにかしたいという思いの方が強いのだろう。
 それは国のことを考えず、自分の身の保身だけを考えるという点では間違っていない。
 間違っていないのだが……だからといって、街の略奪を見て、その上でここにやって来たアランが、そんな相手の言葉を受け入れるはずもない。

「今回の作戦において、ガリンダミア帝国本国はともかく、ガリンダミア帝国の従属国となっている国に対しては、略奪の類をしないように決まっていたはずですが? この件は戦後間違いなく問題となりますよ」
『ぐ……』

 アランの言葉に、男は呻き声を上げる。
 正論を口にされれば、男も反論するのは難しい。
 ……難しいが、それでも何とかしなければ自分の身の破滅になると理解しているだけに、何とか口を開く。

『これは、略奪ではない。ガリンダミア帝国軍の兵士が何人もこの街に逃げ込み、隠れている。そして街の住人はそれを匿っているのだ』

 そのガリンダミア帝国軍の兵士を捜しているので、ここで行われているのは略奪ではない。
 男はそう主張したいのだろうが、兵士を捜しているのなら、何故店にある商品……それも金目の物を奪っているのか、そして女の服を引き裂き、押し倒しているのか。
 その辺りについては、全く説明されていない。

「その言葉、言い訳として考えた場合でも、稚拙ですね。二流……三流と言ってもいい」
『何っ! 貴様ぁ……』

 まさか、こうも正面から堂々と言い返してくるとは思わなかったのだろう。
 男はアランの口から出た予想外の言葉に不満そうな様子を見せつつ、それでもすぐに爆発するような真似はしなかった。
 もしこの状況でそのような真似をしたら、自分が一体どうなるのか……それが間違いなく理解出来たからだろう。
 いつもであれば、アランも見知らぬ相手にここまで言うようなことはない。
 だが、その相手がこうして街の略奪を指揮しているような人物であれば、アランにしてみれば丁寧な扱いをする必要もあるとは思えない。
 アランの口調にあるのは、軽蔑。

「ああ、俺が間違っていたのかもしれません。街を略奪している以上、ここにいるのは軍隊ではなく盗賊か何かであるのは間違いないでしょう。そうである以上、駆除する必要がありますね」
『ま……待ちたまえ! 我々は盗賊なのではない! 多少勘違いした者もいたようだが、私たちがやっているのは、あくまでもガリンダミア帝国軍の兵士の捜索なのだ!』
「それを信じろと?」

 上空から確認した限り、とでもではないがそのようには思えない。
 それこそアランが口にしたように、盗賊と認識する方が正しいのは間違いなかった。

『当然だ! それに……そうだ、こうして離れた場所で話をしているから、お互いに誤解をするのだろう。そちらは一度心核を解除して、生身ではなすというのはどうだろうか? そうすれば、そちらも私が言いたいことは分かる筈だ』

 そう言われても、アランとしては素直に頷くような真似は出来ない。
 この状況でいきなり心核を解除して話し合おうというのだ。
 明らかに怪しい。
 ましてや、これがレオノーラなら、生身でも相応の強さを持っているので、もし男が騙し討ちをしようとしても、それに対処するのは難しくはない。
 だが、アランの場合は心核使いに特化している存在だ。
 それでも探索者として平均的な技量は持っているので、相応の実力ではあるのだが……それでも、多数の敵に一斉に襲いかかられても、どうにか出来るといったような実力者ではない。

(やっぱり、これは騙し討ちしてこっちの口を封じる気か? いや、けど……それが出来るかどうかは別として、俺とレオノーラが死ぬようなことになったりしたら、ガリンダミア帝国軍との戦いで勝つのは難しいと思うんだが)

