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3章 異世界旅行録
10話 冒険者が倒れる酒場で
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顔に付着した血を拭い、服に纏わり付いた埃をはらうと、何事も無かったかのように席に座り、店主に飲み物を頼む。勿論ノンアルコールだ。
「お見苦しい所をお見せしました・・・」
「あ、あはは・・・」
「ホント、森の賢者が聞いて呆れるわ!あれじゃ、森の暴力じゃないの!!」
苦笑いで事を流そうとする翡翠。その様を愉快に笑うモネ。状況はカオスそのものだ。
「・・・まだ余力は残っているぞ。ハーフドワーフ。元から低いその背丈。もっと縮めてやろうか?」
「へぇ・・・やってみろよ・・・」
「駄目!座って平和的に話して!」
「・・・分かった分かった」「申し訳ございませんヒスイ王子」
2人が俺の言う事を聞かないバーサーカーだったら、この店は崩壊していたかもしれない。
安心して席に座ると、何故こうなったかの説明をしてくれた。
「口から血の泡を吐いている冒険者が約20分ほど、ナチュレの悪口を私の目の前で言っておりまして・・・それに耐えられなくなった私はつい・・・」
「逆によく20分も耐えられたね。俺だったら、目玉にフォーク思い切り指してるよ」
「そう言ってもらえると幸いです」
彼は騎士である前に愛国者である。延々と自分の国をバカにされて腹を立てないわけがない。
モネさんも敵対種族ながらも理解は示しているようで、睨みつけるだけで文句は言わなかった。
「約束していた時間よりも30分早いですね。どうしますか?もうナチュレへと向かいますか?それともここで小休憩を取りますか?」
「いや、もう行っちゃいましょう。ここから遠いんでしょ?ナチュレって」
「馬車は無く、徒歩で行く事になるのでかなり時間はかかりますね。着く頃には日が暮れているかと思います」
なら、できるだけ早く到着した方が良いかもしれない。ついて来てくれた3人の方を向くと、3人とも首を縦に振ってくれている。
「それじゃあ、行きましょうか、ナチュレに」
「はい。分かりました。店主、ご迷惑おかけして申し訳ない。私はこの人達を連れてもうこの店を出る。失礼した」
「ああ、そうか。気をつけてな。最近はゾンビも多いから」
「ゾンビ?ここら辺で戦争でも起きたノ?」
リオでもゲームで敵として出てくる為、認知度が高い存在。ザナでは、魔物として認識されている。
「いや、全然そういうわけじゃないんだよ。それなのに、出てくるんだよ」
ゾンビは死者が多く出る戦争後に良く発生する。だが、店主は平和そのものだと言う。
「彼の言う通り、戦争は起きていない。なのに、ゾンビが現れ始めた。戦闘は免れないだろうから、覚悟してくれ」
「・・・・・・」
「何か言いたそうだな、ハーフドワーフ。言ってみろ」
「まさか、アンタ達の元国王が殺した人達だったりして・・・」
「だったら話は簡単だったのだがな」
サラマンダーブレスを出て、冒険者ギルドを出て、グレイシャを出る。
道を知っているシャイ団長が先陣を切って歩いてくれているのだが、何故か人が道を開けてくれる。
道を開けろと言う前に皆が道を開けてくれるのだ。酒場での喧嘩が相当印象的だったのだろう。
「・・・アンタもうこの町これないね」
「ほっといてくれ」
ちょこちょこモネさんがシャイ団長を煽るので、喧嘩にならないか心配だ。
「ゾンビが出るって聞いてたら浄化魔術覚えて来てたのになー」
「私が覚えているのでご心配なく。それに、魔王女の魔術は手加減できないでしょう?」
「それは過去のわたしだよ、シャイ・マスカッツ。わたしは鍛錬に鍛錬を重ねてついに威力の調整をできるようになったのだー!」
彼女の言葉は偽りではないようだ。彼女は魔族の国に帰ってからも魔術の修行を忘れずに業務の合間を縫って魔族の魔術師に指南してもらっていたらしい。
その結果として威力を調整できるようになった・・・わけなのだが。
「100を50にできるようなっただけでしょうが。いずれにしても、威力はとんでもないからいざという時しか使っちゃダメだからね」
「そんなぁ~」
威力を半分にできるようになっただけだった。完全にコントロールできるようになるには10年くらいかかってしまいそうだ。
道をただ歩き続ける事1時間。水分補給を行いながら、水分不足に注意していると、思わず口に含んだ水を吹き出してしまうほどの悪臭を鼻が察知した。
腐った肉の匂いに加えて、糞尿の匂い。他にも嗅ぎたくない悪臭がする。
一言で良い例えるならか弱い生き物ならば、嗅ぐだけで病気になってしまうような匂いだ。
他の4人も気づいたようで、反射で鼻を指でつまむと、武器を構えて#敵の襲撃__・__を待ち構えた。
「早速お出まし?早くないかな?」
「アイツらにタイミングの概念なんてないでしょ。いや、無くなったって言った方が正しいかしら?」
「草原は燃やさないように・・・燃やさないように・・・」
「リリ、絶対に自分の意思で魔術は放たないでくれよ?」
「・・・左だ!左の森から十数体!」
エルフの耳はただ長いだけでなはなく、遠くの音もキャッチする能力も有している。
悪臭を感じ取った瞬間に耳を澄ませていたお陰で襲撃してくる方向にシャイは気づくことができた。
「「「「あ゛ぁぁぁぁぁ・・・!!」」」」
既にこの世で役目を終えた存在。この世の違法滞在者。ゾンビの登場だ。
「お見苦しい所をお見せしました・・・」
「あ、あはは・・・」
「ホント、森の賢者が聞いて呆れるわ!あれじゃ、森の暴力じゃないの!!」
苦笑いで事を流そうとする翡翠。その様を愉快に笑うモネ。状況はカオスそのものだ。
「・・・まだ余力は残っているぞ。ハーフドワーフ。元から低いその背丈。もっと縮めてやろうか?」
「へぇ・・・やってみろよ・・・」
「駄目!座って平和的に話して!」
「・・・分かった分かった」「申し訳ございませんヒスイ王子」
2人が俺の言う事を聞かないバーサーカーだったら、この店は崩壊していたかもしれない。
安心して席に座ると、何故こうなったかの説明をしてくれた。
「口から血の泡を吐いている冒険者が約20分ほど、ナチュレの悪口を私の目の前で言っておりまして・・・それに耐えられなくなった私はつい・・・」
「逆によく20分も耐えられたね。俺だったら、目玉にフォーク思い切り指してるよ」
「そう言ってもらえると幸いです」
彼は騎士である前に愛国者である。延々と自分の国をバカにされて腹を立てないわけがない。
モネさんも敵対種族ながらも理解は示しているようで、睨みつけるだけで文句は言わなかった。
「約束していた時間よりも30分早いですね。どうしますか?もうナチュレへと向かいますか?それともここで小休憩を取りますか?」
「いや、もう行っちゃいましょう。ここから遠いんでしょ?ナチュレって」
「馬車は無く、徒歩で行く事になるのでかなり時間はかかりますね。着く頃には日が暮れているかと思います」
なら、できるだけ早く到着した方が良いかもしれない。ついて来てくれた3人の方を向くと、3人とも首を縦に振ってくれている。
「それじゃあ、行きましょうか、ナチュレに」
「はい。分かりました。店主、ご迷惑おかけして申し訳ない。私はこの人達を連れてもうこの店を出る。失礼した」
「ああ、そうか。気をつけてな。最近はゾンビも多いから」
「ゾンビ?ここら辺で戦争でも起きたノ?」
リオでもゲームで敵として出てくる為、認知度が高い存在。ザナでは、魔物として認識されている。
「いや、全然そういうわけじゃないんだよ。それなのに、出てくるんだよ」
ゾンビは死者が多く出る戦争後に良く発生する。だが、店主は平和そのものだと言う。
「彼の言う通り、戦争は起きていない。なのに、ゾンビが現れ始めた。戦闘は免れないだろうから、覚悟してくれ」
「・・・・・・」
「何か言いたそうだな、ハーフドワーフ。言ってみろ」
「まさか、アンタ達の元国王が殺した人達だったりして・・・」
「だったら話は簡単だったのだがな」
サラマンダーブレスを出て、冒険者ギルドを出て、グレイシャを出る。
道を知っているシャイ団長が先陣を切って歩いてくれているのだが、何故か人が道を開けてくれる。
道を開けろと言う前に皆が道を開けてくれるのだ。酒場での喧嘩が相当印象的だったのだろう。
「・・・アンタもうこの町これないね」
「ほっといてくれ」
ちょこちょこモネさんがシャイ団長を煽るので、喧嘩にならないか心配だ。
「ゾンビが出るって聞いてたら浄化魔術覚えて来てたのになー」
「私が覚えているのでご心配なく。それに、魔王女の魔術は手加減できないでしょう?」
「それは過去のわたしだよ、シャイ・マスカッツ。わたしは鍛錬に鍛錬を重ねてついに威力の調整をできるようになったのだー!」
彼女の言葉は偽りではないようだ。彼女は魔族の国に帰ってからも魔術の修行を忘れずに業務の合間を縫って魔族の魔術師に指南してもらっていたらしい。
その結果として威力を調整できるようになった・・・わけなのだが。
「100を50にできるようなっただけでしょうが。いずれにしても、威力はとんでもないからいざという時しか使っちゃダメだからね」
「そんなぁ~」
威力を半分にできるようになっただけだった。完全にコントロールできるようになるには10年くらいかかってしまいそうだ。
道をただ歩き続ける事1時間。水分補給を行いながら、水分不足に注意していると、思わず口に含んだ水を吹き出してしまうほどの悪臭を鼻が察知した。
腐った肉の匂いに加えて、糞尿の匂い。他にも嗅ぎたくない悪臭がする。
一言で良い例えるならか弱い生き物ならば、嗅ぐだけで病気になってしまうような匂いだ。
他の4人も気づいたようで、反射で鼻を指でつまむと、武器を構えて#敵の襲撃__・__を待ち構えた。
「早速お出まし?早くないかな?」
「アイツらにタイミングの概念なんてないでしょ。いや、無くなったって言った方が正しいかしら?」
「草原は燃やさないように・・・燃やさないように・・・」
「リリ、絶対に自分の意思で魔術は放たないでくれよ?」
「・・・左だ!左の森から十数体!」
エルフの耳はただ長いだけでなはなく、遠くの音もキャッチする能力も有している。
悪臭を感じ取った瞬間に耳を澄ませていたお陰で襲撃してくる方向にシャイは気づくことができた。
「「「「あ゛ぁぁぁぁぁ・・・!!」」」」
既にこの世で役目を終えた存在。この世の違法滞在者。ゾンビの登場だ。
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