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47.鏡の魔女
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「今日は遊園地日和だな」
遊園地のエントランスで快晴を見上げては、嬉しそうな顔をする真紀先輩。
結局、休日に奇術部全員で遊園地に集まったのはいいとして——誤解されていることについて、大迫くんに何も告げられないままだった。
しかもこんな状況で、どうやって伝えればいいんだろう。
私は苦笑しながら、誰よりも楽しそうな真紀先輩に視線を送る。
「真紀先輩、張り切ってますね」
「当たり前だ! 受験前にぞんぶんに遊んでおかないとな」
「にしても、大迫くん……遅いな」
気合いじゅうぶんな真紀先輩の隣で、私は駅に続く道を見つめる。
チケットを持っている大迫くんがまだ来ていない状況だった。
スマホにも連絡は来ていないようだし……まさかまだ家とかじゃないよね?
なんて心配していると、長谷部くんもぼやくように告げる。
「拓未のやつもまだ来ないな」
と、その時だった。
道の向こうから駆けてくる大迫くんを見つける。
大迫くんは走ってくるなり、肩で息をしながら口を開く。
「あ、あの……お待たせ」
「え? 大迫くん?」
「ごめんね。……遅くなって」
「それはいいんだけど、なんだかいつもと雰囲気が違うね」
「拓未くんに私服ダサいって言われて、着替えさせられたんだ」
「拓未くんが?」
「啓太さん、それは言わない約束ですよ」
そう口を挟んだのは、あとからゆっくりと歩いてきた拓未くんだった。
すると、大迫くんは思い出したように頭を掻いた。
「あ、そうだった」
それから私たちは、遊園地のアトラクションを一緒に楽しんだわけだけど。
大迫くんに言いたいことを言えないまま、時間ばかりが経過していた。
別行動をとって何度も大迫くんに告げようとしたのに、私が何か言おうとする度に拓未くんが現れて——まるで私の邪魔をするかのように間に入ってきたのだ。
そして楽しい時間はあっという間に過ぎて、気づけば夜になっていた。
***
「すっかり暗くなったな」
長谷部亮がライトアップされたメリーゴーランドを見て呟く。
やや疲れた顔をする亮を見て、並んで歩いていた須藤拓未は提案する。
「帰りは、バーガーショップで飯食って帰りません?」
すると、バーガーショップと聞くなり、紺野真紀が何やらバックパックの中を探り始める。
「お、いいな。あそこの店なら、クーポンを持ってたはず……」
「あれ? そういえば、大迫は?」
大迫啓太がいないことに気づいた亮が誰となく訊ねると、藤間保も頷いた。
「結菜さんもいませんね。さっきまで一緒にいたはずですが」
「ああ、結菜ちゃんと啓太さんなら、先に帰りましたよ」
「なにぃいいいい!?」
拓未の答えを聞いて、真紀の声が空高く響いた。
***
「きょ、今日は楽しかったね」
大迫くんとどうしても話し合いたくて、先に帰らせてもらった私——結菜は、とりあえず当たり障りのない言葉を口にした。
告白されて意識しているせいか、妙にぎこちなかった。
けど、そんな私とは違って、大迫くんはいつものように優しい笑みをこちらに向ける。
「うん、先輩たちも面白かったし、皆でまた行きたいね」
「そうだね」
……拓未くんが二人にしてくれて良かった。今なら、あのこと言えるよね。
ようやく訪れたチャンスに、私は気合いを入れるようにしてぎゅっと胸元を握りしめる。
早く言わなきゃ、手遅れになってしまう前に——
そして私は、住宅街を一緒に歩く大迫くんの隣で、立ち止まる。
「あのさ、大迫くん」
「うん、どうしたの?」
「一昨日のことだけど……」
「一昨日のこと?」
「ちゃんと返事できてなかったから、言わなきゃと思って」
「返事なら、拓未くんからもらったよ」
「そうじゃないよ。私は——」
言いかけたその時、どこからともなく甲高い声が響く。
「啓太様!」
「リアン」
見れば、いつの間にかリアンちゃんが目の前に立っていた。
リアンさんは閑静な住宅街で、声高に告げる。
「結菜さんとお付き合い始めたというのは、本当ですか?」
「あ、うん……本当だよ」
「あれだけ啓太様とは関係ないみたいな顔をしていたのに、結菜さんは人を欺くのがお上手なのですね」
「ち、違うよ!」
「何が違いますの? 私は嘘つきが嫌いですの! あなたみたいな人、私が今度こそ叩きのめして差し上げますわ」
「ええ!?」
「……リアン、やめておいたほうがいいよ」
「何をおっしゃいますの、啓太様」
「君がいくら攻撃したところで、結菜には通じないから」
「大迫くん、なにを……」
「それと、俺たちの邪魔をするなら、いくら元婚約者でも容赦はしないよ」
「啓太様まで……どうしてですの? あなた様を救えるのは、きっと私だけなのに……」
「……え?」
「結菜、リアンの話は聞かなくていいよ。行こう」
「でも」
「結菜さん、あなたはきっと、啓太様と一緒にいることを後悔しますわ」
「後悔?」
リアンちゃんの意味深な言葉に、私が眉間を寄せていると——つむじ風とともに拓未くんが現れる。
「リアン」
「お兄様」
「せっかくいいところだったのに、どうして邪魔するかな」
「お兄様なら、お分かりでしょう? 結菜さんでは力不足ですわ」
「恋は盲目というけど、本当に面倒な妹だな」
「お兄様?」
「悪いけど、すぐに消えて」
「お兄様!」
「彼女が本当に〝鏡の魔女〟なら、今のお前がとうてい敵う相手ではないよ。痛い目にあっても、わからないようだね」
「あの時は、油断していただけですわ!」
「愚かだね。相手との力量差もわからないなんて、君が僕の妹だなんて、恥でしかない」
「お兄様は、私の味方ではなかったのですか?」
「悪いね。僕は僕の味方でしかないから」
言って、拓未くんは魔法の杖を構えると、その先端をリアンさんに向ける。
「おにいさ——きゃあああああ」
直後、リアンさんは竜巻に飲まれて姿を消した。
不穏な空気が漂う住宅街。
私はなんだか嫌な予感がして、大迫くんの顔を見る。
「かがみの……魔女って、何? 大迫くん」
けど、大迫くんはどこまでも暗い顔をしていた。
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