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3章 異世界旅行録
40話 準備開始
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「ジュディ、最後に災害が目撃されたのはいつの何処か分かるか?」
「確か一昨日のビリリ草原かと思われます」
「ビリリ草原。ナチュレから南に40㎞の所に位置する草原だったな。アイリッシュ、災害の最高速度は?」
「巨体にしては速いという事しかわかっていませんね。計測しようと試みた者は皆あの世で悔しがっていると思われますよ?」
「そうか・・・先遣隊を東西南北、4つの方角に2人ずつ派遣しろ!見つけ次第狼煙を上げるように!!」
「「はっ!!」」
大勢の兵士の中から8人が選ばれ、城を出ていく。4つの方角に送ったのは、念のためだろう。
「<災害>は情報によると、スライムに類似した姿をしており、巨体だ。普通の武器は勿論、矢も効かない。魔術メインで戦う事になる。魔術師隊、主力になってもらうぞ」
「お任せあれ」「魔力薬の貯蔵は十分?」「エンチャントは俺の十八番よ!!」
魔術師達もやる気は十分ある模様。シュエリ王女とまではいかないが、皆が高い魔力を有している。その数約500人ほどだろうか。
「分かっていると思うが、今はもうロット2世の統治するナチュレではない。炎の魔術は禁止する」
森を守るのに、森を燃やしかねない炎の魔術は使わない。土地を荒らす事もあまり良い行いではない為、土の魔術も使わない方が良いだろう。
「解毒薬もあるだけ用意しろ!足りなかったら買ってこい!支払いの請求は後で財務大臣に送れ!!」
「呪術師はどうしますか?」
「緊急で雇え!1人最低30万リックで雇う!貢献次第で色も付けると伝えろ!」
「「「はっ!!」」」
戦いは戦力だけが必須ではない。武器は勿論、食料や治療薬も必要となる。
呪術師は2つの世界を合計してもかなり数は少ないが、果たして人口の少ないナチュレにどれくらいいるだろうか。
「ナチュレの民の避難を最優先にしろ!国民の命が第一だ!」
「「「はっ!!」」」
守る国は、土地だけでなく、国民も含まれている。民なくして、国は成り立たない。
以上の事を完了させて、戦いは始める事が出来るのだ。
「ヒスイ王子。確か魔術は習得していましたよね?」
「はい。まあ、魔術師と比べたら子供だまし程度の魔術だけど・・・」
「それでも十分です。どうか力を貸して下さい。<災害>をこの森の中に絶対に入れたくないんです!!」
「勿論!敵が迫ってるのに背を向けて逃げるほど俺は腰抜けじゃないですよ。それに、防衛は慣れてる方なので」
「ありがとうございます」
逃げたら、ナチュレは確実に滅びる。決意を固めて戦う事を決めたら少なからず滅亡の可能性は下がる。
俺1人が参加した所で何が変わるか分からないが、母さんの故郷を守れるなら本望だ。
「ヒスイ様もご参戦なさるのですか!?だ、駄目です!もしお怪我でもしたら────」
「死ななかったら致命傷ではありません。それに<災害>は仮にナチュレを滅ぼした後も暴れるでしょうし、ここで誰かが止めなくてはいけないと思うんです」
「誰でもいいなら、ヒスイ様でなくてもよいのでは?ヒスイ様は王族です。この国の希望になれる存在です。唯一無二のお方なのです。ここで死んで良いお方ではありません」
「誰だって唯一無二です。役職に代わりはいれども、個人の代わりはいません。クローンやホムンクルスでも務まらない」
「だ、だとしてもヒスイ様は────」
「誰だって希望になれますよ。俺だけの特権じゃない。皆の権利です」
翡翠の意思は固く、頑固なモノと化し、シュエリ王女の説得にも応じる事はなく、戦いの準備を始める。
腰に愛刀紫陽花を帯び、作ってもらった脇差も携帯する。もしもの時に持ってきていた手甲と足甲を装備し、準備は完了する。
「鎧は大丈夫なのですか?」
「今回は俊敏に動ける方が良いでしょうし、俺、鎧嫌いなんで」
