1 / 5
1.略奪依頼
しおりを挟む「アルモ、ちょっと聞いてよ」
子供部屋のようにカラフルな研究室で、ご主人様は起動したばかりの少年型アンドロイドの僕——アルモに泣きついてきました。
「どうしたんですか?」
訊ねても、齢二十六にしてトップの女性技術者であるご主人様は、小さな子供のように泣いてばかりで、一向に話が進みません。
仕方なく僕は、紅茶を淹れて差し出しました。
泣いている理由を、本当はわかっていました。
僕のご主人様はいつも好きな人に振られてはこうやって僕に泣きついてくるのです。
ご主人様の役に立ちたい僕は、頼りにされることこそがアンドロイドの存在意義だと考えます。
だから僕は今日もご主人様の相談役という仕事をまっとうします。
「また浮気されてたのよ! もう男なんて信用しない。私にはアルモしかいないわ」
紅茶で幾分か気持ちを落ち着かせたご主人様はそう言って、僕を抱きしめました。
それでもまだ啜り泣くご主人様に、僕はストレートに告げます。
「そんなこと言って、またすぐ誰かを好きになっちゃうんでしょう?」
ご主人様は仕事だと完璧な方ですが、こと恋愛に関してはダメダメで、惚れては振られるを繰り返していました。
そして今日も吐き出すだけ吐き出したご主人様は、椅子に座った状態で眠ってしまいました。
よほどお疲れなのでしょう。
人間の限界を超えるほど仕事をしているご主人様にはしばしの休息が必要だと考えますが、頑固なご主人様はなかなか僕の言うことを聞いてくれません。
だからいつもこうやって糸が切れたように活動を停止してしまうのです。
「ご主人様、風邪ひきますよ」
「……うーん……」
「完全に眠ってしまいましたね」
僕はご主人様の無防備な寝顔を見つめたあと、こっそりご主人様のポケットからスマートフォンをお借りしました。
そして、頭に刻まれている電話番号を入力すると、若い女性の声が『はい』と答えます。
僕は少しだけ声色を変えて告げます。
「今回もありがとうございました。報酬は後日振り込みますので、ご確認ください」
それから僕はとくに挨拶もせずに通話を切った後、通話履歴を完全に消去して、ご主人様のポケットにスマートフォンをそっと返しました。
「これでまた、僕だけのご主人様です」
ご主人様には、僕だけいればいいんです。
30
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
悪役令嬢の大きな勘違い
神々廻
恋愛
この手紙を読んでらっしゃるという事は私は処刑されたと言う事でしょう。
もし......処刑されて居ないのなら、今はまだ見ないで下さいまし
封筒にそう書かれていた手紙は先日、処刑された悪女が書いたものだった。
お気に入り、感想お願いします!
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる