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1章 就職!異世界の門日本支部!
24話 24体
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才能のある2人といえど、数の暴力には敵わず、劣勢が続く。一方に終わりが見えない戦いにシャープは責任感を感じ、涙目になっていた。
「ヒスイ、ごめんね。僕のせいでこんなことになっちゃって・・・」
「難民の違法入国はともかく、これに関しては仕方ないよ。俺も疑問に思うまで気づかなかったし」
近づいてくるドッペルゲンガーに斬撃をお見舞いしていく。既に2体倒す事ができたが、まだ22体残っている。
順調に倒しているように見えるが、状況はこちら側が劣勢。ドッペルゲンガー達は俺達を高所から落としたのだろうか、ベランダの方へと詰められている。
攻撃も、あらゆる方向から飛んでくるので、防ぐので手一杯だ。シャープの方は特にドッペルゲンガーの攻撃が酷く、かすり傷だが、腹部から出血している。
犬に変形して噛み付いてくる奴、布に変形して窒息を狙う奴、鹿に変形して角で貫こうとしてくる奴など、形は様々。形や真似ている動物によって対応が変えなければならないのが面倒かつ大変である。
「イッテェ!?」
獰猛なドーベルマンのような犬に姿を変えたドッペルゲンガーに右足を噛まれる。反射で、もう片方の足を使って蹴り飛ばそうと思ったが、物理攻撃が効かないことを思い出して握っていた日本刀で一突き。
「ンモウッ!!」
「お゛・・・!!」
確実に仕留めようと、足に噛み付いていたドッペルゲンガーに集中していた隙に、闘牛に姿を変えていた別のドッペルゲンガーに突進を受ける。
臓物に直接響く重い一撃が、翡翠を一時的な戦闘不能へと陥らせる。片膝を付き、息を整えようと試みる。
だが、殺す対象が怯んでいるのに元に戻るまで待つわけがなく、首根っこを掴むと、ベランダの窓を破り、頭が下になるように翡翠の体をマンションから落としてしまう。
「うわぁぁあああああ!!」
「ヒスイィィィィィィ!!」
シャープの部屋は地上から8階に位置する高所。頭から落ちた場合、死は確実。即死はせず、脳が潰れた状態で数分間、悶え苦しむ事になるだろう。
・・・彼女の助けが無ければ。
「うげぇ!?」
「うわぁ!ヒスイが下から戻ってきた!?何で何で!?」
落ちたと思われた翡翠が、打ち上げられたかのようにベランダに戻ってきたのだ。
「あーあ、びっくりした。いきなりアンタが落下してくるからビックリして首痛めちゃったじゃないの!後で湿布貼りなさいよ!!」
「イテテ・・・ああ、いくらでも貼るよ。助けてくれてありがとう・・・モネ」
「いや、1枚で良いから」
日焼けした浅黒い肌、ほんの少し尖った耳に、燃えるような赤い瞳。矮躯ながらも、逞しさが垣間見えるその姿にシャープは思わず泣いてしまった。
「モネ・・・!!」
「シャープ、アンタ何やったわけ?」
門番の小さな癇癪玉、モネ・ロックマン。見参!
★
時は少し戻り、視点が変わる。シャープがドッペルゲンガーを倒した頃、主任と夜勤組達は急いでシャープの家に向かっていた。
「こんなことになるんだったら、モネも呼んでおくべきだったなぁ・・・」
「今から呼べないんですか?」
「いや、今頃寝てるか多分無理だと思う。起こしても多分機嫌悪く電話をガチャ切りされるだけだ」
ドッペルゲンガー24体。数だけで言えば、大規模な魔物侵入だが、幸か不幸かその24体はシャープの家に密集している。
被害を最小限であると言う点ではメリットかもしれないが、マンションの1部屋で戦うというのは、非常に困難である。
「頼むから無事でいてくれよ期待の新人2人!・・・ん?誰だ?誰のスマホが鳴ってるんだ?」
「主任、あなたのですよ」
「あ、そっか!着メロ変えたんだった!ごめんごめん!!はい!もしもし?」
『夜分遅くに申し訳ございません。モネです』
「あれ?モネ?どったの?」
通話相手はまさかのモネ。単なる偶然か?話を聞いてみることにした。
『アタシの隣の部屋にヒスイが住んでいるのは知っていますよね?』
「うん、毎日愚痴を漏らしているのを、耳にタコができる位聞いているからね。否が応でも覚えているよ。でもそれがどうしたの?」
『ヒスイの奴の部屋から生活音どころか物音すら聞こえてこないんですけど、何か知ってます?』
なるほど。彼女は音に非常に敏感だ。ゆえに隣の部屋に翡翠がいないことに気がついたんだろう。このチャンス逃すわけにはいかない。
「あ~っとね~、モネ。ちょっと残業頼んでもいいかな?」
