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恋に落ちない殺人未遂
恋に落ちない殺人未遂〈上〉
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「私は名探偵で~あーる!」
俺の隣で夕月 雛が高らかに言う。
「私は名探偵であーる!!」
俺の隣でバカが高らかにほざく。
「私は…」
「うるせぇ」
俺はため息をつき、バカに顔を向ける。
「ん?どうしたんだい、パトロンくん?」
パトロン?……あぁ、ワトソンって言いたいのか。
「誰がワトソンだ。俺は吉川 優だ」
「知ってるよー!そう!私のきょーい的な推理力で、そんなことはお見通しなのだ!」
「幼なじみだからだろうが」
このバカ、夕月 雛は俺の幼なじみであり、昔から頭悪いくせにシャーロック・ホームズなんかを読んでいる、いわば探偵オタクだ。
今は同じ板西高校に通っていて、これまた同じ2年3組に所属している。なんという腐れ縁だろうか。
「はぁ、いつも思うがお前、それ言ってて恥ずかしくないのか?俺たちはもう高2なんだぞ?」
「ふっ」
バカはそのボブカットの髪をかきあげ、スカートをふらふら揺らしながらアホなポーズをとってから口を開く。
「事実だから仕方ないのさ!」
「…そうか」
それだけ言って、俺は椅子の背もたれに体を預ける。
クラスの奴らは「ああ、またやってるよ」と言わんばかりの目でこちらを見てくる。
……こっちみんな。
「今日はいつにもましてウザいな、お前。」
「いつにもましてって…ひどい。私がいつもウザいみたいに言って」
「事実だろ」
というか、さっきまでの気取った喋り方どこいったよ。もう素に戻ったのか。
「うーん。でも今日はなーんか、事件が起こりそうな感じがするんだよねー。」
「こんな平和な街で事件なんて起きるわけないだろ。そんなに事件が見たけりゃ、メガネの少年探偵のとこにでもいくんだな。」
「えー本当だってー。優くんの意地悪ー!」
雛は頬を膨らませて俺を睨みつけてくる。
しかしそこで、ガラッと教室の扉が開いてメガネのおっさんが入ってきた。
「ヤバっ、先生だ!じゃあ優くんまた後でね!」
そういって雛は自分の席へとかけていった。
しかし、人によって感じ方は違うと思うのだが、6時間目の授業というのは俺にとってはとても苦痛なものだ。
それに耐えるための休み時間をあいつとの漫才でつぶしてしまうとは…。
まぁいいや、寝るか。
そんな風に思いながら、先生が言うよくわからないことを聞き流し、グラウンドでやっている体育の授業を観戦しながら過ごしていた6時間目に、事件は起こった。
外を眺めていた俺の視界に突如上から現れたそれは、正確には見えなかったが恐らく、鉢植えだった。
「え」
そして、がしゃん!と落ちた音がすると、グラウンドで悲鳴があがった。
第一章 シャーロック・雛ちゃん
「ほら言った!」
「…………」
「ほらほら言った!ほら言った!」
「…………」
「ほら言ったほら言ったほら言」
「わかったから!」
俺は授業が終わってから俺の席に駆け寄ってきた雛を手で制した。
あの後、鉢植えが落ちたあとグラウンドに救急車がきたのだ。
それはつまり…
「殺人事件だ!」
「勝手に殺すな!誰かにあの鉢植えが当たったことは確かだが、まだ死んだとはわからんだろうが!」
雛は何かにつけて殺人事件と言いたがるのだ。まったく、困ったものだ。
話によると、体育を見学していた3年生の頭の上に鉢植えは落ちてきたらしい。
「しっかし本当に事件が起きるとはなぁ」
「ふっふー、雛ちゃんの嗅覚をなめちゃいかんですよー。さぁ優くん!早速調査に行こうではないか!」
「まてまて」
俺は雛の制服の首元をひっつかまえる。
