君は魔法使い

悠木全(#zen)

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54.本当のこと

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「私のほうが、啓太けいた様のお役に立てるはずです。ですから、私を選んでください」

 住宅地の道路を遮るようにして現れたリアンさんは、そう言って大迫おおさこくんに詰め寄った。

 けど、大迫くんはまるで興味がない様子で、冷たい目をリアンさんに向けた。

「それは無理だよ。君には結菜ほどの力はないから」

 ……え?

 私ほどの力? どういうことだろう。

 ふいに、拓未くんの言葉が脳裏をよぎった。

 拓未くんは私が〝鏡の魔女〟だから大迫くんに選ばれたと言った。

 大迫くんを殺せる存在——という言葉を思い出して、私は無意識に拳を握る。

 リアンさんはさらに会話を進めた。

「では、私が結菜さんを倒せば、啓太様を手に入れることができるということですわよね?」

「君は結菜には勝てないよ」

「お、大迫くん?」

「そんなこと、わかりませんわ! 啓太様を殺せるのは、世界中でこの私だけですもの!」

 ……大迫くんを殺せる?

 リアンさんは何を言ってるの?

 私が動揺を隠せない中、臨戦体制に入った大迫くんは、杖を構えた。

 今までボールペンで手に何かを書き込むことはあったけど、杖を構える姿を見たのは初めてだった。

「どうしても戦いたいというのなら、俺が相手になるけど」

「……啓太様が?」

「結菜はまだ完全に覚醒しているわけじゃないから、今の結菜に何かあったら困るんだよ」

「……大迫くん?」

「……だったら、覚醒する前に私がこの手で……」

「リアン」

 そう呼んだ大迫くんの目が赤く光る。

 今までにこんな怖い顔を見たことがあるだろうか。

 大迫くんはいつも優しくて、おっちょこちょいで、どこか守ってあげたくなるような人だった、はずなのに——

 そしてそんな大迫くんを見て、リアンさんは唇を噛む。

「啓太様……本気……なのですね」

「わかったなら、ここは退いてほしい」

「わかりましたわ。今回は啓太様のお気持ちに免じて退きますが……次こそ必ず結菜さんから花嫁の座を奪いますわ」

「は、花嫁……?」

 何がなんだかわからず、呆然と立ち尽くす私を、リアンさんはきつく睨んで——消えた。

 それから少しだけ沈黙が続いたけど、私は混乱した頭を整理しながら、大迫くんと向き直る。

 これはもう、聞かないわけにはいかなかった。

「大迫くん、今の話はどういうこと?」

「……」

「私に好きって言ってくれたのは、嘘だったの?」

「結菜……ごめん」

「どうして謝るの?」

「俺は結菜に言ってないことがあるから」

「そうみたいだね……で、いったいどういうことなの? きちんと説明して」

 拓未くんの言葉が頭の中をぐるぐると回る中、私が絞り出した言葉に、大迫くんは小さく頷いた。

「場所を変えてもいい?」

「うん」

 その後、私たちは大迫くんのマンションに移動した。

 一人暮らしには広すぎるリビングに通された私は、革張りのソファに座る。

 アンティークな家具が並んだ部屋は、まるで異世界のような趣があった。

 私の隣に座った大迫くんは申し訳なさそうに告げる。

「ごめん、お茶とかなくて」

「そういうのはいいから、説明してくれる?」

「わかった」

 大迫くんは一瞬、迷うように目を泳がせたけど、ゆっくりと息を吐くように言葉を放った。

「実は俺、大魔法使いなんだ」

「それは知ってる」

「正確には、大魔法使いのコピーで……人間じゃない」

「大魔法使いのコピー? 人間じゃない? ごめん、よくわからないよ」

「俺は、大魔法使いを倒すために魔法で作られた存在なんだ」

「大迫くんが魔法……?」

「そうだよ」

「でも、大迫くんは人間にしか見えないよ」

「人間のコピーだから、人間みたいだけど、そうじゃないんだ」

「やっぱりよくわからないけど……だったら、大迫くんが仮に人間じゃないとして……さっきリアンさんと話してたことを説明してほしいの」

「リアンと話してたこと?」

「そうだよ。私と付き合っている理由を教えて」

 少しだけ声が震えたけど……私はなんとも思っていないふりをして、次の言葉を待った。

 すると、大迫くんは躊躇いがちに告げる。

「それは……結菜が〝鏡の魔女〟だから」

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