恋するアンドロイド

悠木全(#zen)

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4.イレギュラー(前編)

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「ご主人様、お食事のご用意ができました」

 子供部屋のような研究室に、少年型アンドロイドの僕——アルモが、今日の食事をトレーで運ぶと、ご主人様は嬉しいという表現かおをしました。

「ありがとう、アルモ。今日のメニューは何かしら?」

 すると、弟のクロモが今日の献立を説明します。

「最近、体調がよろしくないようですので、アワビのお粥をご用意しました」

「そう、いっぱい食べて仕事がんばらなきゃね」

 ワーカホリック気味のご主人様は、今日も顔色がすぐれません。

 量産型のアンドロイド製作をとある企業に頼まれているそうですが……企業との連携がうまくいってないそうで、トラブルが多発しているようです。

 僕たちのように愛情をこめて作りたいというご主人様の思いとは裏腹に、相手側は生産性の高さとコストパフォーマンスの良さを求めているようです。
 
「今日も徹夜になりそうだから、あなたたち二人で家に帰ってちょうだいね」

「僕はご主人様のおそばにいます」

「アルモ兄さんがいるなら、僕も」

「あなたたちがいると、集中できないのよ。だからあなたたちは帰って家の掃除でもしてちょうだい」

「ご主人様がそうおっしゃるなら」

「じゃあ、帰ろう兄さん」

 僕のコピーであるにもかかわらず、ご主人様よりも僕を優先するクロモは、どこかに欠陥でもあるのではないかと心配になります。

 新しい機能が搭載されている新機体と聞いているので、僕よりも高性能なはずなのですが、ご主人様を優先しないところは、本当に理解できません。



「ねぇ、兄さん。今日も一緒に眠ろう」

 ご主人様の自宅に到着すると、クロモが枕を持って僕のところにやってきます。

 僕はいつご主人様が帰ってきても良いように、ベッドメイキングをしているところでした。

「僕たちは眠る必要なんてないじゃないか」

「でもご主人様とは一緒に眠ってたんでしょ?」

「それは、ご主人様の安全を見守るためであって……」

「じゃあ僕は、兄さんの安全を見守るために一緒に眠る」

「僕の安全なんて、見守る必要はない」

 ありとあらゆるプログラムをインプットされている僕が、たかが泥棒に負けるはずもなく、クロモの言葉は相変わらず理解不能でした。

「世の中、何が起こるかなんてわからないよ?」

「わかった。緊急時に備えてバックアップをとるから、交代で再起動しよう」

「僕はいいよ。バックアップは兄さんだけすればいい」

「さっきは、何が起こるかわからないって言ってたじゃないか」

「いいんだよ、僕は」

 それから同じ内容をぐるぐると言い合った僕たちですが、結局クロモはバックアップを拒否し続けました。



 
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