『時給がもらえるならいくらでも』
「OK、それじゃあ今から指定する場所に行ってくれないかな?」
オレと夜勤組もシャープの家に向かっているが、まだ少しかかりそうだ。ならば、住所も完全に把握している上に近くに住んでいるモネに行ってもらったほうが得策だろう。
「頼んだよ。3人とも・・・って、あれ?ここさっき通った場所じゃなかった?」
「はい。あの看板、さっきから何度も見てます。この町に1つしかいないのに」
「どういう事なの?もしかして、同じ場所をぐるぐる回ってるわけ?」
「何やってんですか!主任!しっかりしてくださいよ~。そんなんだから、2年付き合った彼女にクリスマス前に振られるんですよ~」
「それは関係ないだろ!!オレの方向音痴以外の理由は考えられないの!?」
「・・・もしかして魔術?まさかドッペルゲンガーが私たちが来ることを予見して?」
「対象を特定の場所に永遠に閉じ込める魔術。今はすでに失われた魔術だね。謎の多いドッペルゲンガーの事だ。もしかしたら太古の魔術を使えるのかもしれないね」
でも、それよりも有力視できるのはドッペルゲンガー自体が持っている能力。物理攻撃が効かない体を持ち、自由に姿を変える事が出来る。ならば、自分以外の物体にも干渉することができるのではないだろうか?
または、複数体いることによって、本来持っている能力以上の力を使用することができるならないだろうか?3人寄れば文殊の知恵、24体いれば他物体干渉可能といったところか?
「ドッペルゲンガー能力か太古の魔術か分からねぇけど、とりあえずここから抜け出せなくてはいけない事だけは分かる」
「抜け出すってどうやって?」
「ドッペルゲンガーが死ぬか、体力切れを待つしかないかもな」
「つまり・・・ヒスイきゅん達に全部任せろってこと!?無茶よ!1体ならともかく、24体なんて新人3人じゃ無理よ!」
「・・・いや、そうでもないかもしんないぜ?」
不安に思っている者もいる一方で、期待している者もいるようだ。
「ヒスイ、ごめんね。僕のせいでこんなことになっちゃって・・・」
「難民の違法入国はともかく、これに関しては仕方ないよ。俺も疑問に思うまで気づかなかったし」
近づいてくるドッペルゲンガーに斬撃をお見舞いしていく。既に2体倒す事ができたが、まだ22体残っている。
順調に倒しているように見えるが、状況はこちら側が劣勢。ドッペルゲンガー達は俺達を高所から落としたのだろうか、ベランダの方へと詰められている。
攻撃も、あらゆる方向から飛んでくるので、防ぐので手一杯だ。シャープの方は特にドッペルゲンガーの攻撃が酷く、かすり傷だが、腹部から出血している。
犬に変形して噛み付いてくる奴、布に変形して窒息を狙う奴、鹿に変形して角で貫こうとしてくる奴など、形は様々。形や真似ている動物によって対応が変えなければならないのが面倒かつ大変である。
「イッテェ!?」
獰猛なドーベルマンのような犬に姿を変えたドッペルゲンガーに右足を噛まれる。反射で、もう片方の足を使って蹴り飛ばそうと思ったが、物理攻撃が効かないことを思い出して握っていた日本刀で一突き。
「ンモウッ!!」
「お゛・・・!!」
確実に仕留めようと、足に噛み付いていたドッペルゲンガーに集中していた隙に、闘牛に姿を変えていた別のドッペルゲンガーに突進を受ける。
臓物に直接響く重い一撃が、翡翠を一時的な戦闘不能へと陥らせる。片膝を付き、息を整えようと試みる。
だが、殺す対象が怯んでいるのに元に戻るまで待つわけがなく、首根っこを掴むと、ベランダの窓を破り、頭が下になるように翡翠の体をマンションから落としてしまう。
「うわぁぁあああああ!!」
「ヒスイィィィィィィ!!」
シャープの部屋は地上から8階に位置する高所。頭から落ちた場合、死は確実。即死はせず、脳が潰れた状態で数分間、悶え苦しむ事になるだろう。
・・・彼女の助けが無ければ。
「うげぇ!?」
「うわぁ!ヒスイが下から戻ってきた!?何で何で!?」
落ちたと思われた翡翠が、打ち上げられたかのようにベランダに戻ってきたのだ。
「あーあ、びっくりした。いきなりアンタが落下してくるからビックリして首痛めちゃったじゃないの!後で湿布貼りなさいよ!!」
「イテテ・・・ああ、いくらでも貼るよ。助けてくれてありがとう・・・モネ」
「いや、1枚で良いから」
日焼けした浅黒い肌、ほんの少し尖った耳に、燃えるような赤い瞳。矮躯ながらも、逞しさが垣間見えるその姿にシャープは思わず泣いてしまった。
「モネ・・・!!」
「シャープ、アンタ何やったわけ?」
門番の小さな癇癪玉、モネ・ロックマン。見参!
