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3章 遠足ではありません
29. はじめての実戦
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最初に動いたのはメロディだった。
遠くへ飛び去ろうとしているワイバーンの方を見つめると、慌てる様子もなくどこからか――本当に一体どこから?――先端に星のオブジェがついた短い杖を取り出し、大きく振りかぶる。
「てぇいっ」
そしてそのまま掛け声と共に、低空飛行しているワイバーンへと投げつけた。
(それ投げて使うんだ……)
驚くべき精度とスピードで放たれたそれは、真っすぐにワイバーンへと飛んでいき、そのコウモリの様な羽を射貫いた。
見かけに寄らず肩が強いようだ。
獰猛そうなワイバーンにファンシーな杖が刺さっている。
緊迫した場面である筈なのに、そのやや滑稽な光景にシャーロットは気の抜ける思いがした。
そのまま眺めていると、翼から生えた杖から電撃が発生し、ワイバーンの全身を包み込んだ。
ワイバーンはグギェギェという奇妙な叫び声を上げ、その衝撃で御者の男を離す。
そのまま男は地面へと落下した。
「ぐえっ」
地面に叩きつけられた男は、潰れた蛙の様な声を上げ動かなくなった。
(えっ、死んでないよね?)
よく見ると、微かに胸が上下しているのが見える。
高度がそこまで無かったことも幸いし、どうやら気絶しているだけの様だ。
シャーロットはほっと胸を撫で下ろした。
「あ~、受け止めること考えてなかったぁ。うっかりうっかり」
メロディがまるで反省してなさそうな声音で呟く。
うっかりで済む問題なのだろうかとは思ったが、シャーロットは男の事は一旦後回しにした。というか、するしかなかった。
衝撃から立ち直り、口で杖を引き抜き投げ捨てたワイバーンが、こちらに向かって来たからだ。
明らかに怒り狂っている。
誰かどうにかしてくれないかな、と他力本願なシャーロットは辺りを見まわした。
目が合ったメロディがシャーロットに向かってウィンクする。
「もう使えそうなやつ手元にないよ~」
それならそれらしくもっと焦って欲しい。
シャーロットは馬車の方を振り返る。確かヴィクターがあそこで固まっていた筈だ。そろそろ立ち直っている頃だろう。
しかし、探してみてもヴィクターの姿は見えない。まだ馬車の中にいるのかもしれない。
(となると私がどうにかするしかないのね……)
実戦は初めてだ。流石に少し怖い。一歩間違えれば死ぬかもしれない。
そう思うと、恐怖が足元から這い上がってくる。シャーロットは不安で身がすくんだ。
ワイバーンはこうしている間にもこちらに近づいて来ている。
はやく何とかしなければ。
そう焦れば焦るほど、シャーロットは頭が真っ白になるのを感じた。
その時、耳元でノアが囁いた。
「何も考えず魔力を放てば良い。シャルなら大丈夫さ」
その声に安心し、余計な力が抜けるのを感じた。
シャーロットは深呼吸する。
(大丈夫。いつもみたいにやればいい。ノアもついてる)
とにかく、攻撃できればいい。出来れば確実に一撃で仕留めたい。
あんまり難しいことは出来ないから、とにかく威力の高い攻撃を打ち込むことに集中する。
シャーロットは心を決め、ワイバーンに向かって全力で魔力を放った。
「――爆ぜろ!」
魔力は正確にワイバーンを射貫き、その魔物の全身を微かに発光させる。
次の瞬間、爆音と共にワイバーンの体が破裂した。煙がもうもうと上がる。
煙が全て晴れた後、そこには何も残っていなかった。
ワイバーンは、痕跡すら残さず消えていた。
「あーあ、ワイバーンの素材、結構貴重なのに……。でも、よくやったね。えらいえらい」
ノアが羽でシャーロットの頭を撫でた。
少し羽毛がくすぐったいが、褒められるのは素直に嬉しい。
シャーロットは微笑んだ。
「えっ、すっご……」
その背後ではメロディと馬車に隠れていたヴィクターがそれぞれ、目の前で起こった光景に驚きを隠せず、呆然としていた。
遠くへ飛び去ろうとしているワイバーンの方を見つめると、慌てる様子もなくどこからか――本当に一体どこから?――先端に星のオブジェがついた短い杖を取り出し、大きく振りかぶる。
「てぇいっ」
そしてそのまま掛け声と共に、低空飛行しているワイバーンへと投げつけた。
(それ投げて使うんだ……)
驚くべき精度とスピードで放たれたそれは、真っすぐにワイバーンへと飛んでいき、そのコウモリの様な羽を射貫いた。
見かけに寄らず肩が強いようだ。
獰猛そうなワイバーンにファンシーな杖が刺さっている。
緊迫した場面である筈なのに、そのやや滑稽な光景にシャーロットは気の抜ける思いがした。
そのまま眺めていると、翼から生えた杖から電撃が発生し、ワイバーンの全身を包み込んだ。
ワイバーンはグギェギェという奇妙な叫び声を上げ、その衝撃で御者の男を離す。
そのまま男は地面へと落下した。
「ぐえっ」
地面に叩きつけられた男は、潰れた蛙の様な声を上げ動かなくなった。
(えっ、死んでないよね?)
