真っ黒マントのうさぎさん

石ノ森椿

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物質の解放

~みゆきの目線~

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私は必死に走る。
それは、さっきのあんな露骨な恋文なんか送ってよこしたきも央…いや龍央を見つけるため。

「…チッ。」
流石にいつまでもこの階には居ないか。

「僕に何か御用ですか?」
その声の方を向くと、上り階段の踊り場の手すりに寄りかかった龍央が無表情でこちらを見ていた。

私は駆け上がりながらいうことを叫んでいた。
「あんた、何のつもり?」
「何がですか?」

「何がじゃないから!!何であんなふうにさやのこと困らせるわけ?」
「」

私が駆け上がり終わった時に聞いた質問に、龍央は眉を少し顰めた。

「なに企んでるの?」
「お前こそ、何か知ってるんじゃないのか?刑事の娘だろ?」

その何もかも知ったような口ぶりと龍央から出た発言に私は目を丸くした。

「…私のこと知ってんの?しかも何その口調…。」
「なんだ、何も聞かされてないのか…ならあなたに話すことは何もありません。」

その冷たく見下ろした目と突き放した言葉遣いに私はつい掴みかかった。

「あんたね…「龍と蛇。」は?」

「その言葉を父親に言ってみるといいよ。」
「ッ…痛い!」

いつの間にか私の掴みかかった手は龍央の片手でひねり挙げられていた。

慌てて振り払うと、龍央は鼻で笑ったあと階段を上がっていった。

「あぁ、一つだけ。」
そしてあと少しで次の回に差し掛かった頃、龍央はくるりと向きを変えた。

「…何?」
「莢菜さんを案ずる暇があるなら、蛇の正体をさっさと洗い出してお縄にしてくれ。」

「…え?」
「そう父親に伝えろ。俺も迷惑してんだ。」

その目はあまりに冷たく光っていて、私は二人にメッセージを入れて家まで走った。

たしか今日は父親は非番のはず。

ガチャ
「お父さん!?」
「ッ…ゲホッ…。」

父親の部屋の扉を開けてすぐに私は叫んだ。
中には父親がのんびりコーヒーを飲んでいたらしく、私が飛び込んだ瞬間、むせ返った。

「…なんだ。」
「お父さん…"龍と蛇"って意味わかる?」

「ッ…お前がなんでその言葉を知ってるんだ!」
「ッ!?」
父親は私の言葉を聞いた途端顔色を変えた。
その顔は悔しいような悲しいような…そして焦りが混じった顔で私を見つめた。

…やっぱり、お父さんは何か知ってるんだ…。
そしてその顔を見て、娘の勘だけどすごくやばい事に龍央が関係してることが分かった。

「…みゆき…お前は何を聞いた?」
私が固まったままだったからか、父親は一度息を吐いてからまた落ち着いた声で尋ねた。
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