★
時は少し戻り、視点が変わる。シャープがドッペルゲンガーを倒した頃、主任と夜勤組達は急いでシャープの家に向かっていた。
「こんなことになるんだったら、モネも呼んでおくべきだったなぁ・・・」
「今から呼べないんですか?」
「いや、今頃寝てるか多分無理だと思う。起こしても多分機嫌悪く電話をガチャ切りされるだけだ」
ドッペルゲンガー24体。数だけで言えば、大規模な魔物侵入だが、幸か不幸かその24体はシャープの家に密集している。
被害を最小限であると言う点ではメリットかもしれないが、マンションの1部屋で戦うというのは、非常に困難である。
「頼むから無事でいてくれよ期待の新人2人!・・・ん?誰だ?誰のスマホが鳴ってるんだ?」
「主任、あなたのですよ」
「あ、そっか!着メロ変えたんだった!ごめんごめん!!はい!もしもし?」
『夜分遅くに申し訳ございません。モネです』
「あれ?モネ?どったの?」
通話相手はまさかのモネ。単なる偶然か?話を聞いてみることにした。
『アタシの隣の部屋にヒスイが住んでいるのは知っていますよね?』
「うん、毎日愚痴を漏らしているのを、耳にタコができる位聞いているからね。否が応でも覚えているよ。でもそれがどうしたの?」
『ヒスイの奴の部屋から生活音どころか物音すら聞こえてこないんですけど、何か知ってます?』
なるほど。彼女は音に非常に敏感だ。ゆえに隣の部屋に翡翠がいないことに気がついたんだろう。このチャンス逃すわけにはいかない。
「あ~っとね~、モネ。ちょっと残業頼んでもいいかな?」
『時給がもらえるならいくらでも』
「OK、それじゃあ今から指定する場所に行ってくれないかな?」
オレと夜勤組もシャープの家に向かっているが、まだ少しかかりそうだ。ならば、住所も完全に把握している上に近くに住んでいるモネに行ってもらったほうが得策だろう。
「頼んだよ。3人とも・・・って、あれ?ここさっき通った場所じゃなかった?」
「はい。あの看板、さっきから何度も見てます。この町に1つしかいないのに」
「どういう事なの?もしかして、同じ場所をぐるぐる回ってるわけ?」
「何やってんですか!主任!しっかりしてくださいよ~。そんなんだから、2年付き合った彼女にクリスマス前に振られるんですよ~」
「それは関係ないだろ!!オレの方向音痴以外の理由は考えられないの!?」
「・・・もしかして魔術?まさかドッペルゲンガーが私たちが来ることを予見して?」
「対象を特定の場所に永遠に閉じ込める魔術。今はすでに失われた魔術だね。謎の多いドッペルゲンガーの事だ。もしかしたら太古の魔術を使えるのかもしれないね」
でも、それよりも有力視できるのはドッペルゲンガー自体が持っている能力。物理攻撃が効かない体を持ち、自由に姿を変える事が出来る。ならば、自分以外の物体にも干渉することができるのではないだろうか?
または、複数体いることによって、本来持っている能力以上の力を使用することができるならないだろうか?3人寄れば文殊の知恵、24体いれば他物体干渉可能といったところか?
「ドッペルゲンガー能力か太古の魔術か分からねぇけど、とりあえずここから抜け出せなくてはいけない事だけは分かる」
「抜け出すってどうやって?」
「ドッペルゲンガーが死ぬか、体力切れを待つしかないかもな」
「つまり・・・ヒスイきゅん達に全部任せろってこと!?無茶よ!1体ならともかく、24体なんて新人3人じゃ無理よ!」
「・・・いや、そうでもないかもしんないぜ?」
不安に思っている者もいる一方で、期待している者もいるようだ。
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