「今きたのは救急車だけ。警察は来てない。つまりは、そういうことだよ」
「んー?あ!な、なるほど!警察の手には負えない難事件なんだね!」
………アホだ。
「馬鹿、つまり事故ってことだよ。ていうか、偶然鉢植えが落ちただけじゃねぇか」
「いや、ちがうね!この教室の上には1年3組の教室がある。つまり!1年3組の誰かが犯人だ!いくよ!」
「お、おい!ホームルームがあるだろ!」
「…あ、忘れてた」
……断言しよう、こいつは絶対に名探偵ではない。
☆
「さて、ここが現場か!」
1年3組の教室の前で雛が言う。
うーん、現場はどっちかというとグラウンドじゃないだろうか。
ホームルームを終えて、雛が掃除当番だったのでそれを待ってから、俺たちは1年3組の教室に来たのだ。まぁ、俺は半分強引にだが。
「たのもー!」
雛が扉を乱暴に開ける。
「お、おい馬鹿!」
しかし、ホームルームを終えてみんな帰ってしまったのか、教室はがらんとしていた。
しかし、そこにはひとりだけ制服を着た黒髪ロングの女子が立っていた。
「こんにちは」
彼女はおっとりと口を開いた。
「あ、こんにちは」
雛はさすがに恥ずかしくなったのか、丁寧に返事をした。
「わたしは花崎 友梨香と申します。えーと、あなたたちはどちら様でしょうか?」
名乗るときは自分からなんとかをきちんと守って、彼女は挨拶してきた。
「えっと!夕月 雛です!」
「どうも、吉川 優です」
二人で挨拶をしたあと、雛はすぐに口を開く。
「花崎さん。わたしは名探偵の雛ちゃんです。どうか安心して、当時の状況を話して下さい」
「え?えっと、え?名探偵?当時、とは?」
花崎さんは雛の言った言葉で、困ったと外からでもわかる顔になってしまった。
「あ、こいつは多分、あのさっき鉢植えが落ちた時のことを聞きたいようです」
「あ、そういうことですか」
というと、かのじょはほっとため息をつき、落ち着きを取り戻す。…本当にほっとする人を始めてみた。
「お気持ちはわかりますが、私はそのときのことをお話できないのです」
彼女のその言葉に俺でさえびっくりした。
「え、話せないってどういう」
おれが話そうとすると、隣のバカが手で制した。…というか俺の口を手でふさいだ。
「わかりますよ。自分に容疑はかけられたくない気持ち。しかし、はなさなけれーばー!あなたが一番怪しいということになりますよ!」
「い、いえ、私は…そういうつもりはないのですが。しかし、どうしてもお話できないのです」
俺も彼女の言動に違和感を持ち。もしかしてと思った。
「まだいいますか。このまま言わなければ非道い目に合いますよ!例えば…例えば……こちょこちょの刑とか!」
「そんな!くすぐったいのはいやです!」
「ふっふー、観念しなさい!」
「やめろ馬鹿」
俺は馬鹿の頭をこつんと叩いた。
「いった!何するの優くん!」
睨みつけてくる馬鹿を無視して、俺は花崎さんに向き直る。
「もしかして、化学の実験ですか?」
「あ、ええそうです」
彼女はおしとやかに答えてくれた。
やっぱりか。
「え?ん?どういうこと?」
隣で混乱している馬鹿に、俺は説明をしてやる。
「花崎さんが当時のことを話せないのは、教室にいなかったからだよ。化学の実験のために、実験室へ行っていてな」
「…あ、なるほど、いや!わかってたよ!?最初から」
と、雛は目を泳がせながら言う。
「でも、よくわかりましたね。化学の実験だなんて具体的に」
と、花崎さんが微笑みかけてくる。
「まぁ、花崎さんの言葉的に教室にはいないだろうなって、で一年生の時に芸術科目はあまりやらないだろうし、体育は3年生がやっている。ならそのどちらでもない、実験室で行う化学の実験かなって」
「……なんだか、探偵さんみたいですね」
……いまなんと?