よく見ると、微かに胸が上下しているのが見える。
高度がそこまで無かったことも幸いし、どうやら気絶しているだけの様だ。
シャーロットはほっと胸を撫で下ろした。
「あ~、受け止めること考えてなかったぁ。うっかりうっかり」
メロディがまるで反省してなさそうな声音で呟く。
うっかりで済む問題なのだろうかとは思ったが、シャーロットは男の事は一旦後回しにした。というか、するしかなかった。
衝撃から立ち直り、口で杖を引き抜き投げ捨てたワイバーンが、こちらに向かって来たからだ。
明らかに怒り狂っている。
誰かどうにかしてくれないかな、と他力本願なシャーロットは辺りを見まわした。
目が合ったメロディがシャーロットに向かってウィンクする。
「もう使えそうなやつ手元にないよ~」
それならそれらしくもっと焦って欲しい。
シャーロットは馬車の方を振り返る。確かヴィクターがあそこで固まっていた筈だ。そろそろ立ち直っている頃だろう。
しかし、探してみてもヴィクターの姿は見えない。まだ馬車の中にいるのかもしれない。
(となると私がどうにかするしかないのね……)
実戦は初めてだ。流石に少し怖い。一歩間違えれば死ぬかもしれない。
そう思うと、恐怖が足元から這い上がってくる。シャーロットは不安で身がすくんだ。
ワイバーンはこうしている間にもこちらに近づいて来ている。
はやく何とかしなければ。
そう焦れば焦るほど、シャーロットは頭が真っ白になるのを感じた。
その時、耳元でノアが囁いた。
「何も考えず魔力を放てば良い。シャルなら大丈夫さ」
その声に安心し、余計な力が抜けるのを感じた。
シャーロットは深呼吸する。
(大丈夫。いつもみたいにやればいい。ノアもついてる)
とにかく、攻撃できればいい。出来れば確実に一撃で仕留めたい。
あんまり難しいことは出来ないから、とにかく威力の高い攻撃を打ち込むことに集中する。
シャーロットは心を決め、ワイバーンに向かって全力で魔力を放った。
「――爆ぜろ!」
魔力は正確にワイバーンを射貫き、その魔物の全身を微かに発光させる。
次の瞬間、爆音と共にワイバーンの体が破裂した。煙がもうもうと上がる。
煙が全て晴れた後、そこには何も残っていなかった。
ワイバーンは、痕跡すら残さず消えていた。
「あーあ、ワイバーンの素材、結構貴重なのに……。でも、よくやったね。えらいえらい」
ノアが羽でシャーロットの頭を撫でた。
少し羽毛がくすぐったいが、褒められるのは素直に嬉しい。
シャーロットは微笑んだ。
「えっ、すっご……」
その背後ではメロディと馬車に隠れていたヴィクターがそれぞれ、目の前で起こった光景に驚きを隠せず、呆然としていた。
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