淡々と戦士として戦の準備を整えていく翡翠をただ眺めるシュエリだったが、彼女の意思とは無関係に脳が勝手に言葉を作り、声で出力した。
「私も行きます」
「「「「「え?」」」」」
短い一言に皆一斉にシュエリの方を向く。
「国を守る戦いですもの。王女である私も行かなくては」
「お、王女!?何を言って────」
「この中で最も魔術で攻撃するのに優れたのは私です。一番強い武器を使わなくてどうするんですか」
「王女がもし、死んだら国が混乱して────」
「その国自体が無くなってしまうかもしれないんですよ?後の事は戦いが終わってから考えましょう。それに、誰だって希望になれるんですから、仮にもし、私がいなくなっても国は大丈夫でしょうから・・・ネ?」
翡翠の方を向き、ウインクする。一本取られたと思ったのか、翡翠は思わず笑みを浮かべる。
彼女の意思に反して出た言葉だったが、彼女自身はその発言を間違っているとは思っていないようだ。
★
場面は再び代わり、同時刻。
酒場[ニルヴァーナのキス]では、鐘の音の話題で持ち切りだった。
「店主、今の鐘の音はなんですカ?」
「招集の鐘だ。騎士と兵士と魔術師を城に呼び寄せる音」
敵か魔物でも攻めてきたのかな?相当珍しいようで、他のお客さんの話を耳を澄まして聞いてみたところ、約30年ぶりの鐘だったらしい。
魔力探知機もずっと回り続けているし、一体何が起きているんだ?
「失礼します!!」
店内に、武装した兵士が入ってくる。客というわけではなさそうだ。
何事かと思ったが、店主は状況を理解したようで、グラスを洗う手を止めた。
「報酬は?」
「30万リックです!成果次第で色を付けるとの事です!!」
「・・・乗った。敵はどんなのだ?」
「それがその・・・<災害>、です・・・」
僕ら店主含めた酒場にいる全員が驚き、震え始める。横に座っていたダイモンジさんは過呼吸になり、気絶してしまった。もしかして、門を襲った魔物というのは<災害>?
翡翠達主力が戦いの準備を始める中、ナチュレ全体でも、国民の避難や薬の調達や呪術師の招集など、細かけれど、重要な準備が行われ始めていた。
「確か一昨日のビリリ草原かと思われます」
「ビリリ草原。ナチュレから南に40㎞の所に位置する草原だったな。アイリッシュ、災害の最高速度は?」
「巨体にしては速いという事しかわかっていませんね。計測しようと試みた者は皆あの世で悔しがっていると思われますよ?」
「そうか・・・先遣隊を東西南北、4つの方角に2人ずつ派遣しろ!見つけ次第狼煙を上げるように!!」
「「はっ!!」」
大勢の兵士の中から8人が選ばれ、城を出ていく。4つの方角に送ったのは、念のためだろう。
「<災害>は情報によると、スライムに類似した姿をしており、巨体だ。普通の武器は勿論、矢も効かない。魔術メインで戦う事になる。魔術師隊、主力になってもらうぞ」
「お任せあれ」「魔力薬の貯蔵は十分?」「エンチャントは俺の十八番よ!!」
魔術師達もやる気は十分ある模様。シュエリ王女とまではいかないが、皆が高い魔力を有している。その数約500人ほどだろうか。
「分かっていると思うが、今はもうロット2世の統治するナチュレではない。炎の魔術は禁止する」
森を守るのに、森を燃やしかねない炎の魔術は使わない。土地を荒らす事もあまり良い行いではない為、土の魔術も使わない方が良いだろう。
「解毒薬もあるだけ用意しろ!足りなかったら買ってこい!支払いの請求は後で財務大臣に送れ!!」
「呪術師はどうしますか?」
「緊急で雇え!1人最低30万リックで雇う!貢献次第で色も付けると伝えろ!」
「「「はっ!!」」」
戦いは戦力だけが必須ではない。武器は勿論、食料や治療薬も必要となる。
呪術師は2つの世界を合計してもかなり数は少ないが、果たして人口の少ないナチュレにどれくらいいるだろうか。
「ナチュレの民の避難を最優先にしろ!国民の命が第一だ!」
「「「はっ!!」」」
守る国は、土地だけでなく、国民も含まれている。民なくして、国は成り立たない。
