剣と魔法の世界で俺だけロボット

神無月 紅

文字の大きさ
401 / 422
ガリンダミア帝国との決着

400話

しおりを挟む
 ガリンダミア帝国軍とレジスタンス連合の戦いが始まる前、最初に行われたのはお互いに対する降伏勧告だった。
 ガリンダミア帝国軍にしてみれば、寄せ集めの軍……それも戦力の大半がレジスタンスという戦力的に決して突出した存在ではない以上、戦えば自分たちが有利なのは理解している。
 レジスタンス連合にしてみれば、雲海や黄金の薔薇のように精鋭が揃っているし、レジスタンスも全体的に見れば弱いが、中には突出した存在もいる。
 何より、こうしてガリンダミア帝国軍が自分達と戦っている間にも周辺諸国が協力して結成された連合軍がガリンダミア帝国を侵略しているのだ。
 ここで戦いが長引けば長引くだけ、ガリンダミア帝国軍は不利になる。
 それぞれが自分たちの勝利の可能性を信じて相手に降伏勧告をし……当然のようにお互いが降伏勧告を受け入れることはなかった。
 もっとも、双方共に相手に降伏勧告をしてはいたものの、実際にそれが受け入れられるとは思っていなかった。
 ……いや、むしろ降伏勧告が受け入れられれば、それはそれで困ったことになったのは間違いないだろう。
 そんな訳で、お互いの最後の交渉が終わったところでガリンダミア帝国軍で指揮を執っているマリピエロと、レジスタンス連合を率いているイルゼンは言葉を交わす。

「お互いに相手に降伏出来ない以上、これからは戦いとなります」
「そうだな。こちらとしては色々と忙しいので、出来れば降伏して欲しかったが……」
「それはこちらも同じですよ。ガリンダミア帝国軍に余裕がないのは分かっていますから」

 マリピエロの言葉に、イルゼンはいつものような胡散臭い笑みを浮かべてそう告げる。
 そんなイルゼンの姿に、マリピエロは鼻を鳴らす。

「ふんっ、こちらにそうせざるをえないようにしておいて、よくもまぁ……」

 その意味ありげな言葉は、マリピエロが現在のガリンダミア帝国の状況……連合軍を結成した周辺諸国についての原因がイルゼンにあると、そう見抜いていたからこそのものだろう。
 とはいえ、それは別にそこまで不思議な話ではない。
 マリピエロにしてみれば、自分と敵対している相手……特にそれを率いている人物ともなれば、当然のように調べる。
 そうして調べて分かったことは、イルゼンという人物はその胡散臭い笑みとは裏腹に、決して侮っていいような相手ではないということだった。
 調べられる時間はそう多くはなかったので、詳細なところまで全てを知っている訳ではない。
 だが、調べて明らかになった内容だけでも、イルゼンという人物は決して侮っていいような相手ではない。
 ましてや、イルゼンの浮かべている胡散臭い笑みは侮る理由となる訳にはならない。

「おや、そうですか? こちらとしては出来ることを出来る限り頑張っていることなのですがね。では、この辺で失礼しますね。……どちらが正しいのかは、戦場で決めることになるでしょう」

 そう言い、イルゼンはその場から立ち去る。
 護衛としてついてきていたリアもまた、そんなイルゼンと共に立ち去る。……ただし、その前にマリピエロに対して鋭い……それこそ殺気が宿っている視線で一瞥していくのを忘れなかったが。
 リアにしてみれば、マリピエロはガリンダミア帝国を率いている人物……つまり、息子のアランを狙っている張本人だ。
 アランの母親として、そのような相手に友好的に接しろというのが不可能だった。
 とはいえ、マリピエロにしてみればリアとアランの関係についてまでは分からないからか、何故自分が今のように殺気の込めた視線を向けられる理由が分からなかったが。
 ただし、視線を向けるだけで、実際に武器を振るうといったような真似はしなかったが。
 イルゼンにリアが護衛としてついてきたように、マリピエロにも護衛として何人かの騎士がいる。
 そうである以上、もしリアがここで何かをしようとも対処出来ると思っているのだろう。
 とはいえ、リアとしてもし護衛の騎士がいなくても何も行動をするつもりはなかったが。
 このような場所で敵の指揮官を殺すといった真似をした場合、それは大きな恥となる。
 雲海や黄金の薔薇、レジススタンス……その全てが多くの者に責められることになるだろう。
 あるいは、リアだけが不名誉を被るのなら、息子のためにということで行動に移していた可能性もあったが。
 ともあれ、こうしてお互いに降伏勧告は受け入れず……最後の会談は終わったのだった。





