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1章 それはきっと必然の出会いで
3. これも運命
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時が止まったかのようだった。
呆れ顔のまま停止しているノアと、それ以上なにも言葉が出てこないシャーロット。
正直なところ、シャーロットの頭は真っ白だった。
(いくらなんでも唐突すぎる、ていうか私、何を言っているの……!)
ゲームの中のノアは、他人には冷酷で容赦がないが、身内に対しては面倒見の良い頼れる保護者として描かれていた。
弟子として面倒を見ていたヒロインに淡い思いを抱いているのだが、魔王と聖女という関係上、その思いを表に出すことはない。
彼が恋愛感情を表に出すのはノアルートに入った場合のみ。
ノアルートは、突然聖力を失ってしまったヒロインが故郷のウィンザーホワイトに戻ってくるところから始まる。ヒロインが聖力を失ったため、ノアが思いを伝えない理由が無くなる。
そうして帰ってきたヒロインはノアに告白されるのだ。
「僕と婚約してくれない?」と。
その記憶があったからだろう、咄嗟に「婚約してほしい」と口走ってしまった。
意味不明すぎる。
捨てられていたボロボロの巫女が突然婚約を迫るなんて、死にかけたショックで気が触れたのかと思われてもおかしくない。
実際死にかけたショックが原因でこのような行動に出ているので、あながち間違っているとも言い切れなかったが。
一言も発さず胡乱な眼差しを向けてくるノアに耐えきれなくなり、シャーロットは慌てて言い繕った。
「あ、いやその。別におかしくなった訳ではなく……。えっと、そう! 前から憧れていたんです! ずっとお近づきになりたいと思っていました!」
フォローしたつもりが、ますます墓穴を掘っている気もする。
ほぼ大神殿に籠りきりの聖女付き巫女が、いつノアに憧れるというのだ。
それを聞いてもノアの表情は全く動かない。気に障ったのだろうか。殺されたらどうしよう。
シャーロットの精神は限界を迎えそうだった。
もう自分が何を言っているかもよくわからないまま喋り続ける。
「婚約って突然すぎましたよね! ごめんなさい! あの、まずはお友達からでもいいので、ここに置いてください!」
「……くく。あはははは!」
もう耐えきれない、という風にノアは突然笑いだした。
……これはどういう反応なのだろう。呆気にとられて固まっているシャーロットにノアは告げた。
「いいよ。しよう、婚約」
「はぇ?」
思わず変な声が出た。シャーロットは茫然としてノアを見返す。
「自分から提案しておいて、そんな顔しないでよ。いいよ。今日から君は僕の婚約者だ。よろしくね」
随分と機嫌が良さそうだ。
含み笑いをしながらそう言うと、今度こそノアは部屋から出て行った。
パタン、とドアが閉まると同時に、シャーロットは全身の力が抜けるのを感じベッドに倒れこんだ。
そのまま枕に顔を埋める。
(承諾された……)
理由はよくわからないが、とりあえず命の危機は去ったようだ。
当面の安全は保証されるだろう。
(ゲームと違って初対面の筈なのに、なんで承諾してくれたんだろう)
もしかすると、これがヒロイン補正なのかもしれない。
出会った瞬間運命を感じた、とか。
(いや、それだと最初のあの態度の説明がつかないわ)
まあいい。追々その辺はわかるだろう。
きっと、短くない付き合いになるだろうから。
◆◆◆
「傷は癒しましたが、しばらくは療養が必要ですよ。しっかり食べて寝てください」
髭を長く伸ばした好々爺然とした老人はシャーロットにそう告げた。
彼はノアが派遣してくれた魔導塔所属の癒し手だった。
聖力で人を癒す場合は奇跡のように傷や病が癒えていくが、魔力ではそういった奇跡は起こせない。ただ単に自然治癒を早めているだけだ。
癒すのに対象者本人の体力を使用するので、治した後も療養が必要となるらしい。
世間では常識らしいが、シャーロットは老人に教えられて初めて知った。
幼少期をルミナリアのスラムで過ごし、その後は大神殿に籠り切りで過ごしたシャーロットは、ルミネ教の巫女としての知識はあったが、それ以外の知識はその辺の幼児にも劣るレベルだった。
特に魔法の知識は壊滅的と言っても良い。そういった知識は教会内では禁忌とされていた。
「ありがとうございます、ジョセフさん。お手を煩わせてしまいごめんなさい」
そういって謝ると、ジョセフは人の好さそうな笑みを崩さず、シャーロットの手の甲を撫でた。
「気にしないでください。ノア様の未来の奥様なんだから、もっと偉そうにしてもいいんですよ。この忌まわしい呪いも消して差し上げたいところなんですが」
魔力を持つ人間の目には、この奴隷紋は相当痛ましく映るらしい。
ジョセフは始め、突然婚約者だとシャーロットを紹介されてさすがに困惑していたが、不満を言うことなくシャーロットの治癒をしてくれた。信頼の置ける人間なのだろう。
治癒を終えたジョセフが出て行き、残されたシャーロットは強い疲労感を覚えていた。
これが魔力を使った治癒の副作用なのだろう。
睡魔に下手に抗わない方が良さそうだ。
(難しいことは……また明日考えよう)
そうしてシャーロットは深い眠りに落ちていった。
呆れ顔のまま停止しているノアと、それ以上なにも言葉が出てこないシャーロット。
正直なところ、シャーロットの頭は真っ白だった。
(いくらなんでも唐突すぎる、ていうか私、何を言っているの……!)
