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王子の想い3
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ここ最近――正しくはここ数年。
メティシアから何故だか素っ気ない態度を取られ続けていた。
理由は分からない。けれど、彼女は僕と交わした約束すらも無くしたいと言ってくる。
いくら可愛いメティシアのためでもそれはできない相談だった。
服装や行動の制限――その約束は、メティシアが悪き者や害となる知識と関わらないようにするための防衛手段なのだから。
君を守るためだと何度も説明した。けれど、メティシアはハイハイとまるで理解をしてくれない。
その上、こんな怪しげな夜会にまで――
聞き分けのないメティシアへお仕置きをしよう――とまではいかないが、それに近しい感情は湧いていた。
少しだけ意地悪して、僕の対策の必要性を理解して貰いたかった。
その結果、目論見通りにメティシアをいじめて倒したわけなのだが、終わった後にはなんとも言えない恐怖と安堵が訪れた。
やはりメティシアは、最強に可愛い存在だった。必死で耐える声も表情も、我慢できなくなって羞恥を入り乱し懇願する様も、どれを取っても愛くるしいより他に言葉は見つからないほどだ。
だからこそ、やはり自分の講じていた防衛策が正しかったと再確認した。
こんな可愛らしい存在をそのまま外界に解き放てば、すぐによからぬ者に穢されてしまうに違いない。
今日だって、あと一歩遅ければ得体の知れない輩の餌食になっていたことだろう。
考えるだけで悪寒がする。
メティシアのあられもない姿をもし別の人間が目にしていたら、触れていたら――恐らくソレを許すことはできないだろう。
本当に良かった。
僕の中に堕ちてくれて、幸せだ。
そう思って、仮面なんて剥がれた彼女を抱き締めた。
彼女はこんな危ない場所で安心なんかして眠っている。横にいるのは悪い男かもしれないのに。
やっぱりメティシアは僕が守らないとダメなんだ――
そう思っていたはずなのに。
それは小さな油断だった。
メティシアがあまりに久々に素直に接してくれるから、僕の行為の意味もようやく理解してくれたのだと勘違いをした。
まさか、メティシアが知らぬ男とダンスをするなんて。
メティシアとのダンスは結婚披露パーティーで初めて踊ると決めていた。
その時に、メティシアへの愛を一つ一つ語りながら踊るのが夢だったのだ。
それに、メティシアの印象保持のためには、誘われた女性の相手をしなければならなかった。断っている姿をメティシアにでも見られたら、嫌われてしまうかもしれないと怖かった。
だから何度もメティシアの側へ行きたいという想いを断ち切って、必死で我慢をしてきた。
メティシアがおかしな奴に近付かれないよう、布石も打った。
全ては順調のはずだった。
なのに何故、愛しいメティシアが知らぬ男と踊っているのだろう。
何故、あれだけ禁止した肌の露出をして、触れさせているのだろう。
その優しい笑みも羞恥の表情も、全て僕の物のはずなのに――
すぐに辞めさせようとした。けれど、邪魔者がいた。
メティシアとの関係上、無闇に手出しできない姉――リーシアだ。
何を考えているのか分からない、苦手な存在でもあった。
彼女は、止めに入ろうとする僕の手を引いた。
『残された女性を無碍にしてはメティシアが貴方を嫌いますよ』と。
冷たい言葉で言い捨てた。
しかしそれを跳ね除けることもできなかった。
――ユリウス様なんか大嫌い。
かつての記憶が蘇る。あまりに苦しい記憶だった。
最愛のメティシアから二度と嫌われないために、頑張ってきた。
メティシアから何故だか素っ気ない態度を取られ続けていた。
理由は分からない。けれど、彼女は僕と交わした約束すらも無くしたいと言ってくる。
いくら可愛いメティシアのためでもそれはできない相談だった。
服装や行動の制限――その約束は、メティシアが悪き者や害となる知識と関わらないようにするための防衛手段なのだから。
君を守るためだと何度も説明した。けれど、メティシアはハイハイとまるで理解をしてくれない。
その上、こんな怪しげな夜会にまで――
聞き分けのないメティシアへお仕置きをしよう――とまではいかないが、それに近しい感情は湧いていた。
少しだけ意地悪して、僕の対策の必要性を理解して貰いたかった。
その結果、目論見通りにメティシアをいじめて倒したわけなのだが、終わった後にはなんとも言えない恐怖と安堵が訪れた。
やはりメティシアは、最強に可愛い存在だった。必死で耐える声も表情も、我慢できなくなって羞恥を入り乱し懇願する様も、どれを取っても愛くるしいより他に言葉は見つからないほどだ。
だからこそ、やはり自分の講じていた防衛策が正しかったと再確認した。
こんな可愛らしい存在をそのまま外界に解き放てば、すぐによからぬ者に穢されてしまうに違いない。
今日だって、あと一歩遅ければ得体の知れない輩の餌食になっていたことだろう。
考えるだけで悪寒がする。
メティシアのあられもない姿をもし別の人間が目にしていたら、触れていたら――恐らくソレを許すことはできないだろう。
本当に良かった。
僕の中に堕ちてくれて、幸せだ。
そう思って、仮面なんて剥がれた彼女を抱き締めた。
彼女はこんな危ない場所で安心なんかして眠っている。横にいるのは悪い男かもしれないのに。
やっぱりメティシアは僕が守らないとダメなんだ――
そう思っていたはずなのに。
それは小さな油断だった。
メティシアがあまりに久々に素直に接してくれるから、僕の行為の意味もようやく理解してくれたのだと勘違いをした。
まさか、メティシアが知らぬ男とダンスをするなんて。
メティシアとのダンスは結婚披露パーティーで初めて踊ると決めていた。
その時に、メティシアへの愛を一つ一つ語りながら踊るのが夢だったのだ。
それに、メティシアの印象保持のためには、誘われた女性の相手をしなければならなかった。断っている姿をメティシアにでも見られたら、嫌われてしまうかもしれないと怖かった。
だから何度もメティシアの側へ行きたいという想いを断ち切って、必死で我慢をしてきた。
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全ては順調のはずだった。
なのに何故、愛しいメティシアが知らぬ男と踊っているのだろう。
何故、あれだけ禁止した肌の露出をして、触れさせているのだろう。
その優しい笑みも羞恥の表情も、全て僕の物のはずなのに――
すぐに辞めさせようとした。けれど、邪魔者がいた。
メティシアとの関係上、無闇に手出しできない姉――リーシアだ。
何を考えているのか分からない、苦手な存在でもあった。
彼女は、止めに入ろうとする僕の手を引いた。
『残された女性を無碍にしてはメティシアが貴方を嫌いますよ』と。
冷たい言葉で言い捨てた。
しかしそれを跳ね除けることもできなかった。
――ユリウス様なんか大嫌い。
かつての記憶が蘇る。あまりに苦しい記憶だった。
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