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3章 異世界旅行録
29話 悲劇への特急列車
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『20×8年3月25日。
翡翠もいなくて焦ったが、どうやらニーナが畑内っていう孤児院の人に頼んで預かってもらったらしい。何でも、自分の危機に勘づいて預けたらしい。最悪のパターンは避けられたらしい。それだけじゃない。彼女は魔力探知機で探れるように自分の魔力を瓶詰めしてくれていた。何から何まで完璧な嫁だ』
『20×8年3月26日。
畑内さんに俺の全財産を渡しておいた。ニーナを攫うレベルの奴らだ。俺も死ぬ可能性がある。翡翠が成人するまでの金は十分あるはずだ。現主任の原田さんの友人に頼んで魔力探知機を使わせてもらった。場所はザナの毎日雪が降り続ける[万年雪原]。こちらも全力でいかせてもらう』
次のページは何も書かれていなかった。代わりに茶色いしみがついているだけ。裏表紙にあったものと同じだ。
茶色いシミはコーヒーをこぼした後ではなく、父さんの血に違いない。
しばらく、血がついただけのページが続き、日記に使われているノートも終わりに近づいてきた。
このまま終わるのかと思ったが、最後に近いページに、殴り書きで短い文が書かれていた。
『オレは死ぬ。助けられなかった。ごめん、ニーナ。ごめん、ひすい。だれかひすいにつたえてくれ。あいしてる』
遺言のすぐ右横には、父の手らしき血の痕がついている。
既に時が経ち、既に乾き切った血の痕の手に自分の手を合わせる。
感じる事ができなかった父の手の温もり。とっくに乾いて温もりなんて感じるはずのない手の血痕からは、気のせいだろうが、ほんのりと温かみを感じた。
ポタリぽたりと、紙に水が滴り落ちる。血では無い透明の液体。天井から漏れているのかと上を見上げるが、雨漏りはしていない。
では何処から水が滴り落ちてきた?疑問に思う翡翠の口に少ししょっぱい液体が入り込んでくる。
涙だった。自分の目から出た涙。涙が紙を濡らしていた。翡翠は無意識に涙を流していたのだ。
見る事はなかった父と母の死を文で知った事に対して悲しみと怒りを感じ涙を流していたのだ。
「父さん・・・」
言伝でしか伝えられなかった、両親が俺を愛しているという事。それを、父が実際に書いていた日記から知る事が出来た。それと同時に翡翠の心の中に復讐心が生まれた。
ロット2世?違う。母を攫い、父を死に至らしめた誘拐犯にだ。
深呼吸で、気持ちを整えていると、スルリと日記の最後のページから何かが落ちてくる。紙と同じくらいの薄さの布だ。
遺言がその前のページに書かれていたので日記には知れる事は何もない。そう思っていたが、まだまだ知れる事はある様子。
布はまるで、破かれたように端はボロボロで、真ん中には、11時55分を示す金色の時計の刺繍が施されていた。
更に挟まっていたページを見ると、日本語で『末を見る者』と書かれている。殴り書きだが、文字からして父さんの文字に違いない。
遺言と同じくらい汚い殴り書きから考えるに、遺言を書いた時と同タイミングで書いたメッセージだと思われる。
という事は、このメモと布は母さんを誘拐した奴らを見つける鍵になのではないだろうか?
「調べる必要があるかもしれない・・・」
父さんが遺言だけでなく、謎のメモ書きと謎の布を残した事から、探してほしい意思表示と捉えられる。
「何を?」
「あれ?リリ起きちゃったの?」
気づいたら、リリが俺の右肩に顎を乗せて撫でられるのを待っていた。日記を読んでいたら無性に悲しい気持ちになったので、それを紛らわすように彼女の頭を撫でまわす。
「んぁぁぁぁ~~!これこれ!ヒスイのゴツゴツした手で撫でられるの最高に好きなんだよ~~」
「そりゃよかった。満足したら寝なさい」
「ん?何言ってんのヒスイ?もう朝だよ」
「・・・へ?」
首を右に回し、窓から外を見る。すると、西の方向から、薄オレンジ色の太陽が今日の勤務を開始していた。
即ち、朝である。時間を忘れ、日記を読むのに夢中になってしまった結果、朝を迎えてしまったらしい。
「・・・やっば。やらかした・・・」
「ねぇ、ヒスイ。目の下の隈酷いよ?大丈夫?」
「ちょっとマズイかも・・・睡眠魔術かけてくれないかな?そんでもって、数時間起こさないで・・・」
「OK!睡眠魔術!」
リリの指先放たれる眠りを促進する魔術が、目蓋をどんどん重たくさせていく。
・・・あ、ちょっと待って。俺がいない時にシュエリ王女がモネさん達に口を滑らせたらマズイ!待って!やっぱり今のなs────
「すぅ・・・すぅ・・・」
翡翠の懇願は口から発せられる事はなく、睡眠魔術は眠れなかった翡翠を眠りの世界へと誘う。
「おやすみ、ヒスイ」
