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本好きの一生
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私は小さい頃から本の虫、とよく言われた。
幼稚園では何も問題を起こさない子供だったが、それを先生は気味が悪いと言った。何もしていないのに、ひどい言われようである。だがうちの両親も同じように思っていたようで、反論はしなかった。
なぜなら長男、次男は明るく、やんちゃ盛りで、問題ばかり起こしていたからだ。子供はそれが普通らしい。だが育てやすいには違いないと、母は三男の私を放置するようになった。だから幼少期は、両親と遊んだ記憶がほとんどなかった。私自身、一緒に遊んでほしいとねだることもなかった。部屋の片隅で絵本を読んでいるのが楽しいと思える子供だった。
小学生になり、少しは雰囲気が変わるかと思えば、私は変わらなかった。ランドセルを背負うようになっても、私は大人しく本ばかり読んでいた。授業も真面目に受けていたが、成績は良くなかった。要領が悪いので、ノートの取り方が下手くそだったのだ。
上の兄二人は要領が良く、遊んでばかりいても成績が良かった。母は私に何か障害があるのではないかと疑い始めた。だが病院では『問題なし』と言われ、私はぼんやりした子だということがわかっただけだった。
しかも病院に行ったことが噂になり、私は何かの病気を抱えた子供だと周囲には思われた。病気の子と同じ教室にいるのは怖いという保護者の訴えもあったが、担任が説得してくれたらしい。
それでも一度奇異の目で見られるようになると、それを撤回するのは難しかった。クラスメイトと遊べば、親の刺すような視線が気になった。そのうち観察されることが嫌になった私は、誰かと一緒に遊ぶことをやめた。
一人でひっそりと本を読む。そればかり繰り返していると、クラスメイトの親御さんたちは安心した。何をそんなに恐れているのかはわからないが、私が行動を起こすことを恐怖していた。
そして友達が一人もいないまま長い小学校生活を終え、中学生になった。
中学校も持ち上がりが多かったので、私に友達ができることはなかった。たまに話しかけてくるおせっかいなクラスメイトもいたが、その頃には喋るのがすっかり下手になっていて、交流するのは難しかった。だから結局、中学校も高校でさえ、本ばかり読んで過ごした。
本には夢が詰まっている。何者にでもなれる世界で、私は魔法を使い、空を駆けて、マグマに飛びこんだ。本を読む時間が多いせいか、本の中にいる方が、現実のように思えるほど、私は同じ日々を繰り返した。
そんな風に本ばかりの生活で、大学生になった。本に囲まれた仕事がしたいと思ったが、司書になるには成績が足りなかった。本を読めば知識が吸収できるかと思えば、そうでもなかった。本だけでは教育の壁を越えられないのである。少々、悲しい気もしたが、それでも司書が全てではないと悔しさを呑み込んで、私は本屋に勤めることに決めた。
要するに、フリーターである。
両親には大学に行った甲斐がないと言われたが、私は自分の仕事に満足した。新しい本を知ることができる幸せ、本の良さを伝える幸せ、本に触れられる幸せ、まるで本と結婚したようではないか。
そうして社会人になってからも本ばかりの生活をしていたが、ある日、私と同じ部類の人間に巡り合った。彼女は一つ年下のフリーターだった。本に夢中になるあまり、勉強があまりできなかったと彼女は言った。本にまみれた生活こそ、自分の幸せなのだと。それから私は、これまでにないくらい本について熱く語った。これほど本について語れる自分がいることにも衝撃だったが、同じような人間がいたことが嬉しかった。
そうして本を通じて知り合った彼女と、会う度に本の話で盛り上がるうち、自然と付き合うようになったわけだが。彼女は恋人になった途端、さまざまなことを要求するようになった。
本ではなく、もっと私を見てほしい、そう言われた時、私は強い不快感を覚えて、思わずサヨナラを告げてしまった。結局、彼女は本の楽しさを共有する仲間でしかなかったのだ。恋愛が私を本当の意味で動かすことはなく。その後も、私はずっと本ばかりの生活を続けた。
何もない生活こそが、私の幸せだと、彼女が気付かせてくれたのだ。
それから本屋の店長になった私は、いつまでもいつまでも、本だけを愛し続けた。誰もが羨む幸せではなくとも、私は誰よりも幸せだった。
幼稚園では何も問題を起こさない子供だったが、それを先生は気味が悪いと言った。何もしていないのに、ひどい言われようである。だがうちの両親も同じように思っていたようで、反論はしなかった。
なぜなら長男、次男は明るく、やんちゃ盛りで、問題ばかり起こしていたからだ。子供はそれが普通らしい。だが育てやすいには違いないと、母は三男の私を放置するようになった。だから幼少期は、両親と遊んだ記憶がほとんどなかった。私自身、一緒に遊んでほしいとねだることもなかった。部屋の片隅で絵本を読んでいるのが楽しいと思える子供だった。
小学生になり、少しは雰囲気が変わるかと思えば、私は変わらなかった。ランドセルを背負うようになっても、私は大人しく本ばかり読んでいた。授業も真面目に受けていたが、成績は良くなかった。要領が悪いので、ノートの取り方が下手くそだったのだ。
上の兄二人は要領が良く、遊んでばかりいても成績が良かった。母は私に何か障害があるのではないかと疑い始めた。だが病院では『問題なし』と言われ、私はぼんやりした子だということがわかっただけだった。
しかも病院に行ったことが噂になり、私は何かの病気を抱えた子供だと周囲には思われた。病気の子と同じ教室にいるのは怖いという保護者の訴えもあったが、担任が説得してくれたらしい。
それでも一度奇異の目で見られるようになると、それを撤回するのは難しかった。クラスメイトと遊べば、親の刺すような視線が気になった。そのうち観察されることが嫌になった私は、誰かと一緒に遊ぶことをやめた。
一人でひっそりと本を読む。そればかり繰り返していると、クラスメイトの親御さんたちは安心した。何をそんなに恐れているのかはわからないが、私が行動を起こすことを恐怖していた。
そして友達が一人もいないまま長い小学校生活を終え、中学生になった。
中学校も持ち上がりが多かったので、私に友達ができることはなかった。たまに話しかけてくるおせっかいなクラスメイトもいたが、その頃には喋るのがすっかり下手になっていて、交流するのは難しかった。だから結局、中学校も高校でさえ、本ばかり読んで過ごした。
本には夢が詰まっている。何者にでもなれる世界で、私は魔法を使い、空を駆けて、マグマに飛びこんだ。本を読む時間が多いせいか、本の中にいる方が、現実のように思えるほど、私は同じ日々を繰り返した。
そんな風に本ばかりの生活で、大学生になった。本に囲まれた仕事がしたいと思ったが、司書になるには成績が足りなかった。本を読めば知識が吸収できるかと思えば、そうでもなかった。本だけでは教育の壁を越えられないのである。少々、悲しい気もしたが、それでも司書が全てではないと悔しさを呑み込んで、私は本屋に勤めることに決めた。
要するに、フリーターである。
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そうして社会人になってからも本ばかりの生活をしていたが、ある日、私と同じ部類の人間に巡り合った。彼女は一つ年下のフリーターだった。本に夢中になるあまり、勉強があまりできなかったと彼女は言った。本にまみれた生活こそ、自分の幸せなのだと。それから私は、これまでにないくらい本について熱く語った。これほど本について語れる自分がいることにも衝撃だったが、同じような人間がいたことが嬉しかった。
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