「ようやくか。……結局、あの未知の攻撃をしてくる敵を発見出来なかったのは痛いけどな」

 ゼオンのコックピットの中で、アランは陣地に戻ってくるイルゼンやリアの姿を見ながらそう呟く。
 昨夜の夜襲の一件もそうだが、アランが口にしたように未知の攻撃を行ってくる敵の存在は、未だに対処出来ていなかった。
 正直なところ、これは非常に大きなミスと言ってもいい。
 アランとしては、こうしてガリンダミア帝国軍と最後の戦いが起きるよりも前に、対処しておきたかったのだ。
 しかし、結局それは出来なかった。

「恐らく、この戦いの中でまた攻撃をしてくる……と、そう思っても決して間違いではない筈」

 未知の攻撃をしている相手が、具体的にどのような存在なのかは分からない。
 分からないが、それでもガリンダミア帝国の者に所属していることだけは明らかだった。
 アランにしてみれば、そんな厄介な相手は出来るだけ素早くどうにかしたいと、そう思うのは当然だろう。
「まぁ、今は……それよりも、あの連中についての対処を考える必要があるんだろうけど」

 ゼオンの映像モニタに表示されているのは、空を飛ぶ複数のモンスター。
 当然ながら、それは心核使いが変身した姿だ。
 空を飛ぶモンスターに変身する心核使いは、そこまで多くはない。
 しかし、こうして数を揃えてくるというのはさすがと言うほかないだろう。
 とはいえ、アランが見た感じではそこまで強力なモンスターがいるようには思えない。
 ……ガリンダミア帝国の勢力圏内に入ってから、何度か強力な空を飛ぶモンスターと戦った。
 それを思えば、この戦いで出撃してきた空を飛ぶモンスターがこの程度とは思わない。

「となると、これはあくまでも捨て駒というか、こっちがどういう行動をするのかの様子見的な意味か。ともあれ……」

 こっちに向かってくる以上、アランとしては敵を撃破しないという選択肢は存在しない。
 レジスタンス連合側で空を飛べる戦力は、アランのゼオンとレオノーラの黄金のドラゴンだけだ。
 そしてレオノーラは黄金の薔薇を率いる者として生身で戦場に出ている以上、空を飛ぶ敵に対処出来るのはアランだけだった。
 ……実際には、ロッコーモの変身したオーガが岩を投げたり、ケラーノが変身したトレントが木の実や花粉といった対空攻撃を行ったりといった真似を出来るのを考えれば、必ずしも空を飛ぶ敵に対処出来るのはゼオンだけではないのだが。
 それでも、ゼオンが一番効率的に敵を倒せるのは事実だった。

「まず一匹」

 呟き、ビーラムライフルのトリガーを引くアラン。
 放たれたビームは、巨大な蝙蝠のモンスターに命中し……そしてビームがなくなったとき、そこに蝙蝠の姿はどこにも存在していなかった。
 遠距離……それも普通のモンスターでは無理な、圧倒的な遠距離からの射撃。
 それは、ガリンダミア帝国軍の空を飛ぶモンスターにとって、脅威でしかない。
 もっとも、ゼオンに向かって度々攻撃をしてきた未知の存在による攻撃は、ゼオンのビームライフルよりも遙かに遠距離から行われる攻撃なのだが。
 それを考えれば、ゼオンのビームライフルによる攻撃もそこまで大したものではないと、そうアランは思う。
 向こうはゼオンよりも遠距離から攻撃しており、その上で本人の能力なのかマジックアイテムか何か、もしくは転移専門の仲間がいるのかは分からないが、とにかく転移能力もあるのだ。
 そんな未知の敵の攻撃でゼオンが勝っているのは、ビームライフルによる連射性能くらいだろう。