以上の事を完了させて、戦いは始める事が出来るのだ。
「ヒスイ王子。確か魔術は習得していましたよね?」
「はい。まあ、魔術師と比べたら子供だまし程度の魔術だけど・・・」
「それでも十分です。どうか力を貸して下さい。<災害>をこの森の中に絶対に入れたくないんです!!」
「勿論!敵が迫ってるのに背を向けて逃げるほど俺は腰抜けじゃないですよ。それに、防衛は慣れてる方なので」
「ありがとうございます」
逃げたら、ナチュレは確実に滅びる。決意を固めて戦う事を決めたら少なからず滅亡の可能性は下がる。
俺1人が参加した所で何が変わるか分からないが、母さんの故郷を守れるなら本望だ。
「ヒスイ様もご参戦なさるのですか!?だ、駄目です!もしお怪我でもしたら────」
「死ななかったら致命傷ではありません。それに<災害>は仮にナチュレを滅ぼした後も暴れるでしょうし、ここで誰かが止めなくてはいけないと思うんです」
「誰でもいいなら、ヒスイ様でなくてもよいのでは?ヒスイ様は王族です。この国の希望になれる存在です。唯一無二のお方なのです。ここで死んで良いお方ではありません」
「誰だって唯一無二です。役職に代わりはいれども、個人の代わりはいません。クローンやホムンクルスでも務まらない」
「だ、だとしてもヒスイ様は────」
「誰だって希望になれますよ。俺だけの特権じゃない。皆の権利です」
翡翠の意思は固く、頑固なモノと化し、シュエリ王女の説得にも応じる事はなく、戦いの準備を始める。
腰に愛刀紫陽花を帯び、作ってもらった脇差も携帯する。もしもの時に持ってきていた手甲と足甲を装備し、準備は完了する。
「鎧は大丈夫なのですか?」
「今回は俊敏に動ける方が良いでしょうし、俺、鎧嫌いなんで」
淡々と戦士として戦の準備を整えていく翡翠をただ眺めるシュエリだったが、彼女の意思とは無関係に脳が勝手に言葉を作り、声で出力した。
「私も行きます」
「「「「「え?」」」」」
短い一言に皆一斉にシュエリの方を向く。
「国を守る戦いですもの。王女である私も行かなくては」
「お、王女!?何を言って────」
「この中で最も魔術で攻撃するのに優れたのは私です。一番強い武器を使わなくてどうするんですか」
「王女がもし、死んだら国が混乱して────」
「その国自体が無くなってしまうかもしれないんですよ?後の事は戦いが終わってから考えましょう。それに、誰だって希望になれるんですから、仮にもし、私がいなくなっても国は大丈夫でしょうから・・・ネ?」
翡翠の方を向き、ウインクする。一本取られたと思ったのか、翡翠は思わず笑みを浮かべる。
彼女の意思に反して出た言葉だったが、彼女自身はその発言を間違っているとは思っていないようだ。
★
場面は再び代わり、同時刻。
酒場[ニルヴァーナのキス]では、鐘の音の話題で持ち切りだった。
「店主、今の鐘の音はなんですカ?」
「招集の鐘だ。騎士と兵士と魔術師を城に呼び寄せる音」
敵か魔物でも攻めてきたのかな?相当珍しいようで、他のお客さんの話を耳を澄まして聞いてみたところ、約30年ぶりの鐘だったらしい。
魔力探知機もずっと回り続けているし、一体何が起きているんだ?
「失礼します!!」
店内に、武装した兵士が入ってくる。客というわけではなさそうだ。
何事かと思ったが、店主は状況を理解したようで、グラスを洗う手を止めた。
「報酬は?」
「30万リックです!成果次第で色を付けるとの事です!!」
「・・・乗った。敵はどんなのだ?」
「それがその・・・<災害>、です・・・」
僕ら店主含めた酒場にいる全員が驚き、震え始める。横に座っていたダイモンジさんは過呼吸になり、気絶してしまった。もしかして、門を襲った魔物というのは<災害>?
翡翠達主力が戦いの準備を始める中、ナチュレ全体でも、国民の避難や薬の調達や呪術師の招集など、細かけれど、重要な準備が行われ始めていた。
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