 現状においてガリンダミア帝国軍に対して有利なのは、アランとレオノーラの心核使いとしての強さだ。
 そんな中でアランとレオノーラを殺すようなことがあった場合、ガリンダミア帝国軍とどう戦うのか。
 また、ガリンダミア帝国軍もアランを手に入れるために、周辺諸国との戦争で派遣していた心核使いだったり、精鋭部隊だったりといった戦力を引き上げ、レジスタンスたちとの戦いに投入している。
 それはあくまでもアランが……正確にはゼオンといった存在がいるかからに他ならない。
 そんな中で口封じのためにアランを殺したりすれば、それこそガリンダミア帝国の怒りを買うことになるだろうが……生憎と、ゼオンの映像モニタに表示されている男は、そこまで深く物事を考えたりはしていないのだろう。
 今は、とにかく何とかこの略奪のことを広めないようにする必要があると、そう考えての行動なのは間違いなかった。

「このような、何の罪もない街に略奪するような命令をする相手と面と向かって話す必要は感じませんね。この件については、あとで皆に知らせておきます。もし本当にガリンダミア帝国軍の兵士が街中に紛れ込んでいたというのなら、そのときに主張すればいいでしょう」
『待て!』

 アランの言葉から、このままではどうあっても不味いと判断した男は、思わずといった様子で叫ぶ。
 今この状況でアランを行かせてしまえば、自分は破滅だ。
 ……所属している国ではなく、あくまでも自分のことに意識を向けるのは、男の性格を如実に表していた。
 もっとも、それはおかしな話ではない。
 自分が国に所属しているという意識はあっても、そんな中、自分の行為によって国に被害が及ぶよりも、自分の未来が問題になると考えるのは決して少なくないのだから。
 だからこそ、男は自分にとっては最善に思える……そして実際には自分にとっても、そして何より自国にとっても最悪の選択をする。

『この連中を逃がすな! この連中を逃がせば、俺たちは破滅だぞ! いや、俺たちだけじゃなくて、俺たちの家族も破滅だ!』

 その叫びに、アランと男の話し合いを見守っていた者たちの多くは半ば反射的にゼオンと黄金のドラゴンに武器を向ける。
 とはいえ、大半の者が持っている武器は長剣や槍といったような、生身で戦うときに使う武器だ。
 そんな武器を手に、ゼオンと黄金のドラゴンを相手にどうにか出来るはずもない。
 それこそ、もし攻撃をしてきてもゼオンの装甲や黄金のドラゴンの鱗に傷を付けることすら難しいのは間違いないだろう。
 武器を構え、ゼオンと黄金のドラゴンを前にした兵士たちは、改めて自分たちが敵対しようとした相手の強大さに躊躇する。
 ……躊躇するのだが、だからといってここでアランたちを逃がした場合、自分だけではなく家族や友人、恋人にまで迷惑がかかってしまうことになるのは確実だった。
 それなら、最初から連合軍を結成したときの略奪をしないという約束を破るような真似はせず、普通にこの街を通りすぎればよかったものを、街が……それも略奪出来るような街が近くにあるということに我慢が出来なかったのだ。
 だというのに、それで行った自分たちの行為を知らされるのは困る。
 それは、アランにとっては面白くなく、レオノーラにとってはそんなアランよりもさらに輪をかけて面白くないものだ。
 自分たちがやった行為に対しては、相応の責任が必要となる。
 ましてや、その相手が所属している国にも咎が及ぶのは、仕方のないことだ。
 出奔したとはいえ、一国の王女であるがゆえに、レオノーラは目の前にいる者たちの言動が許せなかった。
 のしり、と。
 黄金のドラゴンは攻撃態勢を整えた兵士たちを前に動き出す。
 まるでゼオンを庇うかのような動きではあるが、レオノーラ本人にはそんなつもりはないだろう。
 むしろ、自分がこの連中の相手をするから邪魔をするなといった風にすら思っていてもおかしくはない。
 兵士たちは、突然目の前に現れた黄金のドラゴンを見て、圧倒される。
 一応まだ攻撃態勢をとっておらず、生き物ではなくゴーレムにしか見えないゼオンと違い、黄金のドラゴンはれっきとした生き物だ。
 そして、この世界の頂点に立つ種族の一つ。
 そんな黄金のドラゴンが……

「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」

 周辺一帯に響き渡る咆吼を発した瞬間、兵士たちの士気は完全にへし折れるのだった。
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