リリのおやすみのキスを自分の額にするのを見たのを最後に、翡翠の意識は夢の中へと旅立っていった。
翡翠もいなくて焦ったが、どうやらニーナが畑内っていう孤児院の人に頼んで預かってもらったらしい。何でも、自分の危機に勘づいて預けたらしい。最悪のパターンは避けられたらしい。それだけじゃない。彼女は魔力探知機で探れるように自分の魔力を瓶詰めしてくれていた。何から何まで完璧な嫁だ』
『20×8年3月26日。
畑内さんに俺の全財産を渡しておいた。ニーナを攫うレベルの奴らだ。俺も死ぬ可能性がある。翡翠が成人するまでの金は十分あるはずだ。現主任の原田さんの友人に頼んで魔力探知機を使わせてもらった。場所はザナの毎日雪が降り続ける[万年雪原]。こちらも全力でいかせてもらう』
次のページは何も書かれていなかった。代わりに茶色いしみがついているだけ。裏表紙にあったものと同じだ。
茶色いシミはコーヒーをこぼした後ではなく、父さんの血に違いない。
しばらく、血がついただけのページが続き、日記に使われているノートも終わりに近づいてきた。
このまま終わるのかと思ったが、最後に近いページに、殴り書きで短い文が書かれていた。
『オレは死ぬ。助けられなかった。ごめん、ニーナ。ごめん、ひすい。だれかひすいにつたえてくれ。あいしてる』
遺言のすぐ右横には、父の手らしき血の痕がついている。
既に時が経ち、既に乾き切った血の痕の手に自分の手を合わせる。
感じる事ができなかった父の手の温もり。とっくに乾いて温もりなんて感じるはずのない手の血痕からは、気のせいだろうが、ほんのりと温かみを感じた。
ポタリぽたりと、紙に水が滴り落ちる。血では無い透明の液体。天井から漏れているのかと上を見上げるが、雨漏りはしていない。
では何処から水が滴り落ちてきた?疑問に思う翡翠の口に少ししょっぱい液体が入り込んでくる。
涙だった。自分の目から出た涙。涙が紙を濡らしていた。翡翠は無意識に涙を流していたのだ。
見る事はなかった父と母の死を文で知った事に対して悲しみと怒りを感じ涙を流していたのだ。
「父さん・・・」
言伝でしか伝えられなかった、両親が俺を愛しているという事。それを、父が実際に書いていた日記から知る事が出来た。それと同時に翡翠の心の中に復讐心が生まれた。
ロット2世?違う。母を攫い、父を死に至らしめた誘拐犯にだ。
深呼吸で、気持ちを整えていると、スルリと日記の最後のページから何かが落ちてくる。紙と同じくらいの薄さの布だ。
遺言がその前のページに書かれていたので日記には知れる事は何もない。そう思っていたが、まだまだ知れる事はある様子。
布はまるで、破かれたように端はボロボロで、真ん中には、11時55分を示す金色の時計の刺繍が施されていた。
更に挟まっていたページを見ると、日本語で『末を見る者』と書かれている。殴り書きだが、文字からして父さんの文字に違いない。
遺言と同じくらい汚い殴り書きから考えるに、遺言を書いた時と同タイミングで書いたメッセージだと思われる。
という事は、このメモと布は母さんを誘拐した奴らを見つける鍵になのではないだろうか?
「調べる必要があるかもしれない・・・」
父さんが遺言だけでなく、謎のメモ書きと謎の布を残した事から、探してほしい意思表示と捉えられる。
「何を?」
「あれ?リリ起きちゃったの?」
気づいたら、リリが俺の右肩に顎を乗せて撫でられるのを待っていた。日記を読んでいたら無性に悲しい気持ちになったので、それを紛らわすように彼女の頭を撫でまわす。
「んぁぁぁぁ~~!これこれ!ヒスイのゴツゴツした手で撫でられるの最高に好きなんだよ~~」
「そりゃよかった。満足したら寝なさい」
「ん?何言ってんのヒスイ?もう朝だよ」
「・・・へ?」
首を右に回し、窓から外を見る。すると、西の方向から、薄オレンジ色の太陽が今日の勤務を開始していた。
即ち、朝である。時間を忘れ、日記を読むのに夢中になってしまった結果、朝を迎えてしまったらしい。
「・・・やっば。やらかした・・・」
「ねぇ、ヒスイ。目の下の隈酷いよ?大丈夫?」
「ちょっとマズイかも・・・睡眠魔術かけてくれないかな?そんでもって、数時間起こさないで・・・」
「OK!睡眠魔術!」
リリの指先放たれる眠りを促進する魔術が、目蓋をどんどん重たくさせていく。
・・・あ、ちょっと待って。俺がいない時にシュエリ王女がモネさん達に口を滑らせたらマズイ!待って!やっぱり今のなs────
「すぅ・・・すぅ・・・」
翡翠の懇願は口から発せられる事はなく、睡眠魔術は眠れなかった翡翠を眠りの世界へと誘う。
「おやすみ、ヒスイ」
リリのおやすみのキスを自分の額にするのを見たのを最後に、翡翠の意識は夢の中へと旅立っていった。
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