ゲームの中のノアは、他人には冷酷で容赦がないが、身内に対しては面倒見の良い頼れる保護者として描かれていた。
弟子として面倒を見ていたヒロインに淡い思いを抱いているのだが、魔王と聖女という関係上、その思いを表に出すことはない。
彼が恋愛感情を表に出すのはノアルートに入った場合のみ。
ノアルートは、突然聖力を失ってしまったヒロインが故郷のウィンザーホワイトに戻ってくるところから始まる。ヒロインが聖力を失ったため、ノアが思いを伝えない理由が無くなる。
そうして帰ってきたヒロインはノアに告白されるのだ。
「僕と婚約してくれない?」と。
その記憶があったからだろう、咄嗟に「婚約してほしい」と口走ってしまった。
意味不明すぎる。
捨てられていたボロボロの巫女が突然婚約を迫るなんて、死にかけたショックで気が触れたのかと思われてもおかしくない。
実際死にかけたショックが原因でこのような行動に出ているので、あながち間違っているとも言い切れなかったが。
一言も発さず胡乱な眼差しを向けてくるノアに耐えきれなくなり、シャーロットは慌てて言い繕った。
「あ、いやその。別におかしくなった訳ではなく……。えっと、そう! 前から憧れていたんです! ずっとお近づきになりたいと思っていました!」
フォローしたつもりが、ますます墓穴を掘っている気もする。
ほぼ大神殿に籠りきりの聖女付き巫女が、いつノアに憧れるというのだ。
それを聞いてもノアの表情は全く動かない。気に障ったのだろうか。殺されたらどうしよう。
シャーロットの精神は限界を迎えそうだった。
もう自分が何を言っているかもよくわからないまま喋り続ける。
「婚約って突然すぎましたよね! ごめんなさい! あの、まずはお友達からでもいいので、ここに置いてください!」
「……くく。あはははは!」
もう耐えきれない、という風にノアは突然笑いだした。
……これはどういう反応なのだろう。呆気にとられて固まっているシャーロットにノアは告げた。
「いいよ。しよう、婚約」
「はぇ?」
思わず変な声が出た。シャーロットは茫然としてノアを見返す。
「自分から提案しておいて、そんな顔しないでよ。いいよ。今日から君は僕の婚約者だ。よろしくね」
随分と機嫌が良さそうだ。
含み笑いをしながらそう言うと、今度こそノアは部屋から出て行った。
パタン、とドアが閉まると同時に、シャーロットは全身の力が抜けるのを感じベッドに倒れこんだ。
そのまま枕に顔を埋める。
(承諾された……)
理由はよくわからないが、とりあえず命の危機は去ったようだ。
当面の安全は保証されるだろう。
(ゲームと違って初対面の筈なのに、なんで承諾してくれたんだろう)
もしかすると、これがヒロイン補正なのかもしれない。
出会った瞬間運命を感じた、とか。
(いや、それだと最初のあの態度の説明がつかないわ)
まあいい。追々その辺はわかるだろう。
きっと、短くない付き合いになるだろうから。
◆◆◆
「傷は癒しましたが、しばらくは療養が必要ですよ。しっかり食べて寝てください」
髭を長く伸ばした好々爺然とした老人はシャーロットにそう告げた。
彼はノアが派遣してくれた魔導塔所属の癒し手だった。
聖力で人を癒す場合は奇跡のように傷や病が癒えていくが、魔力ではそういった奇跡は起こせない。ただ単に自然治癒を早めているだけだ。
癒すのに対象者本人の体力を使用するので、治した後も療養が必要となるらしい。
世間では常識らしいが、シャーロットは老人に教えられて初めて知った。
幼少期をルミナリアのスラムで過ごし、その後は大神殿に籠り切りで過ごしたシャーロットは、ルミネ教の巫女としての知識はあったが、それ以外の知識はその辺の幼児にも劣るレベルだった。
特に魔法の知識は壊滅的と言っても良い。そういった知識は教会内では禁忌とされていた。
「ありがとうございます、ジョセフさん。お手を煩わせてしまいごめんなさい」
そういって謝ると、ジョセフは人の好さそうな笑みを崩さず、シャーロットの手の甲を撫でた。
「気にしないでください。ノア様の未来の奥様なんだから、もっと偉そうにしてもいいんですよ。この忌まわしい呪いも消して差し上げたいところなんですが」
魔力を持つ人間の目には、この奴隷紋は相当痛ましく映るらしい。
ジョセフは始め、突然婚約者だとシャーロットを紹介されてさすがに困惑していたが、不満を言うことなくシャーロットの治癒をしてくれた。信頼の置ける人間なのだろう。
治癒を終えたジョセフが出て行き、残されたシャーロットは強い疲労感を覚えていた。
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睡魔に下手に抗わない方が良さそうだ。
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