「っと、今はこっちに集中しないとな。けど……フェルス!」

 ビームライフルを連射しつつ、アランは叫ぶ。
 するとゼオンの後方の空間に波紋が浮かび、やがてその波紋からフェルスが多数姿を現す。
 そうして姿を表したフェルスは、敵に向かって突っ込んでいく。
 ただし、フェルスが向かったのは空を飛ぶモンスターの群れではなく、地上。
 ゼオンのビームライフルの射程の長さから、すでに空の戦闘は開始していたものの、地上ではまだ両軍共にぶつかってはいなかった。
 だからこそ、この機会を逃さないようにと、アランはフェルスを地上を進むガリンダミア帝国軍に向けたのだ。
 フェルスは長さ一メートルほどである以上、そのような存在が空から自分たちに向かって近付いているとは、ガリンダミア帝国軍の大多数が気が付いていなかった。
 中には気が付いた者もいたのだが、軍隊として移動している現状で、フェルスが降ってきているのを見つけたからといって、それに対処するのは難しい。
 咄嗟に叫び声を上げても、最前線の兵士たちは自分たちの視線の先に存在するレジスタンス連合に意識を集中しており、警告の声は届かない。
 結果として……

「うわあああああぁっ!」

 上空から放たれたフェルスのビームによって、隣にいた兵士の頭部が破砕したことに気が付いた兵士が叫ぶ。
 そんな声を始まりとし、ガリンダミア帝国の最前線ではフェルスが縦横無尽に暴れ回る。
 先端にビームソードを展開したまま突き進み、鎧だろうが何だろうが全く意味もなく、次々と兵士を殺していくフェルス。
 先端からビーム砲を放ち、そのビームによって兵士を殺していくフェルス。
 横にビームの刃を展開し、兵士たちの間を通り抜けるようにして移動するフェルス。
 当然ながらそのような真似をすれば、横に展開したビームの刃に触れた者は例外なく斬り裂かれる。
 運がよければ、鎧が斬り裂かれるだけですむが、運が悪ければ脇腹や首筋を斬り裂かれ、手足切断され……といったことになる。
 こうして、本格的に戦いが始まる前からガリンダミア帝国軍は大きな被害を受けるのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜

駄作ハル
ファンタジー
異世界の大貴族レオ=ウィルフリードとして転生した平凡サラリーマン。 しかし、待っていたのは平和な日常などではなかった。急速な領土拡大を目論む帝国の貴族としての日々は、戦いの連続であった─── そんなレオに与えられたスキル『英雄召喚』。それは現世で英雄と呼ばれる人々を呼び出す能力。『鬼の副長』土方歳三、『臥龍』所轄孔明、『空の魔王』ハンス=ウルリッヒ・ルーデル、『革命の申し子』ナポレオン・ボナパルト、『万能人』レオナルド・ダ・ヴィンチ。 前世からの知識と英雄たちの逸話にまつわる能力を使い、大切な人を守るべく争いにまみれた異世界に平和をもたらす為の戦いが幕を開ける! 完結まで毎日投稿!

残念ながら主人公はゲスでした。~異世界転移したら空気を操る魔法を得て世界最強に。好き放題に無双する俺を誰も止められない!~

日和崎よしな
ファンタジー
―あらすじ― 異世界に転移したゲス・エストは精霊と契約して空気操作の魔法を獲得する。 強力な魔法を得たが、彼の真の強さは的確な洞察力や魔法の応用力といった優れた頭脳にあった。 ゲス・エストは最強の存在を目指し、しがらみのない異世界で容赦なく暴れまくる! ―作品について― 完結しました。 全302話(プロローグ、エピローグ含む),約100万字。