「ふっふー、さすが私の弟子だよー。師がいいと弟子も出来がいいねぇ」
「いつ俺がお前の弟子になった」
こいつと同等とか本気で思われたくない。
「あれ?ってことはー。犯人はだれ?」
と、馬鹿はいまだにそんなことを言う。
実験で教室にいなかったのは花崎さんだけではない。つまりは…。
俺ははっきりと言ってやる。
「事故だよ」
しかし、この時にはこの事件があんなことになるとは思ってもいなかった。
俺の隣で夕月 雛が高らかに言う。
「私は名探偵であーる!!」
俺の隣でバカが高らかにほざく。
「私は…」
「うるせぇ」
俺はため息をつき、バカに顔を向ける。
「ん?どうしたんだい、パトロンくん?」
パトロン?……あぁ、ワトソンって言いたいのか。
「誰がワトソンだ。俺は吉川 優だ」
「知ってるよー!そう!私のきょーい的な推理力で、そんなことはお見通しなのだ!」
「幼なじみだからだろうが」
このバカ、夕月 雛は俺の幼なじみであり、昔から頭悪いくせにシャーロック・ホームズなんかを読んでいる、いわば探偵オタクだ。
今は同じ板西高校に通っていて、これまた同じ2年3組に所属している。なんという腐れ縁だろうか。
「はぁ、いつも思うがお前、それ言ってて恥ずかしくないのか?俺たちはもう高2なんだぞ?」
「ふっ」
バカはそのボブカットの髪をかきあげ、スカートをふらふら揺らしながらアホなポーズをとってから口を開く。
「事実だから仕方ないのさ!」
「…そうか」
それだけ言って、俺は椅子の背もたれに体を預ける。
クラスの奴らは「ああ、またやってるよ」と言わんばかりの目でこちらを見てくる。
……こっちみんな。
「今日はいつにもましてウザいな、お前。」
「いつにもましてって…ひどい。私がいつもウザいみたいに言って」
「事実だろ」
というか、さっきまでの気取った喋り方どこいったよ。もう素に戻ったのか。
「うーん。でも今日はなーんか、事件が起こりそうな感じがするんだよねー。」
「こんな平和な街で事件なんて起きるわけないだろ。そんなに事件が見たけりゃ、メガネの少年探偵のとこにでもいくんだな。」
「えー本当だってー。優くんの意地悪ー!」
雛は頬を膨らませて俺を睨みつけてくる。
しかしそこで、ガラッと教室の扉が開いてメガネのおっさんが入ってきた。
「ヤバっ、先生だ!じゃあ優くんまた後でね!」
そういって雛は自分の席へとかけていった。
しかし、人によって感じ方は違うと思うのだが、6時間目の授業というのは俺にとってはとても苦痛なものだ。
それに耐えるための休み時間をあいつとの漫才でつぶしてしまうとは…。
まぁいいや、寝るか。
そんな風に思いながら、先生が言うよくわからないことを聞き流し、グラウンドでやっている体育の授業を観戦しながら過ごしていた6時間目に、事件は起こった。
外を眺めていた俺の視界に突如上から現れたそれは、正確には見えなかったが恐らく、鉢植えだった。
「え」
そして、がしゃん!と落ちた音がすると、グラウンドで悲鳴があがった。
第一章 シャーロック・雛ちゃん
「ほら言った!」
「…………」
「ほらほら言った!ほら言った!」
「…………」
「ほら言ったほら言ったほら言」
「わかったから!」
俺は授業が終わってから俺の席に駆け寄ってきた雛を手で制した。
あの後、鉢植えが落ちたあとグラウンドに救急車がきたのだ。
それはつまり…
「殺人事件だ!」
「勝手に殺すな!誰かにあの鉢植えが当たったことは確かだが、まだ死んだとはわからんだろうが!」
雛は何かにつけて殺人事件と言いたがるのだ。まったく、困ったものだ。
話によると、体育を見学していた3年生の頭の上に鉢植えは落ちてきたらしい。
「しっかし本当に事件が起きるとはなぁ」
「ふっふー、雛ちゃんの嗅覚をなめちゃいかんですよー。さぁ優くん!早速調査に行こうではないか!」
「まてまて」
俺は雛の制服の首元をひっつかまえる。
「今きたのは救急車だけ。警察は来てない。つまりは、そういうことだよ」
「んー?あ!な、なるほど!警察の手には負えない難事件なんだね!」
………アホだ。
「馬鹿、つまり事故ってことだよ。ていうか、偶然鉢植えが落ちただけじゃねぇか」
「いや、ちがうね!この教室の上には1年3組の教室がある。つまり!1年3組の誰かが犯人だ!いくよ!」
「お、おい!ホームルームがあるだろ!」
「…あ、忘れてた」
……断言しよう、こいつは絶対に名探偵ではない。
☆
「さて、ここが現場か!」
1年3組の教室の前で雛が言う。
うーん、現場はどっちかというとグラウンドじゃないだろうか。
ホームルームを終えて、雛が掃除当番だったのでそれを待ってから、俺たちは1年3組の教室に来たのだ。まぁ、俺は半分強引にだが。
「たのもー!」
雛が扉を乱暴に開ける。
「お、おい馬鹿!」
しかし、ホームルームを終えてみんな帰ってしまったのか、教室はがらんとしていた。
しかし、そこにはひとりだけ制服を着た黒髪ロングの女子が立っていた。
「こんにちは」
彼女はおっとりと口を開いた。
「あ、こんにちは」
雛はさすがに恥ずかしくなったのか、丁寧に返事をした。
「わたしは花崎 友梨香と申します。えーと、あなたたちはどちら様でしょうか?」
名乗るときは自分からなんとかをきちんと守って、彼女は挨拶してきた。
「えっと!夕月 雛です!」
「どうも、吉川 優です」
二人で挨拶をしたあと、雛はすぐに口を開く。
「花崎さん。わたしは名探偵の雛ちゃんです。どうか安心して、当時の状況を話して下さい」
「え?えっと、え?名探偵?当時、とは?」
花崎さんは雛の言った言葉で、困ったと外からでもわかる顔になってしまった。
「あ、こいつは多分、あのさっき鉢植えが落ちた時のことを聞きたいようです」
「あ、そういうことですか」
というと、かのじょはほっとため息をつき、落ち着きを取り戻す。…本当にほっとする人を始めてみた。
「お気持ちはわかりますが、私はそのときのことをお話できないのです」
彼女のその言葉に俺でさえびっくりした。
「え、話せないってどういう」
おれが話そうとすると、隣のバカが手で制した。…というか俺の口を手でふさいだ。
「わかりますよ。自分に容疑はかけられたくない気持ち。しかし、はなさなけれーばー!あなたが一番怪しいということになりますよ!」
「い、いえ、私は…そういうつもりはないのですが。しかし、どうしてもお話できないのです」
俺も彼女の言動に違和感を持ち。もしかしてと思った。
「まだいいますか。このまま言わなければ非道い目に合いますよ!例えば…例えば……こちょこちょの刑とか!」
「そんな!くすぐったいのはいやです!」
「ふっふー、観念しなさい!」
「やめろ馬鹿」
俺は馬鹿の頭をこつんと叩いた。
「いった!何するの優くん!」
睨みつけてくる馬鹿を無視して、俺は花崎さんに向き直る。
「もしかして、化学の実験ですか?」
「あ、ええそうです」
彼女はおしとやかに答えてくれた。
やっぱりか。
「え?ん?どういうこと?」
隣で混乱している馬鹿に、俺は説明をしてやる。
「花崎さんが当時のことを話せないのは、教室にいなかったからだよ。化学の実験のために、実験室へ行っていてな」
「…あ、なるほど、いや!わかってたよ!?最初から」
と、雛は目を泳がせながら言う。
「でも、よくわかりましたね。化学の実験だなんて具体的に」
と、花崎さんが微笑みかけてくる。
「まぁ、花崎さんの言葉的に教室にはいないだろうなって、で一年生の時に芸術科目はあまりやらないだろうし、体育は3年生がやっている。ならそのどちらでもない、実験室で行う化学の実験かなって」
「……なんだか、探偵さんみたいですね」
……いまなんと?
「ふっふー、さすが私の弟子だよー。師がいいと弟子も出来がいいねぇ」
「いつ俺がお前の弟子になった」
こいつと同等とか本気で思われたくない。
「あれ?ってことはー。犯人はだれ?」
と、馬鹿はいまだにそんなことを言う。
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