【完結】剣聖と聖女の娘はのんびりと(?)後宮暮らしを楽しむ

O.T.I
ファンタジー
かつて王国騎士団にその人ありと言われた剣聖ジスタルは、とある事件をきっかけに引退して辺境の地に引き籠もってしまった。 それから時が過ぎ……彼の娘エステルは、かつての剣聖ジスタルをも超える剣の腕を持つ美少女だと、辺境の村々で噂になっていた。 ある時、その噂を聞きつけた辺境伯領主に呼び出されたエステル。 彼女の実力を目の当たりにした領主は、彼女に王国の騎士にならないか?と誘いかける。 剣術一筋だった彼女は、まだ見ぬ強者との出会いを夢見てそれを了承するのだった。 そして彼女は王都に向かい、騎士となるための試験を受けるはずだったのだが……

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

商人でいこう!

八神
ファンタジー
「ようこそ。異世界『バルガルド』へ」

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

異世界召喚は7回目…って、いい加減にしろよ‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
『おぉ、勇者達よ! 良くぞ来てくれた‼︎』 見知らぬ城の中、床には魔法陣、王族の服装は中世の時代を感じさせる衣装… 俺こと不知火 朔夜(しらぬい さくや)は、クラスメートの4人と一緒に異世界に召喚された。 突然の事で戸惑うクラスメート達… だが俺はうんざりした顔で深い溜息を吐いた。 「またか…」 王族達の話では、定番中の定番の魔王が世界を支配しているから倒してくれという話だ。 そして儀式により…イケメンの正義は【勇者】を、ギャルっぽい美紅は【聖戦士】を、クラス委員長の真美は【聖女】を、秀才の悠斗は【賢者】になった。 そして俺はというと…? 『おぉ、伝承にある通り…異世界から召喚された者には、素晴らしい加護が与えられた!』 「それよりも不知火君は何を得たんだ?」 イケメンの正義は爽やかな笑顔で聞いてきた。 俺は儀式の札を見ると、【アンノウン】と書かれていた。 その場にいた者達は、俺の加護を見ると… 「正体不明で気味が悪い」とか、「得体が知れない」とか好き放題言っていた。 『ふむ…朔夜殿だけ分からずじまいか。だが、異世界から来た者達よ、期待しておるぞ!』 王族も前の4人が上位のジョブを引いた物だから、俺の事はどうでも良いらしい。 まぁ、その方が気楽で良い。 そして正義は、リーダーとして皆に言った。 「魔王を倒して元の世界に帰ろう!」 正義の言葉に3人は頷いたが、俺は正義に言った。 「魔王を倒すという志は立派だが、まずは魔物と戦って勝利をしてから言え!」 「僕達には素晴らしい加護の恩恵があるから…」 「肩書きがどんなに立派でも、魔物を前にしたら思う様には動けないんだ。現実を知れ!」 「何よ偉そうに…アンタだったら出来るというの?」 「良いか…殴り合いの喧嘩もしたことがない奴が、いきなり魔物に勝てる訳が無いんだ。お前達は、ゲーム感覚でいるみたいだが現実はそんなに甘く無いぞ!」 「ずいぶん知ったような口を聞くね。不知火は経験があるのか?」 「あるよ、異世界召喚は今回が初めてでは無いからな…」 俺は右手を上げると、頭上から光に照らされて黄金の甲冑と二振の聖剣を手にした。 「その…鎧と剣は?」 「これが証拠だ。この鎧と剣は、今迄の世界を救った報酬として貰った。」 「今迄って…今回が2回目では無いのか?」 「今回で7回目だ!マジでいい加減にして欲しいよ。」 俺はうんざりしながら答えた。 そう…今回の異世界召喚で7回目なのだ。 いずれの世界も救って来た。 そして今度の世界は…? 6月22日 HOTランキングで6位になりました! 6月23日 HOTランキングで4位になりました! 昼過ぎには3位になっていました.°(ಗдಗ。)°. 6月24日 HOTランキングで2位になりました! 皆様、応援有り難う御座いますm(_ _)m

転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。 コイツは何かがおかしい。 本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。 目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

処理中です...